コイキングお嬢様   作:キノココ

9 / 9
少し書き方変わります。


ピカチュウVSキノココ

(うーん、キノココかぁ。ピカチュウじゃまずいか……?)

 

 キノココは草タイプ、それに対してピカチュウは電気タイプだ。

 相性が悪いと言うわけではないが、草タイプに対し電気タイプの技は効きにくいのだ。

 と言ってもまだそこまで技を覚えているわけでもない。

 だが出来るだけで行動をさせまいと、指示を出す。

 

「ピカチュウ! 『電光石火』だ!」

「キノココ。向かってくるピカチュウに『体当たり』よ」

 

 ピカチュウがカクカク曲がりながら高速移動でキノココに近づく。

 それに対し、キノココはピカチュウに激突しようとした。

 そこで、向こうは指示を変える。

 

「今よ。『やどりぎのタネ』」

 

 ハッとして咄嗟に指示を出す。

 

「『影分身』だッ!」

 

『影分身』を出した時にはもう遅かった。

 出す寸前でタネを植えられ、少しだけピカチュウの移動が遅くなる。

 

(やらかした……! 『痺れ粉』が来ないと油断してた……)

 

 ピカチュウは電気タイプ。

 痺れ粉のような麻痺にする技は効かないのだ。

 だからこそ、油断をしていたのだ。

 全力と言っておきながらこの様である。

 

「くっ……『高速移動』から『電光石火』! 『フェイント』で背後を取るんだ!」

「キノココ。背後を取らせないように『毒の粉』。そして『悩みの種』」

 

 ピカチュウは『フェイント』による背後からの攻撃を仕掛けようとするが、周囲にばら撒かれた『毒の粉』のせいで避けざるを得ない状況になった。

 そしてそこを狙われ、『悩みの種』によって特性『静電気』を『不眠』に変えられる。

 これで直接攻撃からの麻痺を望めなくなってしまった。

 

(て言うか、自分の周囲に『毒の粉』を撒くなんて何考えてるんだ……!?)

 

 見ればキノココは毒状態。

 少し苦しそうであった。

 

「勝ちなさい。何としても」

「……嘘だろ?」

 

 そこで俺は気づく。

 奴がどんなことしても勝つ、非情な人間であることが。

 ポケモンが苦しんでいる姿を見ても何も思わない。

 ただ勝利を求めるタイプだと言うことが。

 

 それに気づくと同時に、俺は決めた。

 

「……ピカチュウ。俺はお前に賭けてみてもいいか?」

 

 今さっきの話だが、ピカチュウに俺の憧れを話した。

 レッドと言うとポケモントレーナーについて。

 他の二匹も嬉しそうに聞いてくれていた。

 

(ピカチュウは俺の話を理解してくれているだろうけど……問題は、再現ができるかどうかだ)

 

 ピカチュウに目線を送ると、小さく頷く。

 俺は今からある技を試そうとしていた。

 

「なぁ、知ってるか?」

「……何を? 時間稼ぎなら……」

「こっちだって時間稼ぎなんてしてられねぇよ……俺が言いたいのは、カントー地方の伝説のトレーナー、そのピカチュウが放ったある技を」

 

 本来は何度も練習を重ねて挑む技。

 だがもしも、さっきの出会いが嘘じゃないんだとすれば。

 きっと、きっと行けるはずだ。

 

「……ピカチュウ、『電光石火』ッ!!」

「キノココ。『メガドレイン』で攻撃よ」

 

 わかってる。

 俺は矛盾していることに。

 自分が今、一番非情だと言うことに。

 ピカチュウを無茶させていると。

 

(成功しなくてもいい。この技は一か八かだから)

 

「ピカチュウ! 『スパーク』を……中断ッ! そのまま突っ込めッ!!」

「なっ……!? キノココ! 避けなさいッ!」

 

 キノココは速いわけではない。

 明らかにピカチュウの方が速い。

 だから避けることはできなかった。

 

 ピカチュウは小さい電気をばちばち出しながら『電光石火』を繰り出す。

 繰り出したのだ、一瞬、当たる瞬間大きな電気を出して。

 

「……未完全、だけど。成功したのか……?」

 

 キノココを遠くに吹っ飛んで戦闘不能になっていた。

 一方ピカチュウはピンピンしていた。

 

(強い……いや、それだけじゃないのか? 俺を、信頼して、くれてるのか……?)

 

 疑問は尽きない。

 失敗するだろうと思っていた。

 だからこその矛盾だったのだが……未完全ながらも、成功していた。

 ただそれは……。

 

「『ボルテッカー』……? 何なのよ……成り立てのトレーナーがッ!」

 

 怒りを露わにして、次のポケモンを出す。

 

(本当にあれは、『ボルテッカー』なのか……?)

 

 ただ一つの疑問を残して、俺は疲れたピカチュウを戻して次のポケモンを用意する。

 向こうが出してきたのはズバット。

 対して俺が出したのは……。

 

「……よし、任せたぞ!」

 

 俺が出したのはドラメシヤと言う、少し陰鬱そうなポケモンだった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。