球技大会(飽きなく罰ゲーム付き)
【7月中旬 1年G組】
SSSの最大の敵?である期末テストも無事に終わり、1学期の終業式が後数日と迫った、7月中旬の今日この頃。
一般校ならば『夏休み、何しようか?』やら『宿題どうする?』やら、平和的な会話が飛び交っていることだろうが、我が学校ではそうは問屋がおろさないのだ。
ここ天上学院では、毎年期末テスト明けのこの時期に、ある行事が行われる。
『全学年クラス別球技大会』
黒板にデカデカと書かれたその字列は、俺達の恐怖心を焚き付けるには充分の迫力を秘めている。
球技大会と言えば、ただ単に皆で慣れない野球やサッカーを、クラブで活躍している現役バリバリのベテランさんと1日中切磋琢磨するという、学生からすればめんどくさいことこの上ない学年行事である。
何?恐怖を覚える理由が分からない?
確かに、こんな普通の球技大会ならば俺達も恐怖なんて覚えはしない。
『普通の』球技大会ならば。
誠に残念ながら、ここには突発性抜群の我らが腹黒リーダー様がいらっしゃる。
どうせ、球技大会をネタにとんでもないことを言い出すに決まっているのだ。
ゆり「という訳で、我がSSSは全競技に殴り込みするから宜しくね!」
ほら、やっぱり。
日向「頼むから文脈繋げて話してくれ。」
おぉ……今日の日向はまともだ。
ゆり「だから球技大会よ。どうせやるなら優勝したいじゃない!」
藤巻「まぁ、そうだが……」
日向「大体、みんなだって嫌に決まって………」
ひさ子「面白そうじゃん!!やろうぜ♪」
野田「ふん!!腕がなるぜ!!」
大山「楽しそうだね♪」
日向「この空間には俺の味方はいないのかっ!!」
頭を抱え、その場に崩れ落ちる日向。
その後ろで野田は腕を振り回し、
大山は目をキラキラさせている。
音無「まぁ…なんだ…どんまい」
晶「それでチーム分けはどうすんだ?」
ゆり「個人種目のテニス、卓球と同時に行われるバスケの3チームに分かれるわ。
どれを選ぶかは自由よ。
そして午後の野球には、2チームに分かれて勝ち抜き戦にエントリーするわ。」
晶「まさかとは思うがもし優勝出来なかったら……」
ゆり「もちろんバツゲームよ!」
全員『やっぱりかぁーーっ!!』
ですよねー……
直井「野球の場合はどうする?」
ゆり「先に負けた方がバツゲームを受けてもらうわ。
ちなみに野球のチームは早い者勝ちだから。」
日向「はぁーーーーーーっ!?」
ゆり「それじゃ明日までに決めといてね。解散!!」
日向「いや、ちょっ………」
晶「諦めろ、日向。」
――――――
【大会当日 第二野球場】
大会当日となった今日。
俺達戦線メンバーの個人競技の様子はまた後日書くとして、残すは野球だけとなった。
日向「これって手抜きだよな?」
藤巻「言ってやるな。著者の力じゃこれが限界なんだよ。」
これ以上、舐めた口聞くと出番減らすぞコラ!!~by著者~
日・藤「すいませんでしたッッッ!!!!!!!!」
この話の中では我が神だということを覚えておけ。
音無「何してんだあいつら……」
晶「さぁ?」
─────────そして、午後……
音無「ついに来たな…」
晶「ああ……」
日向「ぜってぇ勝つ!!」
ゆり「あら、私たちに勝てるかしら?」
ここで野球のチームを紹介しておこう。
チームA
一番:ピッチャー 音無
二番:キャッチャー 日向
三番:サード 椎名
四番:センター 長谷川
五番:セカンド 立華
六番:ライト 姫野
七番:レフト 岩沢
八番:ファースト ユイ
九番:ショート 遊佐
10番:入江
チームB
一番:センター ひさ子
二番:セカンド 藤巻
三番:ライト TK
四番:ショート 野田
五番:キャッチャー 松下
六番:サード 高松
七番:ファースト 大山
八番:レフト 直井
九番:ピッチャー ゆり
10番:竹山
11番:関根
…と、まぁこんなところだ。
ちなみに関根たちが入っているのは、このランキング戦だけ中高合同だからだ。
はっきり言って、勝てる気が全くしないのは俺だけだろうか……
─────────
【一回戦 Aチーム VS バスケ・テニスチーム】
音無「それっ!」
バンッ!!
審判「ストライク!バッターアウト!ゲームセット!!」
岩沢「よし!!」
ユイ「よっしゃーーっ!!」
日向「ナイスボール!!」
音無「おう!」
12 VS 2 (4回コールド)
─────────
【一回戦 Bチーム シード】
ゆり「いや~運良かったわね♪」
大山「(嘘だ!!)」
藤巻「(嘘だな。)」
高松「(嘘ですね。)」
─────────
【二回戦 Aチーム VS 水泳・水球チーム】
男生A「悪いが貴様らにはここで消えてもらう!!」
姫野「お手柔らかに。」
─────────
バンッ!!
審判「ストライク!バッターアウト!ゲームセット!!」
相手チーム『のおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
遊佐「ご愁傷様death……」
相手チーム『ひいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!??』
怖っ!!
16 VS 3 (3回コールド)
─────────
【二回戦 Bチーム VS 野球部チーム】
直井「最悪の組み合わせだな。」
大山「ど、どうするのゆりっぺ!?」
ゆり「大丈夫よ、既に手は打ってあるわ。」
関根「何かすっごく嫌な予感が……」
──────────
審判「野球チームの半数が腹痛により試合参加不可能となったので、この試合不戦勝とします。」
ひさ子「何したんだよゆりの奴……」
大山「ゆりっぺの仕業なの!?」
藤巻「下剤でも盛ったんだろ。」
ゆり「違うわよ。」
大山「ホントだった!?」
松下「それでは、何をしたんだ?」
ゆり「彼らの飲んでたドリンクあったでしょ?」
関根「ありましたけど……それがどうかしたんですか?」
ゆり「ええ、虫を入れたの。」
大山「む、虫……」
ひさ子「いや、それマズイだろ!!」
ゆり「大丈夫よ、イナゴだから。」
ひさ子「ま、まあ……イナゴの佃煮なら……」
ゆり「大丈夫よ、生きたイナゴだから。」
藤巻「なお悪いわ!!しかも生きとんかい!!」
高松「ただの嫌がらせですね。」
野田「さすがゆりっぺだ。」
藤巻「それは褒めてんのか貶してんのか分かんねえぞ……」
竹山「まだ一度も試合するどころかボールを見てすらいませんね、僕等のチーム。」
直井「バカだからな。」
<不戦勝にて二回戦突破>
─────────
【準決勝 Aチーム VS ソフトボールチーム】
音無「え~と……これってどう解釈すればいいの?」
晶「見たまんまだ。姫野に相手チームが群がってる。」
音無「だよな……」
相手A「どうしたらそんなに綺麗になれるんですか?」
姫野「え、え~と……」
相手B「何か特別なことしてるんですか?」
姫野「と、特に何も……」
相手C「えっ!?それでこの綺麗さなんですか!?」
相手D「やばい……次元が違う……」
結果、試合そっちのけで相手チームの女子全員が姫野に群がり続け、晶たちは不戦勝となった。
晶「なった、とか言ってるけど凄かったからね?」
姫野「私今回、相手に挨拶してるか質問攻めに遭ってるだけのような気がするんだけど。」
毎回苦労をお掛けしております。
────────────
【準決勝 Bチーム VS 文化クラブチーム】
ゆり「ほら、次行くわよ!!」ヒュンッ
バスンッ!!
相手A「ひいいいぃぃぃぃぃぃ!!!!」
藤巻「ゆりの奴、相手が文化系だからっておちょくってんな……」
大山「もう完全に悪役だよ……」
高松「相手のチームもここまで勝ち上がってきて、相手がこれでは報われませんね。」
野田「さすがゆりっぺだ!!」
大山「いや、だから───」
藤巻「やめとけ、大山。」
大山「え、でも───」
松下「今回、あいつ出番少ないようだから、言わせといてやれ。」
大山「なんか小説でその気遣いは喜んでいいのかわからないよ!?」
椎名「あさはかなり。」
全員『いつの間に!?』
9 VS 1 (5回コールド)
─────────
両チームとも順調に勝ち進み、ついに決勝戦。
チームA VS チームB
俺たちが相対することとなった。
音無「作戦はどうする?」
晶「下手な小細工だと、すぐに手を討たれるぞ?」
日向「とりあえず厄介なのはTKとひさ子と野田だな。
TKと野田は当たったらホームランだし、ひさ子も運動神経いいから、下手に転がすとアウ
トだな……」
遊佐「ゆりっぺさんもあれで全ての球種を投げられますからね。」
晶「最悪、TKと野田は敬遠すればいいが、問題はゆりとひさ子だな。」
日向「ま、とりあえず正攻法でいく、ヤバくなったらその都度修正ってことで。」
全員『おう!(ああ!)』
─────────
プレイボール!!
審判の声で試合開始。
先攻はゆり達だ。
一番バッターはひさ子。
晶「ひさ子は初球から振り抜いてくるから初球は外していけ」
音無「わかった!」
そして、見事に初球から振ってきたひさ子は、右、左、下と曲がる投球についていけずにアウト。
続いて藤巻をスライダーで打ち取り、TKにホームランを打たれるも野田をカーブで打ち取りスリーアウトとなった。
変わってAチームの攻撃。
一番バッターは音無。
日向「ゆりっぺの球はストレート以外あまり早くねぇから、しっかりボール見ていけ。」
立華「頑張って、結弦。」
音無「おう!!」
音無「(ゆりのことだ、初球は外してくるな……)」
ゆり「(……とか思ってんでしょうけど…残念……!! )ふっ!」
バスーン!
音無の読みは外れ、ゆりが投げたボールはミットのど真ん中を突くストレート。
当然……
音無「なっ……!?」
ストラーイク!!
盛大に空振った。
音無「初球からど真ん中かよ、お前らしくないな!」
ゆり「はっ!音無君の考えてる事なんてお見通しなのよ!」
音無「そこはゆりらしいな……」
ゆり(さてと、次は当ててくるわね……ここは……!)
音無「なっ!?」
ヒュンッ!よりもフワ…の方がぴったりくるような投げ方だった。
そう、ゆりが投げたのはナックル。
ストラーイク!!
音無「打てるかーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!!」
当然、空振り、三球目もナックルで決められ、あっさりワンアウト。
その後も、日向が二塁打を放つも椎名と晶が敬遠され、ワンアウト満塁で奏の打順となった。
立華「結弦……」
音無「ん?」
立華「どうすればいいの?」
音無「もしかして、やったことないのか?」
立華「……」コクッ
音無「まあ見ての通り、ボールを打てばいいんだ。打つ時はボールをよく見て。」
立華「分かったわ……」
立華は頷くとバッターボックスに入っていった。
立華(ボールをよく見て……)
ヒュン!
ボールは普通のストレート、これなら振れば当たるだろう。
振れば…
立華(よく見てよく見てよく…)
振れば…………
バスーン!
振らなかった……
ストラーイク!!
立華「……?」
全員『いやいやいやいや!!』
音無「奏、バット振らないと!」
立華「そう、分かったわ……」
ヒュン!
ゆりの次のボールもストレートだった。
だが……
バスーン!
………………ブン!
ストラーイク!!
立華「………」
全員『いや、もうなんか……』
ユイ「音無先輩、立華先輩が逆に混乱しちゃってますよ?」
音無「う、うーん……」
音無がバッターボックスを目をやると、立華がじっとこっちを見ていた。
音無「奏の好きなように振ってみて。」
立華「………」コクッ
ヒュン!
今度はスライダー。
初心者の立華には打てる筈がない。
音無(奏 ……!)
誰もが諦めかけた次の瞬間――――
ブン!カキンッ!!
ゆり「……え?」
気持ちいい快音が響き、立華が打ったボールは………
大山「え……」
藤巻「まさか……」
高松「もしや……」
野球場のフェンスの上を越えていった。
ユイ「よっしゃーーーっ!!!」
日向「よしっ!!」
岩沢「凄いな、あいつ!!」
音無「ナイスプレイ、奏!!」
立華「ありがとう、結弦!」
その時の立華の笑顔はとても眩しく見えて、音無は目をそらすのであった。
<一回終了時>
Bチーム VS Aチーム
1 VS 4
─────────
立華の思わぬ活躍で4点を獲得した俺達は、椎名や遊佐の活躍もあり8回が終わる頃には―――
Bチーム VS Aチーム
12 VS 10
と、健闘していた。
だが、9回表………
音無「すまん、しくじった!!」
晶「気にすんな!」
日向「だけど、この状況はまずいな……」
大山と直井にまさかの二塁打を放たれ、ゆりをフォアボールで出塁させてしまい満塁のピンチ。
さらに、ここに来て一番バッターのひさ子が回ってきた。
打たれれば、勝つのはほぼ不可能となる。
日向「どうする?」
晶「音無、お前が決めろ。」
音無「………勝負する」
日向「そっか、頼むぜエース!」
音無「おう!!」
音無「(とりあえず、初球は……)」
ヒュン!
ひさ子「……!?」
音無が投げたのはスライダー。
それを不意を突かれたひさ子は空振り。
続く二球目のカーブを当てられたが、右にそれ2ストライク。
音無「(これでどうだ!!)」
音無が放った三球目は………
カキンッ!!
ひさ子が思いっきり振り抜いたバットに当たり場外に向かって飛んでいく。
音無「くっ……そ……」
日向「やられたか……」
皆、飛んでいくボールを呆然と見つめていた。
一人を除いて。
晶「(あの高さなら届くな…)椎名!!」
椎名「……承知した!」
椎名は俺の意図が分かったのか、
すぐに準備してくれた。
俺の走る前の場所で前屈みの姿勢になる椎名。
岩沢「晶、何を……」
日向「なっ!?おい、まさか……」
そして次の瞬間、俺は椎名の背中を足場にして――――
全員『と、飛んだーーーー!?』
すぐに対応してくれた椎名のお陰もあり、ボールには楽に届いた。
これで1アウト。
だが、まだ終わらない!
晶「遊佐っ!!」
遊佐「はいっ!!」
地面に降りた俺は、ボールを遊佐に投げ渡す。
遊佐は冷静に、三塁から足を離して固まっている大山にタッチアウト。
そして、大山がタッチアウトされたのを見て二塁に慌てて戻る直井が見えた遊佐は、直井の肩の上
を狙って立華にパス。
これで直井もタッチアウトとなり3アウトチェンジ。
ゆり達の攻撃を凌ぎきった。
─────────
姫野「長谷川くん!!」
岩沢「晶っ!!」
遊佐「なんてことするんですか、晶さん!!」
入江「そうです!!あんな危ないこと……」
ベンチに戻ってきた俺はいきなり4人に迫られた。
晶「い、いやでも結果的に無事だったんだし……」
姫野「こっちは心臓止まるかと思ったよ!!」
晶「いや、だから………」
四人『晶(長谷川くん)!!!』
晶「ごめんなさい……」
散々4人に叱られた後、最終回最後の攻撃。
ランキング戦には延長がない。
だから、この回で3点取れば俺達の、守りきればゆり達の勝ちとなる。
最初のバッターは遊佐。
2ストライクと追い込まれたが、さすがのゆりも疲れていたのだろう、掛かりが甘いカーブを振り
抜き三塁打。
続いて、音無と日向がショートライナーを放ち二塁打。
その間に遊佐が帰還。
Bチーム VS Aチーム
12 VS 11
そして、次の椎名の打ったボールがひさ子に取られ一塁打。
これでノーアウト満塁となった。
岩沢「晶!!頼むぞ!!」
日向「晶!!ぶちかませっ!!」
入江「晶さん!!頑張って!!」
晶「おうっ!!」
みんなの声援に見送られ俺はバッターボックスに立った。
晶(さて、どう来るやら……)
初球、ゆりから放たれたボールは──────ナックル
バスッ!
ストラーイク!!
晶「初球から全開だな!」
ゆり「まさか、あなた達がここまでやれるとは思わなかったわ。
悪いけど全力でいかせてもらうわよ!!」
晶「望むところだ!来い、ゆり!!!」
二球目は、チェンジアップ。
俺はそれを辛うじて当てたが左に反れた。
ゆり(へぇ…なかなかやるわね)
そして運命の三球目。
ゆり「これで終わりよ!!」
放たれたボールは―――ナックル
最後の最後に一番厄介なボールを投げてきた。
音無「晶っ!!」
立華「晶!」
遊佐「晶さん!!」
ユイ「晶先輩!!」
みんなが懸命に叫ぶのを耳の外に聞きながら、思いっきりバットを振り抜いた。
そして─────────
─────────
【試合後 晶達の部屋】
俺達はランキング戦が終わった後、自分達の部屋に戻り夕食を取っていた。
入江「どうしたんですか?」
遊佐「さっきからぼーっとしていましたので…」
晶「あ、ああ…ごめん。ちょっと、さっきの試合思い出してさ。」
―――――――――
俺はみんなが懸命に叫ぶのを耳の外に聞きながら、思いっきりバットを振り抜いた。
そして──────
カキンッ!!
ゆり「……え?」
野田「なっ!?」
ひさ子「そんな……」
高松「まさか!!」
俺の打ったボールはフェンスを越え、場外へと消えていった。
音無「なぁ……」
日向「これって……」
岩沢「私達……」
関・ユ『勝ったーーーーーーーーーーーーーーっ!!!』
その瞬間、俺達のベンチはみんなが喜ぶ声で大騒ぎとなった。
─────────
岩沢「ホント、最後はよく打てたな、ゆりのボール。」
入江「最後の最後でホームランを打った晶さんの姿、かっこよかったです!!」
晶「ああ…(苦笑)なんか、裏切るみたいで悪いんだけど……」
遊佐「なんですか?いきなり…」
ゆりには口止めされてるけど……ま、いっか♪
晶「あのナックルボール、イカサマだから。」
姫野「あ、やっぱり?」
入江「え………」
岩・遊・入『えーーーーーーーーーーーーーっ!?』
まさかの衝撃発言に、驚愕する三人。
岩沢「ど、どういう事だよ!?」
遊佐「詳しく聞かせてください」
入江「うんうん!!」
晶「元々、ナックルっていうのはボールが不規則に動くだけで打とうと思えば誰だって打てるんだ
よ。」
入江「どういうことですか?」
晶「確かにナックルは投げた本人すらどう動くか分からないボールだけど、ゆっくりだし変化幅も
あまりないから、遠くに飛ばないだけで狙わずに振れば大体バットに当たる。」
岩沢「だ、だけどゆりのは誰も当てられなかったぞ!?」
遊佐「つまり『何か細工してあったから当たらなかった』とそう言うわけですね。」
晶「そういう事。」
入江「で、でもどういう細工をしたんでしょうか?」
岩沢「バットに当たらなくする、なんて魔法みたいな方法あるのか?」
晶「それがあるんだよなぁ…」
入江「ど、どうするんですか?」
晶「これだよ。」
俺はゆりのカバンから回収しておいた、ある物をみんなに見せた。
岩沢「これって……注射器?」
晶「そ、注射器。」
そう、みんなに見せた物は全長8~9㎝の小型の注射器だった。
入江「で、でも注射器でどうやって……」
姫野「重心、だね。」
晶「さすが。」
入江「ど、どういう事ですか?」
岩沢「二人で納得してないで、私達にも説明しろ!」
晶「まぁ、やってることは簡単なんだ。」
姫野「飛んでいる物体は重心に向かって力が掛かるの。」
晶「だから重心がずれてると、変な飛び方をする。」
姫野「だから、ボールの重心をずらすとナックルによく似た動きをするようになるの。」
岩沢「だ、だけどどうやって重心をずらすんだ?」
晶「一番楽でバレにくいのは、ゆりもやったけど注射器で片方に水を入れる方法だ。
これなら、時間が経てば中の水が均一化して証拠は残らないからな。」
岩沢「へぇ~……」
入江「あ、あの!それだと投げ返す時も揺れてしまうんじゃないんですか……?」
晶「お!よく気づいたな。」
遊佐「その時は水を入れた側を前にして投げ返せばいいのでは?」
晶「うん、セリフ全部取られたけど、遊佐が言ったのであってる。」
入江「でも、どうして分かったんですか?ゆりさんのナックルがイカサマだって……」
姫野「回ってたから。」
入江「え?」
姫野「仲村さんが投げたナックルが回ってたから。」
岩沢「それ、当たり前じゃないか?」
晶「いや、それがおかしいんだよ。」
遊佐「説明を。」
晶「うん。普通ナックルは人差し指と中指で押し出すように投げるから基本的に回転しない。
たとえボール付いてる線によって回転しても、その回転数はミットに収まるまでおよそ0~1回
転。
だけど、ゆりのは普通のボールと同じように回ってた。
だからインチキだってわかったんだよ。」
岩沢「な、なんかスゴいインチキだな……(苦笑)」
晶「凄かったか?」
遊佐「いえ、いつも通りかと。」
入江「あはは………(苦笑)」
こうして、白熱した球技大会は幕を閉じた。
後日──────
美杉「まったく!!君達は何度言わせれば―――」ガミガミガミガミガミガミガミ
ルールを守らず(主にゆりの妨害の件)球技大会ではしゃぎまくった晶達(というかゆり達)は、2時間に及ぶ担任の説教と400字の反省文提出を喰らったのであった。
ちなみにランキング戦のバツゲームは『1日何も喋らない』に落ち着いた。
ゆりが喋らない1日は平和である………