出すことにしました。
書いてて思ったけど、視点やら見方によって正義って脆いんだなぁ〜っと。どっかのセリフで見たことあると思い出しました。
俺の判断は間違っていたのだろうか?
脳無にやられて保健室に居る夢をよく見るようになった。
そこには俺と鞘無だけ残り、俺は鞘無に何度もこう言う夢を見る。
──教育者として、俺はお前を叱らなければいけない……ただ、一ヒーローに助けられた救助者として。鞘無…お前というヒーローに感謝もしている。だから……鞘無、俺を助けてくれて……ありがとう。
勿論これは夢でありこんなことは言っていない。
ただあの時、俺は鞘無に間違いなく恐怖を抱いた…。
あの時俺は感謝も叱咤も何一つ言えなかった……。
つい最近まで中学生だった子供が、自分よりも強い相手を圧倒していたのだ。あの時に俺は鞘無をオールマイトの様な自分ではどうしようもない相手……………だとは思わず、自分では絶対に勝てない悪だと植え付けられた。
気絶する直前の光景。
あの脳無に鞘無は笑って切り刻んでいた…。
殺すことに躊躇もなく……。
多分あの時から俺は生徒という枠組みから鞘無を外してしまったんだろう。
だから翌日、雄英を辞めたいと言った時は予想外だった。
いつもクラスでおちゃらけている様な生徒だった鞘無が、あの脳無を圧倒して斬って殺して笑っていた巨悪とも言えた鞘無が…。
あそこまで弱っているのに、俺には何か違和感があった。
それこそ、何か辞めなければいけない理由があるかのように。
ここ二、三日で人間が変わりすぎている。
明るかった生徒が何かの拍子で暗くなったことは数年に1度見たことがあるが、多分それとはまた別種のもの。
理解できないという感情しか出てこなかった、鞘無の叫びも、怒りも、ぶつけられても……俺は捕まる前のヴィランの癇癪の様にしか聞こえなかった。
一度悪と認めてしまえば、固まった考えが離れなくなる。
一つ一つのすれ違いや、何かが噛み合わず狂わせることになったのだ。
小さな歯車に少しづつヒビを入れて……。
ヴィランを乗り越えた雄英一年。
世間じゃそうやって持て囃しているが、凄いと言うよりも俺の中では誰も死ななかった安堵しかない。
あの脳無、あれに勝てるのは教師陣でも少ないだろう。
あれに勝てる存在は、武道を極め、個性を巧みに使い、心に芯を持つ。『心·技·体』を持つもののみ。
それが今回は鞘無だった……飛び抜けた戦闘センス、個性を活かす技、そして………未成熟だった心。
あの日、俺が鞘無をヴィランとして見ていなければ……ばぁさんにメンタルケアの申請くらいは出していたのかもしれない。
正直…雄英を辞めたいと言われた時に俺は安堵した。
厄介な生徒が……俺の許容を超えた生徒を見なくてもいいと教師として最低と思えてしまうことを思いつつ。そして校長が止めた。
母子家庭の鞘無には他のヒーロー科のある学校への編入は少し厳しい…。ということだった。
それを聞かされてなんとも言えない気持ちになる。
だから俺は途中からでも奨学金の貰える仕組みのある、ヒーロー科の学校を探して……ちょうど昔事務所が近かった時の知り合いのヒーローが教鞭を奮っている学校があると知り手を回した。
雄英と比べれば施設などのグレードは下がるが、それでもいい学校だと言えるだろう。
だから、俺はそれを直ぐにまとめて校長に話さずに鞘無の家に行った。
面倒事を押し付ける……その自覚はある。
ただ、それでも俺は……。
鞘無の家にスーツで赴き、鞘無の母親と面談をする。
昨日から鞘無が1日吐いたりしてもう見ていられない……と、何故鞘無が殺人者扱いされないといけないのか……と。言われ何も言えなかった。
1日吐いた?
精神が病む?
耳を疑った、あれを未だに演技だと疑っていた故にだろう。
マスコミがヴィラン殺害を嗅ぎつけて、ポストに変なものが入っていたり電話線を抜かないと本当に大変だと……。
……ああ、俺もマスコミが嫌いだよ。
信じてやれない、俺は言おうとして辞めた。
その時に鞘無の母親は「息子の好きにさせる」とだけ言って帰ってきた鞘無と交代で部屋に入ってきた。
隣には3年の波動がいた事には驚いたが、それよりも鞘無本人を見てギョッとした。
校長室では正面から見られなかったからか……それとも俺が見ようとしていなかったからか…。
明らかに鞘無はやせ細っている、顔色も悪くゲッソリとしている。
一日中吐いていた…というのは嘘ではない。
そして多分雄英を辞めたいということに…恐らく裏はない。
この時…俺は何をしているのか。
そう思ってしまった。
弱っている生徒に向かって、俺は何をしている?
退学できない生徒に追い討ちの様に転校を勧める?
これがもし自分にされたらどう思う?
俺は教師として胸を張って言えるか?
途端転校を勧めるのに気が引いた…。
なぜなら、もし今の鞘無に言うのは……。
まるで─────…………。
多分これが決定打だったと思う。
鞘無から出た言葉は拒絶だった。
ヒーローに頼らない……それをヒーローの卵に言わせた俺の罪は重い。
遅すぎる認識だったと自分でも思う。
いくら化け物のように強く、敵を殺せる冷淡さを持っていても……。
まだガキだ……。一回りも小さいガキ……。
一つ一つの判断は間違っていなかったと思う。
教師という立場から脳無殺害に対して感謝を言わなかったこと。
要注意人物を卵達から離すために転校を勧めたこと。
教師という立場でなかった場合。
先生であり、そしてヒーローであったなら……。
違う言葉が出てきたのではないだろうか?
そう思わずにはいられない。
夢を見る。
あの日の選択を間違えなかった夢を。
そこには笑顔な鞘無がいて、A組の面々がそれを囲って…体育祭やら文化祭やら楽しんでいる光景。
そして夢は醒める。
腫れ物を扱うかのようなA組の面々は、怖がって鞘無に話しかけにいかない。それは1部の教師にも言えることだ。
俺がこんなことを言う資格がないのは分かっている……ただ、悪夢ならば覚めて欲しい。
そう願わずにはいられない。
そうしてやってきた体育祭。
ロボ無双から始まり騎馬戦まではルールの範囲で活躍していた…。
解説として呼ばれた事を最初こそ恨んだが、悪いイメージを払拭できるチャンスじゃないかと考え、俺は観客から見ても分かる位に肩入れした…と思う。そこまで強い個性では無いこと、そこら辺も伝えて一位をもぎ取ったということを…。
しかし、本戦から話が変わった。
切島との戦い、それから雲行きが怪しくなった…。
切島への内部破壊。初めて見る技だった。今時武術を納めている人は珍しい…なぜなら個性を使う戦いが1番強いからだ。
今年は珍しく武術を使う生徒が二人いたが、こんなことは稀だ。
個性頼りのパンチやキック。
柔術を見おう見まねでやる生徒は一定数いるが、それは付け焼き刃故に脆い。故に俺の捕縛術も殆ど独学。
その知らない……という恐怖を思い出す。
そして鞘無の発言が聞こえた。
──今作って使ってみた…と。
騎馬戦でうけた個性をインスピレーションとして作ったと。
内部破壊。
それを考えた時に俺は動いていた。
──それを使えば失格だ…と。
この時の判断は今でも間違いだとは思っていない、他の人よりも頑丈な切島はその内部破壊とやらを受けても倒れずに向かうだろう。
……それが問題だ。
もし、試合が終わった時に切島の内臓が爆発でもして吐血でもすれば……。
しかし、ふと思う。
これを使ったのが同じ武術を嗜む尾白だった場合、俺は止めただろうか……?
恐らく止めないだろう、脳無を殺したイメージが湧きすぎている。
故に個性による直接攻撃も封じた。
全国放送で部位欠損だなんて、ヒーローとしても相当やばい。
個性の一部使用不可
武術による攻撃無し
言ってから気付く、ならどうやって勝て…と。
勝ち目なんて無い……無いはずだった。
しかしそれは直ぐに覆させられた。
試合中に妙なちゃちゃを入れて切島にも悪いことをした…。
2回戦、緑谷との戦いは圧倒的だった。
教師陣から見ても緑谷はオールマイトに気に入られている…。それが教師陣から距離を置かれている鞘無には我慢ならなかったのかもしれない。試合時間はそれほど長くなく、それでも深く考えさせられる試合だった。
終わり次第に席を開けて鞘無の元へと走る。
多分手遅れなのかもしれない、でも止めなければいけない。
気持ちが先行した…。
もっと信じてやれれば、もっと教師として鞘無を見てやれば、もっと───。
もっと違う道もあったのかもしれない。
──どけ、邪魔だ。
その言葉が嫌に響いた。
あの時の言葉、ヒーローに頼らない……その言葉がリバイバルする。
戻れなくなる。ヒーローを目指す卵として…。
落ちれば……その先は……。
ちゃんと拒絶された。
今回はもう決定打とか分岐点とか……そんなちゃちなものじゃない。
引き戻せたかもしれない道を…。
もう確定して助けてやれないと……手は届かないと。
今まで手を伸ばしていた事に今更気付く。
そしてその手を叩き落としていた事にも…。
よく耳にする言葉が頭に流れてきた。
──職業ヒーロー。
ヒーローとは何だったのか?
心の弱い生徒を寄ってたかって虐めるものの名称だったか……。
なんともまぁ……滑稽なものだ。
ーーーーー
左手の調子を確かめる。
リングを割れる程の力が出せるとは思っていなかった。
感覚に鈍感になったが、逆にそれは脳の抑制から逃げられたということなのではないだろうか? そうでなければ寸勁……インパクト如きでリングを割れるわけが無い。
いくら力を一点に集めたとしても、限りなく不可能に近い。
もしかすればこの腕は既に俺の体ではないのではないだろうか?
トカゲの尻尾切りのように切り離せるのではないだろうか?
右手で左手首を掴み引っこ抜こうとする。
「──悪い、今いいか?」
その時後ろから声をかけられた……。
「轟か…どした?」
「大丈夫か?」
……………。
一瞬だけ何を言われたのか分からなかった…。
大丈夫か? それは何を指して言われた言葉なのか…。
「何のこと?」
「…いや何でもねぇ。俺がここに来たのは──」
そう言って轟が語ったのは一つの悲劇。
母親のこと、父親のこと、兄のこと、姉のこと。
それは轟の家の事…。
どこにでもあるような、どこにでもないような話。
要するにはDV気味の父親が家庭をめちゃくちゃにした…みたいな事。
「そうか、それで何でそれを俺に?」
「お前に切っ掛けを貰ったからだ」
「切っ掛け?」
「ああ、俺は親父を否定することにしか興味がなかった。でもそうじゃなかった、俺はヒーローになりたかった……それを目覚めさせてくれたお前への……礼っつうか…なんて言うか。まぁそんな感じだ」
「ああ、結構痛いの入れたもんな」
そう言って俺は自分の左頬を触って轟を見る。
轟の左頬にはガーゼが貼っており、結構腫れるだろう。
「ああまだジンジンする」
轟は自分の頬を撫でて恨めしそうに……という感情はなく、もっと清々しい顔をしている。
乗り越えた……その言葉が俺を置き去りにする。
乗り越えられた轟と…乗り越えたフリをしている俺。
似たようで似ていない。
だから……。
「おめでとう」
「…? 俺はお前に負けたんだぞ?」
「ああ、でも……おめでとう」
「……おう?」
だから此奴らが……俺は狂ってしまいそうに成程に羨ましい。
ーーーーー
『体育祭もいよいよ大詰め!! 泣いても笑ってもこれが最後だ!! それと注目しろよプロヒーロー共!! 超新星はここにいるぜ!!』
『紹介不要!! 知りたきゃ自分で確かめな!! 早く始めろや! スターートーー!!!』
「おい、プリン野郎」
「なんだ、爆発三太郎?」
「るっせ! 誰から聞いたそれ!? …んなこたぁどうでもいいんだよ」
「──使えよ、直接攻撃にテメェの個性を」
眼力で殺しそうな程に圧が高まっている爆豪がコチラに向けてそう言い放つ。
「俺は優勝したい…失格になること自分からするわけねぇだろ」
「知るか、つかこれで最後だお前が失格になろうが関係ねぇ」
「関係ないって、お前…あ、もし俺が勝って失格になってもメダルくれる的な?」
「違ぇ、それ使ったお前に俺が完膚なきまでに叩き潰して俺が勝つからだ!!」
「そりゃ、穏やかじゃないな」
空気を変える。
纏う空気を変える。
心に鎧を纏い、そして狂気を………笑みを顔面に貼りつけろ。
──そうすれば………。
「主審! それでいいの!?」
確認のために俺が聞く。
こんな体育祭という全国放送の場所で、そんな下がることはしたくないだろう。ここで敢えて相澤に聞かなかったのは、場など関係なく合理的判断をするからだ。それに俺への却下のラインが随分と低い。
「えっと……許可し…………ます!」
随分と葛藤していたみたいだが、最終的にミッドナイトから許可を貰えた。
「じゃあ爆豪、全部使うから」
「たりめぇだブッ殺すぞ」
「──死ぬなよ」
「ぶっ殺す」
大きな爆発音が開始のゴングとなった。
チカチカと爆豪の手のひらで爆発がおきる……そしてその爆風、爆音全てが体で感じられて……。
「死ねカス!!」
爆豪の手のひらをコチラに向けた右手の下から上に勢いよく……。
爆発が目の前を通る。
爆音や爆風に惑わされがちになるが、元々爆豪の身体能力はずば抜けている。それこそクラスで2番目に体を扱うことが上手い。
恐らく武術を覚えさそうとすれば、一月でそこそこには仕上がるだろう…。
「くそ、かすった」
「避けんじゃねぇぞ!!」
爆発が更に大きくなり、普通に体に当たる。
威力は調節されていたのか、体が吹っ飛ぶほどではない。
後ろに少し下がり、当たった場所に手を持っていく。
折れてはいないが、打撲跡が残ることは確定した。それよりも今置かれている状況はソコソコ不味い。なにより近接で間合いが測れないということが1番厄介である。
爆発は自由自在で威力も規模も変えられる。
見抜こうにも…………。
「そういえば爆豪、お前爆発前にパチパチしてるそれなんだよ」
「教えるわけねぇだろ!! しね!」
爆発がおきる前に、爆豪の手のひらが光る。
もしかすれば、この光と直後に起きる爆発は何か関係があるんじゃないか?
速攻で刈り取りにいこうにも、爆豪なら一発食らっても爆発を当てて反撃してきそうだ。
だから爆発に関する事を一つくらい解き明かしておきたい。
自損覚悟! 何てもの付けたくはなかったけど、そうも言っていられない。全力には全力を……敵意には敵意を返そう。
右手を触手剣に変えて爆豪に攻撃する。
個性攻撃が許可されたと言っても、勿論逆刃刀でやる。
爆豪に牽制のつもりで……。
──ドガ!
右手にぶつかった感覚が走る。
避けられたはずの攻撃だ、それを爆豪は……。
「やっと止まりやがったなカスしね!!」
当たったことに驚く俺は、爆発で近くまで来た爆豪に為す術なく攻撃をモロに受ける。
爆発の攻撃腹にくらい、後ろへ仰け反る。
当たる直前に体を後ろに引いてダメージを減らしたが、爆破は爆破。人間が耐えられるキャパを超えている。
「ってぇ」
焦げてきたジャージを脱いで後ろに投げる。
「テメェ、個性で攻撃にトラウマ持っただろ」
「……は?」
「人に当てる瞬間、テメェは振り切らずに一度引く。考えてんのかしてねぇのかは知らねぇがな」
爆豪の言い分に納得させられた。
確かに…俺は攻撃をビビっている……と思う。
おれの件は感覚も伝わる、当たった瞬間に脳がブレーキをかけているのでは無いだろうか。
少し前の脳無、そしてその楽しさ。
切るのは楽しい……そう思ってしまい、その沼に落ちるのが怖いと思っている。
「ふふ」
だから笑おう。
こいつを殺す……だなんて思わなくていい。
笑えばいい。
狂気を貼り付けなくても、嗤わなくても。
ただ、爆豪とのバトルを笑えばいい。
「爆豪」
右手を逆刃刀から拳に戻す。
「ぶん殴る」
「寝言は寝て死ね」
流水岩砕拳
今できることは拳を握ること、そして相手をぶちのめすこと。
それ以外にない。
腹を襲う爆破、右拳から伝わる筋肉の感触。
耳に響く爆音、吠える声。
切島と違って拳がもう壊れることはない。
純粋に殴るのみ。
腹にどれだけ衝撃が来ようとも。
顔面にどれだけ爆破の爆風が来ようとも。
崩れることなかれ…。
拳を握れ。
「秘剣シリーズ」
握る拳を広げて、指先にまで力を込める。
これは握った拳よりも強く、それでいて殺気を飛ばせられる。
「壱の太刀【三閃】」
両脇腹に右肩を手刀で同時に抉る。
(素手でもできんのかよ!?)
爆豪がなんとも言えない表情でこちらを睨むが、その顔面に拳を握って叩き込む。
途中横からの爆破で拳の進路を妨害されて拳は爆豪の頬を掠めるだけ。
その進路を妨害した手のひらをあちら側に向けて、爆発。
とんでもない速さの肘打ちが俺の眉間にぶち当たる。
………ただの泥試合だ。
殴って殴られて、爆破して爆破されて。
俺の轟戦で見せたような華麗さはない。
爆豪が常闇戦で見せた頭脳的な計算はない。
あるのはただお互いをサンドバックが何かと勘違いした男二人の攻撃のみ。
肘打ちで折れた鼻を正常な位置に戻す。
折れた時以上の痛みに襲われて涙袋が刺激され、涙が出てくる。
「くっそ、痛てぇ」
爆豪は肩に入れた三閃の内一閃で外れた肩を戻すように爆破をおこして無理やり入れ直す。
(そんなこともできんのかよ)
自分のことを棚に上げるが、爆豪も相当クレイジーだ。
両者体はボロボロ。
会場も盛り上がる派閥と引く派閥が出てきた…。
そんななか、俺たちは気にしないとばかりに限界を超える。
「しぃぃいねえぇぇぇ!!」
爆豪の全力の爆破が前に打ち出された。
以前の訓練で外すや掠める……といった優しいものじゃない、明確に当てに来て…そしてそれは殺す。
本気でそう受け取れる程に。
これにはさすがに右手を剣に変えて──。
「【流】」
攻撃を受け流す。
攻撃と言うよりも爆風であったが、それを
「だろうと思ったぜ!!」
流した故の硬直。
【流】は攻撃を1度だけ捌く型であるが、連発は出来ない。全身を使って逸らすのだ、使ったあとは少しの間だけ身動きが取れない。
これを見せたのは殆どないのに、それをつくことが出来る戦闘センスに直感。
──恐れ入る。
爆豪の爆破の手がこちらを向いた時に。
動けないなら……無理やり動かせ。
頭突きで爆豪の鼻っ柱を折る。
「──ッ!! ソが!!」
頭突きを受けて仰け反る瞬間に痛み分け、とでも言うように爆豪は爆破を放って俺に直撃する。
こんなんばっかだ……。
顔面も凸凹になって。
「鼻っ柱折れて随分とイケメンになったじゃねぇか爆豪くんよぉ」
「黙れカス」
軽口にも死ねカス黙れの三拍子で返される。
勝利に貪欲なやつ、爆豪は全体とは違い気絶しないと諦めない……そういう類の男だ。
「ぶっ殺す」
爆豪は手のひらにチカチカと爆破を始める。
そしてそのまま上に飛び、上から高速で回りながら落ちてくる。
「ちょ! それはヤバい」
事態の深刻さに気が付き、さすがに焦る。
自分の回転エネルギーを爆破に乗せての特攻。
そんなの受けきれるか?
流じゃできない、あれはあくまで直接攻撃してきた場合だ。爆豪のあれは近くで爆破して勢いそのままで…という範囲攻撃。
流するだけ無駄で終わる。
ならば──
技が完成する前に倒すしかない。
轟の最後と同じように。参の太刀の構えを行う。
目に爆豪の爆破の前兆が入り、目を細める。
爆豪は限界まで近づいて攻撃をぶつけたいはず。
俺はその完成の少し先を攻撃する。
攻撃しようとした瞬間、それが武術では1番つかれやすい。
攻撃と防御は同時に行えないからだろうと勝手に解釈する。
近づく爆豪。
爆破を上手く使って回転する。
狭まる距離。
爆豪は笑みを崩さずに此方へ殺気を飛ばす。
爆豪がクロスレンジに入った、ここから爆豪が使うまで。
近づく。
近づく。
近づ──いや、近づき過ぎだ!!
「かかったなカス! しねぇ!!」
大回転からの爆破……。
そう来ると誰もが思っただろう、それにあの前兆なら限界を超えた爆破が来ると察してしまう。
しかし、それは来なかった。
それはつまり、あのパチパチは前兆でも何でもなく。
爆豪が俺に使ったブラフ。
それを信じきってしまった俺。
故に爆破ギリギリまで詰めることを許してしまった。
しかし今は完全に爆豪の手中。
どちらも手を伸ばせば届いてしまうような距離。
──命運を分けたのは………体感時間の調節だった。
爆豪の罠にハマった瞬間。
俺は走馬灯を作り出した。
体感時間を極限まで遅める。
世界が止まるように遅くなり、ヤケにスローな世界になる。
大爆発が狙いではなく、右の大振り。
それが狙いと確信する。
今回は走馬灯を解かずに最後まで油断せずに行く。
右の大ぶりに左手を持っていき、衝撃を吸収。そしてそのまま左手を外に勢いよく払い爆豪のバランスを崩させる。
感覚が鈍いのか、熱さなどは感じない。
止められると思っていなかった爆豪の顔。その顔に右手を握って打ち込む。
しかしこの絶体絶命のピンチで爆豪の戦闘センスは光る。
その確実に入ると思われた右手ストレートに爆豪は頭突きを合わせて相殺。
やや爆豪にダメージがはいるが、それでもこの攻撃は失敗と言えるだろう。
──払った左腕を爆豪の胸に構える。
手はグーではなく、広げてパーに。
威力などいらない。
内部破壊もする必要が無い。
ただ、相手を押し出すために。
全てのエネルギーを相手をぶっ飛ばすために……。
「──インパクト」
左手の掌底が爆豪の腹に刺さり。
爆豪は──………。
「ま! だだ!!」
飛ばされた空中で……。
爆豪はリングOUTしないように、手のひらの爆破を使って阻止する。
「けて! たまるがぁぁぁあああ!!!」
ありえない程の執念。
しかし──
「いいや、これで負けてもらう……──
目に見え……指定するものは……。
『爆破』
個性には切れるものと切れないものがあった。
パイセンのビームから始まり、あれは切れた。
サイコパスの変身は摂取中も使用中も試したがダメだった。
この違いは何か?
それは目に見える個性かどうか。
だからビームは切れた……。
この仮定に間違いが無ければ…爆破に切れぬ道理はない。
右手を二又の触手剣にして……。
爆豪の両腕を切り裂く。
途端に爆豪の爆破の個性は発動しなくなった。
「──なっ!?」
空中で突然の個性使用不能。
そんなもの焦るなと言う方が無理だ。
空で自由に動けてた今までと違い、爆豪はただひたすらに落下するだけ。
空中で藻掻くが……効果はなく。
「………っくそおぉぉぉぉおおおおお!!!!」
爆豪は場外の地面を思いっきり殴った。
そしてそれが表すことは───……。
『決着ぅぅうう!!! 一年優勝はぁぁぁああああ!!! ヒーロー科一年A組!! 鞘無 剣心だぁぁあああああ!!!!』
出てきたのは喜びでも、歓喜でもない……。
ただただ安堵が体を支配して………リングに崩れ落ちる。
体が全部ボロボロだ。
あ、そっか俺右腕ボロボロだったんだっけ……。
骨を繋いだだけで、ボロボロなのは変わってないんだった。
しかも爆豪遠慮なく爆破してきやがって……。
「はぁー、疲れた」
リングの上で仰向けになり……。
俺は成し遂げられた安堵から……極浅い眠りについた…。
えー、大変申し訳ないのですが……。
今週の金曜までテストあるんで、次話は少し空きます。
ごゆるりと