だって妖精だもの   作:酸味一体

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妖精の最大の敵

彼女、シロちゃんはいつから存在しているのかさっぱり教えてくれない。でもそれも当然なのかも。だって妖精は忘れっぽいから。私だっていつから存在しているのかはっきりとは思い出せないもの。

 

でも私が持っている最古の記憶にもシロちゃんはいる。だから多分シロちゃんの方が私より長く生きているんだろう。

落ち葉の妖精ともいえる彼女は妖精としては最古に近いのかもしれない。

 

彼女も私と同じく大妖精と呼ばれる種類の妖精だ。それでも彼女がシロ、と呼ばれるのはチルノちゃんとより仲が良いのが私だからだろう。

彼女もそれをあまり気にしていないみたいだ。そもそも彼女が何かを気にしているのを見たことは無いけど。

 

彼女も私や他の皆と同じようにいたずらが好きだ。でも普段の彼女のいたずらはチルノちゃんたちと比べれば可愛いものだと思う。だってシロちゃんのいたずらを受けてもこけたり川に落ちたりするだけだし。

 

でも落葉の季節になったらシロちゃんは少し危険ないたずらもする。静葉さんの仕事の手伝いをしている途中に崖先に落ち葉を集めたり、落とし穴がわからないように葉で覆い隠したり。

 

秋にはたまに白狼天狗が川で流されているのを見るけどあれはシロちゃんとサニーちゃんたちの仕業。川幅を狭く見せて落ち葉で滑らせるんだとか。

私には残念ながらよくわからない。たまに怒った天狗に一回休みにされたりもしてるけどそれも含めて楽しんでるみたい。

 

シロちゃんは他の妖精たちに比べたら強い力を持っているけどチルノちゃんたちや巫女さんなんかと比べたらやっぱり弱い。それは私も同じ。

だから巫女さんたちに目を付けられないようにしなくちゃいけない。だから神社に住んでいるピースちゃんたちを迎えに行くのも楽じゃない。

 

 

「よしよし、サニーたちも出てきたな。じゃあ今日はラルバのところに行くぞ!」

 

ラルバちゃんのいるところといえば太陽の畑だったっけ。今の時期なら向日葵も綺麗だし幽香さんも外に出ているかもしれない。

シロちゃんは幽香さんとも仲が良いんだっけ。怖くないのかな?

 

 

 

葉を落とすとは植物と会話することである。葉を落としても良いか、悪いかは植物にしかわからない。それを植物に尋ね、その上で落とす。

だが枯れ葉に限ってはこの交渉を行う必要が無い。だからこそ静葉は木を蹴り飛ばして落葉させるのだ。

 

緑の葉を落とせるのはシロただ一人である。つまり緑の葉が落ちているところにシロ有り、だ。

この性質ゆえに幽香とも仲が良いのだ。植物の気持ちを理解できる者は少ない。幽香以外には、ヒマワリ妖精たち植物の妖精やシロくらいしかいない。心を読むサトリでも不可能である。

 

「あら、ずいぶん会っていなかったじゃない?シロ」

「あ!幽香さんじゃない。今日も向日葵みたいに元気そうだね!」

 

妖精は無邪気で死を恐れない。それゆえ幽香相手でも物怖じしない。だからこそ幽香も付き合い易いのかもしれない。

いつも怯えられている者にしかわからない感情もきっとあるのだろう。

 

「えぇ、私はいつも元気よ。花の元気は私の元気なの。自然の元気が貴方たちの元気であるようにね。貴方に言っても少し難しかったかしら?」

 

そう言って優雅に微笑む幽香に恐れられている少女の面影はない。

 

何も何も、小さきものは、みなうつくし

 

清少納言の言葉は千年以上経った現代にも通ずる。それは対象が人間であっても妖怪であっても変わらない。愛でる対象も動物や人間、妖精など何でもありである。

 

「うーん?分かったような分からなかったような。よーするに幽香さんも私も元気ってことだよね。…あ、サニーちゃんが呼んでるみたい。またね!幽香さん」

 

妖精たちから恐れられることも勿論ある。だが恐れることのないシロは幽香にとってありがたい存在であるはずだ。植物を害さない限りは恐れる必要はない。それを幽香が口外しないのは話す対象が多くても逆に困るからだ。

 

彼女は他人からの恐れを上手く利用する。間違いなく幻想郷最強格の大妖怪である。

 

 

 

久しぶりに会ったけど幽香さんも元気そうで良かった。私も幽香さんの怖さは知っている。昔まだ幻想郷がもっと広かった頃に幽香さんが人間と戦っているのを見たことがあった。

 

いくら記憶力の無い妖精とはいえあれほど強烈な光景はなかなか忘れられるものではなかった。私が行ったばかりだったのに散っている葉、折れた草花はひどく悲しそうだった。

 

あの子たちを踏み荒らしたのは幽香さんを退治しに来た人間たちだったらしい。退治って言うのは悪いことをした妖怪が人間から殺されることだって幽香さんに聞いたことがあったし、それよりはるか昔にも何度も見たことがあった。

 

幽香さんはどんな悪いことをしたのか。やって来ていた人間たちは妖怪の存在自体が悪いことだと言った。

私から見れば人間の方が存在する意味は無かった。だって人間ったら木は切り倒してしまうし、川は埋め立てるし、花は踏み荒らすんだから。

 

私たち妖精の敵は強い妖怪ではなく弱い人間だった。私は人間が返り討ちにあうのを望んだ。当たり前だよね。だって幽香さんは悪くなかったんだから。

 

幽香さんは強かった。人間はたくさんいたのに誰一人逃さずやっつけていた。それだけ見たら私でなくても怖がって逃げていたと思う。

でも私は逃げなかった、逃げられなかったんだ。だってその後の幽香さんの顔が凄く悲しそうだったもの。

 

私も悲しかった。だって踏み荒らされた草花たちは前の日まで一緒に話していた子たちだったんだから。私がいたずらを好んで行うようになったのはその後からだったかな?そのあたりはあまり覚えていない。

 

今太陽の畑で育っている花たちはその時に生き残った子たちの子孫だ。今いる子たちに言ってもわからないんだろうけど。

 

「おーい、シロ!早く来なよ!ラルバがとっておきの一発芸を見せてくれるみたいだぜ!」

 

妖精に考え事は似合わない。思い出せる記憶が少ない分、思い出す時にはそれに集中してしまう。そんなのは帰って家に一人でいるときにすれば良い。みんなといるときは思い出す必要も無い。




シロ有りを変換で出そうと思ったらシロアリとしか出てきませんでした。まあ当たり前ですよね

ここの幽香は寂しがりゆうかりんではないです。付き合う相手を選別しているだけ。選んだ相手には優しいです

過去の一件からシロは人間嫌いが入っています。まあ仕方のないことだと思います
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