追うのではなく並びたい。(凍結中)   作:korotuki

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新シリーズです。見切り発車です

言いたい事は…分かるな?(夜逃げの準備)


アフリカ戦争編
001


☆【変わり者の傭兵仲間】

 

「――ん?」

 

 太陽の白と砂漠の茶色しかない場所にそのBMは立っていた。オレンジと白で配色された金属質の巨大なロボット。バイエルングループの試作機〈ラヴァハンマー〉である

 一時期は「火星深部から排出された〜」というロマン溢れる説明で話題となったが、とある記者によって「地球産なのに火星産としていた」というスキャンダルが発覚した可哀想に機体である。

 それでも両手の二問の砲台や各部の射出装置、そしてこのBM自体から発せられる熱量とレーザーの威力が下がる事はなく。燃料代が高くつく事を見なければ非常に優秀な機体である。

 

 そんな高価かつ優秀かつロマンに溢れたBMの搭乗部に乗っていた人物は、赤髪紫目の男性だった。「砂漠の熱さ+機体の熱放射」をもろともしない高級クーラーが取り付けられた操縦席で悠々とドリンクを飲んでいた男の目はレーダーに映った友軍機のコードを見遣っていた。

 

「友軍機の反応…この信号はベカスさん……でもちょっと違うな。機体を変えたのか?」

 

 今出て来た「ベカス」という名前は、この男と同じBM――BattleMech(バトルメック)の略称――乗りではあるが優秀なパイロットを表すA級ライセンスを持つ彼とは違い、どこにでもいる極一般的なC級ライセンス持ちの傭兵である…だが、件のベカスはA級の彼に勝るとも劣らないパイロットスキルの持ち主でもある。しかし万年C級なのは彼のスキルを上が把握していないのかそれとも――――

 

「機体コードは…よ、読めない。まさかの“機密”系統?万年金欠のベカスさんが?」

 

 機密(大体なんかヤバイ機構やシステム。またそんな事情を抱えているBMの系統)持ちの機体なんてまた随分と物騒なのに乗り換えたなと思いながらも通信機能をポチポチと弄り、ベカスの機体に通話を入れる彼――芦名絢斗(あしなあやと)は「そういや盗賊団が出てるとか何とか聞いたような…」と思いながらも通話が繋がるのを待った。

 


 

『――って事で、俺はいっちょ盗賊たちを倒してくる』

「…アンタが乗ってるその白い機体も、一瞬映ったピンクの髪も、まぁ見なかったことにしますけど。これだけは言わせて下さい――相変わらずですね」

『おい!そりゃどうゆう意味だ!!』

「そのまんまの意味だよ!大体アンタ無償の手助けが多過ぎんだよこのならずり者流(笑)の伝道者が!」

 

 画面の向こう側に映った白髪の男ベカスに向かって思っ切り毒を吐く絢斗。普段は穏やか(設定)な彼がここまで言うのは、ベカスの性格のことについてだった。

 日頃からベカスという人間は依頼の報酬を極東料理と甘苦で出来た味付きの爪楊枝に溶かすというどうしようもないやつなのだが、それに輪を掛けて酷いのが彼のお人好しっぷりだ。依頼主が女性や貧困者だった場合はかなりの高確率で無償で依頼を受けるし、場合によっては自らの財布を投げ打ってまで依頼を完遂しようとする。

 一番厄介なのは彼が人からの行為に疎い(鈍感野郎)ということだ。察せないというわけではないのだが限り無くそれらに対する察しが悪い。

 

『オイオイ。流石に言い過ぎだろ?というか、お礼はたっぷりと――』

「どーせ飯一食分だけとかだろ!?安過ぎんだよ!自分を安売りするな高く行け!!」

『お、おぅ……』

 

 話の流れからして()()割りに合わない人助けをする気だと察した彼は憤るが、空返事しか返さないベカスであった。

 

「〜〜ッ!!あぁもう!座標データ送って下さい。急行しますから!」

 

 ここで『バカな奴だ』と通信を切り()()()()()()()()()()()()()のは非常に容易いが、流石に先輩に死なれるのは目覚めが非常に悪い絢斗は唸り出すような葛藤の声を出しながらも『救援する』選択肢を取った。

 

『わかっ――ん?ちょっと待て』

「…何ですか。機器の故障ですか」

『いや、そうじゃなくてだな…手伝ってくれるのか?』

「…?そりゃ助けますよ。いかにアンタが乗ってるそのBMが高性能で、アンタの腕が並のA級以上でも、物量には敵わないだろ?」

『――イヤイヤイヤそうゆう話じゃなくてな』

「まさか、『俺を助ける義理なんかないだろ』とか言うつもりですか?」

『っ…そうだ。俺とお前にそんな義理なんて――』

 

 意地っ張りなのかそれとも自分以外の奴を巻き込むのは彼の流儀に反するのか、何故か救援することに抗議し出したベカスに対し『本っ当にこの人』は()()()()()()()()()()()()()()()仕方なく『正当な理由』を出した。

 

「んじゃあ『貸した金をキチンと返済してもらう』って事で」

『へ?』

「カジノで貸した10万ゴールドに、極東料理の店で渡した7千5百ゴールド。後俺からパクった実家の味付き爪楊枝の代金2千5百ゴールド。しめてぴったり丁度11万ゴールド。まぁ盗賊共が盗った宝を幾つかちょろまかせば足りるんじゃないですかね?」

『――――――』

 

実 際 は も っ と あ る

 

「理由としてはこんなもんです。で、返答は?これでもAランクなんでそんじょそこらの盗賊に遅れは取りませんよ?」

『ハァ…OKOK。降参だ――――場所はお前がいるところからしばらく離れた位置にある貧相な村だ。詳細はデータで送る。あと、もしかしたらおてんばなお嬢ちゃんが襲って来るかもしれないから、その時は俺の名前を出してみろ。黙って通してくれるかはわかんないけどな』

「了解…あっそうだ。何か補充したいものはあります?友人価格で持って来ますよ」

『いや、別に――あー。そう、だな』

 

 折れたベカスとの予定の擦り合わせもほぼ終わり、思い付きで補充物資を持ってこようとして、ベカスに何か必要な物がないかとベカスに聞いたら、何故か途端にベカスの歯切れが悪くなった。

 

『その、だなぁ…プリンを2つぐらい』

「……プリン?北京ダックとか、甘苦とかじゃらなくて?」

『あ、それは欲しいな。是非頼む』

「えぇ?……まぁ、了解。精精良いのを買ってきます」

 

 絢斗はベカスが『プリン』と言った瞬間にモニターの端で一房のピンクの髪が跳ねたことを見なかったことにしつつ、通話を切った。

 

「妹…いや、ないか。たぶん迷子の女の子でも拾ったんだろうなぁ……はぁ」

 

 ほんとうに色々とアレなベカスに呆れながらも彼はプリンと甘苦と北京ダックを買いに市場へと向かった。

 

 因みに買い物の帰りに悪の組織「ノイジーバット」の首領リーゼロッテに襲撃されたが、軽くあしらった。

 


 

「村は…あぁアレね。確かに情報通りボロい場所っとと、まだ人が住んでるのに失礼か」

 

 絢斗はバイエルングループの高機動型戦車【ミーティア】に乗りながら村へ向かっていた。本来レーシングゲームにしか顔を出さないミーティアが砂漠を走っているのはかなりシュールだが、Aランク最速とも揶揄されるスピードは伊達ではなく、みるみる景色が過ぎ去り、村が大きくなっていった。

 

――ついでに、赤と青の女性的なフォルムが特徴的なBMも視認した。

 

「【バルキリーA】に、【バルキリーR】?ヴァルハラ製とは珍しい」

 

 絢斗が今言った通り、【バルキリーシリーズ】―高い操作性とその見た目から、特に女性からの支持が強い機体郡。様々なバリエーションがある―はこのアフリカから遠く離れた北欧地区に本拠を構えるヴァルハラが製作、販売している機体である。確かに北欧から遠く離れたここアフリカではまず見かけない機体である。

 

『そこの戦車!止まりなさい!!』

 

 レーダーに映ったのか、こちらの方へ振り抜きながらオープンチャンネルにて停止を促した。

 特に反発する理由もないので指示通り停止し、懐から身分証明兼預金手帳のライセンスカードを懐から取り出し始めた。

 

『何か、身分を証明できるのはある?』

 

 銃口は下げられているがこちらに向かってBM用の大口径レーザー銃を突きつけられつつも落ち着いた様子で身分証を手に持った。

 

「OATHカンパニー所属の傭兵、芦名絢斗だ。ベカス――白髪に赤い目をした男の救援に来た」

『…盗賊の支援にでも来たの?』

「は?と、盗賊の支援って…俺は正式な企業に属しているから、そんなことしたら即刻除名だ。やりたくても出来ないし、俺はそこまでバカじゃない」

『うッ…ゴメンなさい』

「……分かればいい」

 

 妙なやっかみを退け、無事謝罪を勝ち取った絢斗は村に入ることなくレーダーに映ったベカスの信号目掛け走って行っ――

 

 

 

『私ったらまた…もう間違えないって決めたのに……!』

 

 

 

 呟きが偶々マイクに拾われたのか、少女の悔恨の感情が窺い知れる声が聞こえて来た。…どこか見に覚えのある絢斗は、他人の気がしなかったため一つアドバイスを送ろうと戦車を止めた。

 

「――ねぇ」

『えっ…あー!ご、ゴメンなさい!!』

「いや、それはいいんだけど」

 

 バツが悪そうな声音の少女に向かい――

 

「若い頃のミスは仕方ないと思うぞ。俺も君ぐらいの時は()()()()()()()()()()()()()()

『と、溶かした?い、いや有難うございます…?』

「うん。頑張れ若人」

 

 そう言うと絢斗は機体を反転させ、今度こそ【バルキリーA】から去って行った。

 

『若人って…あの人も結構若いと思ったんだけど』

 

――尚、最後に聞こえた少女のツッコミは聞こえなかった。

 

 その後暫く走って行った先で、絢斗はベカスとベカスのBM【ウァサゴ】と合流した。

 


 

☆【成る程、大体分かった(大嘘)】

 

「こうやって顔を突き合わせるのは結構久々ですね」

「だな。……にしても、相変わらずいろんな機体乗ってるな」

「俺は“選ぶ事が出来ます”からね。手札は多い方がいい」

「取り敢えず、頼りにさせてもらうぞ?」

「ハイハイ。で隣のその子、いや“その人”は…」

 

 ふと、このクソ暑い砂漠でかくのとは別の意味での汗をタラリと垂らしながらも絢斗はチラリとベカスの隣にいる少女を見やった。

 

 小さくも『幼い』とは感じさせない立ち姿。

 

 ピンクの髪はとても滑らかで、まるで絹か、シルクのような印象を受ける。

 

 顔は幼いながらも『帝王』のような威厳を感じさせる雰囲気。

 

 瞳は赤と青のオッドアイ。

 

 

 絢斗はふとベカスの方を向いた。

 

「…ベカスさん。護衛の依頼でも受けました?」

「へ?いや、受けてないぞ?そもそもC級の俺が護衛なんて上等な依頼なんて受かられる訳ないだろ」

「ま、まぁそうなんですけど……」

 

『ちょっと待っててください』と絢斗はベカスと少女に背を向け、懐から携帯端末を取り出した。その中のファイルから【世界の重要人物リスト】を開き、その一番上の人物の写真を凝視した。

 

(…やはり似ている。イヤイヤイヤまさかこんなアフリカの砂漠にいる訳がないだろ常識的に考えて――)

 

 絢斗は何度も首を捻った。もし、万が一ここに“居る”と仮定しても彼女―――いや、彼の人がここにいる理由はハッキリ言って“ない”筈だ。

 

(取り敢えず知らぬ存ぜぬを貫いてみせる…?いやもうここはズバッと聞いてしまった方がいいのか…ひとまず、様子見してみるか)

 

 一先ず急に素性を聞くのはまずいかもしれないので、取り敢えずここはベカスに合わせることにした。もしかしたら【護衛任務】じゃないだけで【特務】とかそうゆう“言えない”類の事なのかもしれない可能性がある事を考慮した結果である。

 

「もう一度聞いときますけど、隣のこの子は?」

「だ〜か〜ら。妹だって言ってるだろ?なー」

「えぇ。意地悪で優しいお兄ちゃん?」

(うわぁ〜嘘臭え)

 

 内心でそう思いつつも絶対にそうとは言わなかった。

 

「…取り敢えず補給品。渡しときますね――ベカスさんのBM。燃料は不明だったので調達できませんでしたが、ビームのエネルギーパックや銃弾は補給できましたよ。後家の爪楊枝と北京ダックです。普段からのご愛用ありがとうございます」

「おっサンキュー――っと、ウンウンこの味だ。相変わらずいい味だな」

「どーも。是非日ノ丸まで来て貴方の口から言ってくれ」

 

 ベカスの分を渡し終えると…絢斗はキリリっと顔を引き締め、まるで中世の騎士のように恭しく少女の前にひざまづいた。

 

「猊――君の分だけど、お兄さんの要望通りに、プリンを買って来ました。なるべく良いのを選びましたが…口に合うかどうかはちょっとわかりかねるから、勘弁してね?」

 

 最後に一礼して、自分の上着についた砂を欠片も彼女にこぼす事なく立ち上がった。

 

「…お前ロリコンか?」

「違う!目上――じゃなくて、女性を大切に扱うのは常識だろ!」

 

「あぁもうとにかくどうぞ!」と最初とは打って変わって雑に手渡されたプリンを受け取った少女は、数秒絢斗を不思議そうに見た後フワリと花のように笑い……

 

「ありがとうございます。大切に食べさせてもらいますね?」

「…どういたしまして」

 

 一瞬見惚れた絢斗は我に帰った後雑に返事をすると、そのまま自分のBMへと戻っていった。

 

「…なんかおかしいな。やっぱりロリコンか?」

「多分違うと思うわ」

 

 心底可笑しいと口を緩める少女と、基本的に男女平等な態度で相手に接する後輩に一つの疑惑を持ったベカスは、そのまま盗賊団討伐のためヴァサゴに乗り込んだ。

 


 

☆【遭遇(故意)戦】

 

 太陽は遥か遠くに沈み、すっかり夜の帳が落ちた砂漠。そんな夜に芦名絢斗は機体の上で堂々と仁王立ちして、その手には特大のメガホンが握っていた。

 

『えーゴホンゴホン。マイクテストマイクテスト――大丈夫そうだな。あーコチラ無名のC級傭兵のベカスと著名なA級傭兵の芦名絢斗だ』

『説明に悪意を感じ(ブツリ』

『――気を取り直して、諸君らは包囲(二人)されている。今すぐ武装を即時解除して投降されたし』

 

 端的に言えば盗賊団に対する『降伏要請』である。

 

 絢斗もベカスや少し寄った村の住人から盗賊団の所業は伝え聞いているものの、真正面からドンパチやるのは時間と弾薬の無駄なので避けたいところなのだ(因みに降伏したら降伏したらでしっからと然るべき場所に輸送し然るべき罰を受けてもらう心算である)――という訳で、ロクにしたこともない演説で無血投降を求める絢斗なのだが………………

 

『……………………』

 基地からはゾロゾロと無数のBMが這い出て来た。その機体の手には各々の武器や銃器が握られており、極め付けに絢斗やベカスのコクピットではロックオンの警笛音が鳴り響いていた。

 

『おい絢斗。アチラさんはやる気みたいだぜ?』

『…みたいですね。じゃあ分らせてやりましょう』

 

 茶化すようなベカスの声に答え、目を温和な物から感情が冷めたような乾いた目へ変化させ、滑り落ちるようにラヴァハンマーへと飛び乗った。

 

 スリープ状態だった機体を起こし、火器管制システムを起動。拡散ビーム弾やウィーゼル弾といった主要な武装の弾薬がセットされていることを視認し、ハンドルやフットペダルがキチンとフィットすることを確認した。

 

「じゃあ、溶岩弾で蒸し焼き地獄になると思うけど――悪く思うなよ?」

 

 ラヴァハンマーのツインアイが緑に光り、所々に設置された冷却用の外付けホースから溶岩のような流動体が流れ始め周りの外気温が一気に上昇し、気温の差によって「ジュウウ…」と言う音と共に蒸気が昇る。

 

「ベカスさんは近距離戦をお願いします。俺は中距離でアシストします」

「了解さて―――行くぞ!!」

 

 ベカスのヴァサゴがブースターを一気に吹かし先手必勝とばかりに敵陣へと切り掛かった。

 

「これぞシャナム流――ならず者の剣!!」

 

 動き自体は乱雑だが、流麗な動作で次々と敵を斬り伏せていくベカス。近寄れば剣で、離れていれば銃やビームで、微妙な距離ならブースターで近づいて切るという隙のないキルゾーンを形成していくベカスとヴァサゴ。しかし敵も元を辿れば一国の兵士である。集団行動の「行」ぐらいまでは理解しているようでヴァサゴの背後を取ろうとしたり遠距離での小隊規模による波状攻撃を仕掛けようと動き始める。

 

……が、今の彼は一人ではない。

 

「おーおー相変わらず気持ちの良い暴れっぷりな事で。じゃあ、俺も!」

 

 小隊規模で固まっていた敵が一気に橙色のビーム群に貫かれた。

 

『コクピットは外してやる!』

 

 ラヴァハンマーの主武装の拡散ビーム砲を放ったままグルリと回転。見事に周囲を撃ち抜きながら…しかし宣言通りコクピットには当てず、周囲のBMの大部分を沈黙させた。

 

「さぁまだまだ行くぞー!」

 

 続いて放たれたウィーゼル弾がBMへと降り注いだ。此方もコクピットだけは外していた――本来は追尾性能があるこの弾を機械(オート)に任せるのではなく態々マップやレーダーを駆使し自らの手(マニュアル)で設定し、確実に弾を当てながらも頑なにコクピットだけは外す彼の腕が窺えた。

 

「いい腕してるな!相変わらずで安心したぜ」

「其方こそ!近接戦で一本取れるのはいつになるやら!!」

 

 敵を殲滅する関係上自然と互いをカバーするため背中合わせとなった2機は軽口を交しつつ、確実に撃墜スコアを増やしていった。

 

「あー畜生!これでスコア測定器さえ生きてりゃボーナス間違いなしなのによぉ!!完全にパァだ!」

「壊れてたんですか!?うっしなら数えてたアンタの分俺に加算しときますね!」

「なっ!?おい待てこの野郎!!」

 

 そんなハイスクールで交わされる様な下らない会話をしながらも、彼らの周囲にはBMの残骸と、コクピットから這い出て来たパイロット達が見た己のBMだった物を見た悲鳴で溢れかえっていた。

 

『くそっ!なんだコイツら強ぇ!?』

『散開しろ!白い方のは近接主体だから遠距離から物量で押し潰せ!』

『無理です!遠距離持ちの橙色の方がカバーして――ウギャアアアア!!』

『くそっ!ヴィムがやられた!』

 

 ついに二人はアジト内部へと侵入。変わらずベカスは近接主体。絢斗は遠距離主体で撃滅していった

 

「歯応えがない!地上戦艦とかないのか!!」

「レーダーにそれっぽい反応ありましたよ――っと、そこそこいい機体だ。リーダー格?」

 

 あいもかわらず軽口を交わし合う二人の前にAランク級のBM〈フレンチナイト〉と〈マスケッティア〉が現れた。どちらもバランスが取れたいいBMである。

 

『おいお前ら、なかなか良い機体に乗っているな』

 

 公開回線にて〈フレンチナイト〉側から通信が送られてきた。その声は嗜虐心に満ちており、通信越しでも分かる程度にはゲスな手合いであることが窺えた。

 

「…それはどーも。一応投降してくれると助かるけど?」

『ハッ!何ボケたこと言ってやがる!!――お前のそのBM。俺が使ってやるよ!』

 

 一種の宣戦布告をした後に、フレンチナイトはウァサゴの方へ向かって突進する。

 

「ご指名ですよ。そいつは任せます」

「別にいいが……大丈夫か?そのBM遠距離特化だろ?」

「ハン!舐めないで下さいよCランク?」

「――後で覚えてろよ?」

 

 フレンチナイトの槍による一撃をやり過ごしながらウァサゴは遠く離れていった。

 

「覚えたらってヤツですね。じゃあ、こっちも始めま――おっと!」

 

 ウァサゴとの別れを済ませラヴァハンマーを振り向かせた瞬間、今まで沈黙を保っていたマスケッティアが巨大ナイフを閃かせた。

 危なげなく避け距離を取ると同時に拡散ビームを放つが、遺跡跡と思われる柱を蹴り三次元的な動きで回避された。

 

「やるな!どうやらリーダー格なのは当たりみたいだ!」

 

 そう言いつつも、切り掛かってきたマスケッティアの斬撃を嘲るように踊るような動作で回避する。そして“徐々に溶けて行く相手の装甲”を視界の端に納めながらも拡散ビーム砲を発射する。

 

「このBMは特別でな!周囲に高熱を発し続けるから、早めの投降を勧める!!」

『………その気は、ない!』

 

 ビームの間を縫うように避けるマスケッティアが、オプション装備なのか腰のホルスターから取り出したハンドキャノンを向け不意に発砲する。

 

 バ ガ ン ! ! !

 

 音だけで威力を察せられる程の轟音と共にBMの親指大の巨大な弾丸が迫る。

 

「ヒュウー!いいもん持ってるなァ!?」

 

 絢斗もただ馬鹿正直に喰らうわけにもいかないので、左腕の装甲を弾丸へ差し出す形で受け流し無事弾を弾いた。

 しかし当たれば高ランクBMでも胸板に風穴が開く事必死の弾丸を受けたまるっきり無事とはいかず、まるで肩が脱臼したかのようにラヴァハンマーの腕が七割方滑落した。

 

「チッ!このBM高いんだぞ!!」

 

 そう愚痴るとラヴァハンマーの破損した腕を鞭の様にしならせ、至近距離故避けようのなかったマスケッティアに打つける。元は破損していると言えど高ランクBM特有の超装甲は伊達ではなく、バガッシャンと派手な音を散らし内部フレームのいくつかを打ち壊し吹っ飛んでいった。

 

「――これなら修理するより新しいパーツ買った方が安いか」

 

 ケーブルや電子基板が剥け出しになり激しく火花を散らせる腕を見ると、絢斗は特に躊躇いもなく腕のパーツをパージさせ、隻腕となったラヴァハンマーで構えを取る。

 目には砂煙しか見えなくとも、そのレーダーには未だ敵機の反応が残っているのだ。時折よそ見をし両腕分のエネルギーを右腕一本に集約させ、威力と充填速度を向上させる。

 

「………………そこ!」

 

 微かに知覚した不確かなナニカを頼りに、拡散ビーム砲を向け発射する。すると、砂煙から飛び出してきたマスケッティアの装甲を、少し貫く。

 

『ッ!?ウォォォォォ!!』

 

 自身の気配と期待の稼働率を下げての奇襲を呆気なく打ち破られ瞠目するマスケッティアのパイロットだが、即座に切り替え両腕の大形ナイフを突き出しブースター全開で突貫する。自分のBMの耐久値がダンチである事から次の一撃が最後のものだからという事と、絢斗の乗るラヴァハンマーに一切の近距離武装が付いてない事から遠距離よりも近距離の方が勝率の高いといった二つのことから、彼は「至近距離からのナイフ突き刺し」という実質カミカゼアタックに踏み込んだ。

 

「ッ………」

 

 一見愚かにも見えるが実際この攻撃はかなり有効である。元々ラヴァハンマーは重厚な装甲と強力な遠距離武装にものを言わせた一対多数の掃討戦を得手とする機体で、前述の通りこのBMには近接戦用のコンバットナイフ一本すら持っていない。詰まるところ絢斗がこの攻撃を避けるには自壊覚悟でオーバーバーストするか、達人級の技量を会得してカウンターの投げ技を極めるか…それこそ、機体を瞬時に乗り換えるぐらいしかないだろう。

 極限の状況下から。マスケッティアのパイロットの視界は色素が抜け灰色に染まり、BMの機動からメインカメラから流れる小石の一つ一つを視認できる程のスローモーションな――所謂《ゾーン》の様な感覚に陥っていた。

 そんな視界の中ではマスケッティアの大型ナイフが徐々に敵機のラヴァハンマーへと向かっていくところをハッキリと見ていた。パイロットの脳内にインプットされたラヴァハンマーのデータから、この一撃を回避することは不可能だと判断しニヤリと口を歪めた。

 

「………っ!《チェンジ》!!」

 

 そう思った瞬間。

 

 

 

 

 

 

 マスケッティアのパイロットの視界からラヴァハンマーがのマッシブな白と橙色の装甲が一瞬で視界から突如として掻き消え、次いで現れた〈赤と白にカラーリングされ〉、ラヴァハンマーとは違いどこか女性的な印象を与える腕が現れて――――――

 

「ハァァァァァ!!!」

 

 烈火の如き雄叫びと共に、優麗な装飾のなされた〈騎士片手剣〉がマスケッティアに向かって袈裟懸けに振るわれる。

 

『な……アァ!?』

 

 見事に上半身と下半身が真っ二つに別れたマスケッティアと、今し方起きた現象が理解出来ないパイロットはその視界とレーダーに『今まで戦っていた機体とは全く別のBM』を映しながら爆散した。

 

「……はぁ」

 

 剣を振るった姿勢のまま固まっていた紅の機体――近中距離特化BM【ガラハッド】*1と絢斗は残心を解き、その手に握られた〈騎士片手剣〉を勢い良く地面に突き刺す。

 

「格下相手とはいえ、油断しすぎたな…おれもまだまだ甘いってことか」

 

 そう絢斗――【一人千色(ワン・オブ・サウザント)】の芦名絢斗は、静かにため息を吐き、己の反省点を自覚した。

*1
ご存知アイサガ内で一時代を築いた罪深き機体。一定の時期見なかった日がない程のアリーナ採用率を誇った通称【ガラハゲ】




次の話は一応出来上がってるので近いうちに投稿します。
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