コイキングお嬢様 作:キノココ
レイクはキャップを少し動かして被り直す。
私も同じように、つばの広い帽子を軽く動かす。
森の中歩くこと数十分。
気づけば周囲は森ではなく、町が見えていた。
白く清潔感のある建物が一つ、家が何件か。
そして赤い屋根、不思議な建物もあった。
「ここは……」
「ハガニアタウン。つってもタウンというほどの規模はないんだけどな。アスレナ地方でも一番小さな町だし」
「小さくて可愛い町ですね!」
「小さい代わりに何にもないけどな……」
と言って小さく笑った。
私たちは歩いて白い建物へと向かう。
白い建物は大きく、入り口には警備員の人が立っている。
そのことからかなり重要な建物だということがわかった。
レイクはリュックから何かを取り出す。
それは手紙のようなもので、その手紙のようなものを警備員に渡すとすんなりと通してくれた。
中に入ると白衣の人たちが忙しそうにあっちこっち駆け回っていた。
私たちはそれを避けながら奥へ向かうと、私より少し年上ぐらいの少女が電話をしていた。
「え? 何? ……リノタウン!? またアトミック団!? もうっ! そこにあの人が滞在してるでしょ!? ほら! 協力を……っと。とにかくあの人なら解決できるから!」
そう言って受話器を勢いよく置く。
置いてすぐに、近くにかけてあったキャスケット帽を被って私たちのところに来た。
「レイクくん! 元気にしてたかい?」
「まぁそれなりに」
「で、隣の君は?」
「あ、私、セナって言います!」
「この子もポケモントレーナーなんだよ。しかもまだ新人の」
へぇー、と言って私の周りをくるくる回る。
緊張してしまって、バッグの紐をギュッと握る。
少しすると、何故か頷いて椅子に座った。
「自己紹介が遅れたね。私はここのポケモン研究所の所長を務めてるエクレアさ」
「エクレア博士、ですか?」
「まぁ、一応博士とは呼ばれてるね」
一見するとそうは見えないのだが実際はとても偉いらしい。
カントー地方と呼ばる場所出身で、元々はオーキド博士と呼ばれるとても偉い人の元で働いていたらしい。
しかしここ、アスレナ地方でポケモンが見つかったことをキッカケに独立して研究所を立てたとのこと。
「それで君は何のポケモンを使っているんだい?」
「コイキングのコーちゃんです!」
「こ、コイキング!? ふーむ……これはまた。でも何で、君はコイキングを?」
私は説明した。
自分の目指していることを、自分のしたいことを。
この子とともに、強くなれることを知らしめたいと。
それを聞いてエクレア博士は少し考え込む。
何かをぶつぶつ呟いてから、こう言った。
「それなら君、ポケモンリーグに挑んでみないかい?」
「ポケモンリーグ、ですか?」
「別名ジムチャレンジ。ガラル地方のジムと同じ形式でやってるのさ」
「あの、そもそもジムって、何ですか?」
「そ、そこからか……」
そう言うとエクレア博士はジムについて説明を始めた。
八つの町にそれぞれ一人。ジムリーダーと呼ばれる人がいること。
その人たちを倒すことでバッジを手に入れられること。
そして八つ集めた時、ポケモンリーグと呼ばれるその地方で、最強のポケモントレーナーを決める大会に出られること。
私はそれを聞いて、ワクワクしていた。
そして同時に考えていた。
コーちゃんの名を知らしめるためには、この方法しかないと。
「どうだい? 参加してみないかい?」
「参加したいです!」
私の意思は既に決まっていた。
レイクも隣で言う。
「俺も参加したい。ポケモンリーグって推薦がないといけないんだろ!?」
「別に推薦状がなくても試験をさえ受ければジムチャレンジはできるけどね」
「そ、そうなのか」
「でも君にも書く予定だったさ……二人とも、推薦状を書く代わりに一つ、頼まれてくれないかい?」
私たちは頷く。
それを見てエクレア博士は少し笑う。
机の棚を開けると、二つの機械を取り出した。
メモ帳程度に手軽なサイズで、オレンジ色をしていた。
「これは?」
「これは私の発明した特別製でポケモン図鑑さ。未だ生態系の知れていないポケモンは多い。レイクくん、君にはこれを使ってアスレナ地方に住むポケモンたちを調べて欲しい。そしてセナくん。君にもだ。ただし君にはコイキングの成長記録をつけてもらいたい」
「成長記録ですか?」
「うん。コイキング使うトレーナーなんて滅多にいないからね。たまにでいいから成長記録を見せて欲しいんだ」
「わかりました」
ウンウン、と言ってもう一つあるものを渡してきた。
赤と白の丸いボール。
モンスターボールである。
「あの、これは?」
「君たち、今は手持ち一匹だけだろう? ジムチャレンジは最初の規定としてポケモンを二匹以上、そしてバッジが集まる度に規定数が増えて行くんだ。これは決まりだからね。どうしようもないのさ」
「そ、そうですか……」
コーちゃんだけ、っていうのはできないみたいだ。
決まりならば仕方ないのかもしれない。
だけど私はあまりポケモンのことを知らない。
ポケモン図鑑とのにらめっこになりそうである。
「さて、それじゃあ私はそろそろ仕事に……え? 何!? またぁ!? もういい私が行く!」
近くの研究者に何かを言われたエクレア博士は、外に向かって走っていった。
私たちを顔を見合わせる。
レイクが言った。
「……さっきの森にいっぱいポケモンがいるから、そこ行くか?」
「そうです、ね。行きましょう!」
私たちは森の方に向かって歩き出した。