コイキングお嬢様 作:キノココ
トットットッと走り出したヒトカゲに向かって、コーちゃんは跳ね回る。
そして地面に落ちたと同時に、一直線に跳ね飛んだ。
速度は結構出ているようで、ヒトカゲは驚きつつも爪を振り下ろし『引っ掻く』を放つ。
私はすかさず指示を出した。
「コーちゃん! 『跳ねる』で回避です!」
それを聞き届けたコーちゃんは、事前に調整していた速度でヒトカゲの目の前に落ちると、跳ね上がり飛び越え避け切った。
レイクは驚き戸惑いつつもヒトカゲに指示を出す。
「ひ、ヒトカゲ! 『鳴き声』だ! コイキングの動きを止めろ!!」
サッと後ろを向いたヒトカゲが、コーちゃんに向かって『鳴き声』を放つ。
単純にポケモンから発せられる『鳴き声』だが、コーちゃんはそれを嫌がっているようで、もう一度跳ねた時の速度が少し落ちていた。
コーちゃんが地面に落ちてビタンビタンと跳ねているのを見て、レイクは驚いていた。
「ど、どうしてあんな動きが……!」
「私とコーちゃんは小さい頃からずっと一緒にいるんです! ずっと、ずっと『跳ねて』いたんです!」
「練習の成果、ってことか……ならば! 行くぞヒトカゲ! 『火の粉』だッ!」
「コーちゃん! 『もう一度『跳ねる』からの『体当たり』です!」
レイクがそう指示を出すと、ヒトカゲは口を大きく開けて『火の粉』を吐いた。
対してコーちゃんは『跳ねて』攻撃を避けながらヒトカゲに近づく。
しかし案外広く飛んだ『火の粉』はコーちゃんに少しばかり降りかかっていた。
だが大したダメージはないように見える。
と言うよりかは、効いてない。と言う感じであった。
「やっぱタイプ相性が悪いか……!」
「…………タイプ、あいしょう?」
「ん? どうした?」
「あの。タイプ相性って、何ですか?」
「え?」
「え?」
私たちのポケモンは指示が止まったことに困惑し、私たちのことを見る。
ヒトカゲは走ってレイクの元へと向かい、コーちゃんはピョンピョン飛んで池の中に入る。
長時間陸地での行動はやはり苦しいようだった。
そして私は聞き覚えのない言葉に少しだけ驚く。
私の家は何故かポケモンを禁止していたため、ポケモンに関する本は一切なかったのだ。
コーちゃんは例外として飼っていたのだが、そのせいでポケモンに関する基本すら学べていないのだ。
きっとレイクの反応を見るにポケモンでの基本なのだろう。
「……知らない?」
「その……知らない、です」
「えっとじゃあ、ポケモンのタイプについては?」
「わからないです……」
レイクからは少し困惑した様子が伺える。
どうもかなり基本的なことのようであった。
少し、悩んだ様子を見せる。
そして私に言った。
「聞いていいか? 何で何も知らないのに、ポケモントレーナーに?」
「その……それは……」
あまり人に、私の家のことは話したくない。
そのせいで少しばかり言い淀んでしまう。
レイクはそれを見て、こう言う。
「……なんか言えない事情があるんだな。それなら何も聞かないことにする」
「ありがとう、ございます……」
「んで……そうだな、少し勉強しようぜ」
「勉強、ですか?」
「ほら、トレーナーなのに何も知らないのはまずいだろ?これからポケモントレーナーとしての基本、全部教えるから。そんで俺たちはライバルだ。同じとこから、一から始めるんだからな!」
そう満面の笑顔で言い放った。
ライバル。
とても良い響きの言葉である。
私はなんだかワクワクして、頷いた。
「はい!」
まず最初に教えてくれたのはポケモンのタイプについて。
私たちは近くの石に腰掛けて話をする、レイクは木の棒で土に絵を描きながら。
「まずポケモンには全部で十八種類のタイプがある」
「十八もですか!?」
「そそ。シンプルなので言えば『炎』、『水』、『草』とかだな。例えばコイキングとかは水タイプだぞ」
そう言って絵を描く。
しかしその描いた絵はヒトカゲが踏みつけて消してしまった。
コーちゃんは魚だから水なのだろうか。
じゃあきっと彼のヒトカゲは……。
「じゃあその子は炎ですか?」
「ああ、こいつは炎タイプなんだ。炎タイプだからこそ水に弱いんだ」
「それがタイプ相性ですね!」
「そう言うことだ!」
だんだんとわかりかけてきた。
十八種類。
全タイプを覚えてタイプ相性も覚えなきゃいけないだろう。
でもそれはきっと、楽しいことだと思う。
「ここで教えられることはこのくらいが限界か……そうだ! この先のタウンにポケモン博士が住んでるんだけど……一緒に来るか?」
「行きたいです!」
「よし……じゃあ行くか!」
「はい!」
私たちはポケモンをボールに戻して、一緒に歩き始めた。
森の出口を目指して。