太陽が、燦々と輝く青空の下で。活気のある喧騒が聞こえてきました。小さな木製の家が立ち並ぶ漁村で、潮の香りが漂っていました。カモメが飛び交い、鍛え上げられた肉体を日の下に晒す男達が揚げた魚を、虎視眈々と狙っていました。女達は男達が水揚げした魚達を仕分け、捌いたり干したりしていました。子供達は性別の区別なく、全裸で砂浜を駆け回り、水を掛け合ってはしゃいでいました。物心がつき始めた少年少女は、恋人と散歩したり、勉強したり、あるいはただボーッとしたり、友達とボール遊びをしたりしていました。いかにも牧歌的で、平和な姿でした。
そして今は、ただひたすらな地獄になっていました。
火を放たれて、灰になっていく家々。股から白い粘性の液体を溢しながら絶命する若い女達に、ただひたすらいたぶられて死んだ男達。集められて、油をかけられて火を付けられ、悲鳴をあげて死んでいく様を見せ物にされる子供達。目の前で想い人や家族を犯され殺され、悔し涙を流しながら殺されていった少年達。今なお犯され、悲鳴をあげることすらできなくなっている少女達。そして、平和な漁村を、そんな地獄に変え、下品な高笑いを響かせる海賊達。そこは、正しく地獄であって、この世界では、よくある光景だった。
「船長!どうしやすぅ、これから!」
「あ~?そうだなぁ、しばらく楽しんだらヒューマンショップにでも売り行くかぁ!大した稼ぎにならなかったしよぉ!」
「あっはっはっは!それまで生きてりゃいいっすけどねえ!」
「ちげえねえ!」
「「ギャハハハハハハハハハハ!」」
赤ら顔で坂瓶を振り上げる、ツルリとしたハゲ頭が特徴の小柄な男が、船長と呼ばれた大柄ででっぷりとした腹をした、髭面の男と、そんな、彼らにとっては他愛もない、希望に満ちた話をしていました。
「んん?船長~誰か歩いてきますよお」
「はあん?なんだぁ、生き残りかあ?」
「ん~…おっ!女ですよ!しかも別嬪だ!」
「なにぃ?!そりゃいい、こっちに持ってこい!」
そんな彼らの元に、白い着物を着た女が歩いてきました。彼女は確かに、美しい容姿をしていました。小柄ながら胸は確かにあり、着物ゆえに少ない露出した肌は、驚くほどに白い。目付きは穏やかで、鼻はスッキリと通っており、微笑みを浮かべる唇はプルリと艶やかな桃色。背にかかるほどに長い黒髪は、指を通せばスルリと流れていくような艶やかさで、日の下で輝くほど、総じて神秘的とも言える美貌を持った女性でした。
「ん~、たまんねえ!」
「うーし、俺が行こう!」
「おい、お前らの前に俺が先だぞ!」
女は、そんな彼らを前に、ただ微笑みながら、ただ天を指差して一言だけ、小さな、けれどなぜだか通る綺麗な声を、発しました。
―
彼らはその言葉を聞いた瞬間、燃え上がりました。悲鳴をあげることも、苦痛にのたうつことすらも出来ず、ただ燃えて、塵になりました。そしてそれは、彼らだけでなく、村を、死体を、そのことごとくを焼き付くし、ただの塵にかえ、元はなんだったのかさえも、分からなくしていきました。
「―終わりましたね。善きかな、善きかな」
そう言って、彼女は微笑みました。
―彼女の名は、ミヅキ。和の国の出身であり、サンサンの実という悪魔の実を食べた、太陽の力を持った女であり、お尋ね者。
―太陽のミヅキ、懸賞金30億ベリー。
それが彼女であった。
思い付きの見切り発車の出落ち。