ああ、愛しの勇者さま -TS転生して勇者に惚れたのでどんな手を使ってでも落そうと思う- 作:ちいたまがわ
先日のあれ、らぶらぶ食べさせ合いっこは大変よかった。非常によかった。もう5回は使ったね。何にって、言わせんなよ恥ずかしい。それは乙女の秘密です。ひーみーつっ。
しかしまあなんであんなことが出来たのかって考えると、お料理大作戦がどうとかじゃなかったよな。つけこんだ感じだ。ユウマのクソ真面目さというか、ちょっと抜けてるところというか、その辺に。
……まあね!そういうところがね!好きなんですけどね!えへへ。
人がいいっつーのかな、思えば出会った頃のあいつは誰かを疑うことなんて全然知らなかったもんなあ。女の子にだって慣れてなくて、オレの下着姿を見ただけで顔真っ赤にして平謝りしてたもんだ。やー、懐かしい。……あれ、むしろなんで今はオレの扱いこんなに悪いの?紳士なユウマはどこへ?なじぇえ……?
ともかく。
ユウマとオレがもっとえろえろであだるてぃっくな事をするためには、あいつの弱みを握ってそこに付け込むのが一番早い気がしてきた。どうやって弱みを握るか、別に一人で考えてもいいが、せっかくオレには仲間がいるのだ。力を借りることにしよう。友情ってやつぁ美しいね。
◇
というわけで、オレは勇者パーティ随一のチャラ男、弓使いエルマールのお部屋にお邪魔しているのであった。
「ああ?ユウマの弱みを握るためにはどうすりゃいいだと?しゃーねえなあ、俺が一肌脱いでやっか。」
どっかりあぐらをかきながらそう答えたエルマール。
緑の長髪、ちゃらちゃらしたピアス、加えて軽薄そうな笑みをうかべた、もう一瞬で『こいつチャラいわ』とわかるのがこの男である。まあいっても悪い奴ではない。パーティで一番世間に慣れてるのはこいつだし、見た目はアレだが普通に気のいい兄ちゃんである。アホだけど。
そんなわけで、なんだかんだ言ってもオレとエルマールの2人でつるんで遊びに繰り出すことは非常に多い。たいがい賭け事だったり女遊びだったり(ユウマに惚れてからはちゃんとやめましたよ?ええ。ほんとに。……時々しか行ってないですよ。)とロクなことをしに行くわけではないが。……こいつにオレはどういう風に見えてるんだろうな?普通幼女とキャバクラ行くか?頭おかしいんじゃないだろうか。
「へっへっへ、男の弱みが欲しいんならなあ、一発ヤラせちまえばいーんだよ。要は色仕掛けってことだ。……俺もそうやって何回ハメられたことか。」
「それは初めからやろうとしてる。」
「ええ……。冗談だったんだが、マジで言ってんのかお前……。」
ドン引きされた。悲しみ。まるでオレがやべーやつみたいじゃねーか。普通ですよ普通。恋する女の子はみんなやってますよ。たぶん。前世でもされたことねーけど。悲しみ。W悲しみ。
「他にはなんかねーのかよー、エルマールさんよー。どうせお前女がらみのヤベー体験がいっぱいあるだろ?その豊富な経験談からさあ、もうこれ責任取るしかねーわってとこまで行った話とかおせーてくれよー。」
「お前人の事をなんだと……。」
「違うの?」
「や、違わねーわ。」
「じゃあはよはよ、なんかヤバかったエピソードを教えてくれや。」
そう促すとエルマールはあごに手を置いて目を閉じた。考える人のポーズである。そういや確かこのポーズは便秘に効くとかなんとか。女の子は便秘が大変みたいな話も聞き覚えがあるし、いざという時ウンコマンレイちゃんになれる様に忘れないようにしとくか。ちげえ、ウンコウーマンレイちゃんだわ。あれ?ウンコガールか?
「んー……、そうだな。まあ一番はあれだな。酔った勢いでワンナイトラブした女によ、しばらくしてから、あなたとの子供が出来たのー、っつって医者を連れて迫られたときだな。」
「それもう詰んでない?」
「それが狂言だったんだよ、結局。女と医者が結託して、子供が出来たって嘘をついてた。俺から金だけ巻き上げてドロンするつもりだったみてーだ。」
「ほえー……、じゃあオレもそういう感じに責任とれーって……、ってそもそもユウマとセックスしてなきゃそんな嘘ついても意味ないか。」
「……お前はもうちょっとぼかせ、俺だって直接セックスとは言ってな……、つーかよ、お前のそういうところが駄目なんじゃねえのか?」
「え?どこどこ?オレのどこら辺がダメでユウマといちゃらぶっクスできないの?」
「そこだそこ、今のとこだ。お前はなんだかんだ言っても見た目は悪かねーんだからよ。もうちょっと、なんつーの?年相応の恥じらいっつーもんを覚えれば、ユウマの見る目も変わんじゃねーの?」
「年相応ってなあ、だからオレは……。」
「あーはいはい、18の男なんだったな。ちんちん付いてなくて、背たけもちっちゃいレイちゃんは。」
「……もうどうでもいいわ。しかし恥じらいなあ……。」
「例えばフェリアだったら、お前みたいに真顔でセックスなんて絶対言わねーだろ?もし言うにしても、顔真っ赤にしてうつむきながら小声で言うはずだ。そういうのが可愛げっつーんだよ。」
「なるほどなー。こんな感じ?」
言われた様にちょっと顔を斜め下に傾け、唇を心なしか震わせながら小声でセックスとつぶやいてみる。……なんかちょっと恥ずかしい。
「おーおー、結構化けるじゃねーか。セックスって言葉はどうかと思うが。……しかし普段のちゃらんぽらんなアホとのギャップも感じるし、これは案外ひょっとするとひょっとするかもしれねえぞ。」
「まじ?ワンチャンある?……よし、目標はアルティメット清らかレイちゃん。ユウマが白濁でめちゃくちゃに汚してやりたくなるような、そんな清楚な感じを目指して頑張るぞー。」
「そういうとこだぞ。」
◇
清楚とは。
もしここが異世界じゃ無ければ、オレの忠実なしもべにそう聞くだけで約176,000,000件もの回答が返って来ただろう。0.40秒で。惜しい奴を失くしたものだ。ジョニーしかり、グーグルしかり、失ってからわかるありがたみよ。また一つ大人になった気がするね。
とはいえこんなことで大人になっても仕方がない。オレはユウマに大人の階段を昇らせてほしいのだ。逝ってしまった奴らに思いを馳せている場合ではない。……いや逝ったのオレだわ。忠実なしもべなら墓に一緒に入るくらいの忠誠心を見せろ。せめてジョニーだけはオレと一緒に来て欲しかった。
まあそれはともかくだ、作戦は決定した。ずばり『ハイパーデラックス清楚レイちゃんに変身してユウマに『あれ……普段のレイと違う……、こんな清らかな乙女を見たら、男の本能で汚したく……うぅっ!』みたいな感じでどろどろのぐちゃぐちゃにされちゃおう作戦』である。……最初は弱味がどうたらとかそんなこと考えてたはずなのにおかしいな。話はそれるよどこまでも。
しかし清楚ねえ……、とりあえず服装から考えるか。形からいくのは大事。
◇
はてさてオレはどんなお洋服を持っていましたでしょうかね。
自室のクローゼットをバクンと開いて手を突っ込み、中から適当に服を引っ張りだす。最初に出てきたのは大量のジャージ。オレの普段着である。今も着てるし。色気も可愛げもクソも無いが、楽だからの一点で着続けているやつだ。いや、ユウマにアタック仕掛けるときはもっと可愛いかっこしますけどね?あたくし乙女でっすしー。
しかしジャージを着ている時の方がユウマとの距離が近いような気がする。二人で深夜にお酒を飲んでアホみたいに騒いだりしてた記憶が呼び起こされる。染み付いたゲロから。……やめやめ、オレが目指すのは恋人とか夫婦であって、友人じゃねえ。
次に出てきたのはふわふわピンクのうさ耳付きパジャマ。これはフェリアが出会って少しの頃に大興奮しながら持ってきたやつだ。鼻血出しそうにしながら。訂正、ちょっと出てた。つまるところこれは、男としての尊厳を全てかなぐり捨てればフェリアと添い寝ができるという呪いの装備である。デロデロデロデロデロデロデロデロデンデロン。使用頻度は週三。プライドなんざいらねえ。おっぱいは全てに勝る。
そろそろ清楚な洋服かもーん。引っ張り出されたのはミニスカートの……いやわかんね、なんて言えばいいんだろこれ。ワンピース?ミニスカートのワンピース?女の子のファッションなんてわからんのですよぼかぁ。なんかあるじゃん、色々さあ。レギンスだのデニムだのキュロットだの。さっぱりわからん。何もわからん。上に着る服とかTシャツ以外にわからん。とにかくこれがオレの勝負服である。なんか……ミニスカ。……だって露出多いほうがえっちじゃん!男はみんなえっちなの好きじゃん!なんかフリフリの付いたミニスカートは男の子はみんな好きなの!
お次は真っ白の……ヒエッ、また入ってるよ……。これはあれ、転生した時に着てたやつだ。白いワンピース。いやその、なんかさあ、体が変わってるのはもう仕方無いから受け入れるとして、服着てるってのがよくわかんなかったんだよね、転生した時に。全裸のが自然じゃない?そういうわけでなんとなく薄気味悪いから見つけるたびに燃やしたり埋めたりしてるんだが、なぜかいつの間にか戻って来ている呪いの装備である。またかよ呪いの装備。塩撒いとこ。悪霊退散!悪霊退散!あ、なんかギエエってうめき声が聞こえた。こわっ。
それからもしばらく漁り続けた。バニースーツ、ベビードール、ビキニアーマー、メイド服。出るわ出るわ、イロモノ装備が。……いやロクなもん入ってねえな!清楚のせの字もねえ。唯一清楚を感じるのは例のワンピースなわけだが、まあさすがに着たくねえわ。後でまた燃やしに行こう。
しかしあれだな。オレの手持ちじゃあ清楚レイちゃんにはなれねーな。買いに行くしかないか。今まではしまむら的なとこしか行ってなかったけど、たまにはちゃんとしたオシャレな感じの洋服店にでも行ってみますかね……!レイちゃん、ファッションデビュー!びしっと決めるぜー!
◇
「あら?お嬢ちゃん一人?お母さんは?」「今日は清楚なお洋服をお探しな感じですか~」「こちらが今のトレンド商品となっておりまして~」「お客様とってもお似合いですよ!」「わたしもこの服持ってるんですよ~、」「実はこちら、最後の一着となっておりまして~」「この子お持ち帰りしちゃおっかな……」「こちらはどうでしょう、さっきとはガラっと印象変わりますよ~」「あら~、やっぱり可愛い子にはなんでも似合っちゃうんですね~」
……来るんじゃなかった、オレは貴様のオモチャじゃねーんだぞ。鼻息荒くしてんじゃねえ。顔近い顔近い、そんなに密着しなくても服合わせるくらいできるでしょ。離れて離れて。いや近いって……離れろ!
はーまったく。わたくしムスっとしてます。レイちゃん仏頂面モード。私もこれ持ってるんですよ~じゃねえだろ、嘘をつくな嘘を。それ子供服だぞ。なに?彼氏とそういうプレイでもしてるんか?おお?ねーちゃんよお。
なんか店名がシャレオツな文字で書いてあるイカしたお店に入って清楚なお洋服下さいって言ったらさあ、御覧の通りですよ。しまむらが恋しいなあ。もう完全に着せ替え人形状態。レイちゃん人形。まあユウマくん人形もセットなら売ってやらんことも無い。
しかしどれだけ店員のマネキンにされようとも、オレには耐えることしかできない。だってオレ、ファッションなんて知らねーもん。たとえ人を心底イラつかせて来ようとも、この店員はプロなのだ。女の子1年生のオレが太刀打ちできる相手ではない。悔しいのお、悔しいのお。
鏡に映った死んだ目でなんかいい感じのお洋服を着てる自分から目をそらして横を向くと、試着してきた服が山と積み重なっていた、いい加減もういいだろう。会計に行こう。試着したものを全部買うと告げると驚かれた。そりゃまあそうだわな、こんな幼女が大金もってるなんざ思わんだろう。でもオレはお金持ちなんです。だって魔王軍と戦ってるもん、最前線で。人類の希望の星なんだぜ、オレたちゃ。えらい人からいっぱい資金はもらってるのだ。……いいのか?こんなことに使って。まあいいか、バレやしねえ。サクっと会計を済ませる。
さてさて、お家に帰っておめかししたら、ユウマにたくさん可愛がってもらいましょうかね……!
販売員のねーちゃんが、家まで持って帰れる?付いて行ってあげようか?お家どこ?ねえ、お家どこ?お母さんとお父さん今お家いる?お家帰ったら一人?とかすごい聞いて来た。怖かった。特に目が。走って逃げたら走って追いかけて来た。怖かった。ちょっとちびった。もうあの店には行かない。