モチベが………で、で、
……オワタ。
……………完全にオワタ…。
だから無理だったんだよ、峰田くんの言った通りで受験料が無駄になった。絶対落ちた…。
なんでかって?
………ヤマ勘外れた。orz
ーーーーー
燃え尽きました。
1年間死ぬ気でやってきましたが、どうやら最後の最後でダメだったみたいです。対策やら傾向やら万全にしていき、最後の年を越した辺りで時間的に詰め込むのが不可能となった大きな2つの問題のどちらを覚えるか? そんな境地に立たされ、直感に従ってソレを選んだのですが…。
外しました。
完全に外れました。
大問を大きく1つ外しました……。
そもそもアレだよ、模試の時ですら記述だったのに雄英は受験数が多いからってマークシートなんてアウトローな攻め方をするから悪いんだよ。あれが解けていれば7割後半から8割に届くところだったのに、よりにもよって配点の高い問題なんて聞いてない。
………あぁ、オワタ。
分からない問題をパイセンから合格祈願で貰った『合格鉛筆』という六角柱のスタンダードな鉛筆から離れ、五角柱の合格と掛けた鉛筆を渡してくれた鉛筆で俺はマークシートをいいことにこれで突破した。
試験官っぽいプロヒーロー? 教師? の先生から「何こいつ舐めてんの?」と圧のすごい視線を貰ったが、どうすることも出来ないので仕方ない。個性を使ってカンニングしてる訳じゃないので許して欲しい。
周りの人はコロコロ音煩くてゴメンね。
雄英の座学は最低でも8割とらないと実技での挽回は厳しいってパイセンが言ってたのに…。
実技もロボ壊しだったから、何点とったかなんて覚えてねぇよ。
峰田は自己採点では合格って言ってたし。
これでベストフレンドとのコミュも終わりか。楽しかったぜ峰田まん子。
………ぁぁ、どうしよう。
パイセンのこともそうだし、何より命が1番危ないサイコパス…。
今からでもヒーロー科受験やってる学校ってないのかな? 雄英の取り漏らしを士傑がかっさらってる! みたいな事のために日程ズレてたりしないのかな? いや無理だよな、士傑もかなりの倍率だし。
なら高望みせずにヒーロー科の定員割れを狙って………。
ピロン!
峰田からメールだ。
なんだと思い見てみると雄英からの合格通知を片手に、自室でパーティーメガネにクラッカー、所々に見えるお菓子やジュースで宴を始めていた光景を画像で見せられる。
どうやら峰田は雄英に合格したらしい。
受験疲れから解放されて、それはもうはっちゃけている。
俺はおめでとうのメールを峰田に返すことにする。
ーーー
お前1人とか虚しすぎだろ、しかもその
メガネだせぇわ。てか郵便早くないか?
電子メールでの合否はやってないもの
と思ってたんだけど。そんな違法行為で
受かって嬉しいの?
ーーー
よし、送信っと。
峰田の合否が来たってことは、そろそろウチにも届いたって事だよね。
……さて、合格でも不合格でも見ないことには始まらんし。
もし不合格でもパイセン許してくれるよね、癇癪はもう仕方ないにしても…介錯はされないよね?
いや本当に死活問題だから大事なんだけど………。
やばい、やっぱり見たくないんだけど…。
……
…
よし、弱音退散。
峰田からの追撃のスタ連もケータイ触ってないから、実質ノーダメージですから。
さて、逝きますか!!
………のまえに、峰田くんに返信しとこう。
スタ連ばっかだけど……やっぱり最後は文字で占めてた。なになに?
ーーー
合否求む!!
ちなみにオイラ、入試8位らしい!
ーーー
まだ見てないけど……まぁいいか。
今のところ確率の高い未来を伝えとこう
ーーー
不合格でござる
ーーー
そっこーで返信が返ってきた。
ーーー
草
ーーー
だから生えねぇよ。
人の不幸を笑うヒーローでいいのかよ候補生。いや、俺も俺が受かって峰田が落ちたら一生指さして笑うけど。
ーーー
うそ、今から見てくる
ーーー
さて、引けんくなったし、みるか!!
………
……
…
と言ったが、やはり決心がつかん。
いや普通に早く見に行けよってことだと思うよ、それはもう普通に考えて考えてもどちみち見ることになるんだからはよ見ろやって。
分かる、そんなこと分かってるさ。でも落ちてると考えると見に行く足がくすむ。
逆説的に不合格をみるまでは、俺は雄英受験生。
………やばい、入学式まで見ないってのもありだな。
………はい、なしですよね。今度こそ行ってきます。
ーーーーー
「もしもしー」
『おう! 鞘無か! 合否どうだったよ! オイラはなー! あの雄英で──』
「受かってた、しかも次席」
『………』
「俺も祝いたい気分だから飛び入り行っておっけー?」
『おー! まー! えー!!』
いやー! やっぱり俺って天才なのかな!
入試…何位だったっけ?
あれ? 俺より頭良くて、俺よりロボなんてお誂え向けな敵だったのに? 1つでもボールぶつけて倒せば終わる簡単な作業だったのに!?
それで俺に負けちゃったのかなぁ!!??
峰田の部屋で煽りに煽り煽り散らして煽った。
目の前に買ったであろうポテチとファンタ…は口に合わないのでべプシは持参。それ以外の物を暴飲暴食することにより、峰田の部屋を荒し回り、俺の心もそろぼち覚めてきたので帰ることにする。
腹いっぱい菓子くって、ベプシで流し込むって…やべぇな!!
ポテチとキノコのアマジョッパコラボが半端なくベプシを進ませる。
それに酢だこにキャラメルも中々……いや、あれは不味かったな。
「では峰田くん! 学校で!」
「おうとも! オイラ達の残り少ない中学校生活が待ってるぜ!!」
もちろんそんな清らかな理由でこんなことを言っているわけじゃない。
雄英合格! それも同じ中学から2人も出た。
ヒーロー
人気
カリスマ
高収入
神の四拍子とも言えるソレが俺たち性欲持て余し気味の中坊が手に入れてしまった。
これはもうアレだ。
(自主規制)
ーーーーー
『よーい! スタァァァァァァトォォォォオオオ!!!』
プレゼントマイクの声がだだっ広い試験会場によく通る。
毎年のこと、スタートの言葉に反応できる生徒は少ない。いや、ビクついて反応している生徒は多いが、一歩踏み出す。その動作をする生徒は毎年いるかいないか。
なのだが……どうやらこの声に反応できる受験生は、1人の教師が確認できるだけで2名存在した。
1人は去年ヘドロ事件で一躍有名になった、折寺中学の爆豪勝己。
確か相当強い個性で、ヴィランから単身で抗がったとか。
そしてもう1人は如何にも平々凡々と呼べなくもない受験生。資料にある個性では何故か枠1杯になる程の修正テープがつけられており、その上から申し訳なさそうに判子と個性名『体剣』と書かれている。
何があった? と思わなくもないが、毎年蟻のように湧いてくる受験生の合否を目を凝らして見なければいけないのに、わざわざ訂正されている書類に文句をつける暇があるほど雄英高校の教師は暇ではない。
「今年は2人も動けたなんて凄いじゃないか、ひょっとしたら豊作かもね」
この場で1番権力のある根津の発言に教師陣は頷いて返す。
片や掌から爆発系の個性を使って試験場を縦横無尽しているが、もう一人は……。
「彼の個性は発動系の体の変身系じゃないの?」
「……ええ、その筈です」
ミッドナイトの言葉に頷くイレイザーヘッド。
画面には既に電子媒体に読み込まれた受験生の願書がインストールされており、気になった生徒のものを直ぐに見られることが出来る。
そこには何故かヘラヘラした顔で撮られた証明写真と、その男が書いたのかとさえ疑わしい達筆な文字。そして一同の目線が集まったのは個性。そして詳細の場所。そこには簡潔にこう書かれていた。
『体は剣で出来ている』
一同の頭に? が浮かんだことは言うまでもないだろう。
現に先程のもう一人反応できた爆豪勝己ならば、個性『爆破』に詳細で『手の平から爆発を起こすことが出来る』と簡潔に書かれている。
何がどのようにしてそうなったかのサイクルなどは不明だが、もし教師陣の想定する個性だった場合『体剣』の個性ならば詳細には『体を剣に変える事が出来る』と書くだろう。
それなのに……。
(何故に報告?)
数人は不気味さを感じ取ったが、約1名…イレイザーヘッドは考え方が違った。
(やっぱりコイツあほだ)
時は遡り筆記試験。
数百人の一斉受験の為にプロヒーローである教師陣でさえ試験官として駆り出されていた。
そしてそこの担当となったイレイザーヘッドこと相澤は一人の受験生に視線を奪われることになる。
…というよりも、数名の怪訝そうな雰囲気をだす生徒をみれば言わんとしたいことが分かる。
──コロコロコロコロ
何故か雄英の受験で鉛筆を転がしている受験生が一人いるのだ。
確かに雄英には記念受験というお遊びで受験する人が一定数いる。それを廃止することも出来ないのでどうすることも出来ないのだが。
(流石にこれは度が過ぎる)
注意すべき、もしくは即刻退出させるべき。そう思った矢先、一つの可能性が頭をよぎる。
もしかすれば、この男の個性は『運』を調節する個性なのではないだろうか?
有り得なくはない話だ。個性なんて千差万別、そんなものあるわけが無いと思わせる個性を嫌という程見てきた。
実際自分の周りにはやたらと声のデカい同僚と、思い出したくない笑わせにくる事務所の近いヒーローに覚えがある。
それならば…。
そう思い相澤はコロコロと鉛筆を転がす生徒に向かって個性を使う。
自分の個性ならば、万が一にも個性による不正は一切通さない。つまり相澤の個性に引っかかったなら、即刻退出。
しかし、それの効果は無かった。
(不発…となれば)
この受験生は本当に、なんの意味もなく本気で鉛筆を転がし出た目でマークシートを埋めていることになる。
注意を………と思ったが、教師の勝手な判断による気付かぬ内での個性無断使用。一応試験官としてここにいるので権限がない訳では無いのだが、冤罪をかけて周りから疎まれる可能性も考え相澤はその少年に注意することをやめた。
こんなバカに時間を使うだけ無駄だ。
記念受験なら実技で振るい落とされる、それにもし実技で好成績を残しても鉛筆の出た目でマークシートを埋めるなど、それこそ
そんな一幕があったことを思い出す。
(やはり運操作系の個性じゃなかったか…腕っ節はあるみたいだが。増強系でもないのに、何だこの異様な移動速度は?)
この疑問を持った教師はイレイザーヘッドだけでは無い。
戦闘向きではない13号ですら違和感を覚えている、増強系でないのに彼は何故ここまで早く動けるのか。
増強系ならば分かる、例えが大きくなるがオールマイトならば音を置き去りにするほどの速さで移動することも容易だろう。
だが彼は増強系ではない。
体を剣にする以外はいたって無個性と言えるのだ。
それなのにまだまだ現役である戦闘には超絶的な切り札とならない個性を持つイレイザーヘッドや、オールマイトのサイドキックを昔務めていたサー・ナイトアイという代表的なヒーローよりも…いや、それを凌駕する速さ。
「彼は個性の使い方がとても巧みだな」
教師陣の疑問を解消したのは新任であるオールマイトだった。
彼の目には他の人と違って、彼は個性を使って移動しているように見えるのだろう。
「見たところ走る時に足を弾力のある剣を代用するかのように使い走っている。それもかなりしならせた剣なんじゃないかな?」
その言葉になるほどとなったのは根津を始めとした一部の教師だけで、リカバリーガールのような戦闘から全く程遠いヒーローからは理解は得られなかったので、根津はそこには付け加えるように説明を続ける。
「昔行われていたオリンピックと似た存在であるパラリンピックで聞いたことのある話だね。確か走幅跳の選手は自分の足よりも義足の方を踏み込みに使う方がいいとされていたと聞いたことがあるのさ。それも体の剣と認識できる金属なら弾性を弄れるとしたら、この速さも頷ける。弾性に全振りして着地などのコントロールを考えなかったらね。現に彼は靴をまだ履けている。よく見ればその剣の適応が自在とするなら太腿からくるぶし、膝からくるぶし、範囲は分からないが服の下だからこそ見分けずらい。確かにオールマイトのいう通り個性の使い方がとても巧みだ」
2人の読みは正しいが、それに一つ付け加えられるなら剣心がおこなったのは、その剣に変える作業を一瞬でやり伸縮や生成すら速度に加えたということ。
服の上からでは見づらいが、彼の足はとてつもない速さで剣になったり普通の足になったりと大忙しなのは言うまでもないだろう。
更にいえば、その作業を全て頭で理解してやっている訳では無い。
いわゆる身体に染み付いた。そう言える代物だと言うことを覚えてもらいたい。
そしてこの速度で移動しなければ逃げられない悪夢達を……。
しかし、その次が本当の鬼門であることを知らない。
「爆破の子はとても派手だな、爆発音やら体の動かし方まで派手でヒーローらしい」
しかし……。
「…逆にこの子は」
恐ろしい程静かで淡々としている。
手を剣に変えて、走りながらすれ違うようにロボの急所を切り落としている。
爆豪勝己が剛とするならば鞘無剣心は流。
余りに派手さを感じさせない、ただロボを上手く殺している。如何にもヒーロー向きの個性といえど、使う人がこうなだけで。日本の古き良き侍やら忍者と後世に派手に伝えられてきた文化が、どうにも現代の静かな暗殺者に見えてしまう。
そして何よりも着目すべきはその速さ。
初見はオールマイトしか見破れなかったほどの早業。恐らく、彼をヴィランと設定したならば出会い頭にこの場にいるプロヒーローは何人殺されていて、何人が応戦できただろうか。
速さとはそれだけで脅威である。
それを知らしめて上へと上り詰めたホークスがいるので、なにか突出した技能とはそれだけで素晴らしい力となる。
他の受験生も贔屓目なしに見るのだが、やはりと言うべきか目を引かれるのはこの二人。
そしてその対となる関係に目を離せない。
方やヒーローらしい戦い方。
派手で民衆を引きつけるであろうスタイル。
対するはただとても静かで的確に。
ただ、目の前の敵を上手くコロスことだけを求めた淡々としたスタイル。
そして真価は試される。
ーーーーー
爆豪勝己が選んだ選択は逃げだった。
目の前の巨大な敵よりも、ポイントのある敵を取りに行くという姿勢。それは試験というこの場ならば最適解と呼べるだろう。実際この試験の真価を問われても、同じ行動をとる可能性は極めて高い。
しかし、しかしだ。
目の前の排除すべき敵に背中を向けた。
如何にプレゼントマイクから「おじゃま虫」「相手するだけ無駄」「0ポイント」と言われたとしても、退いていい理由にはならない。
だから教師陣は少し期待を孕んだ目でもう一人の……。
鞘無へ向いた。
だが見た光景は今日起こった全てが霞んでしまうような。
それほどまでに途方もないものを見せつけられた…。
今回ばかりは認めざるを得ない。
この試験で誰が一番視線を集めるかを、そして見られているなんてこれっぽっちも感じてなさそうな。
大衆へ見せられないような。
狂気を孕んだその笑みが、巨大なロボの影にたっている。
「────♪」
なにかを口ずさんでいる。
少年、鞘無剣心は目の前の敵に臆することなく、それどころか笑顔すらうかべて立ちはだかる。
あまりの恐怖に足が、膝が笑ってしまうようなこの場面で。
彼は歪なほど頬を緩ませて──嗤う。
そしてその笑みを絶やすことなく振りまき、そのいっそ不気味にも思える少年は体をではなく、体からいつからか出ていた血を使って剣を作り出した。
「『
いきなり歌い出す童歌。
誰しも1度は聞いたことのあるようなメロディーを口ずさむ彼、しかしそれは知っている歌のようで全身の毛が逆立つほどに不気味に感じられる。
我々の知っている歌なのかと。
「『London Bridge is broken down,
Falling down, broken down. 』」
ニヤリ、そんな笑顔がとても怖い。
そして0ポイントロボの陰に隠れていたと思ったら、ほんの一瞬の間に剣心は移動して剣を全て戻す。
現れた瞬間に切り伏せられたかのように見える。
現れても動かないおじゃま虫に向かって「これっておじゃま虫ってかオブジェじゃね?」「本当にスペース取るだけのおじゃま虫かよ」などの声が上がる。
それこそ学校側の不備で操作不良でも起こしたのかと思う受験生も何人かいたが、こうというならば構う必要もない。
本来なら動き、理不尽な暴力を叩きつけられるはずだった試験会場は、0ポイントロボへ対する邪魔だという感情以外は何も感じなかった。
ーーーーー
ガタリ!
椅子が床に倒れる音と、更にこの場で1番この少年『鞘無』に正当な評価を下していたオールマイトが急に立ち上がる。
(速すぎる、私ですらその速さを手に入れたのは全盛期になってから。しかも誰も見えていないだろうが、0ポイントへと与えた斬撃は私が見えただけでも5つ。それ以上は私の視力では捉えることは出来ずに正確な数は分からない。あの圧倒的な技量を持って恐ろしく速い斬撃。この場のヒーローもまだ第一線で戦うもの達、しかしこの斬撃を見切る人は一人もいなかった。異質さに気付いた、いや垣間見えたのは自分がナンバーワンたる直感か?)
…………否である。
断じて否。
これはナンバーワンなどという吹けば飛ぶような称号とは違い、腹に風穴を開けられた苦痛と共に思い出す。
あの速さ──
あの強さ──
そしてあの笑み──
それはまるでかつて対峙した巨悪──そのものではないか…と。
自然と拳に力が入る。
既に残り火とはいえ、彼の胸の中にある聖火は神々しく燃え続ける。
その炎が寿命という薪を燃やしていたとしても。
彼は依然オールマイトなのだから。
「どうしたんだいオールマイト?」
そんな焦燥を感じ取った根津はオールマイトへ話しかける。
その言葉にオールマイトも気を取り直し、なんでもないと言うと違和感を覚える。
(そういえば爆発音が聞こえてこないな)
あれだけの速度で切られたとしても機械は機械。電路などの環境から急に切断されバッテリーも切られたとしたら、爆発してもおかしくない。いや、爆発しない方がおかしいまである。
なのに──。
切ったということすら認識できなかったと言うのか?
いや、それはまた話が違うだろう。
その認識という過程には、動物の脳が関係しておりロボには一欠片も関係はない。
………ならば、戦闘不能にするコードだけを切ったというのか?
それはある意味、あのロボを真っ2つにするより難しいぞ。
……わからない。
「オールマイト?」
「は! いや、失礼。あまりにも将来有望そうな者がいたもので。しかし彼は凄い、個性への理解と応用ならばベストジーニストと肩を並べるやも」
「そうだね、あの技術。既に完成されていると言ってもいい」
「ええ、鞘無少年に爆豪少年。これは正に黄金の世代とでも言えるのではないでしょうか?」
「雄英に来る子なら毎年そうさ! でも彼はあまりに完成されすぎている、彼がここに入ったとしても──」
「お言葉ですが校長、その心配は無いですよ」
オールマイトと根津の会話に入ってきたのは相澤ことイレイザーヘッドだった。
「何せこいつ、筆記試験を鉛筆占いで乗り越えようとしてましたから」
「『…………』」
恐らく教師陣の頭にはこの文字が流れただろう。
(ああ、脳筋タイプか)
「……まぁ、彼も全て鉛筆占いって訳じゃないだろう? 最後の問題を運任せにしたい気持ち、僕は知らないけど分からないこともないさ」
などと人間よりも知能が高いハイスペックは何か言っているが、この場では嫌味にしか聞こえない。
「いえ、最初の方は自重してましたけど。国語は殆ど鉛筆転がしてましたよ、マークシートなので1問に5個当てはめる枠がありますが、単純計算で20点。いくら実技が凄くても、馬鹿じゃヒーローにはなれない。それに大1番という所で自分の力で乗り越えず運任せ、ヒーローとして破綻している」
「………………………HAHA!!」
根津は笑うしかできなかった。
しかし、この時はまだ知らない。
普通に解いていた最初の方よりも、鉛筆転がしで回答した後半の方が正答率が高いということを。
そして個性でもないとイレイザーヘッドから相互確認を行い。
恐らく雄英始まって以来初の、鉛筆転がしで筆記をパスした男として教師陣に騒がれることになる。
そして何より、なまじ実技1位とまさかまさかの筆記で好成績を残し。教師陣からの反対をハイスペックの発現した根津から「運も実力のうち」と最後の切り札を切らせたほどの逸材(笑)
本来ならば首席であったが、大人の事情により次席に落とされた唯一無二の残念な人。
これが鞘無剣心のこれから知られることの無い(大嘘)雄英高校の受験記録であった。
出ないことも無い!!(ひーーーっはーーーー!!!
気付かなかった貴方へ
↓縦読み