鎧武者の神   作:仮面ライダー ダーク

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どうも皆様、仮面ライダーダークです!

バイトだったり学校だったりコンディションが悪い日が続き、更新する事がままならない状況でした。


第参弾 断固拒否

夕方。キンジと俺は男子寮に戻ってきた。

 

 

結局ずっとアリアの事で質問攻めにされてたので、俺が発砲して黙らせることになった。

刀でも良かったが、人が多いと銃の方が威嚇として役に立つ。

 

にしてもそんなに怯えなくても……

 

「さて、夕飯の準備考えてなかったな」

 

部屋に入るなりキンジは制服を脱ぎ捨て、ソファに座り窓越しに東京を眺めていた。昼休み以降もクラスメイト達に拘束されたので仕方ないと言えば仕方ない。

 

朝に使ったセグウェイの残骸は鑑識科(レピア)*1が回収し、探偵科(インケスタ)*2も調査を始めた。だが精々分かるのは、変身した俺(武神鎧武)の姿が自転車置き場のカメラに写っている事だろう。被害者のキンジはスルー気味にされてる。

 

さて、今日の夕飯は……しまった食材が無い。コンビニ飯かな。

 

ピンポーン。

 

「…ん?客か?」

 

「な訳ねえだろ。誰が此処に来るんだよ…」

 

ピンポンピンポーン。

 

「…白雪ではないな。キンジ、出てやれよ」

 

「嫌だ。居留守を使いたい」

 

ピポピポピポピポピピピピピピンポーン!

ピポピポピンポーン!

 

「あー!うっせえな!」

 

イライラしながら玄関へ向かった。まぁ客人が誰だか分かるが。

 

「遅い!あたしがチャイムを押したら5秒以内に出ること!」

 

「か、神崎⁉︎」

 

「アリアでいいわよ」

 

そんな会話と靴を脱ぐ音、とてとてと侵入する音が聞こえる。

 

「お、おい!待て、勝手に入るな!」

 

「トランクを中に運んどきなさい!ねえ、トイレどこ?」

 

「そのまま進んでみろ。すぐ見える」

 

キッチンから話しかけると少しビビって1歩だけ引いた音がした。その後トイレに行くためにキッチンを通り過ぎてててっ、ぱたん。と入っていった。キンジはストライプ柄のトランクを部屋に入れる為に頑張ってた。意外と重そうだなアレ。

 

トイレから出てきて手を洗ったアリアは出た後部屋の様子を窺ってる。

 

 

「あんた達2人だけなの?」

 

「まぁな。本来俺の部屋は別だが、ある時を境にキンジの護衛として住んでるんだ」

 

「ふぅん…まあいいわ」

 

そのままリビングの一番奥、窓の辺りまで歩いていった。興味が無いなら聞かないで欲しい…

 

キッチンから出てリビングに行くと、アリアが夕陽を背にこう言った。

 

「──あんた達!あたしのドレイになりなさい!」

 

 

 

……………まぁ、敢えて一つ言うなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お前憲法18条知ってる?」

 

「いやそこかよ!?まず不法侵入の件を問えよ!」

 

キンジのツッコミが炸裂した。いや普通に憲法違反じゃん。

知らんの?何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられないってあるんだぞ。

 

因みに「世界人権宣言」第四条にも、「何人も、奴隷にされ、又は苦役に服することはない。奴隷制度及び奴隷売買は、いかなる形においても禁止する。」ってあるんだよ?

 

 

 

「ほら!さっさと飲み物ぐらい出しなさいよ!無礼なヤツね!」

 

そう言ってぽふ!とソファに座った。組んだ足にはコルト・ガバメントという拳銃が二丁見える。

 

こいつ…シカトしたな!?

 

「コーヒー!エスプレッソ・ルンゴ・ドッピオ!砂糖はカンナ!1分以内!」

 

此処は本場の珈琲ショップじゃないんだが………

 

「……豆を挽くから3分待て。流石に1分では出来ん」

 

「あら。用意出来るのね」

 

「まぁ、イギリス人のクォーターはお前だけじゃないって事さ」

 

そう言いながら豆を袋から出し、コーヒーミルに入れる。

 

 

豆を挽くレバーをぐるぐる回しながら、有名な肉焼き音を口ずさむ。何か回すとなるとこれやりたくなるんだよな。

 

 

「ほらよ。エスプレッソ・ルンゴ・ドッピオにカンナだ」

 

エスプレッソ・ルンゴとは抽出量を倍に……要約するとコーヒーを薄くという意味だ。ドッピオはエスプレッソ2倍、豆を20gで60ml抽出しろという事でつまり『Lサイズコーヒー味薄めで』という事だ。因みにカンナは角砂糖1個という意味だ。

もう混ぜてあるので飲めるだろうよ。

 

 

「……ふーん…ちゃんとしたイギリス産の豆ね。どこのお店?」

 

「コス○コーヒー」

 

「あー。まぁそこが普通よね……」

 

そう言いながら味を楽しんでるようだ。

 

「味なんかどうでもいいだろ。それよりだ」

 

同じ物をキンジも啜りながら、テーブルの椅子からアリアを指差す。

コラ。人を指さしちゃ駄目だろ。

 

「今朝助けた事には感謝してる。それにその……お前を怒らす様な事を言ってしまった事は謝る。でも、だからってなんでここに押しかけてくる」

 

キンジの口がへの字に曲がってる。アリアの方はカップを持ったまま、きろ、と目だけ動かしてキンジを見る。

 

「わかんないの?」

「分かるかよ」

「あんたならとっくに分かってると思ったのに。んー……でも、そのうち思い当たるでしょ。まあいいわ」

 

「そんな適当でいいのかよ。大体あんた達って聞こえたが?」

 

なんか一瞬だけ空気扱いされたが、まぁ些細な事だろう。

それよりキンジだけでなく俺も含まれているのか。

 

「……あんたも参加してもらうわ武ノ神黑紅。Sランクなんでしょ?それなら貴方も問題ないわよね」

 

いや困るんだが?

 

「おいおい。同じ強襲科とはいえ何も説明無しは困るぞ?」

 

「おなかすいた」

 

…腹立つなこの幼女体型……急に話題変えては手摺りに体をしなだれかけさせるし。

 

「なんか食べ物ないの?」

 

「図々しいなおい、良い度胸してるじゃねえか」

 

「お、おい黑紅落ち着けよ!」

 

こいつ…『もてなされて当然』な態度取ってムカつく…祖先がアレなら子孫もこうで仕方ない。思わず腰の刀に手が伸びてしまった。

 

「…今食材は切らしてるんだ。下のコンビニエンストアで調達するつもりだ」

 

「ああ、あの小さなスーパーのことね。じゃあ、行きましょ」

 

「じゃあって何ででじゃあなんだよ」

 

「バカね。食べ物を買いに行くのよ。もう夕食の時間でしょ」

 

「まぁそうだな……行くぞキンジ」

 

「あ、あぁ…」

 

 

話が嚙み合わない。シカトもするし、本当に腹が立つ。このままだとストレスでどうにかなりそうなので2人だけで行こうとすると、アリアがソファからポーン!とジャンプして立ち上がった。

 

「ねぇ、そこって松本屋の『ももまん』売ってる?あたし、食べたいな」

 

こいつ……用事が終わったら叩き出してやろう。

 

 

 

 

 

ももまん。一昔前にブームになった桃型のあんまん。

 

このアリアはそのももまんを、コンビニにあるだけの7つ全てを買ったのだった。

 

テーブルについたアリアは今正に5つ目を平らげたのだ。

 

キンジはハンバーグ弁当、俺は弁当ではなくパリパリ麺サラダをおかずに白米を食べている。キンジは「早く帰れ」と目で訴えているが、そんな事は気にせずにアリアは六つ目を味わっていた。

 

 

「ていうかな、ドレイってなんなんだよ。どういう意味だ」

 

強襲科(アサルト)であたしのパーティーに入りなさい。そこで一緒に武偵活動をするの」

 

「何言ってるんだ。俺は強襲科がイヤで、武偵高で1番マトモな探偵科(インケスタ)に転科したんだぞ。それにこの学校からも、一般の高校に転校しようと思ってる。武偵自体、やめるつもりなんだよ。それに、よりによってあんなトチ狂った所に戻るなんて──ムリだ」

 

「あたしにはキライな言葉が3つあるわ」

 

「聞けよ人の話を」

 

「『ムリ』『疲れた』『面倒くさい』。この3つは、人間の持つ無限の可能性を自ら押し留める良くない言葉。あたしの前では二度と言わないこと。いいわね?」

 

そう言い切るとアリアは最後の一つをはむっと食べて、指のあんこを舐めとる。

 

「キンジのポジションは――――そうね、あたしと一緒にフロントがいいわ」

 

アリア…ポジションというのはもっと大人数の時に言うものだ。俺がいなくても二人で前衛に立つというバカの考えた作戦なんて普通思いつかんぞ。

 

「よくない。そもそもなんで俺なんだ」

「太陽は何故昇る?月は何故輝く?」

 

急に話が飛んで行ったな。というか質問に質問で返すな。

 

「キンジは質問ばっかりの子供みたい。仮にも武偵なら、自分で情報を集めて推理しなさいよね」

 

その言葉には同意するが、もう限界だ。このわがままお嬢さんにガツンと言わなければ。

 

 

 

「調子に乗るなよアリア。誰もが実力者の言う事を聞くと思ったら大間違いだ」

 

「何よ!あたしの言ったことに文句でもあるの?!」

 

「まず一つ、お前は自分勝手すぎる。キンジの実力だけ調べといて探偵科に移った経緯を調べてないからそういう我儘で身勝手な行動を取る。武偵以前に人として問題だ。面倒くさい」

 

「っぐ…!」

 

「二つ、お前は不平等だ。聞きたくも無い言葉は誰しもあるだろうが話し相手の意見を無視してまで言うことでは無い。その上お前は生まれ育ちが身にしみて自分がもてなされて当然と思ってる。キンジはお前の素性は一切調べてないのに不平等だ。無理がある」

 

「んぐっ…!」

 

「三つ、お前は隠しすぎている。奴隷といったが、仮にも関係者になろうとする人間に黙って力になれなんていうか普通。隠していることなのに途中で察しろと言われるのはごめんだ。知ろうとすることも疲れるんだぞ」

 

「…うぅぅ…」

 

「いいか、お前のいう『人間の可能性を押しとどめる』ってのは言葉だけじゃない。人間そのものだってことがある。今のお前がまさにそれだ。どうやったらお前に手を貸してくれるのか、ちゃんと理解してから言え」

 

「…黑紅…」

 

俺から言われたことで少しは考えているのか、アリアは俯いている。キンジはこんな俺を見るのは初めてじゃない。というかこういう風にクラスメイトや下級生、上級生に物申したことがある。話を聞いた奴らは全員話しかけた時の勢いを失って、まるでしぼんだ風船みたいな声になる。まぁ、言葉が響いたと考えればいいのだろうか。

 

「……私には…時間がないの…」

 

「時間がないからこそ時間をかけて説明しろ。人と関わるってことは、その人の時間を奪ってるんだぞ。それならいっそ、これから聞いてなかったと文句言われて時間かけないよう言ってやるのが一番だ」

 

「……」

 

黙ってしまったので少し言い過ぎたのかと心配し始めると、急に立ち上がった。

 

「…どこまで説明していいかわからない…ちょっと頭冷やして考えたいから…お風呂使わせて…」

 

「おう。大いに悩め。夜は長い、時間もある。…キンジ。いいな?」

 

「……ああもう…わかったよ。話を聞いてやるよ。その代わりちゃんと交渉してくれ。言葉のキャッチボールはちゃんとな」

 

「……わかったわ…その…ありがと…」

 

そういって脱衣所まで歩いて行った。それを見届けた後、キンジが問いかけてきた。

 

「黑紅。お前なんであんな奴に耳を貸すんだ?あんなに色々言ったり、あいつの事が嫌いなんだろ?」

 

確かにキンジの言う通り、俺が嫌いになる要素が多いものだった。だが……

 

「キンジ。あいつも言っていただろ。自分で情報収集すればわかることだ。俺は奴の事情とか全て調べがついている。だが見ただろ?あのままでは卒業して武偵になっても人様に迷惑をかけるだけだ。できそうな修正は今のうちにしておかないと本気で将来困ることになるんだ」

 

アリアが腹立つことをしていた事とアリアが頼みたい事は全く別物だ。ただ人に頼む態度に思えなかったから文句を言っただけだ。

 

「いいかキンジ。あいつに関する情報を明日ちゃんと調べろ。そうすればあいつが何故お前を選んだのかわかるはずだ」

 

「お、おい黑紅!お前何言ってるんだよ!俺は武偵をやめるんだって…」

 

「なら武偵最後の事件になるな。いいか?武偵憲章8条「任務はその裏の裏まで完遂すべき」を忘れるなよ」

 

「なんだその普通に終わらせる気がないような忠告は……」

 

普通じゃ終わらないからなこの事件……まぁこう言えば否応なくアリアに協力してくれるだろう。

 

 

そんな風に安心しようとすると

 

 

……ピン、ポーン…

 

 

慎ましい(・・・・)ドアチャイムの音が響いたのだ。

 

 

 

*1
犯罪現場や証拠品の科学的検査を習得する学科。学内での事故や犯罪等の痕跡・遺留品の調査も担当している。探偵科と協力して捜査にあたることが多い。

*2
探偵術と推理学による調査・分析を習得する学科。武偵高の中では比較的まともな教員が在籍しているらしい。キンジと理子が在籍している。外部からの依頼で迷子や行方不明者を探したり、未解決事件のプロファイリング、浮気調査なども行っている。




長らくお待たせしました!

やっと更新ができましたね。

今回は原作を読んだ時の自分の感想を黑紅を使って入れました。賛否両論あると思いますが、「あ、こう感じたんだな」程度に読んでくれればいいです。

さて、また更新した時に会いましょう。

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