だって妖精だもの   作:酸味一体

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妖精の頭は残念

毎日を楽しく過ごすこと。妖精における最重要事項である。非日常が日常である幻想郷ではそんなに難しいことではない。

 

「おーい、シロ!早く出て来いよ!今日はかくれんぼだぞ」

 

ほら、今日もチルノちゃんが呼びに来た。毎日チルノちゃんと大ちゃんは私を呼びに来てから他の子たちの住処に行く。

大ちゃんがチルノちゃんを呼びに行って、その後私の住処、そして神社の軒下のピースちゃん。最後に神社の裏にいるサニーちゃんたちのところに行く。

 

遊ぶ場所は太陽の畑か湖、竹林に………ん?これは幻想郷のどこでも遊んでるかもしれない。人里はサニーちゃんたちがいれば大丈夫だけど私だけじゃいけない。私も大妖精と呼ばれるくらいの力は持っているけど、人間に会ってしまったらひどい目に遭うに決まってる。

 

因みに私の呼び名がシロなのは大ちゃんと区別するためらしい。髪の毛が白いからだって。じゃあなんで大ちゃんはミドリじゃないんだろうか。

 

ピースちゃんによると白は英語でホワイトって言うんだって。リリーちゃんと一緒みたいだけど呼び方が違うからいいんだとか。もともとチルノちゃんたちみたいな名前は無いし、みんなが呼びやすいのなら別に何でもいいから私も気にしていない。

 

「よーし、じゃあ始めるぞ。鬼はぁ…今日はシロだな!みんな早く隠れろー!」

 

あれれ?私こないだも鬼をしたような気がするんだけどなあ。気のせいかな。みんながしたのを忘れてただけかもしれないし。

 

かくれんぼの鬼は結構しんどいんだよね。湖の周辺でしてても神社まで行かれたこともあったような気もするし、サニーちゃんたちは見えないし。

一番見つけやすいのはやっぱりチルノちゃんと大ちゃんだよね。あの二人はいつも一緒にいるし、チルノちゃんの周りは寒いからね。その次に見つけやすいのはピースちゃん。彼女の周りは熱い。松明を持ってるからかな?

 

もう十数えたし見つけに行ってもいいよね。それにしても静かだねぇ。さっきまでは蝉やらなんやらが鳴いていたと思うんだけど何も聞こえない…はて、どうしてだろうか。

んー…………あ、もしかしたらルナちゃんかな。音を消せるんだっけ。じゃあ近くにいるのかなぁ。姿は見えないんだけど。

 

 

 

「やっぱりシロはどんくさいね。ルナが音を消しているってわかっているんだからあの子も能力を使っちゃえばいいのに。そしたらきっと私たち見つかるでしょうね」

 

サニーである。彼女たち三人はやはり今回もセットで隠れているのだ。それもシロのすぐそばに、である。姿は見えないので、どこにいるかはスターか鈴仙でなければわからないだろう。

 

「シロの能力って何だっけ。普段使ってるトコ見ないから忘れちゃったわ」

「駄目ねぇスターは。シロの能力は………えーっと…そう!『葉を落とす程度の能力』よ。まんべんなく葉を落とせば私たちのところだけ避けて行くように見えるんじゃないの?」

 

確かにサニーのいう事はもっともである。しかしそれをシロが思いつくか?と問われれば、否と答えるほかあるまい。シロは自身の能力を静葉の手伝いくらいにしか役立たないと考えているからだ。実際その通りな気もする。

 

秋にしか使わなさそうな能力だがシロは季節を司っているわけではない。それゆえ冬や夏でもリリーや秋姉妹のように憂鬱にならなくて済むのだ。

 

「でもそんなことシロは考えないでしょうね。彼女は基本的に季節に忠実だもの」

 

季節に忠実、とは秋以外の季節には基本的に葉を落とさないという事である。そうはいっても夏に葉を落としたりすることもあれば、神社の桜の葉が緑のうちに落としたこともある。四季異変の影響としてしか扱われなかったが。

 

彼女のするいたずらは彼女の連んでいる妖精たちのいたずらと比べるといささか見劣りする。換言すれば危険の少ないものなのである。川の傍に人が立っていると足元に滑りやすい落ち葉を集めたりだとか。………もしかしたら案外危険かもしれない。

 

 

 

辺りを見渡しても誰もいない。それもそうか。サニーちゃんは姿を隠せるもんね。見えなくて聞こえないなんてかくれんぼには最適だよね。いつもいたずらするときにも頼りになるし。

見つからないなら仕方ないから他の三人を探そうっと。とはいってもそんなに遠くには行ってないだろうし適当に探せば見つかりそう。

 

今考えると私の周りって強い子が多いなぁ。私だってかなり長く生きているはずなのに力は全然なんだよね。毎年の仕事だって静葉さん一人だと大変だろうから手伝ってるだけだし。やっぱりちゃんとした名前があるか無いかの差なのかなぁ。

 

あっ、寒い。夏なのにここだけ異常に気温が低い。チルノちゃんが近くにいるんだろう。

 

「おーい、チルノちゃんたちどこー?」

「へっへん。シロのやつあたいたちがどこにいるか探してるみたい。木の上なら見つかりっこないよ」「喋ってたら見つかるかもしれないよ、チルノちゃん」

 

ルナちゃんほど音に敏感ではないけど私の耳は悪くない。どうやら木の上に隠れているみたいだね。普通に探してもいいけどたまには派手に遊んでもいいよね。

 

バサァッ「あ…やり過ぎた」

 

「げっ、シロのやつ何をやったんだ?あたいにもわからない必殺技か?!」

 

と、とりあえずチルノちゃんと大ちゃん見っけ。

 

 

 

シロは一部の葉を落とすつもりで能力を行使したにも拘わらず、木はほとんど丸裸という惨状だ。チルノたちのように普段から能力を使わないからこういう時に制御ができないのだ。

 

その後、夏の暑さでテンションの上がっていたクラウンピースを普通に見つけたところで夕刻になった。結局三妖精は見つからず仕舞いであったが、そんなことは忘れて各々の住処…湖や神社、森へ帰って行く。

 

三妖精は辺りが暗くなりきってようやく自分たちが忘れられていることに気づいたようだ。妖精たちは忘れっぽい。置いて行かれるのもよくある事である。

 

そんなことにいちいち怒っていたら遊んでいられない。毎日楽しく過ごす、がモットーの妖精たちにとって遊んでいたことすら忘れると言うのは罪な事ではない。自分たちが楽しければそれで良しだからだ。

忘れられる側からすればたまったものではないように思うが、一度は自分たちも忘れる側に回っているので相手を責めることはできない。

 

あらゆることを楽しむ。長く生きる者には必須のスキルである。それは妖怪でも、神でも、蓬莱人でも、妖精でも変わらない。だが日常的な非日常を如何にして楽しむか、それを最も良く知っているのは妖精であるに違いない。




おバカな子は書いていて楽しい

三人称は人間味を持たせています。特に意味はないんですけど
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