だって妖精だもの 作:酸味一体
「えーっと私はエタニティラルバ。アゲハ蝶の妖精よ。大体夏には太陽の畑にいるわ。冬はここにずっといるんだけどね」
「あたいはクラウンピース。地獄の妖精さ。今は訳あって地上に来てるんだけどね。会う事は少ないだろうけどよろしく」
「私はリリーホワイト。春を告げる妖精よ。だから春以外はあんまり力が出ないのよねー。もうすぐ春も終わるわ。残念よねー」
もうすぐ春が終わるというのも春を告げる妖精だからこそわかる事なんだろう。語尾のせいであまり残念そうに聞こえないのが残念だね。まあそんなことはどうでもいいか。今日はここにいる九人で遊ぶらしい。随分と大人数だ。
「よーし、自己紹介も終わったし外に行くぞ!」
「え?外に出るの?今日は家で遊ぶんだと思ってたんだけど。外寒くないのかしら」
ラルバの言う事も尤もだ。だって元々はここで遊ぶ予定だったはずだから。でも流石に部屋の大きさに対して人数が多すぎた気がする。
多分リリーが来る前の八人でもここで遊ぶには少し狭かっただろう。そう言う意味ではチルノの言いたいこともわかる。
「大丈夫だって。リリーが言っていたでしょう?もう春も終わるって。という事はもう夏が始まるってことなのよ。実際もう寒くないわ」
「そうなの?だったらいいんだけど。早速外に行きましょうか」
サニーの説得もあって結局外に出ることになった。あたいも地上の春は嫌いじゃない。むしろ好きだ。もう何回か見てきたけど何度見ても生命という物を感じさせてくれる。地獄とは大違いだ。
「そういえば
「そうね。もう幻想郷中が春になったから私の仕事はお終いよ。春以外は思うように力が出せないからストレスも溜まるしもう最悪よねー」
そう言っている割にはずっとニコニコしているんだよね。こんな妖精にストレスなど本当に溜まるのだろうか。春にそのストレスを弾幕に乗せて発散させているらしい。春に力が上がるのにそれに合わせてストレスを発散していたら危ないんじゃないだろうか。
まあそんなことは気にしなくてもいいか。危なくなったら退治しに来るだろう。あの怖い巫女が。妖精に対する評価が昔より上がったとはいえ退治するときは容赦しないだろう。ほんと、鬼より鬼な気がするよ。
~
春は宴会の季節。今日神社では花見が行われるらしい。ルナちゃんが聞いてきたとか。宴会といえばいたずら。今はそのための作戦会議中だ。
「だから~、あたいの松明の火で狂わせて遊べばいいじゃないか。それか久しぶりにお化けとかで良いんじゃないか?いつもみたいにさ」
「それだと去年までと同じじゃないの。最近はただの余興以外の何物でもなくなってるわ」
毎年被害にあっているような気がする妖夢さん以外だけど。ちなみに普段は神社に行かない私も宴会があるときは行ったりする。勿論一般参加じゃなくていたずら参加だけど。
その理由は人間が少ないからだ。神社の宴会は何故か妖怪が多い。昔は神社に妖怪なんて出ていなかった気がするんだけどなあ。
昼間の神社はたまにだけどイベントなんかのせいで人間がとても多い時がある。だから基本的に行かない。私にとって地獄でしかないからね。ピースちゃんに案内してもらった地獄といい勝負。とにかく私の中では絶対に行きたくない場所として昼間の神社がある。
普段は静かでいいと思うんだけどなあ。あそこは木も多いし。まあ妖精はそんなに多くないんだけど。あそこに住んでいるピースちゃんとかは結構変わっていると思う。
「分かった分かった。じゃあこんなのはどう?―――――――――――」
「サニーにしては面白そうな案じゃない。でも大丈夫なの?結構な負担になると思うんだけど」
「そこなのよね。そう言うわけでシロよろしく」
まあいたずらとしては確かに面白そうだし私たち妖精にしかできないものなんだけどスターちゃんの言う通りかなりの負担があると思う。できるかどうかは聞いてみないと分からないけど。
「うん、まあいいよ。じゃあ早速神社に行こうよ。早くしないと宴会の準備が始まっちゃうよ」
~
多くの人妖を集めた宴会が始まった。幹事はいつも通り魔理沙だ。参加者は過去の異変に関わってきた実力者が大半だ。その理由は会場が博麗神社だからである。
力の無い妖怪は下手に神社に近づかない方が良いことを知っている。
いくら妖怪神社と呼ばれていようと巫女は人間である。そんな場所で下手をすれば命はすぐに消えてしまう。だから必然的に力のある妖怪または一度退治された妖怪たちばかりが参加するのである。何故か今回はいつもと比べ給仕係が多い気がするが宴会の参加者が増えたからだろうか。
概ね平和に進行している花見であるが突如として変化が起きる。風邪も無いのに一斉に桜の花が散ってしまったのだ。先ほどまで花が咲いていた木を見ればもう葉桜である。
今度はその葉も一斉に散り、先ほどまでの美しさが嘘だったかのように枯れ木としてそこに佇んでいる。そこに間髪入れずに雹が降る。
各々が雹を避けた後にはもう辺りは元のような陽気に戻っており、桜も元のように花を咲かせていた。『夢か?』と思っても境内に落ちている花びらや緑のままの葉、そして氷塊を見れば現実であったことは一目瞭然である。
そして誰も気づかなかったが会場からは酒瓶が一本と料理が数皿忽然と消えていた。この騒ぎに乗じてこっそり取っていった者がいたらしい。
所変わって神社の裏、三妖精たちの家。
「いやー、霊夢さんたちめちゃくちゃ驚いてたねえ。今年は結構頑張った甲斐があったね」
「ほんとほんと。楽しかったわ。料理もこんなに頂けたし」
そう、先ほどの一連の出来事の犯人はここにいる妖精たちである。手順はどうやら次のようだったらしい。
ピースの松明の火で生命力を暴走させたラルバが神社の木を夏のように変える(夏) → シロがその葉を落とす(秋) → チルノが周囲を冷やすとともに氷塊を降らせる(冬) → リリーの力も暴走させて元に戻す(春)
その騒ぎの間に三妖精と大妖精で料理をくすねてきたのである。この作戦において最も疑問視されたことは木がその変化に耐えられるかである。これはシロが直接木に尋ね、一度なら大丈夫だという事で解決。
次に重要だったことは早い段階で鈴仙を酔い潰しておくことである。三妖精の能力は鈴仙と頗る相性が悪い。これは給仕に変装することで解決した。鈴仙はそこまで酒に強くないのだ。
かくしていたずらは大成功だった。薄々気づいている者はいたようだがそれでも妖精たちの大勝利である。神社の方では既に宴会が再開されている。酒の力には誰も勝てないのだ。
この珍しい光景を見る事の出来なかった妖夢と鈴仙は随分と後悔したようだ。酒の飲みすぎには注意しようと思ったようだが次の宴会には忘れているだろう。
歴史は繰り返す。きっと次も潰れてしまうだろう。だが今夜の現象が起こることはもう二度と無いに違いない。
妖精もやればできる