そうだ、先生になろう。   作:鳩胸な鴨

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サブタイトル通りです。

今回は番外編になります。ちょこちょこ気分が乗ったら書く予定です。
先生と音街家+爆豪と、緑谷家の朝の食卓の様子を見せます。


番外編
番外編:優雅?な朝食 その一


「……ねむ」

 

水奈瀬コウの朝は、歯磨きから始まる。

寝起きの口内は、とてつも無く汚い。

これは科学的に証明されており、一説によれば便器よりも菌が付着し、汚れているとか。

神経質なコウはこれを気にして、研磨剤を付けた歯磨き粉で菌を流し、さらにもう一度磨くことで汚れを完全に取る。

人前に出る職である以上、歯は第一印象に繋がる。

水奈瀬コウの教師としての人生に、妥協の二文字はないのだ。

 

「…いつ妊娠してもおかしくありませんね、あの様子じゃ」

 

昨晩の貪り合いを思い返しながら、コウはシャワーを浴びる。

妻に貪られた痕をどう隠そうか、と悩みながら浴びる温水が、欲望の痕を流していく。

ソレが終わると、冷蔵庫から作り置きしていたサラダと、卵、ベーコンを取り出す。

 

水奈瀬家の朝食は、非常に簡素だ。

ベーコンエッグとサラダ、そして食パン。

ベーコンの油がフライパンの熱で弾け、食欲をそそる香りを漂わせる。

それにつられたのか、寝ぼけ眼を擦る、半裸の妻…鈴木つづみが姿を現した。

 

「こーくん、ぉはょ……」

「はい、おはようございます。歯を磨いてしまいなさい」

「ん……」

 

あくびを噛み殺すこともせず、洗面所へと向かう彼女を送る。

これなら普通の夫婦である。

………そう。これだけなら。

 

「つづみさん、廊下のマーダートラップを解除しなさい。

セイカさん起きたら、僕ら殺人犯ですよ」

「えー…。今更じゃ…」

「ベーコン減らしますよ」

「わかった」

 

瞬間。つづみは風になって、全てのトラップを解除する。

異様な光景であるが、水奈瀬家ではごくごく普通のことである。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

音街家の食事は、武力無き戦争である。

おかずの取り合いなどではなく、期待される婿と、ウナの父との会話。

ただの一言でも、そこに油断が込められてはいけないのだ。

 

「……で。修行は順調かな?」

「ええ、おかげさまで。これも、お義父様の協力あってのことです」

「そうか、それは良かった」

 

この言葉を放ったのは、悪名高い、あの爆豪勝己である。

口調は最悪、性格はもっと最悪。

下水でクソを煮込みに煮込んだような性格とまで評された、唯我独尊を素で行く男。

多少は改善されたものの、根本的な部分は変わってないため、秘密結社『一等星』のメンバーにはこっ酷く弄られていた。

今のこの態度も、ケツを叩かれ、ケツの皮を剥いてまで手に入れた外面である。

が。その外面は、今まさに崩れ去ろうとしていた。

 

「オムレツでございます」

「ありがとうございます、小春さん」

 

小春六花、と言う名のメイド…音街家に代々使えているらしい…に、礼を言い、爆豪は唾を飲み込む。

 

(このオムレツ、ケチャップまで自家製…しかも作りたてのホカホカじゃねェか…!!

このアマっ、今日が大事な対談の日だって分かってて、クソみてェに美味ェメシ用意してやがんなクソがァ…!!)

(へーんだっ!昇天してポカやらかせやクソ煮込み!!ウナお嬢様奪われたオレのささやかな復讐を受けてみろってんだこの…名前思い出せねェけど、パムパムの実の能力者!!!あれみてェに禿げろバァァァーーーーーーーーーカッッッ!!!)

 

と。こんな調子で、両者は仲が非常に悪かった。

それはそれはもう、ウナの見ていないところでは、我々であれば骨全てが叩き割られたのかと思うほどに腰がガクガクになる罵詈雑言が飛び交う。

しかし、この場でそれをする愚行は、両者とも見せない。

ウナの父は、戦闘力こそないものの、纏う気品と気迫は一級品。

婿に入る爆豪としても、雇われの身である小春にしても、彼を怒らせることの恐ろしさを、魂に刻んでいた。

 

「しかし、君には驚かされてばかりだよ。

まさか異能解放軍まで下してしまうとは」

「いえ。その直後に、フィクサーに負けてしまいましたので…。

頂点までの道のりは遠い、と、現実の厳しさを学びました」

 

爆豪は言うと、オムレツを口に運ぶ。

瞬間。まるで羽毛のような、体験したことのないふんわりとした食感が、卵の旨味、そしてケチャップのさっぱりとした酸味とコクと共に炸裂した。

 

(ぐぁぁぁあああああっっっ!!!!

くそッ、なんて美味ェんだ畜生…っ!!普通だったら叫ぶほど美味ェ…!!あのクソ教師の買う高級卵より美味えってなんだよ材料全部安物だったろォが!!!

まずい、まずいまずいまずい…っ!!フィクサーん時よりまずい…!!美味すぎて話が耳に入ってこねェぞくそッ!!

あンのクソアマァァァァアア……!!!)

 

爆豪が流し目で小春を睨む。

と、隣に座るウナが勘違いしたのか、爆豪に向けて軽く手を振った。

爆豪もまた、軽く手を振り返すことで、なんとか誤魔化す。

 

(ザマァ味噌カツ♪あの『情報』が正しければ、次は…)

 

と、小春が内心で喜んでいると。

ウナの父が、慌てて何かを探し始めるように、視線を下の方に向け、血眼になって視線のみを動かした。

 

(やばい…っ!!カンペ無くしたぞ…!?

爆豪くんに聞かなきゃならないことが詰まったメモが…!!もしや、テーブルクロスの中に入ったのか…!?)

 

そう。彼もまた、戦っていたのである。

自分の威厳を損なわぬよう、必死になって用意したカンペ。

無論、使用人たちにはそれがバレているのだが、バレていないと思っている彼は、ダラダラと冷や汗を流す。

 

「…さ、最近は、どうなんだい…?」

(な、何ィィィィィィィィっ!?!?!?)

 

予定とは違う質問に、慄く小春。

彼女は一つ、計算に入れ忘れていた。

ウナの父がカンペを無くしてしまうという可能性を。

オムレツを食べていた爆豪は、一瞬だけ勝ち誇った笑みを浮かべたのち、爽やかな笑みを浮かべた。

 

「厄介ごとには巻き込まれますが、充実した生活を送れています」

「そうか。なら良かった」

 

空になった皿を前に、一息。

爆豪はバレないように嘲笑を込め、小春を一瞥する。

結局のところ、カンペは見えない位置に行ってしまい、小春の思惑は全て外れることとなった。

 

(どうやら狙いは外れたようだな…!!

ザマァみやがれってんだこのクソアマが!!!)

(ちっ…!まさか旦那様がポカやらかすとは…!!だが、オレぁまだ諦めちゃいねェぞジェノサイドボンバーマン!!!)

(カンペ、どこ行ったんだろ?)

 

音街家の朝食は、婿が来る日のみ、戦争が起きている。

大抵はこのように、ウナの父によってかき乱されてしまうが。

 

「ご飯、美味しいね!バクゴーさん!

小春ちゃんも、ありがとう!」

「おォ…。このく…、小春のメシは美味えな」

「オレ…んんっ。わたしには勿体なきお言葉です、お嬢様に若旦那様」

 

(コイツの褒め言葉気持ち悪ッ!!名前でオレのこと呼ぶんじゃねェ殺すぞこのタンポポ頭!!!)

(わたしィ!?カマトトぶってんじゃねェぞこのヤンキーメイド!!今ここで化けの皮ひっぺがえしてやろうか!!!???)

 

(バクゴーさん、ずっと小春ちゃんと見つめ合ってる…。

も、もしかして、知らない間に、そそそ、そ、そそっ、そう言う関係になっちゃったの…!?)

 

純真なウナは、二人は仲がいいと思い込んでいるのであった。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

その頃、緑谷家では。

 

「おかーさん、おかわりー!」

「はーい!ホント、炊飯器がいくらあっても足りないわぁ」

「僕が作った発電機とプランター、どう?」

「電気代の節約になるわね!野菜代も節約できるわぁ…」

 

オーバーテクノロジーがここぞとばかりに活躍していた。




ここでの小春ちゃんはオレっ子で、ウナちゃんのお姉ちゃんポジ兼メイド兼ファンクラブ会員No.1の大ファンです。

…あまりここで宣伝するのもどうかと思いますが、同時更新のブレイブ・ア・ライブの方も、宜しければご覧ください。

この作品にも関わる活動報告です。こちらもご覧ください。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=258965&uid=299998
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