変なポケモンに懐かれたと思ったら『SCP-682(不死身の爬虫類)』だった件   作:BOMBデライオン

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SCP-8900-EX「青い、青い空」オススメです


5話:いざ!

 そこらで入手した木片をガジガジと(かじ)るポチを引きずりながら、私は次の街を目指して旅を続けていた。

 マサラタウンから北に真っ直ぐ、次の街の名はトキワシティ。永遠なる緑のまちを謳うマサラタウンよりも大きな街だ。

 

 遅まきながら、私の旅の最終的な目的を説明させてもらおう。

 私の目標はズバリ、このカントー地方のポケモンリーグチャンピオンをポケモンバトルで打ち倒して「殿堂入り」し、最高のポケモントレーナーとなることだ。

 これは全てのポケモントレーナーに共通する夢と言っても過言ではなく、私もその1人として各地のジムを回ってバッジを集めていくつもりである。

 

 ジムとは何かも説明しよう。

 このカントー地方には合計で8つのジムと呼ばれる施設が存在し、そしてこのジムを各々取り仕切っているのがジムリーダーと呼ばれる凄腕のポケモントレーナー達だ。

 彼らジムリーダーをポケモンバトルで倒すことでジムバッジが貰え、それを8つ集めることができて初めてポケモンリーグチャンピオンと戦う権利が得られる。

 まあチャンピオン戦の前にもいくつかの障害が存在する訳だが。

 

 そういえば……よく考えたら私はまだマトモにポケモンバトルをした事がない。

 トキワシティはポケモンリーグの場所から近く、リーグチャンピオンやその前に立ちはだかる四天王ほどではないと言え、かなりの猛者が集まる場所でもある。

 

 せっかくだ。そこでバトルの修行をしていくのも良いだろう。

 マサラタウン出身のトレーナーのほとんどはここでチャンピオン打倒を目指す者達の洗礼を受けることになるだろうが、私には「不死身のポチ」がいる。

 こいつとならどんな相手でも負ける気がしない。いきなりジムリーダーとご対面するのも良いかもな。

 

 …それは流石にジムリーダーを舐めすぎか。

 

 色々と今後の計画を考えながらしばらく歩いていると、遠目にトキワシティの建物が見え始めてきた。

 マサラタウンより規模は大きいものの、やはり小さな町だが、自然が豊かでキレイ場所だ。

 

「…アルコールの匂いがするな」

 

 しばらくしてポチがそんな事を呟いた。

 ああ、恐らく噂に名高いあの人だろう。

 

「うぃ〜っ! ひっく……そこの小娘! 待ちやがれ!」

 

 酒臭い息を撒き散らしながら、オヤジは私をこれより先に行かせまいと道を塞ぐ。

 

 改めて、こいつはマサラタウン出身者の間でも悪名高い「酔っ払いオヤジ」だ。

 このオヤジは誰に命令された訳でもなく、ポケモン図鑑を持っていないポケモントレーナーがここを通ろうとすると強制的に引き帰らせる意識高い系の邪魔者である。

 

「はいはい、ポケモン図鑑はありますよ。じゃあ通りますね〜」

 

「ちょ…! 待てい!」

 

 オヤジは横を通ろうとする私の腕を掴んだ。

 酔っ払って顔が赤くなった汚らしいオヤジが私のような美少女の腕を掴むなんて……セクハラで訴えてやろうか、こいつ。

 

「なんですか? ポケモン図鑑はありますよ」

 

「それも重要だが、わしとポケモンバトルをしろ!」

 

 は? 

 

 頭()いてんのかこいつ。

 こりゃ有名にもなるわ。お金が欲しい私としては嬉しいけども…。

 

「お主のポケモンは見たことがない! 興味が湧いたんだ! わしのポケモンと勝負じゃ!」

 

「えー…」

 

 いやいや、お前のポケモン死ぬぞ? 

 こいつがどんな化け物か知ってるか? 生物としての純粋な戦闘力ではSCP内最強の怪物だぞ? 

 

「御託はいらぬ! 出でよビードル!」

 

 ポケットから取り出したモンスターボールを投げ、人の話を聞けない酔っ払いは自身のポケモンを場に出した。

 オヤジが出したのは体長30センチ程度のけむしポケモン、ビードルだ。

 

 いやポチの初戦ビードルかよ。

 体格差と言うか…悲惨なことになる未来しか見えないな。

 

「酔拳を極めし人間風情が……我に楯突くなど笑止!」

 

 バチバチと音を立てながら電気をまとい、ポチはゆっくりと、それでいて絶対的強者としての余裕を感じさせながら()()()の前に立ちはだかった。

 

 いや、戦う相手そっちじゃないから。

 ビードルをちゃんと相手として認識してさしあげろ。

 

「世にも珍しい喋るポケモンか…。お手合わせ願おう…」

 

 酔っ払いオヤジはゆっくりと動いて構える。

 素人目に見ても、この酔っ払いの実力が見て取れた。

 

 いや、オヤジもノリノリで構えなくていいから。

 酔拳を極めたとか知らんけど、ビードルが完全に蚊帳の外になって困惑してるぞ。

 

 ……外にいるのは私もか。

 

「ポチ、お座り!」

 

 私はポチに指示を出し、強引に蚊帳の中から引っ張り出した。

 ポチはちゃんと私の命令を聞き、ちょこんと座って見せる。

 

「ほう…(しつけ)がなってるな。新米とは言えポケモントレーナーとしては合格だ」

 

 酔っ払いが何か言ってるが、何様だよお前。腹は立つが…まあ不合格を突きつけられないだけ良しとしよう。

 さっさとここから離れて──

 

「だがそれはこれとは別だ! では行くぞ!」

 

 え? 

 私まだ何も準備できていないんだが? 

 

「ビードル、『いとをはく』!!」

 

 酔っ払いが指示を出し、ビードルが口から白い糸を吐いた。

 ビードルの小さな体からは考えられない太さと量の糸がポチに絡みつき、その動きを阻害する。

 

 完全に奇襲やん。

 セコいなこのオッサン。

 

 突然白いベタベタとした物質をふっかけられ、これには財団内最強の怪物も怒ったようだった。

 

「けむし風情が…!!」

 

 化け物の顔はとんでもない表情となり、目が完全に殺る気モードと化す。

 絡みついた強靭なはずの糸は強引にだが容易く千切られ、その身体を覆う電気は青白い稲妻となって大気に放電される。

 

 瞬間、ビードルは青ざめて恐怖し、理解した。

 絶対に覆ることのない圧倒的な彼我の戦力差を。世界を滅ぼしかねない異常な怪力と速度を。

 そして、環境や相手に合わせて自分の形態を変える驚異の適応力を持つ怪物が全力で己を屠ろうとしていることを。

 

 己の3倍程度の大きさのはずの化け物の姿が異常に大きく見え、ビードルは萎縮する。

 後ろで控えるトレーナーの指示は、もうその耳には届いてなかった。

 

「ポチ、『たいあたり』!」

 

 相手のトレーナーが指示を出した瞬間に目の前の怪物の姿が消え、ビードルは衝撃や痛みを感じる間もなく意識を失う。

 勝敗が決するのに所用された時間は1分もなかった。

 

 


 

 

 結局、人生で初めてのポケモンバトルは呆気なく終わってしまった。

 原因は特にない。強いて言うなら相手が悪すぎたな。

 まさか体当たりで一発KOとはな…。

 

 ポチの攻撃力や素早さが数値上どれほどなのかは分からないが、ある程度のポケモンが相手なら『たいあたり』だけで戦闘不能に出来そうだ。

 しかも私のリュックに入る程度の大きさであの威力だからな。初めて会った時と同じ大きさなら、伝説のポケモンでも脅威となるダメージ量になるに違いない。

 

「ずいぶんとご機嫌だな…」

 

 ポチが呟き、私はルンルン気分で答えた。

 

「そりゃあ、お財布が厚くなったからね!」

 

 あの酔っ払いの()()()()のご好意で賞金も多めに貰えたし、今いる場が街中でなければ私はスキップをしていただろう。

 まあポチの存在で多少は人の目を引くことになるが、それくらいは許容範囲内だ。ロケット団とかに存在はバレるだろうがな。

 

 新種のポケモン…正確にはポケモンじゃないが、ポチのような存在をロケット団が狙わない訳がない。

 本当ならポチをモンスターボールにいれて人目を引かないようにしたいが、どうせ気球を爆散させた身だ。

 目をつけられたって今更なんてことはないだろう。

 

 別の意味でポチを狙うやつらもいるが…

 

「やい、そこの女! 俺とポケモンバトルをしろ!」

 

 街中でいきなり男に指をさされ、半ば強引にナンパをされる。

 まあ目当ては私ではないだろうが。見たところポケモントレーナーだし、こいつは単純に見たことのないポケモンに興味が湧いたのだろう。

 酔っ払いの()()()()もそうだったしな。

 

「受けて立つ!」

 

 見たところ私と同い年くらいの少年だが、私は基本的にバトルのお誘いは断らない主義だ。

 訳あって自分からバトルのお誘いはしたくないが、向こうからバトルをふっかけてくるなら一方的にボコしても心は痛まない。

 

「ピジョン! 君に決めた!」

 

「ポチ! あなたに決めた!」

 

 お互いのポケモンが場に出で、バトルが始まる。

 ポチにはバトル中は私の指示に従い、ある程度は自由だがなるべく私の指示以外で動かないように言いつけてある。

 空を飛ぶ相手にポチがどれだけやれるか…。

 

 私は期待に胸を膨らませた。

 

 

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