☆【次なる戦い】
「…で、その撤退戦の支援に俺も参加しろと?」
カイロ郊外の廃墟で絢斗はそう独言を言う……状況を説明すると、連盟軍の切り札〈アヌビス〉の主砲【ジャスティス】の粛清という名の蹂躙に晒されたワカ軍。一撃で軍の過半数以上を消し飛ばされ、逆転したことによって彼我の戦力差にて当然の様に敗北した。
彼ら――というか生き残った戦艦とその部隊は当然自軍の首都〈カイロ〉へと向かうのだが、当然それを連盟軍が見逃すはずなく。現在彼らは連盟軍の追撃を受けている。
その連絡を受け取ったワカ軍部だが、彼らはコレを【罠】だと考えた。今一番彼らが恐れている事は総力が結集したカイロの戦力を上記の友軍への支援などによって分散され、その隙に首都を陥落させられる事である。
これは困ったとワカ軍部の将校達は頭を覆った。このまま馬鹿正直に救援に行くのは下策……しかし友軍を助けないというのは以ての外だ。下手すると兵士や国民の士気が下がりかねない。
ではどうするか。自軍から戦力は出せないが友軍は助けなければいけない。そこで将校達は思い付いた―――ワカ軍から出せないなら、他所から持って来ればいいと。
そこで発注されたのが前回のカルシェンの言っていた「グッドニュース」の内容だ。
内容は孤立し現在敵の攻撃を受けている戦艦の支援及び、その指揮官の保護。成功報酬は破格の50万ゴールドである。
しかしその報酬金の高さは依頼の難易度を表すように、依頼内容を要約すると「死地に飛び込んで木偶の坊の味方を死守しろ」という内容である…これはヒドイ。こんなのを受けるのは余程
……後者はともかく、前者は絢斗に覚えのある人物が確実にカテゴライズされているだろう。
「まぁ依頼主からも「依頼中に別の依頼受けちゃダメ」とは言われてないが」
絢斗は先程までカルシェンと通話をしていた携帯端末を操作。チャットアプリを起動しその中から〈黒ウサギの代弁者〉さんとの個人チャットを開く。チャットの内容は基本的に絢斗が集めた情報を提供し、それに対して『うむ』『そうか』とスロカイが簡潔に答えるというほぼ一方通行的なものとなっていたが、その中でも会話の様相を成していた数少ないものの一つの内容は、こんな感じだった。
絢:『質問いいか?』
ス:『よい。なんだ?』
絢:『…依頼を受けている最中に別の依頼を受けてもいいか?』
ス:『余が依頼したアレに支障が無ければ構わぬ』
絢:『了解。あと今回は裏路地の奴らから
ス:『成る程…残念だがこちらも目ぼしい情報はなかった。お互い無駄足だったというわけか』
絢:『……すみません』
ス:『よい。互いに根気強く続けるとしよう』
絢:『了解です。頑張りましょう!』
ここでチャット終了。
「……まぁ、情報集めで鈍った体を解すには丁度いいか」
そう言うと絢斗は
暫く歩かせスピードがのった瞬間。彼は機体を浮かし、一気に天へ飛び出す。
「よし…行くよ!」
蒼い流星が冷気を振り撒きながら、灼熱の空を横断した。
☆【流星推参】
「クソォ!漸く援軍が来たかと思えば、BMがたったの二機とか軍部は我らを見捨てたのか!?」
時間と場所が変わって敵に追撃を受けているナイル第7師団旗艦内部。指揮を執る長官ノリスは、そう悪態を吐いた。
彼の直ぐ近くに設置されていたレーダーには、自分が搭乗する陸上戦艦とつい先程救援に駆け付けた傭兵達が駆るBMを表す三つの青い光点。そしてそこからこちらを包囲する様に展開された範囲一杯の赤い光点。つまるところ敵さん方である。
救援の傭兵達はそこそこ腕がたつらしく、登場から暫くたった今尚もペースを落とす事なく赤点と接触しては消し去っているが…それでも彼らが敵を撃破するペースよりも新たな敵が出現するペースの方が速い。このまま彼らが物量に押し潰されてしまうのも時間の問題の様に感じられた。
「〜〜〜ッ!!ここで死ぬのは御免だぞ!?他の救援は『じゃあ一名追加で』…なっ!?」
癇癪を起こしていたノリスは、再び救援の有無を確かめようとした瞬間…スピーカー越しに若い男の声が司令室に響き渡った。直後司令室のメインモニターが突如として砂嵐を吐き始め、鮮明になったと思ったらそこには赤髪紫眼の男の姿があった、
『ん…ヨシっと。聞こえますか?見えてますか?』
「だ、誰だ貴様はっ!」
突然スピーカーとモニターがジャックされ、更にはその下手人と思われる男に向かって、ノリスは指を刺しながら糾弾する。内心「敵からの降伏要請か!」と思うが、それにしては気楽な様子の男は綽綽と話し始めた
『アレ?知ってる人いないのか……取り敢えずこうゆうものです』
そう言い、モニターの眼前に首から掛けられたカードを翳す。底には映像の乱れで少々読みにくいが、【OATHカンパニー所属・ランク〈AA〉芦名絢斗】と書かれていた。
「なっ…!」
『見ての通り、これでも傭兵です。介入しますけど……いいですよね?』
「あ、あぁ構わない。報酬は…」
『後で貰います。今は前方の味方二人を援護してきます』
言うないやなモニターが「プツンッ」と言う音と共に消え。戦艦の後方から急速に接近する青い光点が表示され、驚くべきスピードでレーダーの中心――つまりは陸上戦艦の上で停止した。
「っ……!」
思わずノリスは陸上戦艦の強化ガラス製の天窓から、こちらを燦然と照らす太陽を見上げる。すると、太陽を遮る様に一体のBMが姿を見せる。青と白が特徴的なそのBMをもっとよく観察しようと目を凝らすが―――
『…………………』
――直後、窓に
「……!霜だと?この砂漠で!?」
そうノリスが言葉を溢した瞬間。
ズキュゥゥン!
敵の戦車群に向かって、巨大な電撃――長距離陽電子砲*1が炸裂した。当然その威力によって砂埃が発生し、周囲一帯の視認が不可能となる。
間髪入れず二発、三発と続けて陽電子砲が放たれ、再び砂漠の砂が舞い上がる。
「て、敵勢力!今の砲撃で約二割が反応
「すごい…たった一瞬で…!」
「武器が強力だったものありますけど、的確に相手の集団を撃ち抜いてます!」
クルーや観測員達が感嘆の声を上げながら、彼の戦果を報告する。
「………えぇ?」
未だに衝撃抜け切れぬノリスだが、そんな彼を置いていくように事態はさらに動いていく。
陸上戦艦の上部から飛び出す様に飛び出た白と青が混じった蒼いアフターバーナーを引きながら、これまた蒼いBMが砂埃へと飛び込んでいった。
――now loading…――
「ウォラッシャァァアア!!」
色々と台無しな雄叫びを上げながら、絢斗は青いBM…汎用性の高いA級BM【フレンチナイト】シリーズの遠距離戦用試作機。凍結特化の【プルシアンブルースター】を操り、一人戦場に飛び込み武力介入を行なっていた。正確には彼一人ではなく味方もいるが、突入時は彼一人なので問題ない〈コマケェコタァイインダヨ!
敵の戦車へと近づくと、その戦車は一人でに凍り付き始める。その隙を逃さず絢斗はプルシアンブルースターを前方へ急発進。唯一の近距離武器【スパイラルスピア】を以てして騎馬兵の如く突撃、貫通させた。
しかし敵を倒し残心する間も無く他の敵からの砲撃が降り注ぐ。急いで着弾予測位置から離れ自分よりも先に戦っていたBM…ベカスとウォサゴのコンビと合流する。
「…ノリで突入してみたけどこの機体遠距離支援機体だから来ない方が良かったかもしれません!!」
「じゃあなんで来たんだお前!!?」
冷静に己の技量と搭乗BMの相性と彼我の戦略差を見極め、結果「突入なんてアホな事せずに作戦開始地点から動かずに狙撃してる方が良い」という結論を出した絢斗と、それに思わずツッコミを入れるベカス。相変わらず呑気な会話を交わす二人だが、手元と目線だけは忙しなく動いており次々とキルスコアを重ねていった。
「チッ!ブレイクパルス!!」
「螺旋射撃!!」
ウァサゴが胸の装甲を展開させその奥から現れた大型のビーム砲がニョキッと顔を出し、そこから発射されたビームが敵をなぎ払う。プルシアンブルースターは敵を槍で突き刺すと、内蔵型の実弾銃が炸裂。ゼロ距離からの攻撃を以て敵を粉々にした。
(長距離陽電子砲はさっきの狙撃で
戦闘をこなしつつもチラリと横目で各種バロメーターを確認し各武装の状況を確認しながらも、槍で突いては離脱し銃撃しては相手の攻撃を避けウァサゴを囮にしては斬りかかられたりしたりしつつも、着々と敵の残骸を増やしていく。
「へぇ。やるじゃないか!どうやらお前は、そんじょそこらの雑魚とは違うみたいだな〜」
敵の頭上を飛び越えその瞬間に下の敵を斬り付け撃破。周りの敵を上空からの“360度ミサイル斉射”で牽制をするという曲芸じみた行動をとっていると、敵を一切寄せ付けない圧倒的な格闘能力で敵を撲殺するAランクBM【アキレス】から
(確か、名前はえーりん*2……もとい“英麒”だったな)
あの時はその傲慢な態度とソレが全面に発揮された行動(実際彼の態度に苛立った傭兵たちと英麒の乱闘騒ぎが起こっていた)に、正直悪感情を抱いていたが、今は頼もしき味方の一人。ここは手を取るべきだと絢斗は判断した。
それに、今彼が搭乗しているアキレスは絢斗にとっても思い入れのある機体である。絢斗がBランクに昇進した際のボーナスで初めて購入したAランクBMであり、その豊富な遠距離武装と堅い装甲に何度と助けられてきた思い出深いBMであった。
「…【アキレス】はいい機体だよな!」
「……?」
「豊富な飛び道具に優れた運動性。更には高コストパフォーマンスっていうのもいい「何言ってんだオマエ」……ぇ?」
「この雑魚BMに乗ってるのはただ単に俺が手に入れられる範囲でコイツが“一番マシ”だったからだ。もっといいのがあったら絶対にこんなの乗らねぇ……よ!!」
そう言うや否や背後から忍び寄っていたC級BMを、神速の裏拳で迎撃する。しかしその腕は主人の無茶な操作に無理やり応えたためフレームから火花が散っており、確かに英麒の言う通り彼からしたらアキレスは不足にすぎるのだろう。
(………やっぱコイツ嫌いだわ)
人への認識は滅多に変わらないという事を学んだ絢斗は、再装填の終わった長距離陽電子砲を構え、アキレス――の背後にいたBM小隊へ向けて発射する。
「雑魚なら当たってたかもな!」
英麒は自身へ向けて放たれたそれに驚く事なく、ひらりと舞うように陽電子砲を避け見事絢斗本来の標的へと着弾させた。
「ッチ」
狙い通りと言えば狙い通りだが、
(敵は戦車と下級BMが数十体…でも練度はそこまで大したことない。少なく共俺たちなら一対一で確実に確殺出来る程度……だが)
ふとコクピット内で『熱源反応接近中』という音声と共にアラート音が鳴り響く。すぐ様回避行動を取ると、ブルースターのすく側から、ブルースターの持つ長距離陽電子砲を上まわる威力のビーム…軍事企業【地中海複合企業】で最も有名かつ最も威力が高いと噂の爆射武装【ギガ破壊砲】が通り過ぎた。因みに発射したのはAランク戦車【センチピートル】である。
「……乱戦中にギガ破壊砲ぶっ放すとか正気か!?」
絢斗が避けたギガ破壊砲のビームが、僚機である筈のハンマーシリーズやラピスラズリシリーズを武器名通り“破壊”していく様を見て、思わず絢斗は思わず瞠目した。
(…これだ。乱戦中不意に飛んでくる【ギガ破壊砲】!!いったいいつから反ワカ軍達は【ジャスティス】といい【ギガ破壊砲】といい前時代じみた大艦巨砲主義者共の巣窟になったんだ!)
乱戦という特殊状況と、それに拍車を掛けるように次々と発射される破壊光線に苛立ちを覚えながらも、それらを無理やり押さえつけ考えを纏め始める。
(ギガ破壊砲の長所は間違いなく絶大なその威力だが、対する欠点はリロード時間の長さとギガ破壊砲搭載機には
……そう、現存する“戦車やBMに搭載可能な範囲での武装”ではトップクラスの威力を誇る*3【ギガ破壊砲】だが、それには威力に見合うほどの長大なチャージ時間。そして何よりなぜ着けていないのかと小一時間程度問い詰めたくなるが、ギガ破壊砲には発射時の
事実絢斗が先程避けたギガ破壊砲も、当初は
(となれば狙い目はその命中率の低さとそのリロード時間の長さ!幸い足の遅い奴はいないからいける!!)
「ベカスさんと英麒はそのまま前衛貼ってください!俺は後方から敵の動きを見てます!」
「そう言って。楽な場所につこうとか考えてないだろうな?」
「……じゃあテメェロクな狙撃武器がないBMで俺と交代するか?」
「喧嘩するな二人とも…とりあえず了解だ!
「ッチ。指示させるのは嫌いなんだけどなァ」
絢斗が指示を出すとこれまでの関係ゆえに即座に従うベカスと、不満ありげな様子を見せながらも少なからず認めているベカスに諭される形で英麒が
「ヨシ!配置につきました…状況開始!」
「了解!」「オウよ!」
プルシアンブルースターから発射された数十発の冷凍ミサイルから発せられた「シュポポポポ!」という少々情けない音を皮切りに、野郎三人組の共同戦線が幕を開けた。
「…ッ!前方に高熱反応!【ギガ破壊砲】発射準備と予測。回避しろ!」
「サンキュー!」
ベカスが警告された範囲からヴァサゴを除けさせ、絢斗も射線に入っていたのでそれに続くようにプルシアンブルースターを離脱させる。瞬間今回十五発目となる【ギガ破壊砲】が放たれ、周囲の地形を粉々に吹き飛ばした。
「なんか今のヤツ今までのよりデカくなかったかッ?」
「データ照合――ッSSSランク戦車【ビートルキング】!?ワンオフとは言わないけどいいモノ乗ってますね!」
「是非俺のと交換して欲しい…なっ!」
一際広い範囲で放たれたギガ破壊砲に冷や汗を流す絢斗とベカス。そして運良く範囲外にいたため気にせず暴れ続ける英麒の三人の視線の先には、これまでの戦車やBMとは一線を画す大きさの、金や黒で配色された
「反ワカ連盟の黒い重戦車!?」
「――傭兵よ。なぜお前は自信に関係のない戦いに介入する?」
そんな時目の前の戦車から絢斗とベカスへ向けて音声通信が開き、そこから若い男の声が聞こえてきた。信心深くもありながら、内に確固たる“自分”を持っていると確信させる声は、二人に僅かな威圧感を感じさせた。
「…それが、俺の仕事なんでな」
「「金の奴隷」⋯哀れなものだ。アマ神の使者としてお前を主の元へ送ろう。そこで犯した罪を悔い改めるがいい」
ベカスの身も蓋もない様な明け透けな回答に、失望したかの様にその青年……バーブは先の言葉を実行させるためビートルキングの砲身をゆっくりと絢斗達の方へと向け始めた。
「ちょっと待て!俺もベカスさんと同じような扱いにされちゃ沽券に関わる!?」
「それはどうゆうことだテメェ!」
――の前に、バッとベカスの前に手を大きく振り前述の台詞を絢斗が言った。その余りにもあんまりな台詞にベカスは思わず抗議しようとウァサゴを操りプルシアンブルースターに掴みかかろうとするが、それを器用に避けて見せる絢斗。
「そういえば聞いていなかったな。いいだろう――――よそ者よ。なぜ自分とは関わりのない戦場に参加した?」
「……金の為とか名誉の為とか、後は世のため人のため!!」
「…つまりは、先程の男と似たような理由「それもあるけれど!」…ッ?」
「何よりも、俺を助けてくれた
そう、堂々と啖呵を切ってみせた。
「そうか」
「…そうだ!」
「……子供っぽいって言われたことはないか?」
「沢山ある!だけど直す気はない!(開き直り)」
二、三回ほど言葉を交わした後。バーブは困惑したように数秒間黙ると、ふと気付いた事を口に出した。
「因みにだが、今の会話中に俺の【ギガ破壊砲】の再装填が完了した」
「「えっ」」
「『騙して悪いが』…というヤツだ。さっきの問答も、俺からしたら時間稼ぎに過ぎなかった」
「…だが、存外いいモノを聞けたからな。君達にはせめてもの気持ちで申告させてもらった」
「「………………」」
「神に祈る覚悟はできたか?」
その
「出来てる訳ないですよっ!!」
「暫くあの世に行く気はない!」
発射されたギガ破壊砲を見て瞬時に覚悟を決めた二人は、いつぞやのように互いに反対側へと飛び出す。しかし今回撃破すべき目標は同じなため、二手に別れビートルキングへと迫る。
発射に対する抑制機構が付けられていないギガ破壊砲。そしてそれは最上戦車【ビートルキング】も例外ではない。
「ウオッ!?」
しかしベカスが瞬時の判断を見誤り、一瞬だがギガ破壊砲がウァサゴのシールドに擦りその衝撃で
「ベカス!?」
「気にするな!いいからお前は前向いて走れ!」
「…了解!!」
吹き飛んでいくウァサゴの行き先を辿ろうとしたが、当の本人から“俺はいいから先に行け”と言われたので、絢斗は再び前を向き機体を前進させる。
たが心機一転と進み出した絢斗の目の前からは、運悪く絢斗がいる方向へと薙ぎ払われるギガ破壊砲だった。
「シィィィィイ!!?」
口から奇声を発しながらも、幾つもの修羅場を潜ってきた絢斗の本能が手を動かし機体を操る。プルシアンブルースターの四肢が躍動し、陸上競技の背面飛びのような綺麗な跳躍を見せスレスレでギガ破壊砲を回避する。
しかし危機が去ったのはその一瞬のみ、地球の重力に引かれプルシアンブルースターは徐々に下へ落ちていく。
「飛べぇぇぇぇ!!」
――だがそこで諦めたらもれなくギガ破壊砲の餌食となるため、そんなのはゴメンだと奮起した絢斗はプルシアンブルースターに対し【思い切りブースターを吹かせ】と指示を下し。それに呼応したプルシアンブルースターのスラスターが火を吹き、その巨体を押し上げる。
「〜〜〜ッ!!」
急制動と重力に逆らった故のGを直に感じながら数メートル先のビートルキングをしっかりと見据えていた。
ちょっとでも手元が狂えば光と化す一種のチキンレースは、勇気と覚悟。それとほんのちょっぴりの狂気を持って制した絢斗に軍配が上がった。
「――これでッ!」
「なんだと!?」
ジャンプしてからビートルキングに到達するまでの間、ちょうど綺麗に縦一回転し(結果的には)華麗にギガ破壊砲を避けてみせた絢斗はその手に持っていた長距離陽電子砲を片手に持ち、刹那の瞬間に狙いを定め発射する――しかし。
「クソ!副砲か!!」
「ッ…九死に一生を得た。というところか」
主砲を撃ち抜くはずだったその攻撃は、刹那故の
(だけど、コレでギガ破壊砲は乗り切った!後はそのままもう一回撃ち込めば――ッ!?)
『【ギガ破壊砲】には長大な
(嘘だろオイ!?コンバット・ハイになって時間感覚が多少狂ってたとは思うけどそれでもあり得ないはず!)
「…安心しろ。何もお前が時間を誤っていた訳ではない」
「え?………まさかお前ッ!?」
――――余談だが、【ギガ破壊砲】搭載機にはこんな但し書きがある。
『本機に搭載されている【ギガ破壊砲】は我が社の技術の
『威力、射程共に世界最高クラスのものだと自負しておりますが。ついては使用にあたり次の事を絶対にしないで下さい』
『1.【ギガ破壊砲】と本機のオプション装備以外の武装を搭載しない(下手に
『2.【ギガ破壊砲】にて発生した被害を我ら『地中海複合企業』のせいにしない』
『3.【ギガ破壊砲】の
『以上の事を踏まえて使用すれば、本機は貴方に多大なる戦果を約束します。それでは、良い戦闘を
「まさか……自爆する気か!?」
「そのまさかだ…お前のような一流の戦士を俺一人の魂で奪えるというのなら、有り難い!」
「……巫山戯んな!!」
急いで離脱しようとするが、つい先程までビートルキングへ向かって突貫していたプルシアンブルースターは簡単には止まらず、未だに徐々に近づいてしまっていた。すわ万事休すかと思い。咄嗟に目を瞑った絢斗だったが……
「――人の後輩を、心中相手にするな!」
そんな時…上空に打ち上げられた後
いつの間にかバーブの死角へと忍び寄っていたウァサゴの実体剣が爛々と輝く。
「なにっ?」
「美味いトコ貰っていくようで悪いが…これでトドメだ!!」
その際、バーブは灰色になった視界ではっきりと見る事が出来た。
目の前の状況が未だ飲み込めず、呆然とした表情の絢斗。
自分を討ち取る歓喜か、それとも言葉通り自分の後輩を命の危機に瀕しさせた怒りによって目を怪しく輝かせるベカス。
そして、自分に向かってゆっくりと、されど確実に迫る実体剣。
(…どうやら。ここまでらしい)
バーブがとった最後の行動は、苦し紛れの回避でも、道連れの為の攻撃でもなく。自身が信じる真なる神に祈りを捧げることだった。
(あぁ神よ……今御許へ向かいます)
迫る実体剣を最後まで見ることなく静かに目を閉じたバーブ。
「ここだけの話。原作キャラを殺す様な覚悟はないんだよね」
「させるかぁァァァァァ!!!」
「なに!?」
今まさにバーブのビートルキングにウァサゴの実体剣が突き刺さりそうになった時。つい先程まで英麒と戦っていたはずの女性パイロット【トゥヤ】の駆るセンチピートルによる突進が、ウァサゴに直撃。
「ウォォォォォ!?」
「えっちょっと待っ――ゴハッ!?」
弾き飛ばされたウァサゴに、ピンポンボールの様な形で追突されたプルシアンブルースター。両者もろとも砂漠の上でゴロゴロ転がりながら数十メートル程まで飛んでいった。
「ウゴゴゴ――英麒はどうした!?」
「知りませんよ!やられたんじゃないですかッ!」
「馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ」
声が聞こえてきた方向にベカス達がバッと振り向くと、そこには岩の上で悠々と佇むアキレスと英麒の姿が――!
「……裏切りか?」
「違う。俺はただ単に
「………………」
怒り半分呆れ半分といった感情のベカスと、喚き怒り散らすことはしなかったが静かに長距離陽電子砲をアキレスに向け始める絢斗。
「トゥヤ。今のうちに撤退しよう」
「……そうね。私も同感だわ」
味方同士で火花を散らす三人を尻目に、撤退のチャンスだと判断したバーブとトゥヤは、撃破対象の陸上戦艦が遥か遠くへ行ってしまったこととこれ以上の消耗は下策という事を理由とし、さっさと撤退していった。
「イイ度胸だゴラァ!!そんなに喧嘩がしたいんなら付き合ってやる!ベカスさん【デュエル】開始の宣言をォ!!!」
「おっ。たかが雑魚を脱却したばかりの奴が俺に敵うとでも?」
「おい絢斗落ち着け――」
「敵うか敵わないかを決めるのはお前じゃない俺だぁ!!
ふと振り向いたトゥヤが最後に見たのは、太陽を背にアキレスへと飛び掛かるプルシアンブルースターと、それに対し軽く構えるアキレスという。なんとも言えない光景だった。
自分は一体、何を書きたかったんだろう……?
あと誤解のないよう言っておきますが原作は英麒くんはそこまで悪い子じゃありません。ちょっと我儘で横暴でジャイアリズム患っているだけのイイ子なんです!