追うのではなく並びたい。(凍結中)   作:korotuki

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…たった二周年でバケモノをプレイアブル化するとかダッチー正気か!?

【追加】
 無限列車見てきました。……いや、もうなんか。こう…終わった時暫く椅子から動けませんでした


006

【砂漠の迷い子】

 

「お前が思いの外時間を稼いでくれたからな。なんとか間に合った」

「…能力者とは会った事あるし、戦った事もありますけど。ここまで大規模なのは見た事ないです」

 

 呆然といった様子で、絢斗は目の前の巨大BM――スロカイの教皇見参(ロードエンプレス)によって組まれた機体を見上げた。

 最初のビーム斉射によってパイモン軍団の七割が融解(機体自体はともかくビームの発射機構とそのエネルギーはどっから調達したんだよとか言ってはいけない)し、残った三割も、巨体故の体格に任せた体術と機体各部に設置された重機関銃(だから実弾はどっから出したとか以下略)によって、瞬く間に壊滅の憂き目と相成った。

 

「…アイツら。逃していいんですか?」

「問題ない。第一襲撃者の正体は大方承知している」

「そですか…というか。幾ら探し人の名前を出されたからってこんな如何にも「罠がありますよ」って主張している奴らについていかないで下さい!」

「……撃退できたから問題はない」

「そーゆう問題じゃ……」

 

 そんな押し問答を繰り広げていると、絢斗はふとあることに気付いた。

 

「あの……もしかして、疲れてます?」

「――何のことだ?」

「映像の立ち姿。僅かですが揺れてます」

「…そんなことはない」

「声音に疲労が隠せてません」

『疲れてなどいない』

「あのワザとやってます!?」

 

 図星だったのか背もたれに背をつけボイスチェンジャーを使い始めたスロカイに対し、思わず突っ込む絢斗だったが、脳内では「疲れてるだろうしこのぐらいふざけてる方がいいだろう」と考えている。

 

(…まぁそれ抜きにしても、俺が依頼を受けてからもう二日。焦っても疲れていてもしょうがないか)

 

 「いよいよもってなりふり構っていられない」と脳裏にとある老情報屋の姿を思い浮かべる。

 

(ひとまずは休息が先決。俺も応急処置でもいいからプルシアンの修理をしないと…)

 

 そう思いつつプルシアンの操縦席から出てきた絢斗――ここで彼は機械のカメラ越しでは気付けなかった事実に漸く気付いた。

 

「機体が、揺れている?――まさかッ!」

 

 その言葉がキッカケとなったのか、突如としてスロカイの搭乗する巨大BMが崩壊を始めた。

 無論絢斗は依頼主を助ける為に必死になって駆けるが、ソレは崩落し続ける巨大BMの残骸によって阻止される。

 

「っ!邪魔だッ 《チェンジ》!」

 

 残骸を避ける暇すらもないと判断した絢斗は、手頃な岩を蹴り大ジャンプ。虚空へ向けて手を伸ばすと、絢斗を中心に謎の光が迸り――

 

「砕けろォ!!」

 

 ――次の瞬間光を裂いて現れた【パイモン格闘型】の力強い拳が巨大BM――不便なので【ロードエンプレス】と呼称する――の残骸を粉々に吹き飛ばした。

 前衛型と、なにより高ランクBM特有の機体性能をフルに活かし灰色の軌跡を描きながらスロカイへ向かって手を伸ばす…が。

 

(マズい…! 間に合わない!?)

 

 彼が咄嗟にそう判断が出来る程度には、パイモンとスロカイの距離は離れていた。ブーストゲージも残り僅か。正しく窮地である。

 

(クソこんなことなら【■■■■】にすれば…いやそもそもアイツはまだ建造途中だったな……いやそんな事はどうでもいいんだよ!?何とかしないと――ッ!!)

 

 混乱のためかおかしな方向へ意識を飛ばす絢斗だったが、本格的にスロカイが危機的状況に陥った時。絢斗の脳裏には一つの記憶が脳裏を駆け巡った。

 

それは、■まりの記憶

■験■の中にいた■を

助け■くれた■■のヒーロ■の姿で

その姿■泣い■て 

とても■もし■と■言えない■ども…

■っこ■■■――

 

 

 

 

 

 

 

 

「――()()。違うだろ芦名絢斗ッ!」

 

 彼の脳裏に過った救われた記憶(理想)を、彼は彼自身の手で振り払う。

 

(憧れるのはいいっ…!

 思い焦がれるのもいい…!

 でもだけど…だからこそッ!!

 また求めるのは違うだろうが!!)

 

 この場にいるのは自分だけなんだと気鋭を吐く。

 何にも終わってないのに勝手に諦めるなと自分に激昂する。

 救われたのなら救って見せろと己を叱咤し喝を入れる。

 跳べ、翔べ、飛べ!腕が千切れるまで手を伸ばせ!!

 奇跡だろうが悪運だろうがどうでもいい…そんな万分の一を、()()()()()()

 

「《コール》……ッ!」

 

 機体のブーストが切れた瞬間に、絢斗は手を伸ばす。機体のメインカメラに移るのは、プルシアンブルースターの槍と、ガラハッドの軽盾だった。

 

「ハハ…『俺を踏み台にした!?』ってことか……上等!」

 

 ブーストが切れた瞬間。パイモンの脚部を目一杯伸ばし、二つの武装…いや()()を足を掛けソレを全力を持って蹴り飛ばす。

 もちろん蹴飛ばされた武装は作用反作用の法則で吹き飛んで行くが、逆を辿ればパイモンの肢体も作用反作用の法則に則って少し浮かんだ……そしてその『少し』は、目の前の依頼主(スロカイ)を掴むには十二分なものだった。

 

「届けぇぇぇぇぇ!」

 

 自分と少女の手を握る――ともれなく少女の手が圧砕機にプレスさせたようになってしまいかねないので、揺り籠で包む様に両手で少女を受け止め、転がる事で地面に衝撃を最大限逃しながら地面に着地。

 

「大丈夫ですかスロカイさん!?」

 

 急いでBMから飛び降りた絢斗は遠隔操作でパイモンの重ねられた腕を解かし、中に居る少女に目を向けた。

 

「……よかったぁ」

 

 内部を見た瞬間思わず地面に尻餅をつきながら絢斗は深く安堵した様にため息を吐く。

 中には布面積が多い故肌が見難いため外傷や打撲の類いは確認できないが、顔が貧血や疲労時特有の蒼白気味な顔が少々不安を掻き起こすが、大方健常な様子のスロカイ(気絶)がそこにいた。

 

「さて、と……こりゃ酷いな」

 

 そう言いパイモンから少し離れた位置まで移動すると、そこにあった武装…否武装()()()()()を見つめた。

 

「…ありがとう。お前らのお陰で俺は一つ救えたよ」

 

 パイモンの超重量級の機体重は、片足ずつに分散されたと言っても武装達に多大な負荷を強いた。

 プルシアンブルースターのライフルは中程から綺麗にへし折れ、最早銃器としての機能が廃されたのは明らかだった。

 軽盾は綺麗な五角形を描いていた凧盾(カイトシールド)はその形から、盾としての体裁はまだあるものの。衝撃と圧力によって円形の円盾(ラウンドシールド)と化していた。

 

「もう買い直した方が早いなコレも…」

 

 少し前の筈なのにとても遠くに感じる盗賊団との戦闘にて片腕を大破したラヴァハンマーに今回の破損と、ここ最近の想定外の出費に顔を顰めながらも……絢斗自身には欠片の後悔もなかった。

 

「…取り敢えず療養が先か。情報集めはそのあとでも出来る!」

 

 内部で眠っていたスロカイを運び出し。――流石に女性を引き摺って行く訳にもいかない為、申し訳なさを感じながらも横抱きにして運んだ――遺跡を訪れる際に載ってきたミーティアMK3に入り、カイロへと戻っていった。

 


 

☆【情景】

 

「さっさと宿取らないと……!」

 

 カイロの繁華街にて、トゥクトゥクに似た様な三輪自動車を駆り爆走する。

 現在の絢斗は近くの宿に電話をしては「すいません現在満室なんです」という謝罪の言葉を聞きまた次の宿へ電話をかけ断られ――という病院をたらい回しにされる救急患者の様な有り様となっていた。

 

 背後で青いを通り越して土気色になった(体調が悪くなったとかではなく砂埃が付いただけ)スロカイを見る度に焦燥感を募らせる。

 

(マズいなぁ…自分でもわかる程度には焦っちゃってる)

 

 彼の冷静な部分は(「まぁ落ち着けって、そんな時はヤシの実サイダー*1でも飲めばいい」と告げるが、彼の熱い部分は「飲んどる場合かァ!」と冷静な彼を殴り飛ばした。

 

(……ひとまず、高台にでも行ってみよう。いい考えが浮かぶかもしれないしワンチャン知らないホテルが見つかるかもしれない)

 

 例えばこれが絢斗だけなら、適当な場所を取って地面かベンチに雑魚寝すればいいのだが今は依頼主にして現世において最大最強の武装宗教団体である〈機械教廷〉のトップであるスロカイがいるのだ。今許されても後々「人外集団の巣窟」と噂の教廷騎士が()()しにくるのでやはり無理だった。

 高台の上に到着した絢斗は、自分の着ていたコートをスロカイに羽織らせてから車外へ出た。

 

「やっぱ、そう簡単には見つからないか…」

 

 高台から見る景色は、カイロの端から端を見渡せるのではないかと錯覚してしまいそうなほど広大で、煌びやかなネオンが眩しい地上と満点の星空が輝く夜空によってどこまでも明かりで照らされている光景だったが、それでも絢斗の目的である「空き部屋のあるホテル」は見えなかった。

 

「景色だけなら満点なんだけどなあ…ん?」

 

 握っていた単眼鏡をズボンのポケットにしまおうとする絢斗は、ふとポケット内の硬い感触に気が付いた。

 

「コレは…成る程、一つ渡し損ねたみたいだ」

 

 それは、絢斗の実家の味付き爪楊枝メーカーのロゴが印刷された甘苦製の爪楊枝だった。本来ならベカスに渡すはずだった――実際数箱分渡されたが、不運にもその一箱は彼のポケットに収まってしまったらしい。

 なんとなくその一箱だけ残った甘苦の箱を見つめていると、ふと絢斗の脳裏に普段から甘苦を愛用する銀髪のパイロットが写った。

 

「あー…いつもは使わないんだけど」

 

 気恥ずかしいのか自分に言い聞かせる様にそう言った絢斗は、徐に甘苦の箱を開け中から一本取り出し――口に含んだ。

 

(…やっぱこの最初のエグミは慣れないな)

 

 最初は無味だった爪楊枝だが、軽く噛んでいる内にアク抜きを怠った様な植物特有の苦味が顔を出し絢斗は顔を顰めるが、それに屈せず数分根気よく噛んでいると砂糖菓子じみたガツンとした甘さが顔を出す。

 前述した最初の苦さや、何よりその嗜好品として見ても高い(なんと一箱2000Gする)甘苦製の爪楊枝だが、唯一の利点はコレが二週間近く続くことだろう……まぁ大半は味に飽きて一日二日で道端にポイ捨てするのだが。

 

(自分のことながら、女々しいな)

 

 本来なら自分一人の力のみで達成しなくてはいけないこの状況で知り合いの残滓に縋るような自分の行いを内心恥じる…が、その思いとは裏腹に彼の口は甘苦を吐き捨てることなく噛み続けた。

 

(…まぁここで捨てたら父さんに顔向けできないし)

 

 もちろん言葉の通り預けられた頃よく見ていた楊枝一本一本を真剣に精査していた父親の姿を思い出したのは確かだが、絢斗がそうしなかったのは……お察しの通り彼の胸中には例の“知り合い”の姿がチラつき、彼の心を少し穏やかなものにしていたからだ。そんな自分を自覚しつつも「仕方ないな」と甘ったれた己を諫めつつ甘苦を咥えてボヤいていたら――

 

「あーあ。こうしていれば甘苦の匂いに釣られてベカスさんが来るなんて事起きないか「よう絢斗」ウワッヒョイ!?

 

 ふと耳元で囁かれた低い声に飛び退き振り返ると、そこにはボロボロの黒コートにズボン。ボサボサの銀髪に赤銅色の目……ベカス・シャーナムがそこにいた。本人はニヤニヤ笑いつつ、その指先には絢斗が驚いた際に口から取りこぼした甘苦が摘まれている。

 

「ベ、ベカス! 何でここに……!?」

「なんでって、お前と同じ仕事だが?」

 

 続けて困り顔で「花嫁の暗殺について、中々作戦が思いつかなくてな~ 思考を切り替えるためにこの高台に来たんだが……」と言葉を切ると、再びニヤついた顔を浮かべ絢斗を見遣り腕を広げ――

 

「嬉しい事言ってくれるじゃないか!」ガバッ

「うわっ!やめっ離せ!」

 

 大仰な動作で絢斗に抱き付いた。勿論これに抵抗する絢斗だったが体格でも筋力でも負ける彼は抗議の声を上げつつもコレに甘んじる他なく、数秒抵抗した後に本人もそれを自覚して降伏。ベカスにされるがままにされることを許容する。

 一通り撫で回され満足したベカスに解放されフラフラとした動作で高台の手摺りに突っ伏した絢斗は「ゼー、ハー」と息を吐きながらもベカスに視線を合わせる。

 

「……急で悪いんですけど、依頼手伝ってくれません?金は出すんで」

「いいぞ」

「えぇ…いや、まぁ引き受けてくれるとは思ってましたけど即答ですか?もっと内容聞くとかは…?」

「オイオイ変なこと言うなよ。俺には『お前を助ける義理がある』んだぞ?」

「………!」

 


 

「まさか、『俺を助ける義理なんかないだろ』とか言うつもりですか?」

 


 

「ズルイですね……」

「ハッ! 言い出したのはお前だろうに」

「ち、違いない…!」

「声震えてるぞ?」

「……取り敢えず、ついてきて下さい。概要を説明します」

「応。 つっても何処かの誰かみたいにA級傭兵じゃないからなー俺なー!」

「ハイハイその件については俺が悪うございましたッ!!」

 

 依頼の協力を取り付けた絢斗と、協力の要請を受け付けたベカスは互いに肩を並べながら今もスロカイ(アイリ)の眠るトゥクトゥクへと向かっていく。

 

「あ、これ返すぜ?」

「どーも……残りはあげますよ。 マシにはなりましたけど、俺はやはりこの味苦手です」

「ホントか? じゃあ遠慮なく…っと」

 

 ベカスは回収していた絢斗の噛み途中の甘苦を返し、絢斗はその礼にベカスへ残りの甘苦を丸ごと渡し(因みに元を辿れば絢斗がベカスに渡し忘れた物なので渡すことは当然なのだが、絢斗はベカスがそれを知らない事をいいことに言わなかった)、再び甘苦を噛み始めた。嫌いなら吐き捨てればいいのだが、引き取り先での躾で日ノ本特有の【モッタイナイ病】が軽く発現している彼は「せめて味が無くなるまでは噛み続けよう…」と絢斗は密かに決意し口内を襲う強烈な甘みを受け入れる………まぁ実情としては下手に地面に吐き捨てようものなら隣にいる甘さどころか原材料の木の味が無くなるまで噛み続ける甘苦ジャンキーが激昂し挙句の果てに「捨てるなら俺が噛む」と地面に転がったソレを噛み始めるからである。

 

「依頼の内容ですけど、」

「ん?」

「一言で言うと――“妹の為にカイロ中を駆けずり回れますか?”」

「あぁ成る程ね~……決まってる」

 

 簡潔なその一言から大方の事情を察したベカスは、クールに『フッ』と笑って見せると、「決まってる」と前置きし絢斗に言い放った。

 

「妹の為には何でもやるのが兄の務め… だからな?」

「…それだけ聞ければ十分です。 …つかぬ事を聞きますが、腰の武器の手入れは万全ですか?」

「? あぁ勿論。つかやらないと師匠がな……」

「ならいいです」

 

 脳裏に高出力ビームソードを構えた仮面の人物を思い浮かべる絢斗だが「まぁ二対一なら抵抗できるだろ」とその場で深く考えるのは止め、ベカスとともに高台を去っていった。

 

 


 

 

 ハイ、短めで申し訳ありませんがコレで今話は終了です。

 え?普段1万字程度で終わってくせに何言ってやがるだって?(言ってない)

 そもそも投稿スピード遅いだろお前ハゲがハゲ散らかすよりも遅いぞ?(言われてない)

 表現も稚拙でそれを誤魔化すように特殊文字ばっか使ってるその甘ったれた文章が気に食わないと?(辛口評価に定評のある友人の一言)

 ダンクーガが超改造まであと一機足りないのもファイナルダンクーガと空呪羅と煌雷我の三機カットインで死人が出たのもお前のせいだ?(初見時震えました)

 

 ……………………………。

 

 

 

 

 

 なんだァ?てめェ……(korotuki、キレた!!)

 

 

 

 

 

 …まぁ(三番と四番以外)全部自作自演なんですけどね初見さん!

 (すみませんでしたm(__)m)

 

 ですが、個人的に「ちょっと短いかな?」と思ったのは事実です。あんまり短過ぎるとアレですし…うーん。

 

 ……実は【アフリカ戦争編】が終わった後幕間(インターバル)としてオリジナルの短編を書こうと思ってるんです。

 まだ軽いプロット程度しか出来上がってない稚拙なものですが、せっかくなのでここでご開帳したいと思います。

 という訳で予告編どうぞー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【OATHカンパニー社員寮にて】

 

「ベカスさん。 丁度暇になったので一緒に繁華街にで、も……!?」

 

 とある昼下がり、絢斗がベカスを遊びに誘おうと向かったベカスの部屋には、青白い顔に手足を小刻みに震わせ倒れているベカスの姿があった。

 

「ベ、ベカスさん!? メディック! メディーック!!?」

 

 ベカスと同じくらいに顔を真っ青にした絢斗が部屋を飛び出し大声を出し部屋から飛び出そうとした瞬間――――

 

グゥゥゥゥゥ~~~

 

「……………め、飯」

 

 部屋の中央に(空腹で)倒れ(栄養失調で)青白い顔をしたベカスがそう呟き

 

「それと……、甘苦」

 

 ついで(甘苦不足による禁断症状によって)震えた手を絢斗に伸ばした。

 

「どうしました絢斗君!」

「…何でもないですグリエーヴルさん。 大声出してすみません」

「えっ? ってベカス!?」

「空腹で倒れてるだけみたいです。 食堂に連れて行きます」

 

 桃色の髪と白衣を模した服が印象的な女性――グリエーヴルへそう返した絢斗は、死んだようなをしながらもベカスをその肩に担ぎ食堂へと連行…もとい誘導していった。

 

「……一先ず甘苦どうぞ」

 


 

 普段は職員や一時契約した傭兵達によってワイワイガヤガヤと賑わっている筈の社員食堂は、今現在静寂に包み込まれていた。

 

「ウメッウメ………!」

「…所属している人間は全メニュー半額っていい事ダナー」

 

 空になった皿の数を見ない事にするため、絢斗は「とりあえず…」と言いながら絢斗とベカスの側に積み上がった空皿を脇へと退かす。

 

「なんで栄養失調で倒れてたか、聞いていいですか?」

 

 

 

……………………

 

 

 

「依頼がない?」

「あぁ 何故だか最近Cランク…俺が受けられるレベルの依頼が粗方消滅しててな。 上のランクの依頼を受注しようにも、その時既に契約金を払う金すらも無くて八方塞がり。 で今日に至ったってワケだ」

 

 膨らんだ腹を愛おしげに撫でるべカスは、テーブルの端に備え付けられている爪楊枝(味無し)で歯の隙間に挟まった食物を取りながらそう言った。

 

「…成る程。 一日に述べ数十件の新規依頼が張り出されるCランクの依頼がないっていうのはにわかには信じ難いですけど…」

 

「まぁこうゆう時は嘘をつかない性格でしょうし…信じます」と締め括り、脳内で原因を探る。

 

(傭兵需要の低下…ないな。 多分だけど半世紀ぐらい経っても傭兵なり兵士なりの【武力】の需要はなくならないだろうし)

(高ランカーの依頼乱獲*2……もないな。 最近はCランクだけじゃなくてBランク上位にも毎月の依頼のノルマ達成が推奨されてるし、月初めだからもう消化させたって奴はいない筈)

 

「一先ずは、俺と一緒に依頼を受けましょう。 確か同行者が依頼の適切ランクだったら同行人は誰でもよかったはずです」

 

 絢斗はそういい携帯端末をベカスへ見せようとすると――――

 

 

「おい、アイツって……」

「最近話題の…?」

仕事中毒(ワーカーホリック)の疑いがある…?」

「恰好がおかしい」

「《無形剣》」

 

 にわかに食堂全体が騒がしくなり始める。

 

「…ん? なんだなんだ?」

仕事中毒(ワーカーホリック)に《無形剣(むぎょうけん)》……あぁ、最近話題の大型新人(ルーキー)ですよ」

 

 頭の中に記された情報から話題の中心に居る人物を探し当てた絢斗は「ふう」と嘆息するし、面白く無さそうな仕草で手元の飲み物を消費する作業に没頭し始めた。

 疑問に思ったベカスは「どうしたんだ?」と声をかけようとするが、直後飲み物を飲み込んだ絢斗が自身の口元に指を当てる――【静かに】というジェスチャーを見て、黙り込んだ。

 

「「…………………………」」

 

 

 バリバリモシャモシャズーズー無言で食事を続けるという作者としては非常に描写に困る光景が数秒間続き、件の人物――――黒寄りの深緑の髪が特徴的なスーツの男性が一定の距離まで離れると、「ズゾゾー」と不快な音を奏でていたストローから口を離し、話を続けた。

 

「悪評や悪口を言うつもりはありませんが、人間何が地雷になるなんて分かったもんじゃないので聞こえない位置まで待ちました………っと、それであの人の名前は【頃穂羅付望(ころほらつきもち)】何度呟いても違和感しかない名前の持ち主です」

「…まぁここ(OATHカンパニー)は住所年齢はともかく名前の規制は緩いですから、多分偽名でしょう」

「出て来たのはおおよそ一月前。 初の依頼を大勝利に収めた後は、自殺願望の様な頻度で連続して依頼を受け続け今となっては一躍大型新人(ルーキー)って訳です」

 

 何が思うところがあったのか一息に絢斗そう捲し立てた。

 

「成る程…ん? 『自殺願望の様な頻度で連続して依頼を受け続け』?」

「? はいそうですけどそれが…って あ 」

 

 二人の頭の中で、『ベカスの依頼が激減』『期待の新人』『大量の依頼の受領』という三つの点が、線となって繋がる。

 

「……なるほど、アイツですね」

「アイツだな」

 

 そういい、絢斗とベカスは静かに頃穂羅の方へ向ける。 ベカスは好奇の目から、少し恨みの篭った憎々しげな目を。 絢斗は元から気に入らなかったのか好奇と敵意半々から、そこそこ敵意へとシフトした忌々しげな目を向けた。

 

「……………」

 

 視線を向けられた本人は、二人が視線を投げた瞬間ふと立ち止まりキョロキョロと辺りを見渡し始めた。

 

「…………?」

 

 しかし歴戦の傭兵として鍛えられて来た二人が駆使する巧妙な隠密を見破るまでには至らず、何より自分が頼んだらしき【コロッケそば】が受け取ると視線を受けていたことを忘れたかの様に軽快な足取りで席へと戻っていった。

 

「…ほーん。気付いたか」

「気配だけ、ですがね」

「「フッフッフッフッ……」」

 

 変なテンションのまま変な笑い声を上げる二人。 ちなみに本命(ターゲット)の頃穂羅にこそ気付かれなかったが、二人の周囲にいた人々は不気味に笑いあう二人を見て少々距離を置いたとかなんとか。

 


 

【某国某市にあるマンションにて】

 

「……二人? おかしいな、あのシーンならいるのは銀髪ショタコンホモ(ベカス)だけの筈」

 

 男は、そう言うと一冊のノートを軽くパラパラと捲り始めた。

 

「うん。そうだよな…カルシェンやフリーズのアンデット小隊の面々やグリエーヴル、低確率で同行してるミドリやそれを上回る超超超低確率のアイリ(スロカイ)も、あのシーンには出てこない……ウッドやハゲマフィアでもいたのか?」

 

 「う〜ん」と悩ましげに男はそう呟くが、次の瞬間『パン!』と大きく手を鳴らし気持ちを切り替えた。

 

「下手に悩むのはナシだナシ! この日に備えて道順(チャート)はちゃーんと練って来たんだ!…やっぱダサいなこのシャレ」

 

 そういった男は、大仰な動作でモニター――そこそこ金が掛かっていると思わしきゲーミングPCに移る()()()()()を指差し、堂々不敵に宣言した。

 

「俺のチャートは、崩れない!!」

 

 男とPCの側には、現在プレイしていると思わしきゲームのパッケージが置かれており、その表紙には銀髪の男が駆る白い機体と、黒髪の女性が駆る黒い機体が激突している光景を背景に、物々しい筆記体でこう書かれていた。

 

【機動戦隊アイアンサーガ外伝〜your saga〜】

 

 次元違い(比喩にあらず)の男が描くレールをベカスは、そして絢斗は砕けるのか――!

 

【アイサガプレイ動画『ベカス打倒ルート』】

*1
我らがオリ主の好物。彼は好んで飲用するが他の人に言わせれば「味薄いしなんかハッキリしない…どっちつかずの味してる」とのこと。因みに現実にも同名の清涼飲料水が実在する。作者は数回しか飲んだことない

*2
造語。本作では「上の階級の人間が下位の依頼を大量に受ける事と定義




はい、そんな訳で幕間やります…といってもアフリカ戦争が終わった後なのでアップはだいぶ先になりますけど(汗)
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