コイキングお嬢様 作:キノココ
(うーん、キノココかぁ。ピカチュウじゃまずいか……?)
キノココは草タイプ、それに対してピカチュウは電気タイプだ。
相性が悪いと言うわけではないが、草タイプに対し電気タイプの技は効きにくいのだ。
と言ってもまだそこまで技を覚えているわけでもない。
だが出来るだけで行動をさせまいと、指示を出す。
「ピカチュウ! 『電光石火』だ!」
「キノココ。向かってくるピカチュウに『体当たり』よ」
ピカチュウがカクカク曲がりながら高速移動でキノココに近づく。
それに対し、キノココはピカチュウに激突しようとした。
そこで、向こうは指示を変える。
「今よ。『やどりぎのタネ』」
ハッとして咄嗟に指示を出す。
「『影分身』だッ!」
『影分身』を出した時にはもう遅かった。
出す寸前でタネを植えられ、少しだけピカチュウの移動が遅くなる。
(やらかした……! 『痺れ粉』が来ないと油断してた……)
ピカチュウは電気タイプ。
痺れ粉のような麻痺にする技は効かないのだ。
だからこそ、油断をしていたのだ。
全力と言っておきながらこの様である。
「くっ……『高速移動』から『電光石火』! 『フェイント』で背後を取るんだ!」
「キノココ。背後を取らせないように『毒の粉』。そして『悩みの種』」
ピカチュウは『フェイント』による背後からの攻撃を仕掛けようとするが、周囲にばら撒かれた『毒の粉』のせいで避けざるを得ない状況になった。
そしてそこを狙われ、『悩みの種』によって特性『静電気』を『不眠』に変えられる。
これで直接攻撃からの麻痺を望めなくなってしまった。
(て言うか、自分の周囲に『毒の粉』を撒くなんて何考えてるんだ……!?)
見ればキノココは毒状態。
少し苦しそうであった。
「勝ちなさい。何としても」
「……嘘だろ?」
そこで俺は気づく。
奴がどんなことしても勝つ、非情な人間であることが。
ポケモンが苦しんでいる姿を見ても何も思わない。
ただ勝利を求めるタイプだと言うことが。
それに気づくと同時に、俺は決めた。
「……ピカチュウ。俺はお前に賭けてみてもいいか?」
今さっきの話だが、ピカチュウに俺の憧れを話した。
レッドと言うとポケモントレーナーについて。
他の二匹も嬉しそうに聞いてくれていた。
(ピカチュウは俺の話を理解してくれているだろうけど……問題は、再現ができるかどうかだ)
ピカチュウに目線を送ると、小さく頷く。
俺は今からある技を試そうとしていた。
「なぁ、知ってるか?」
「……何を? 時間稼ぎなら……」
「こっちだって時間稼ぎなんてしてられねぇよ……俺が言いたいのは、カントー地方の伝説のトレーナー、そのピカチュウが放ったある技を」
本来は何度も練習を重ねて挑む技。
だがもしも、さっきの出会いが嘘じゃないんだとすれば。
きっと、きっと行けるはずだ。
「……ピカチュウ、『電光石火』ッ!!」
「キノココ。『メガドレイン』で攻撃よ」
わかってる。
俺は矛盾していることに。
自分が今、一番非情だと言うことに。
ピカチュウを無茶させていると。
(成功しなくてもいい。この技は一か八かだから)
「ピカチュウ! 『スパーク』を……中断ッ! そのまま突っ込めッ!!」
「なっ……!? キノココ! 避けなさいッ!」
キノココは速いわけではない。
明らかにピカチュウの方が速い。
だから避けることはできなかった。
ピカチュウは小さい電気をばちばち出しながら『電光石火』を繰り出す。
繰り出したのだ、一瞬、当たる瞬間大きな電気を出して。
「……未完全、だけど。成功したのか……?」
キノココを遠くに吹っ飛んで戦闘不能になっていた。
一方ピカチュウはピンピンしていた。
(強い……いや、それだけじゃないのか? 俺を、信頼して、くれてるのか……?)
疑問は尽きない。
失敗するだろうと思っていた。
だからこその矛盾だったのだが……未完全ながらも、成功していた。
ただそれは……。
「『ボルテッカー』……? 何なのよ……成り立てのトレーナーがッ!」
怒りを露わにして、次のポケモンを出す。
(本当にあれは、『ボルテッカー』なのか……?)
ただ一つの疑問を残して、俺は疲れたピカチュウを戻して次のポケモンを用意する。
向こうが出してきたのはズバット。
対して俺が出したのは……。
「……よし、任せたぞ!」
俺が出したのはドラメシヤと言う、少し陰鬱そうなポケモンだった。