ポケットクリーチャー 作:近眼
ご覧いただきありがとうございます。
初めてまともな戦闘描写しましたけど、慣れなさすぎて短くなりました。仕方ないよね。あと短い方が読みやすいからむしろいいよね。よくない?
というわけで、どうぞご覧ください。
こちらを見下す、岩でできた巨大な蛇…イワーク。
シンオウでも、よく縄張りを通った人間がミンチになってるのを見かけた。どうやら食うために殺しているわけではないらしく、いつもミンチはミンチのまま残っていた。縄張り意識が強く、外敵を追い払おうとした結果なんだろう。
そして困ったことに、おそらくニビシティの地下にこいつが住み着いた。
だから住民は静かに、静かに暮していたのだろう。奴らは岩盤の中に住み着くからか耳が良い。デカい音が縄張りの中で聞こえようものなら迷わず突進してくるわけだ。
迷惑千万、先住民がいる土地に勝手に入り込んで勝手に縄張りを主張するとはね。
「…残念ながら、俺は1対1は得意でさ」
「ひ、ヒロさん!私は…」
「避難誘導。イワークが暴れまわったら軽く死人が出るから」
「は、はい!お気をつけて!!」
イワークが俺の方を向いている間にナミエが民家を周り、退避を促す。それも静かに。動きは遅いが、気を引くこともないだろう。
「さて、やろうか。俺は君を追い出す。君は俺を追い出す。利害が分かれたら…殺しあうだけだろ?」
頭のツノらしきものを血と肉でコーティングしたイワークは唸るだけで答えない。威嚇してるだけなのか余裕ぶっているのか。
しかし気を抜くわけにはいかない。こいつゴツい見た目の割に早いのだ。どうも「ドクター」の見解では岩を粉砕するほどのパワーがあるわけではないそうだが、この巨体で自動車並みの速度を出されれば先程の親子のように木っ端微塵だ。しかもツノまでついている。尖っているわけではないが、打撃としては申し分ない武器だ。
最も警戒すべきは巨体を活かした体当たり。
攻撃自体は速さに追いつけさえすれば当たらないだろう。
(…まあ、問題はこっちからの有効打なんだけどね)
そう、問題はやつの攻撃じゃない。問題はその岩でできた体だ。
当たり前だが、やつの体表面はほぼ完全に岩であり、当然強度も高い。鋼の刃でも切り裂けないし、銃弾だって弾かれる。重火器ですら分が悪いというレベルだ。
それが全身を覆っている。こちらの攻撃が通
る場所が極めて少ない。
岩の繋ぎ目、関節のような部分なら楽に切れるが、的がやたら小さい上に間違って関節に挟まれでもしたら刀は折れるし俺は死ぬ。
だからまともに狙えるのは目や口がいいところ。
「ま、弱点不明よりはマシだけどね!!」
こちらが先に動く。
一瞬で抜いた拳銃による早撃ち。いくら速いとはいえ、銃弾を避けられるようなクリーチャーは限られている。見てから回避が間に合うことは少ない。
狙ったのは目。
不意を食らったイワークは回避が間に合わず、右目を鉛玉が叩き潰した。
「イワアアアーーーーーッ!!!」
「見慣れない武器だったかな?残念だったね」
痛みで仰け反ったイワークに接近、そのまま岩の体を駆け上がる。球体が連なったような体は案外登りやすく、8~9m程度の体の頭まではすぐに到達できる。
そのまま上に跳んで顔に到着。あとはデカい声を出す口の中から脳を切り裂けばおしまいだ。
不用意に飛び込んで食われないように、上顎の内側をギリギリ切り落とせる角度から居合いを、
見舞おうとして、
ガギグギギゴガギギギガゴギギギッ!!!!
とでもいうような、凄まじい騒音に思わず耳を塞いだ。
「っ!!!耳がっ…!!」
「イワァアッ!!!」
「うわっ」
俺が怯んだ一瞬を狙って、イワークは俺を上に投げ飛ばした。そして俺が空中にいる間に地面に潜っていった。
(…くそっ、あの嫌な音はシンオウにいるやつらも使ってたっけ。油断したな)
イワークは体の岩をゴリゴリすり合わせて、黒板を引っ掻くような鳥肌が立つ音を出すことがある。主に相手を怯ませるために使い、相手が耳を塞いで無防備になっているところをタックルで沈めるんだ。正直とても痛い(一敗)。
幸運だったのは投げ飛ばされた際に追撃されなかったことだろう。経験上、どうやらイワークはどうも尻尾を攻撃に使うのが得意ではないらしい。一度だけ尻尾でものすごい強烈なテールアタックを仕掛けてくるやつと対峙したことがあるが、動きも硬さも群を抜いて強かった。あんなのは流石にそう何匹もいないらしい。
まあとにかく運が良かった。
無音着地をきめて、そのまま動かずに様子を見る。振動も気配も感じないあたり、向こうも様子見しているのだろう。地中からこちらの動きを知る手段は音しかないのだから、俺は動かなければいい。着地の音すら出さなかったわけだし、俺の居場所が割れることはない。
が、このままでは戦況は動かない。
だから、音を立てないように気をつけながら踏ん張り…全力で横に跳んだ。
その瞬間、地面が大きく揺れ、俺が元いた場所のましたからイワークが飛び出してきた。当然俺は遠く離れた家の屋根まで移動した後だ。
イワークは俺の姿が見えないことに一瞬困惑した様子。そしてその一瞬は戦場では命取りだ。
飛び出した勢いで上昇中のイワークに向けて、屋根の上から弾丸の如く飛び出す。イワークがこちらに気づいた時には、奴の頭は射程圏内だ。
「抜刀居合」
イワークの体は岩のように硬く、関節以外に楽に切れるところはなく、他にまともに狙えるのは目や口だけだ。
誰も岩を切れないとは言ってない。
「一閃」
手加減なしの神速の一閃。誰も抜刀の瞬間も、納刀の瞬間も見ることは叶わない。居合を極めた俺だけができる、鋼も断ち切る不可視の刃。
それが、イワークのツノをスパッと切り落とした。
「イワァアアアアア!!!!」
(ちっ、浅いか)
出血しながらのたうち回るイワークは未だ存命だ。本当はツノの下にある脳を狙ったのだが、咄嗟に避けようとしたのか狙いが逸れた。
まあ、ツノがあった場所は既に柔らかい肉が露出しているし、その真下は頭蓋と脳がすぐそこだ。
「相手が悪かったね。俺はシンオウ地方で既にイワークを3桁単位で葬ってる。まだスピアーの大群の方が恐ろしかったよ」
どったんばったんして暴れるイワークの動きを観察し、そのパターンを見抜く。痛みでパニックに陥った相手の動きは単純だ。その隙をつけばそれで終わり。
微妙に苦戦したけど、このくらい敵では無いな。
「それじゃあ、冥土で反省
飛び退いた。
俺がいた場所を、投げられたナイフが切り裂いていった。
「………まぁ、探してはいたんだよ。でも今会いたかったわけじゃないんだよな」
イワークは穴に潜ってどこかへ行ってしまった。取り逃がしたわけだ。
原因は明白。俺に向けて投げられたナイフであり、それを投げた人物。そいつがオツキミ山の方から歩いて近づいてきた。
「相変わらずクリーチャー相手に博愛主義を貫いてるんだな?呆れるな」
「………」
「そして無口なのも相変わらずだな。何年会ってないか忘れたけど、あまり変わってなな」
そいつは細身の男だった。赤い上着、機能性重視のジーパン、黄色いリュックに…奴のトレードマークたる赤い帽子。
ほぼ全く喋らず、それでいてクリーチャーも含めた全ての生物を救おうとする博愛主義者。
クリーチャー討伐隊に入るも、不殺を徹底し、それでいて人命救助を史上最も多く行った人物で。
対クリーチャーの組織としては認められない行動から、世界で唯一追放処分となった男。
その名はアカヤ。
コードネームは、『レッド』。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
どう見ても某チャンピオンの家系の方。