だって妖精だもの 作:酸味一体
春が来た。山にも里にも野にも来た。連れてきたのはリリーちゃん。
それと同時にレティさんは姿を消してしまった。冬以外は何処にいるんだろうか。妖精にも見つからない住処って相当珍しいような気がする。
春告精のリリーちゃんは幻想郷を春にするためにあちこちを飛び回っている。そんなときのリリーちゃんにはあまり近づかない方が良い。
春で力のある時の彼女は好戦的だし力も桁違いに強い。私たちみたいな妖精だと一回休みにされるかもしれない。ピースちゃんとかなら大丈夫だろうけど。
もうすぐ幻想郷中が春になり切るからリリーちゃんとも遊べるようになると思う。でも今日はまだ無理っぽい。だから今日はラルバちゃんの別荘にみんなで行って遊ぶみたい。
ラルバちゃんにとってはこの春の陽気でもまだ肌寒いらしい。リグルさんもそうだけど虫は総じて寒さに弱いもの。
昔、蟲の力が全盛だった時代は冬にもよく虫を見かけたものだったが、今ではもうほとんど見かけない。ラルバちゃんは蝶々だから寒さに弱いだけだと思うけど。
同じように寒さに弱かったピースちゃんは春になって元気いっぱいだ。地獄と違って生命に溢れている草花はとてもワンダホーなようだ。簡単に言えば綺麗だという事らしい。
私は地上しか知らないけどピースちゃんは地獄も知っているからより一層綺麗に見えるんだって。地獄にも石桜が降るらしいけどそんなに綺麗ではないらしい。
それは当然だと思う。だって石桜といえば………嫌な思い出ばかり覚えているものだなあ。
ともかく目的地は森だから今日は珍しくシロちゃんを誘うのは一番後にする。とりあえずチルノちゃん
「よし、行くぞ大ちゃん。今日は神社から行けばいいんだっけ?」
今日はラルバちゃんのところに行く、と言うのはきちんと覚えているらしい。
その次にサニーちゃんたち
「やっぱり春はいいわね。リリーが大人しくなればもっといいんだけど」
「捕まえておけば冬も快適に過ごせるかもしれないわよ」
「スターは相変わらずね…」
スターちゃんの発言は置いておこう…。彼女ならやりかねないのがまた恐ろしいところだと思う。
その次にピースちゃん
「やっぱり地上の春は最高だぜ~。もうすぐ花見もあるらしいしな。クックック」
毎年毎年花見でちょっかいを出しているせいで確実に私たちだとばれていると思う。大体ターゲットになるのは妖夢さんだけど。
あの人は強いんだけどちょっと抜けてるところがあるからいたずらが成功しやすいんだろう。少しだけ可哀そう。その後は宴会が終わるまで寝ていることが多いみたいだし。
最後にシロちゃん
「おはよー。思ってたより早かったね。間に合って良かったよ」
どうやら何処かに行っていたらしい。どこに何をしに行っていたのかは知らないけど。でもこの時間にもう帰って来ているという事はそこまで遠くないんだろうな。
~
ようやく春になった。冬の間は暇で暇で仕方が無かったから春になってくれたのはとても嬉しい。
今日は久しぶりにこの別荘に友人が来るから少しは片付けておくべきだろうか…いや、もう遅かったみたいだ。
「おはよ~ラルバ!元気にしてた?」
「そりゃ勿論。と言うか最近手紙出したじゃない。それを受け取ったからここに来たんでしょ?」
まああれはただの返事だったから『大丈夫よ』としか書かなかったけど。それでも返事を書ける程度には元気だったってことでいいんじゃないのかな。
「あんな短い返事だけで元気かどうかなんて判断できるわけないでしょ!まったくラルバは」
もう少し何か書くべきだったのかな。冬も終わって気分は最高よ、とか。なんか違う気がするんだよね。
「いやー、それにしても相変わらずここは暖かいんだな。夏に比べたら温いけど」
「ここはあくまでも私が冬に過ごしやすいよう勝手に夏を作っているだけなんだから比べないでよ。比べるならチルノの家と冬を比べてみたら?」
寒いのは苦手だからチルノの家には行ったことが無いけど本人曰く快適らしい。氷の妖精が快適というくらいだからきっとかなり寒いんだろう。
チルノの遊び相手には寒気の妖怪なる者もいるらしい。会いたくはないなあ。
「駄目よ
「何おぉ?!あたいの家は冬には冬以上に寒くなるんだぜ」
ここが夏には外より暑くなるのと同じ理屈じゃないだろうか。それならこの家だって夏より暑い事になるんだけど。
「むしろ外よりあったかいんじゃない?だってあんたの家かまくらみたいなもんでしょ?」
「ぐっ、言われてみれば確かに…くっそー!悔しい。まさかラルバに負けるなんて!」
いやいや、私の家も夏よりは温いんだって。勝ち負けとか無いんじゃないの?やっぱりチルノは反応の面白い妖精だ。
まあチルノがいなければ今頃こんな友人たちはいなかっただろうから感謝はしている。
「まあまあ落ち着きなさいよ。そういえば今日はシロは来てないのね。珍しい」
「え?シロはさっきまで一緒にいたはずなんだけど………」
先ほどまで一緒だったのに気づいたらいなくなっていたらしい。まさか背中の扉?いやいや、そんなはずはないか。あの秘神もそんなに暇ではないだろうし。
「じゃあ探しに行く?また妖精が危険な目に遭うかもしれないし。そうなる前に何とかしないと……「その必要はないわ!」…誰?」
聞いた事の無い声。見たことの無いシルエット。何処か頭が春っぽい表情。そして感じるかなりの力………。
「なんだ、リリーじゃない。シロがどこに行ったか知ってるの?」
「勿論よー。だってシロは私を呼びに来てくれたんだもの」
うん?リリー?確か春の妖精だったっけ。彼女がいないと春が来ないらしい。私たちにとっては有難い妖精だったはず。
「勝手に呼んじゃってごめんね~。でもリリーももう仕事が終わるから一緒に遊びたいじゃない?ラルバちゃんとピースちゃんにも会ってみたいって言ってたし」
「ってシロ!勝手にいなくなったら心配するじゃない」
シロはリリーを呼びに行っていたらしい。誰にも言わずに行動するところが彼女らしいというかなんというか。
「じゃあまずは自己紹介から始めたら?ピースもラルバもリリーとは初対面でしょ?」
春を告げる妖精ならこの時期に力を持っているのも頷ける。生命力が暴走しているわけではなさそうだから良かった。
字数が丁度良かったので微妙ですがここで切っておきます