(副音声:見切り発車の弊害)
☆【割り切れる事】
「ハー……機体性能の差で勝ったようなようなもんだよアレじゃ」
「……………」
「親父〜。ビールもう一杯〜」
何時ぞやの酒場では、苛つきながらテーブルを突く芦名絢斗と、剣山のような殺気を隠す事なく発し続ける英麒。そして呑気に酒を呷るベカスの姿があった。三人とも発している気配はそれぞれであり、特に絢斗と英麒は今すぐにでも立ち上がって殴り合いを開始しそうなほどに険悪だった。
一重に今二人が同じテーブルにつき形式上一杯やれてるのは、「俺が出すから」と二人を強引に酒場へ連れ込んだベカスの実績に他ならない。
あの後指揮官ノリスが駆る陸上戦艦にて合流した三人(この時すでに絢斗と英麒は険悪な雰囲気となっていた)は、約束の50万ゴールドの報酬金と、先の戦いで見せた実力を買われ。反ワカ連合軍の事実上最強戦力【十二巨神 アヌビス】と、その適合パイロット【アヌビスの花嫁 ナディア】の暗殺任務だった。金に困窮していたベカスと、憂さ晴らしがまだ済んでいなかった英麒はこれを快諾。唯一渋った絢斗も、ノリスからの熱い説得と報酬金とは別口で用意された「国を挙げての情報捜査」という今の絢斗からしたら美味しすぎる報酬を吊り下げられ、了承した。
「作戦内容はそちらに任せる」という言葉とともに解散させられたベカス達は、今こうして前述の酒場にいた。
「たのもー!……ヒェ!?」
そんな時酒場の扉をバタン!と開き、幼さが残る顔立ちの少女が入ってくる…が、酒場の中央にて苛立ちと殺気を撒き散らす絢斗と英麒の迫力に、思わず変な声を出した。
しかしそれを笑う人間はいなかった。というか険悪な雰囲気の絢斗と英麒(ついでにベカス)を揶揄う奴はもれなく地面のシミとなるか壁の装飾と化していたのだ。今も酒場で酒を飲んでいたのは、シンプルに酒を飲みにきた一般人と三人の実力に気づいた賢い奴らだけだった。
「え、えぇ?……あ、いた!」
困惑を隠せず狼狽る少女だったが、それでも己の目標を忘れずにこの酒場内に居るはずの【ターゲット】を探し、発見した。
少女はツカツカと
「ついに見つけたわよ。英麒!」
「…………あ゛ぁ゛?」
英麒は最初自分が指差されていることに気付かず、ベカスからの視線にて漸く少女が自分に用事があるのだと認識し……虫の居所が悪かっため普段より数段ドスの効いた声を出した。
「………」
「んだオマエ?俺になんか用かよ」
少々瞳に涙を浮かべているかのように見えなくもない少女が黙り始めた事に英麒も怪しみだすが、少女は尚黙っていた。
「……ねえちょっと」
「ヒャイ!?な、何よ…?」
さすがに見かねた絢斗が軽く少女を小突くと、漸く
「取り敢えず。アイツ…英麒に用事があるんだよね?言わなくてイイのか?」
「そ、そうね。そうだったわ…」
「コホン!」と気を取り直した少女は、再び英麒へ指を突き出した。
「英麒!アンタにはシチリア島のマイク兄弟から懸賞金100万を出されているのよ。表に出なさい!!」
「マイク兄弟ぃ?……あぁマフィアの?思ったよりケチなんだな」
殺気が幾らか霧散した英麒は、それだけ言うと席から立ち上がった。
「で、お前が俺を捕まえにきた賞金稼ぎってか?生憎とガキを相手するシュミはなくてな〜」
「な、なんですって!?何がガキよ!!」
その後口論を続ける英麒とシャロを見つつ、絢斗はそそくさとベカスへ顔を近づけ話し掛ける。
「ベカスさん知ってます?喧嘩って同レベルの存在でしか起こらないらしいですよ」
「…何が言いたいんだ?」
「分かるでしょう?」
「ニコォ…」という擬音がつきそうなアルカイックスマイルを見せる絢斗に対し、内心「だがそれに当て嵌めると英麒と喧嘩してたコイツは…いやよそう」と己の考えを握り潰した。
そうこうしていたら遂に怒りのボルテージが怒髪天へ到達したシャロが「表に出ろ!(意訳)」と英麒へと言い放ち、それに対して英麒が「今ちょっと機嫌悪いからやり過ぎても文句言うなよ?(直喩)」と返し、二人揃って酒場の外へ出て行った。
「俺たちも行くぞ」
「ですね。是非ともアイツには負けて欲しいですが…難しそうだ」
そう言い二人とも英麒達について行く形で酒場を出ようとしたが、そんな二人を「待てよお二人さん」という野太い声が引き留めた。
「なんだマスター?金なら前払いで済ませただろ」
「…酒代はな。この状況はどう収集つけるんだ?」
「あー……」
酒場のマスターが親指で数カ所の地面を指差す。そこには絢斗達に喧嘩を売った挙句ものの見事に返り討ちにあった傭兵崩れや荒くれ者の体と、その戦闘によって破損したテーブルや壁があった。
「…ここは俺が払っときます。元を辿れば原因は俺ですし」
「そうか?よし頼んだ!」
街中でのBMバトルは勿論御法度のため、カイロ郊外へと行った二人を追うため駆け足で店を出たベカスと、「……現金だと今持ち合わせないので、カードでいいですか?あの人達は適当に裏路地に捨てとくんで」と申し訳なさげに財布を開く絢斗の姿は、ひどく対照的に見えた。
☆【出自】
「まぁそんなに気にしない方がいいよ?引き摺り過ぎると仕事に影響出ちゃうし」
「そんな事は分かってるけど…ウッ〜!」
カイロからしばらく離れた遺跡群では、現在【ヴァサゴ】VS【アキレス】の【花嫁の暗殺】を賭けた【デュエル】*1が行われていた。因みに現在はアキレスに剣を蹴り飛ばされたヴァサゴがアキレスへ向かって強烈な右フックを喰らわせ、ベカスが一歩リードと言ったところである。
近接型(尚一方は本来遠距離型)のBM二体が至近距離で殴り合うというなんとも泥臭い戦いの脇で、銀行の預金残高ぎ少し軽くなった絢斗と、英麒との戦いにて敗れてしまったシャロが二人揃って端のベンチにて二人のデュエルを見物していた。
「うぅ…やっぱり遠距離一辺倒じゃダメなのかなぁ」
「…いや正直あの二人が異常なだけで並の賞金首なら君の腕で十分だよ?」
因みにこれは依怙贔屓無しの感想だ。シャロの近接戦闘は確かに甘いところも見受けられる程度だっだが、逆に遠距離戦は稀に絢斗を唸らせる程の冴えを見せる機会があった。特に終盤でのネット弾によるアキレスの拘束からの一斉射撃は手に汗握る程の迫力だった――まあその後亀甲の構えにて防ぎきったアキレスの反撃によって決着していたが――その為、英麒の様な【例外】を相手にしない限りは問題ないと絢斗は言ったが…………
「あ、あたいは“並”じゃイヤ!」
強い意志をもってそう言ったシャロは、背中に背負ったカーキ色のリュックサックから…大分読み古されたのであろうそこそこ大きな本を取り出した。
「この本知ってる!?」
「…題名だけなら、確か【伝説のハンターの冒険記】」
「あたいはこの中のハンターみたいな超一流の賞金稼ぎになりたいんだ!だから“並”じゃダメなの!!」
「へぇ〜…まっ目標があるのはいい事だよ。じゃあ成長する為にも、目の前の戦いを見ようか。“超一流”とはいかないけど、あの人達は間違いなく“一流”だ」
「もっちろん!……あれ?貴方は?」
「…俺はちょっと違うかな」
「でもでも、貴方のこと雑誌とかで見たことあるわよ?【
「うーん…まぁ、その通りなんだけど」
どこか困り気味に、そして後ろめたそうに後頭部を掻く絢斗は――徐に右手首を見遣る。
「………?」
その動作に疑問を感じたシャロは、絢斗の視線を追うように彼の右手首を見るがそこには何らかの物体はおろかタトゥーやリストバンドの類もなく。ごく一般的な手首がそこにあった。
(いや…よくよく見るとなんか
ナニに対して疑問を抱いたのかは分からなかったシャロだが、幼さ故の好奇心でそろそろと絢斗と右手の手を伸ばそうとするが………
「ん…そろそろ決着だ。最後ぐらいはちゃんと見よう」
そう言う服を捲り再び袖の中へ手首を隠し、姿勢を整えた。
「…………むー!」
「ゴメン。こればっかりは軽く言えるような事じゃないから」
申し訳なさそうに片目を瞑りウィンクすると、ドローンや携帯地雷で逃げ道を防いだウァサゴの強烈な勢いのコークスクリューブローが装甲の一部を千切りながらアキレスを薙ぎ倒したところである。
「…よくよく考えると近接とは言え剣を持ってるはずのウァサゴと遠距離特化BMのアキレスが拳で殴り合ってるのって結構アレな光景じゃない?」
「ア、アハハ…」
なんやかんやあって(投げやり)ベカスの勝利にてBMデュエルは決着。「機体性能低い…低くない?」と数十時間前も同じような事を言う英麒に対し「次があるさ」とベカスが言うと「取り敢えず俺実は身分詐称してるからそろそろ逃げるわ」と驚愕の事実を発し、次いで「次会った時は…お前を殺す(デデン!)」と純度100%の純粋な殺気を絢斗に打つけ英麒は帰っていった。
「おーおー。良い友人を持ったじゃないか?先輩は嬉しいぞ〜」
「あんな殺意マシマシな友人死んでもゴメンなんですけど!?」
☆【三度】
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
現在絢斗がいるのはカイロ郊外の遺跡…といってもベカスと英麒がデュエルをしていた所とはまた別の場所である。因みにそこで絢斗は再びプルシアンブルースターを駆り、戦場と化した遺跡跡で複数のBMと戦っている。
敵機は絢斗が登場するプルシアンブルースターと同ランクのSSランクのBM。【パイモン】シリーズ各種であった。謎が謎を呼ぶと噂の【ソロモン工業】から発売されている現代では理解不能な【FSシールド】*2を一定時間展開できる有能なBMである。かく言う絢斗自身もシリーズの一つを一機所持している。
「味方なら頼もしいが敵になると厄介」という戦場の至言に則り、激しい弾幕と強烈な近距離戦。そして以前戦った盗賊団よりも数段高度な連携に絢斗はヒイコラ言いながら応戦している。
近接型には銃撃…は時折発生するFSシールドに阻まれてしまうので素直に近接戦で応戦し、ひっきりなしに飛んでくる銃弾には高機動型の名に相応しい動きで躱し、いざ囲まれた時は冷気を最大出力で噴射。凍り付き動きが鈍くなった瞬間に包囲から離脱する。
特殊階級【AAランク】に恥じぬ程の操縦技術と度胸で圧倒的に不利な戦況でもがく絢斗だが、そんな彼も自分の搭乗機と同程度のスペックを持つBM軍団相手に、かなり疲労していた。額には玉のような汗をかき、目は一瞬一瞬を見逃さまいと充血している。
「あぁもうキッツイ!!」
――この戦いは、とあるメッセージから始まった。
『消耗したから助けてくれないかしら?』
「だからと言ってこんな状況だとは聞いて無いッ!」
「……ッラア!」
最初の第一射はスロカイが所持していた【ダークラビット】くん決死のブロックにて阻止。第二射は拳銃を視認した瞬間岩陰から飛び出た絢斗(生身)が所持していた機械刀にて拳銃を両断した事により無為とし、そのままローブの人物を引き倒す様にラクダから引き摺り落とした。
「教廷騎士!?……いや違うな。何の用だ!!」
ローブの人物*3が内部機構が露見した拳銃を投げ捨てると、腰にある大型ナイフを構え絢斗に斬りかかる。
「この…!」
ラクダ一頭分というほぼゼロ距離に近い間合いでは、1メートル近い絢斗の機械刀よりも黒衣の男の30センチより少し小さい程度の大型ナイフでは後者の方に軍配が上がる為、自身に向かって縦横無尽に振るわれるナイフを刀の峰や刃元で弾きひたすら耐えるという防戦一方の状況だったが――
「凡人。頭を下げよ」
「へっ?――てうわっ!」
スロカイの言葉に従い頭を下げると、絢斗の少し上から鉄の塊――古代遺跡にて放置されていた用途不明の機械群を固めたもの――が頭を軽く掠めながらも猛烈な勢いで飛んで行った。
「ゲホアァ!!?」
そのまま鉄塊の延長線上にいた黒衣の男に激突し、見事な錐揉み回転を披露しながら吹っ飛んだ。これこそがスロカイの持つ究極能力者としての力の一端…【
「…フン。他愛もないわね」
「た、助かりました」
呆然とした様子でスロカイと黒衣の男へ交互に視線を巡らせる絢斗だったが、抜いた機械刀を鞘に納め数個のボタンを弄る。
「よし。このレンジなら負けない…!」
次いで鞘から刀を抜くと、そこから放たれたのは「バチバチ!」と如何にもな接触音を鳴らしながら現れた【雷撃を纏った刀身】だった。
「情報聞き出したいので気絶させますけどいいですよね?」
「それは構わぬが…出来るのか?
そうスロカイが言った瞬間。遺跡のあちこちから数体の完全武装済みのBM――パイモン達が現れた。ふと正面を見ると先ほどまで同じ
「……………オラァ!」バフン!
無言で刀を鞘にしまい。その後絢斗は地面に向けて特濃スモークグレネードをぶん投げ敵方からの視線を一時的にきる。
「《チェン――」
「待て凡人。それは後に取っておくといい」
「…いやでも、ここから
「コレの事か?」ズウゥン
「……万能ですね」
「それほどでもあるな」
「ひとまずオレはコレに乗って迎撃に出ます。貴女は?」
「フム…手慰めに
そう言うとスロカイは虚空へ向けて
まるでプラモデルの組み立て動画を見ているかのような速度でカチャカチャと出来上がって行く赤黒い機体を見て絢斗は軽く冷や汗を流す。
「よし行ってきます。そろそろ煙幕消えるので今の内にそのBMの背後などに避難を!」
「了解だ。精々引き寄せておいてくれ」
すでに起動状態にあったプルシアンブルースターを立ち上がらせ、煙幕が晴れない内に奇襲をかけるため、絢斗は螺旋射撃の用意をしながら煙を突き破り敵へと迫る。
「シャアア!!」
プルシアンブルースター(長い為これより「プルシアン」と表記)の
『舐めるな傭兵!』
程ランクBMであればその場で終わっていてもおかしくはなかったが、絢斗が相手取るのは現在の搭乗機と同ランクのパイモンシリーズ。一撃で撃破には至らず逆に槍をしっかりとホールドされたまま逆の手で斬りかかられる。
「そっちこそ…な!」
至極冷静に挑発し返した絢斗は先程までしっかりと握っていた長槍をあっけなく放し体の自由を確保すると、すり抜けるように相手の剣撃を避ける。
「押してダメなら―――」
プルシアンの体が脱力したかのように両腕を下げ、徐に右手が上げたかと思うと…まるでバネに弾かれたかのようなスピードで放たれた正拳突きがパイモン――
「――もっと押せ!!!」
の胸に刺さっていたプルシアンの長槍と激突する。更なる衝撃を与えられた長槍はそのままパイモンの体をえぐり突き進み…やがて一つの穴を穿った。
『何だと!?』
「人を呪わば穴二つ!という訳でも一つ追加だ!」
『ぬぐぅ…!』
貫徹の衝撃で地面に倒れ込んだパイモンに対し、いつの間にか長槍を引き抜いていたプルシアンはクルリと槍の穂先を
先程とは違いBM自体のフルパワーと機体の重量を合わせた一撃はパイモンの装甲を易々と突き破り、長槍を支柱としてパイモンを地面に縫い付けた。
『お前副長をバカにしているのか!』
『死ねぇ!!』
義憤とシンプルな殺意を持って絢斗へ向けて走る【パイモン剣装型】と自己流なのか
「――よっと」
『『ハァ!?』』
が、長槍を一つの大きな
次いで「ホッ」という掛け声と共にプルシアンの身体が中に浮かぶ。
最頂点に届くと徐にブースターを少しふかし回転を加え落下。剣装型へ迫り――
「ムーンサルトプレス」ゴシャア!
先程の正拳突きの比ではない轟音がパイモン剣装型の厚い胸部装甲から響き渡った。
「回転による貫通力」+「数十トンの物質の自由落下」によって飛躍的に威力を向上させたソレ*5は、パイモンの装甲を越え中身のパイロットを昏倒させるレベルのダメージを与え、見事に相手を【K.O.】してみせる。プルシアンは崩れていた己の姿勢を整えると、最後に残った一機から大きく距離を取った。
『っ!ガイラ…テメェェェ!!!』
自身の背後にある僚機達の亡骸(※死んでいません)の見て激昂した槍持ちのパイロンのパイロットは、その両手に構えた
これこそがパイロンのフレーム特性*6【FSフィールド】である。これだけでパイモンのパイロットはプルシアンの遠距離武装の一切を無効化した事になるが…変化はこれに留まらなかった。
『お前は…確実に葬ってやる!』
パイロットがそう宣言した瞬間、FSフィールドに変化が起きた。
まず、本人を守るハズのFSフィールドがBMから離れフヨフヨと浮遊し始めた。
続いて球状としての形のしていたFSフィールドが
最後に、パイロンが持っていた
『食らっとけ…《アブソリュート・スティンガー》!!』
余談だが、【FSフィールド】の効果は「遠距離武装一切の無効化」である。そこでパイロットの技――【
……果たして、
(この技は俺の
つまり彼の攻撃は、
『くたばりやがれェェェ!!』
絶対貫く、死んでもコロス。とい絶殺の決意を固めたパイモンのパイロットと、主人の命を承ったパイロンが絢斗のプルシアンへ迫る。
一秒後、スタートダッシュが成功する。
二秒後、槍の先端が間合いに入る。
三秒後、自身も間合いに入りきる。相手の動作一つすらも己の掌の上なのではと錯覚を覚える。
四秒後、【突き】を放つために保持していた槍を腰溜めに構える。
五秒後、一気に槍を打ち放つ。
六秒後、槍が敵に当たる前に
『…………?』
何故か進まない槍に、彼は不思議に思いつつも更に突き出そうと……しかし、パイモンは動かない。
……まるで「地面に縫い付けられた」よう。
『なぁっ?』
途端に、コクピット内からダメージリポートが吐き出される。肩部胸部腰部脚部爪先と、数々の場所から損傷したという内容がパイロットに知らされた。
『どうゆう……ッ!?』
疑問が脳内で弾け続けるが、パイロットの青年は一旦それを無視し機体の全体図を表示する。するとそこには健常な状態を示す青色が大部分を占める中。ダメージを受けた事を示す赤色の部分が縦一線に刻まれていた。
『何っだよコレ…!』
辛うじて無傷だった首を動かしダメージを受けたところを見ると、そこには一本の
『………………!』
「《パラドックス・スティング》」
そう絢斗が言ったのを皮切りに、甚大なダメージを受けたことによって強制的にスリープモードに入ったコクピットが暗闇に覆われた。
より肥大化した
―――
ブースターを吹かす事もなく。
操縦桿を握り直す事もなく。
足組んでリラックスした。
「…ズルイから使いたくないんだよな。コレ」
複雑そうな表情でそう呟いた絢斗は、フゥと深くため息をついた後に「でも…個人的な闘争ならともかく、コレは依頼だからな」と言い、ゆっくりと目蓋を開け、徐に虚空に手を伸ばし、何かを
「――《コール》」
絢斗はこちらへ向け迫っている槍でも、槍を突き出しているパイロンでもなく。絢斗が見ていたのは最初に撃破した【パイロン剣装型】に突き刺さっていたプルシアンの長槍だった。
因みに読者の皆様は気づいているだろうが、絢斗自身も能力者である。細かい出自は今はまだ言えないが、彼の能力は大きく分けて二つ。
一つは初回で見せた《チェンジ》。戦況に合わせてBMを乗り換えられる便利な力だが、こちらには一日一回の制限がある。
もう一つは《コール》コレは簡単に言えば《チェンジ》のマイナーチェンジ。効果はより小さいもの――武器の取り寄せ。BMだけではなく、生身でも使えるが……今はそんなことはいい重要な事じゃない。
「《パラドックス・スティング》」
本来なら武器を手繰り寄せる事だけに使うこの能力を、絢斗は今回「意識外からの奇襲」として使った。本来ない場所から出現することと、先程のパイロットの《アブソリュート・スティンガー》から単語をもらい、技名は【
ぐずれ落ちた槍装備のパイモンを見遣り、絢斗はふと視線をあげる。
「…普通今ので打ち止めでは?」
視線の先には数十体のパイモンがいた。
決戦の気配を感じたため、闘気を高めるが――
「出来たぞ凡人。よくぞ耐えた――《機械神の咆哮》」
直後発射された極太ビームによって粗方焼き尽くされた。
【BMデュエル】には【ノーマル】と【デスマッチ】の2種類がある。そのほとんどは【ノーマル】であり、相手の生命まで奪うことは許されていない。デュエル時には第3者が立会人を務める。
【デスマッチ】は両者どちらかの死亡によって決着がつく、まさに命がけの対決だ。【デスマッチ】は多くの国家が法律で禁止している。だが、グレーゾーンの無法地帯では【デスマッチ】でのデュエルが一般的だ
後半描写が薄くなってしまった…反省ッッッ!!!
せっかくなので絢斗が使っていた機械刀の紹介
【エレメンタルスラッシャー(属性別刀身換装型機器刀)】
バイエルングループが開発した【多機能型護身武具】の一つ。実はまだ世に出ていない非正規品。純粋な刀として使える【ノーマルモード】や高圧電流を纏い敵を感電させる暴徒鎮圧用の【ショックモード】。薄いビームを貼り擬似的なビームサードとして使える【フォトンモード】が使える。
指紋認証機能がついており許可されていないものは鈍器としてとしか使用できない。