ポケットクリーチャー   作:近眼

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ご覧いただきありがとうございます。

冠の雪原配信されてしばらく経ちましたが皆さまどうでしょうか。私は買ってません←
シャンデラが推しなのでDLC買わなくても満足しちゃったのです。
でもガラルスタートーナメントやりたいからそのうち買うかもしれない。


というわけで、どうぞご覧ください。




1-5:不殺の英雄(+ vs. ???)

 

 

 

 

 

 

 

元クリーチャー討伐隊さん隊員、アカヤ。

 

 

クリーチャー討伐隊に身を置きながら、しょたったの一度もクリーチャーを殺すことなく、それでいて史上最多の人命救助を行った人物。追放処分を受けてからもう2年経つが、未だにその記録を塗り替えたものは出ていない。俺も、ナミエも。

 

 

その理由は、彼が駆けつけた現場ではクリーチャーだけでなく人間の死者も出なかったからだ。必ず全員助ける。他の隊員たちのように、間に合わなかったとか、討ち漏らしが民間人を襲ったとか、歯が立たなくて諸共潰されたとかそんなことは一度もなかった。

 

 

だからこそ、救護の証として赤十字をイメージした『レッド』の名を冠していた。

 

 

それなのに追放処分を受けた理由は単純だ。だってこいつは事の発端を処理していない。

 

 

クリーチャーに襲われた、もう襲われないように退治してくれ。

 

 

そういう任務を行うために生まれたのが討伐隊なのに、クリーチャーは野放しなのだ。当然組織としては許容できない。だから、討伐隊は彼への敬意を込める意味でコードネーム『レッド』を永久欠番とした上で本部から追放したのだ。

 

 

俺自身は、そのスタンスは好きじゃなかったけど、本名とコードネームが微妙に被った仲間としては俺もそこそこ仲良くしていた。

 

 

もう2年も会ってなかったけど。

 

 

「まさかカントー地方にいるなんてね。どうやってシンオウ地方から出たの?まさか泳いで渡ったとか言わないよね」

「………」

「相変わらず何も答えないな」

 

 

地面に刺さった投げナイフを拾いながら話しかけたけど、返事はなかった。初めて会った時から、喋れないんじゃないかってくらい無口だった。今もそうだ。声を聞いたのは片手で数えられるほどしかない。

 

 

ただ、喋らないから何も分からない、ってわけじゃない。

 

 

行動で示すタイプなだけだ。

 

 

アカヤはリュックから3つのボングリを取り出し、放り投げた。それぞれ違うマークが書いてあるのは中身を識別するためだろうか。

 

 

投げられたボングリの穴から赤い光が飛び出し、中にいる何かが姿を現す。

 

 

現れたのは、3体の巨影。見たこともない生き物だけど…俺たちはつい先ほど知った。クリーチャーはボングリの中に身を隠す性質があることを。つまり、この3体は全てクリーチャーだろう。

 

 

アカヤの向かって右側。そこにいるのは、緑色をした、ウシガエルのような体の背に巨大な花を咲かせた異形のクリーチャー。

 

 

向かって左側には、どう見ても巨大な亀にしか見えないクリーチャー。ただしその体長は俺に匹敵するほどであり、後ろ足だけで立ち上がり、何より肩と甲羅の隙間からまさかの砲門が飛び出したオーバースペックなクリーチャー。

 

 

そしてアカヤの後ろには、橙色の肌を持つ飛竜が飛んでいた。尾の先は燃え上がっており、まさにドラゴンと言ったような翼で空を舞う規格外のクリーチャー。

 

 

どいつもこいつも見たことがない。

 

 

「………」

 

 

アカヤは無言で飛竜を見つめていた。すると飛竜は何を察したのか、一瞬で後ろに翻り、同時に高く垂直に跳んだアカヤの真下に潜り込むと、自身の背にアカヤを乗せた。

 

 

それが意味することは。

 

 

「…ははっ…。そんな、まさか。シンオウからここまで海を渡るどころか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…?」

「………」

「冗談じゃない。まさかお前、クリーチャーに手を出さないどころか…クリーチャーを従えていたのか?」

 

 

理屈じゃない。

 

 

ユキナリ君のように懐かれたのならわかる。ナミエのリュックに潜んでいるピカチュウのように保護されたならわからなくもない。

 

 

でもこいつの、このクリーチャー達は、どう見たって格が違う。人間が太刀打ちできる相手とは思えない。アカヤはどうやって従えたんだ。まさか一対一で勝ったのか?こんなの相手に?冗談にしては笑えない。

 

 

だいたいそれ以前の問題がある。

 

 

「…何考えてるんだ。お前だって、俺と同じだったはずだろ。親をクリーチャーに殺されたから討伐隊に保護されたんだろ。だから討伐隊に入ったんだろ。こいつらがどれだけ危険かわかってるだろ…!!何で、何でクリーチャーと手を組めるんだ!!黙ってないで答えろ、答えろよアカヤ!!」

「………」

「答えないなら無理矢理吐かせるまでだよ…!!」

 

 

腰に下げた刀の柄を握る。相手が強大なのはわかってる、だけど、だからって引けない。だって目の前にはクリーチャーがいるんだ。殺してやる。災害を振り撒く根源は叩き斬る…!!

 

 

対してアカヤは、視線だけ緑色のクリーチャーに向け、自分は飛竜とともに上昇、ついでにボングリを投げて亀をその中に再び戻した。

 

 

「わざわざ一対一にしてくれるってか。親切で助かるよ」

「………」

「バナっ」

 

 

目の前の植物系クリーチャーは野太い声を上げて臨戦態勢に入った。背中の大きな花も力強く揺れる。

 

 

…負けないはずだ。

 

 

だって俺はガブリアスさえ討伐したんだ。こんな鈍重なやつ相手に負けるはずがない。

 

 

相手は小回りが効く図体じゃない。ならばこちらから仕掛ける。

 

 

深く腰を落とし、踏み込み、一気に駆け出す。一瞬で巨体に肉薄し、居合を抜き放つ。

 

 

狙ったのは右前足。機動力を落とすのが狙い。

 

 

だったが、

 

 

「っ、浅いっ…?!」

「バナァ!!」

「くっそ!!」

 

 

切れはした。しかし明らかに傷が浅い。骨まで届いてないどころか、表皮くらいしか切れていないだろう。

 

 

さっきイワークのツノだって切り落とした斬撃だぞ。

 

 

どういう筋肉が詰まってるのさ。

 

 

そして、当然ながら反撃がきた。巨体を活かした突進…とかではなく、飛んできた攻撃は、背中の花から放たれた紫色の塊。

 

 

(正体不明だけど、どう見ても有害物質だね!!)

 

 

禍々しい見た目からして間違いなく危険物。つまり切って落とすは通じない。ならば避けるだけだ。

 

 

幸い放物線を描いて飛んでくる弾は遅く、避けるのは容易い。それでも俺は大きく跳んで過剰に距離を取った。

 

 

標的を失った有害物質の巨弾は地面に着弾。そして、その瞬間にどちゃっ!という音と共に炸裂し、大量の飛沫を撒き散らした。警戒しておいてよかった。

 

 

地面に落ちた飛沫はじゅうじゅう音を立てている。つまり、

 

 

「…酸か!いや臭っ!ただの酸じゃない、ヘドロか何かなのか?!」

「バナ…」

「っ」

「バナァアア!!」

 

 

避けた攻撃に気を取られている場合じゃなかった。距離の離れた緑のクリーチャーは、咆哮と共に酸の砲弾を連射してきたのだ。

 

 

(ばっ、くそっ冗談じゃない!)

 

 

ただでさえ直撃したら即死級の炸裂弾が雨のように降ってくる。しかも、忘れそうになるけどここは街中なんだ。今は広場にいるけど、周りにある民家に被害は広げられない。

 

 

ヤツの狙いは引くほど正確だけど、ありがたいことに背中の花から上に向かってしか撃てないらしい。つまりどうあがいても着弾までラグがある。

 

 

だからその隙を突く。

 

 

酸の砲弾が降ってくる直前、脚に力を込めて一気に前に跳ぶ。地面スレスレまで体を倒して滑るように駆け抜ける。降ってくる酸の砲弾の飛沫を極限まで受けないようにするためだ。

 

 

そしてそのまま、弾を避けながらクリーチャーに突撃する。今度は下を潜り、腹を切り裂いてやる。

 

 

死の雨を避けながら突っ込んでくる俺に驚いて砲撃を止めるクリーチャー。このまま腹から捌いてやる。

 

 

 

 

 

 

 

そう思ったのに。

 

 

 

 

 

 

 

あろうことか、緑のクリーチャーは見た目からは考えられないくらいのスピードでぎゅんっと横に走って俺を避けてきた。

 

 

 

 

 

 

 

「はっ反則か!!そこの飛竜ならまだわかるのに、四足歩行で背丈ほどもある生き物がそんな高速で動けるとか!!」

 

 

洒落にならない。

 

 

どういう脚力してんだ。

 

 

こっちはさっきのイワーク戦のこともあって消耗してるのに、相手は遠距離攻撃搭載、移動速度も負けてない、しかも頑丈。頭おかしい。

 

 

現に花粉を撒き散らしながら四本足で走るクリーチャーは割と余裕そうだ。

 

 

(いや、体がデカいから一歩も大きいと考えると、足が早くてもおかしくは…いやでもやっぱりズルい。ガブリアスの方が速いとはいえ、やつらは遠距離攻撃手段がなかったし…)

 

 

こういう相手に拳銃は威嚇にもならないため、ほぼ刀一本で戦わなきゃならない。そんな条件で遠距離攻撃持ちは極めて相性が悪い。そういう意味ではガブリアスやカバルドンよりも、トリトドンの方が厄介だった。

 

 

今回もそんな感じだ。しかも遠距離攻撃は広範囲で致命的、ついでに臭い。それになんか急に眠く…

 

 

眠くなってきた…?

 

 

(やっ、ばいな!)

 

 

原因不明の眠気、しかし確実に普通じゃない。戦闘中に眠くなるとかあり得ない。何かされたとしたらいつだろう?あの砲弾の臭いが催眠作用があるとか?性能モリモリすぎだろ。

 

 

抵抗はするが、やはり意識が途切れ途切れになる。

 

 

そしてそれがクリーチャーの狙いなら、それを逃すはずがない。

 

 

「っ!!」

 

 

気が付いた時には、頭上に酸の砲弾が三発も迫っていた。まずい、避け切れない!

 

 

「っらぁああ!!」

 

 

避け切れないと判断した瞬間横に跳び、着弾の寸前に地面を斜めに切りつけ、跳ね上げる。即席の土の壁だ。

 

 

壁に阻まれた飛沫はある程度は防げたが、全ては防げない。わずかに体の端をかすり、焼けるような痛みをもたらす。

 

 

だけどおかげで目が覚めた。

 

 

そして、クリーチャーが背中の花からめっちゃ花粉を振り撒いているのが目に写った。

 

 

「なるほど…催眠性の花粉か!さっき走った時にもバンバン撒き散らしてたもんね!!」

 

 

タネは割れた。しかし解決じゃない。花粉に触れないように戦わなきゃならないという制限が増えた以上、接近すら難しい。

 

 

ナミエがいればはるかに楽だけど、ニビシティの住民の避難誘導と護衛を頼んでいるナミエに来てもらうわけには行かない。

 

 

だから俺一人でできることをやるしかない。

 

 

クリーチャーは相変わらず遠くから酸弾を降らせてくる。催眠花粉はあまり長く滞空しないのか、今は本体の周りにしか漂っていない。しかし本体の周りが一番肝心なわけで、そこに近づけないんじゃ切ることもできないんだけど。

 

 

だから別の手を使う。

 

 

降ってきた酸弾を後ろには跳んで避け、今度は飛沫に構わず腕を振る。

 

 

そして、

 

 

「バナァ?!?!」

 

 

溶ける地面の煙の向こうから悲鳴のような鳴き声が聞こえた。それもそのはず、やつの鼻先にはナイフがぶっ刺さってるんだから。

 

 

最初にアカヤが俺に投げてきたナイフ。

 

 

あれを、酸弾を目眩しに使って不意打ちで投げたんだ。ちょっと飛沫を被って火傷を負ったけど、これくらいなら平気だ。どちらかと言えば臭くなりそうなのが嫌。

 

 

クリーチャーは鼻先のナイフをどうにかして取ろうともがいているようだ。あの短い前足では鼻先まで届かないのだろう。頭をブンブン振って取りたいようだが、痛むせいかあまり大胆には振れないようだ。

 

 

ならば今がチャンス。

 

 

全速力で駆け寄って、クリーチャーの目の前でジャンプし、鼻先に刺さるナイフの柄を思いっきり踏みつけた。

 

 

「ブァアっ!!!」

「ご主人のナイフだろ、たっぷり味わえ!」

 

 

ナイフの刃が上顎を貫通したようで、でかい口の中からも血が吹き出した。足は頑丈だったけど、やっぱり柔らかい部位もある。そこを狙って

 

 

 

 

 

 

バチィ!!と。

 

 

 

 

 

 

不意に上から叩き落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

(…???)

 

 

何が起きたか全くわからん。

 

 

頭を打ったせいで目眩がするが、倒れ続けているわけにもいかないから立ち上がる。歪む視界の中でなんとか立ち上がり、攻撃の正体を見極める。

 

 

答えはすぐに見つかった。

 

 

ツタだ。

 

 

触手のようにうねる極太の植物のつる。それが背中と背中から生える花の間あたりから二本伸びていた。

 

 

クリーチャーはツタを器用に操って、随分と痛そうな顔をしながら鼻からナイフを抜き取った。

 

 

まったく、腹立つなぁ。

 

 

「………かはっ。そんなこと出来るなら…先に言ってくれよ……」

 

 

不意打ちとかやめてくんない?騎士道精神とかないのかな。無いから。

 

 

揺れる視界と不安定な大地の上に辛うじて立ち上がる。背中を叩きつけられて頭から地面に激突したんだからもう目眩がすごい。

 

 

ゆるさん。

 

 

…ていうか、結構時間かけて立ち上がったと思うんだけど、攻撃が飛んでこないな?

 

 

不審に思って歪む視界のピントを頑張って合わせる。向こうも痛みで怯んでいるならチャンス。既に攻撃を始めていたらちょっと困る。身を隠されたらとても困る。

 

 

そして。

 

 

「…………それは一番困る…!!」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

目の前に立つクリーチャーは今までで一番大きく背中の花と葉を広げ、何かを溜めている。そして見るからにチャージ完了間近だった。だって花がめっちゃ光ってる。

 

 

容赦ないな何する気かわかんないけど、もう間違いなく容赦ないのが来る。

 

 

阻止しなければ、いや間に合わないか、避ける?どっちに、どう避けたら避けられる?しかもまだ目眩がしていて、足元もふらつくのに…!!

 

 

そして、

 

 

敵は逡巡の隙を許してくれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬、強烈に光った。

 

 

そしてその瞬間、背中の花から強烈な光線が放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ほとんど本能だった。

 

 

本能が俺を横に跳ばせた。

 

 

辛うじて避けられたけど、まだ終わってない。凶悪な光線はまだ続いている。しかもあろうことか旋回しつつ追ってくる。

 

 

こうなったらもう選択肢は一つ、逃げ回るしかない。

 

 

後ろから迫り来る轟音の壁と死の光線。反動にが強力なのか旋回自体は遅いが、その威力は地面を吹き飛ばして瓦礫を巻き上げるほど。光線自体に当たらなくても、余波で最悪死にかねない。

 

 

万全なら反撃もできるだろうが、足がふらつく中では無様に転げ回ってでも逃げなければ。

 

 

躓いて転んでも、無理に立ち上がろうとはしないで転がってからその勢いで立ち上がり、再び走り出す。少しでも早く動かなければ死ぬ。

 

 

動け。

 

 

動け、攻撃が止むまで。

 

 

そうして無様を晒しているうちに目眩も治まってきた。これはチャンスだ。

 

 

そして。

 

 

光線が、止む。

 

 

この瞬間を待っていた!

 

 

「らぁああああ!!!」

 

 

走っては間に合わない。隙をつけない。だから、俺は刀を()()()

 

 

全力で投げた刀は弾丸のように飛んでいき、クリーチャーの眉間に迫る。

 

 

が、クリーチャーは即座に触手のような蔓を伸ばして刀をキャッチ。ちゃんと刺さってくれればそれが一番よかったけど、とりあえず想定内だ。

 

 

刀に気を取られている間に俺はクリーチャーの側面に移動していた。そして懐に飛び込むと、刀の鞘の下に提げてあるもう一本の小刀…いわゆる脇差を抜き、横合いから飛びかかった。

 

 

クリーチャーも凄まじい反射神経で対応し、その場から飛び退きつつ刀を掴んだ蔓で応戦しようとする。

 

 

そいつが狙いだ。

 

 

「っ、せいっ!!」

 

 

蔓の殴打と刀の斬撃を紙一重で躱し、すぐさま脇差を振り抜く。スパンッという音と共に刀を持つ蔓が斬り落とされた。

 

 

クリーチャーが苦悶の声を上げる中、その一瞬で刀を取り返し振り上げる。

 

 

このまま振り下ろせばヤツの頭を叩き割れる。殺せずとも重症まで持っていける。

 

 

………が、そうは問屋が下さないみたいだ。

 

 

目の前のクリーチャーではない。

 

 

頭上を飛び回る飛竜、その背に乗るアカヤ。

 

 

彼が不意にナイフを投げつけてきたのだ。

 

 

銃弾かと思うほどの速度で飛んできたそれを振り上げた刀で弾き飛ばす。そして俺が投げナイフを防いでる間に、アカヤはボングリをぶん投げてクリーチャーを収納してしまった。

 

 

「…勝負ありってことでいいのかな?」

「………」

「顔が悔しそうだからそういうことだと受け取っておくよ」

 

 

アカヤは飛竜から降り、微妙に顔をしかめながらボングリに木の実を押し込んでいた。いくら無口でも顔や態度で少しは意思疎通ができる。しかしそんなにたくさん木の実は入らないと思うよ。しかもそれオボンの実じゃん。あんまり見かけないのに。くれよ。

 

 

「それで?何でクリーチャーの味方なんかしてるのかは答える気になった?」

「………」

「何だ、次はそこの飛竜か亀をぶった斬ってもいいんだぞ」

 

 

あくまで無言を貫くアカヤに刀を突きつける。アカヤ自身は微動だにしないが、後ろに控える飛竜が唸り声をあげて威嚇してきた。

 

 

連戦疲れるなぁ、と思っていたら、遠くから俺を呼ぶ声が聞こえた。間違いない、ナミエの声だ。こっちに向かってくる。

 

 

「ヒロさん、ご無事ですか!」

「もちろんだよ。そっちは大丈夫なの?ただ避難するだけじゃ危ないと思うけど」

「はい。街の奥に頑丈にできてる博物館があったので、そこに皆様は避難していただいています。ひとまず大丈夫かと。…それより、その方は…」

「ああ、会ったことなかったっけ。元討伐隊所属の…アカヤ。あの『レッド』だよ」

「…!この方が、レッドさん…」

 

 

一般人の護衛無しでは危険じゃないかと思ったけど、ナミエがそう言うなら大丈夫だろう。それよりも目の前のアカヤだ。

 

 

「アカヤ、この子はナミエ。俺のバディだよ。ここからはナミエも加勢するけどまだやる?」

 

 

アカヤはトレードマークの帽子を下げて目元を隠し、何か考えているようだ。後ろにいる飛竜は心配そうにおろおろしている。図体と見た目に似合わないリアクションしてるな。

 

 

やがて意を決したかのように帽子を上げたアカヤは、突然一枚の紙を投げてよこした。俺じゃなかったらキャッチし損ねて指切るぞそれ。

 

 

投げられたのは一枚の写真。

 

 

「…いやこれが何なんだってば。おーいこら逃げるな」

 

 

これが何なのか聞こうと思ったらアカヤはもう背を向けていた。早いわ。これ以上何も無いのか。

 

 

あっ、そうだ。

 

 

「ナミエ、ちょっとリュック貸して」

「えっええっ?どうしたんですか??」

 

 

あたふたするナミエのリュックを構わず漁る。しばらく漁ってやっと見つけたのは、一つのボングリ。

 

 

「アカヤ!受け取れ!」

「………?」

 

 

振り向いたアカヤにボングリを投げつける。これはこれでアカヤじゃなかったら打撲傷を負いかねない勢いだったけど、まあお互い様ってことで。

 

 

投げたのはもちろん。

 

 

傷ついたピカチュウが入ったボングリだ。

 

 

「そいつ、俺たちを助けてくれたんだ。だから治療まではしてやったけど、連れて歩くわけにはいかない。…だから君に預ける。君ならどうせ意地でも助けるだろうし仲良くもできるだろ」

「………」

「いいのかって?良くないよ。クリーチャーをクリーチャー使いの手に渡してるんだから個人的には重罪だよ。…でも俺だって恩知らずじゃない。だからそいつは頼んだ。ただし次会ったら殺すかもしれない」

「………」

 

 

まあ、実は元々アカヤに会うことがあったら渡そうかと思ってはいた。クリーチャーを従えているとは流石に思ってなかったけど、クリーチャーを殺す気がないこいつに渡しておけば俺はピカチュウをこっそり連れ回す必要もなくなるし、アカヤも適当に匿ってくれるだろうと思っていた。

 

 

だから渡す。

 

 

一つの恩返しとして、命を守ってくれるであろう人物の元に預ける。

 

 

…まあ、宣言通り、次会ったら容赦なく殺すと思うけど。

 

 

「………」

「何だこのやろう」

 

 

少しだけアカヤが笑ったように見えた。無表情だからわかりにくいが、俺にはそう見えた。

 

 

そして、今度こそこちらに背を向けたアカヤは飛竜に飛び乗り、突風を残して飛び去ってしまった。

 

 

荒らされたニビシティの広場には俺とナミエだけが残された。

 

 

「えっと…一体何があったんです?」

「イワークを仕留めようとした瞬間にアカヤが来てね…っと、詳しい話の前に」

 

 

最後の最後だけ来たナミエは頭にハテナを浮かべて戸惑っている。けど、説明する前にやることがある。

 

 

「まずは町をある程度までは整備しないとね」

 

 

今、ニビシティの地面はイワークのせいで穴が空いたり、緑のクリーチャーのせいで溶けたりしている。

 

 

討伐隊はこういう、クリーチャーの襲撃を受けた町の復興とかも手伝ってるから、放っておくわけにはいかないんだよね。

 

 

面倒だけど、応急処置くらいしておくか。

 

 






最後まで読んでいただきありがとうございます。

Q.シンオウ地方でどうやって初代御三家捕まえたの?
A.生息地不明なんだからいいじゃん。

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