僕の名前はスティンガー   作:よよよーよ・だーだだ

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おしまい。




KSI工場を抜け出したディセプティコン達は、香港市内を進撃していた。

先鋒を務めるのはパガーニウアイラへと変形したこの僕、スティンガー。

人造トランスフォーマー達の進軍。その中心をトラックへ変形したガルヴァトロンが走り、その周囲を他の兄弟達が護っている。

 

ロックダウンから提供された『シード』は、現在CIAの手にはない。あの馬鹿でハゲのKSIリーダー・ジョシュア=ジョイスが、部下であるダーシー=トリルとスー=ユエミンを伴い、中国の市街地へと運び出していた。

 

しかし、人間のテクノロジーを凌駕する僕らから逃れる事など出来るはずがない。兄弟の一人がCIAの監視衛星にハッキングを仕掛け、割り出されたジョシュアの座標位置をディセプティコンの全体へと共有している。

ジョシュアに出し抜かれた事に気付いたCIAのハロルド=アッティンジャーとその部下ジェームズ=サヴォイ率いる“墓場の風”は、死に物狂いでジョシュアを追跡している。僕らは、奴らやオートボット達よりも先に『シード』を手に入れなくてはならない。ムシケラの手から奪う事は造作もないが、隠されてしまえばそれを探す余計な手間が必要となってしまう。余計な手間はガルヴァトロンも、そして僕自身も嫌いだ。

 

市街地に到達した僕は、パガーニウアイラからロボットモードへとトランスフォームした。

ジョシュアの座標位置がこの辺りから発せられているのを確認し、ネットワークを通じてガルヴァトロン率いる後続のディセプティコン達へ報告を上げる。

続けて到着したガルヴァトロンがロボットモードへトランスフォームし、号令をかけた。

「俺様の『シード』を探せ!」

ガルヴァトロンの号令を受けた他のディセプティコンの兄弟達も次々とトランスフォームし、ロボットモードへと姿を変えてゆく。

 

騒ぎに釣られた人間の野次馬共がわらわらと湧いてきて、こちらへと群がってくる。

目障りなムシケラだ、とネットワークでジャンクヒープの三つ子が呟く。僕も同意見だ。潰してやりたい気持ちはわからないでもないが、生憎ムシケラごときに構っている場合ではないのでこの際無視しておく。そんなことに構っている余裕はない、あとでたっぷりと思い知らせてやればいい。

 

空から、巨大なエンジン音が迫ってきた。野次馬共が空を見上げ、続いて僕らも空を見た。

中国の上空に突如現れたあれは、ロックダウンの操る“探査船テメノス”だった。

この間聞かされたCIAの情報が正しければ、確か、ロックダウンはオプティマスを連れて地球を去ったのではなかったのか。あの宇宙船を操縦しているのは誰なんだ?

「兄弟達よ、オートボットだ!」

一番最初に気付いたディセプティコンの兄弟からの情報を、ガルヴァトロンがネットワークで共有する。

オートボット達がロックダウンの宇宙船を奪ったのだ。恐らくはオプティマスも救出されたことだろう。

「撃ち落とせ!」

ガルヴァトロンの指示を受け、砲撃に適したポジションへ向かってゆくディセプティコン達。

 

宇宙船のすぐ傍、アパートメントの屋上に、KSIのリーダー、ジョシュア=ジョイスの姿が見えた。

「ジョシュア! それを持ってこっちに来い! 急げ、早く!」

宇宙船から聞き覚えのある声がする。メモリを探れば思い出した、確かショールームでバンブルビーと一緒にいた人間達、ケイド=イェーガーとその家族だ。

いつの間にオートボット側に寝返ったのやら、KSIの元リーダーはスポーツバッグ一杯に詰め込んだ『シード』を、宇宙船のタラップにいるオートボット達へ引き渡そうとしている。

全速力で走る僕だったが、どうやら僕では間に合いそうにない。

「くたばれ、オートボットめ!」

その間一髪、自動車からトランスフォームしたトラックスの一体がミサイルを撃ち出す。放たれたミサイルはオートボットの船へ見事命中。

宇宙船の制動が崩れたスキを突いて、ポジションを整えた僕らディセプティコンは集中砲火を浴びせた。

 

爆発炎上した宇宙船から、人間が数匹とオートボットが二名、宇宙船から転げ落ちた。

黄色い小柄な方は僕の宿敵バンブルビー、大量の重火器を背負った緑色の巨漢は老兵ハウンドだ。

 

機関部破壊という致命傷を負った宇宙船は、被弾箇所から黒い煙と部品を噴き散らしながら、どこぞへと飛び去り墜落していった。

 

アパートメントの屋上には転げ落ちたオートボットが2名、バンブルビーとハウンド。対するこちら側ディセプティコンはその数10体。後発のメンバーが到着すればその総数は50体にも及ぶ。

しかも機体性能で言えば誰も彼も、“シカゴの悲劇”までに観測されたどのオートボットよりも優れたものとして設計されている。

長年の逃亡生活でガラクタ同然になったオートボット達が、敵うはずもないのだ。

「登れ、登れ! 取り囲むのだ!」

ガルヴァトロンの命を受けたジャンクヒープとトラックス達がアパートメントを登ってゆく。

過密状態で至る所からベランダと室外機を生やしたアパートメントは、僕らがよじ登る為に最適の構造だ。

他方、僕は数体のボスを引き連れ地上に残った。

地上からの援護射撃をガルヴァトロンに提案し、許可を取る。

先に登った兄弟達を観測手として屋上の位置を確認させ、位置情報をネットワークで共有、僕らは頭上のオートボットへ砲火を加えてゆく。

 

バンブルビーのミサイルとハウンドの銃火を喰らったトラックス達が悲鳴と共に降ってきて、着地と同時にスクラップになった。

ちょこまかと動き回る人間達を狙い撃ちにする僕らだったが、標的が小さすぎる上に、屋上の雑多な構造が邪魔してか、なかなか命中させられない。

しかも『シード』の破壊力は核兵器並み、下手な撃ち方をすればこちらまで巻き添えを喰らってしまう。

「こいつを喰らえ!」

弾幕を撒き散らしながらハウンドが跳ぶ。あのデブ、如何にも重量級の鈍重な見た目に反して、身のこなしが異様に速い。

「おっと、ケツが嵌っちまった! ビー、奴らを撃て!」

「“Yeah!”」

勢い余ってアパートメントに尻を突っ込んだハウンドを支援しようと、続けてバンブルビーも跳びながら発砲する。

しまった、あれは誘導ミサイルだ。気付くと同時に即座の共有、飛び退く僕。しかし隣にいたボス二体は間に合わず、誘導弾の餌食となり爆死した。

 

忌々しいバンブルビーめ。爆裂するボスの残骸を避けながら反撃する僕だったが、その時は既にバンブルビーの姿が視界から消えていた。

 

「ビー、正面だ! 援護しろ!!」

「“Yeah!”」

僕らディセプティコンの兄弟が総出で繰り広げた包囲作戦により、オートボット二名は市街地の隅へと追い込まれた。

バンブルビーの格闘能力もさることながら、あのハウンドの火力はヤバ過ぎる。

しかしいくら重武装でパワーがあるとしても、いずれは弾は無くなる。エネルギーも尽きるだろう。いくら手強い精鋭でも、結局物量には勝てないのだ。

僕達は車を積み上げたバリケードで、たった二名のオートボットを封じ込めた。僕らはバリケードと人間の建造物で身を守りながら、その隙間隙間から銃撃を加えてゆく。

 

「撃て、動くものは全部! ほら、ケイド、撃てえっ!!」

ハウンドが放り投げた自動車を喰らい、ボスが叩き潰された。

バンブルビーの銃撃を受けて倒れたトラックスが、人間の銃撃で顔を撃ち抜かれる。

重火力と怪力で蹴散らすハウンドと、軽快なステップの接近戦を得意とするバンブルビー、

そして、オートボット二名を援護するムシケラが一匹。オートボットの味方となった人間、ケイド=イェーガーがロックダウンの宇宙船で手に入れたらしい銃剣で、動けなくなったディセプティコンにトドメを刺している。

完璧とは言わないが、なかなかバランスがとれたチームプレイだ。となれば、僕ら兄弟がとるべき方策は一つしかない。

 

あのデブとチビを引き離せ。僕からの指示を受けたディセプティコンの兄弟達は、次々とハウンドへ群がった。

「俺はデブのバレリーナだ! 敵の皮を剥ぎ、喉を裂く!」

トラックスが、ジャンクヒープが、ボスが、トゥーヘッドが、ハウンドの火力とパワーを前に次々と倒されていった。

「喰らえぇてめえらぁぁぁ!! イッピキ残らずくたばれえええッ!!」

叫びながら一帯を転げ回り、銃を乱射するハウンド。縦横無尽に暴れ狂うオートボットのでかいワンマンアーミーは、もはや誰の手にも負えない。

だからといって怯みはしない。ここで負ければ、オリジナルを越えられなければ、僕ら家族は“模造品”で終わる。

僕を含め、兄弟達の思いは皆同じだった。これは聖戦だ、僕らが僕らである為の。

 

 

一方、中国の山奥に墜落したオートボット達。

オートボット司令官オプティマスプライムは、ロックダウンに囚われていたサイバトロンの騎士“ダイナボット”達を説得していた。

共闘を申し出るオプティマスプライムと、一時の共闘さえも拒否するダイナボットリーダー・グリムロックの一騎討ち。騎士同士の決闘は殺し合いではないが、かといって巨大な力と力がぶつかり合えば五体満足に終わるとも限らない。

 

ロボットモードからティラノサウルスの姿へとトランスフォームするグリムロック。グリムロックはオプティマスを単なる抑圧者ではなく、自身と同じ騎士としての精神を秘めた戦士だと認めた。相手が戦士だというならば、自信が持てる最大級の力をぶつけようという、グリムロックなりの敬意の表れだ。

「力を合わせねば勝てない! お前達に自由を与えようというのだッ!」

野性を取り戻したグリムロックの咆哮と、オプティマスの轟くような唸り声が交差した。

オプティマスの繰り出した盾の一撃で頬を強かに打ち付けたグリムロックは、バランスを崩して倒れ込む。ダイナボット最強のグリムロックといえども、ブレインサーキットがぐらついているような状態では、立ち上がる事すらままならない。

「私の“家族”を護れ、そもなくば死あるのみだ」

動けなくなったグリムロックの首元にオプティマスは剣を突きつける。

 

オプティマスの意思の力を前に、グリムロックは遂に屈した。そんなグリムロックの様子を目の当たりにし、他のダイナボット達も服従の姿勢をとる。

惑星サイバトロンに伝わる伝説の古代騎士ダイナボット達が求めるのは、誇り高い戦いでの勝利と自由、そしてそれらをもたらす圧倒的な力だ。

グリムロックを打ち倒したオートボット総司令官、オプティマスプライムはダイナボットが求める全てを兼ね備えていた。

一見無茶な“説得”も、オプティマスが強烈な一撃をぶちかました事で、成功してしまった。

 

かつてオプティマスは人間の勇気ある行動に打たれ、宇宙に散ったオートボット達へ『我々はここでいつまでも待っている』とメッセージを送った。

その言葉に応じてオートボットの仲間達は地球へ飛来し、新たな故郷地球を、人類を護る為に闘い続けてきた。

オートボットやNESTの戦友達を次々と失い、悲しみに暮れる事もあった。

『自由は全知的生命体の持つ権利』という信念を掲げながら、苦境を前に迷う事もあった。

人間達を友と一方的に信じてしまった己の決断を悔いた事もあった。

 

だが、今回、オプティマスを救い、決死の戦いへと赴いてゆくケイド=イェーガーの姿を目の当たりにし、オプティマスは新たなものを学んでいた。

それは、“家族”だ。共に生き、共に戦い、そして互いに想い合い、愛し合う者達。家族を守る為なら、悲しみも迷いも悔いもない。

今のオプティマスにとって“家族”とは、オートボットの仲間達であり、ケイド達であり、そして地球の人間達であった。

「オートボット! 我々が何者なのか、何故ここにいるのか、証明するのだ!」

グリムロックに跨るオプティマスが、高らかに宣言する。

 

呆気にとられていたオートボット二名、クロスヘアーズとドリフトは、ようやく現実へと帰ってきた。

援軍が必要だ、とオプティマスがスピルバーグの映画に出てきそうな連中を引き連れてきた時は何か悪い冗談なのかとさえ思ったが。

「……まったく、あの人の為なら死ねるね。ありゃあリーダーシップってヤツだな、洗脳ってやつかもしれねえが」

オプティマスの宣言を聞き、コートの裾を翻して肩を竦める空挺兵クロスヘアーズ。クロスヘアーズお得意の皮肉も、今回ばかりは説得力がない。

「いや、違う」

クロスヘアーズの様子に、侍ドリフトは微笑む。

その言葉を借りるならクロスヘアーズ自身もまたオプティマスの心意気に“洗脳”された一人だからだろう。

「それこそがオプティマスプライムだ」

その思いはドリフトもまた同じだった。

 

 

激戦もたけなわ、投げたグレネードでボス達を吹っ飛ばした辺りでハウンドは人間達に告げる。

「残念なお知らせだケイド! 弾も尽きたし、アイデアも尽きた!」

そうか、それは朗報だ。

弾薬を切らした銃器を捨て、被っていたヘルメットを投げつけ、挙句の果てには体に巻いていた弾薬ベルトを剥して鞭のように振り回し始めるハウンド。

それだけ追い詰められているということだ。

勝利へと導く“風”は、我々ディセプティコンを推している。ディセプティコン達はここぞとばかりに攻勢へ打って出た。

一方、僕とトラックスによりバリケードの外へと誘い出されたバンブルビーは、慌てた様子でハウンドの援護に向かおうとする。

しかし気付いたところでもう遅い。バンブルビーの前に、僕とトラックスが立ちはだかった。

 

殴りかかるバンブルビーをトランスフォームしながらスルリと躱し、逆に腕の関節を極めて自動車のバリケードへと力いっぱい叩きつける。

痛みに呻くバンブルビーの腕を掴んだまま大地へ叩き伏せ、バトルマスクを嵌めた顔面を蹴っ飛ばした。

壊れた顔と背中の部品を散らしたバンブルビー。なおも立ち上がろうとするバンブルビーの肩をトラックスが捕まえて、バンブルビーの体を僕の方へと寄越す。よろめきながらこちらへと向かってくるバンブルビー。その勢いにのせて、僕はその黄色い胸を抉るようにアッパーカットを打ち込んだ。

体内の機関部を破損したらしく、バンブルビーは膝をついて崩れた。バトルマスクの隙間からバンブルビーの体液が零れ落ちる。

 

バンブルビーとの格闘対決は、僕の優勢だった。当然だ。リフォーマットによってバンブルビーと僕は外見こそ同じになってはいるが、だからといって性能差まで埋まったわけじゃない。

 

ハウンドの悲鳴が聞こえた。

武器を使い果たしたハウンドにトゥーヘッドの巨体が圧し掛かったのを見て、バンブルビーが起き上がりながらこちらへ背を向けた。

自分が追い詰められているくせに仲間を気遣おうとするとは随分な余裕だ。でも、その油断は命取りだったな。バンブルビーを蹴り上げ、仰向けになったところをマウントポジションでしこたまブチのめす。

 

長いようで短かったこの戦いは、僕ら新生ディセプティコンの勝利で決まるだろう。

バンブルビー、これでお前も、僕がお前のコピー扱いされる日々もオシマイだ。

唯一無二のオリジナル、新生ディセプティコンのスティンガー。それが僕だ。決して、誰かの真似でも模造品でもない。

この輝かしい瞬間をガルヴァトロンは見ていてくれただろうか、と目の端で見回す僕。

 

しかし、僕はガルヴァトロンの姿を、捉えることはできなかった。

偉大なるディセプティコンの新破壊大帝にして僕の兄さん。家族の勝利を目前にして、何処に行ったというのだろう。兄さん、どこに……?

 

 

その時、僕は戦況が変わった事に気が付いた。

ネットワークを通じて、蹂躙されるトラックスやボスの悲鳴が聞こえてくる。戦いの中で吹く風は、いつしか風向きが変わりつつあった。

 

撃墜した宇宙船に乗っていた、ハウンドとバンブルビー以外のオートボットが参戦したのだろうか。

いや、だとしてもたかが3体、こちらはハウンドの奮戦でかなり多くのディセプティコンが倒されていたものの、

3体増えたところで覆せるほどの戦力差ではない。

しかし、それならこの悪い風は何だ? 勝利は僕らディセプティコンの家族のものではないのか?

 

「アターック!」

オートボットの指導者、オプティマスプライムの掛け声が聞こえる。

 

振り返れば、巨大な恐竜に似たシルエットが、怒涛の大爆発を伴いながら僕の背後へと迫っていた。

 

 

「馬鹿な、こんなはずでは!」

戦乱の市街で、ガルヴァトロンは悲嘆した。これでは全てが水の泡ではないか。

角の生えたティラノサウルス、無数のトゲを揃えたスピノサウルス、牙と剣をぎらつかせるトリケラトプス、頭が二つある翼竜。

姿の異形だけならいざしらず、金属質のボディを持つ恐竜など、現代はおろか古代の地球にさえ存在していない。

恐竜型のオートボット、それも特大サイズのが4匹もいるなどKSIのデータには存在していなかった。一体、どこから連れて来たのだろう。オートボット達が強奪したロックダウンの宇宙船と何か関係があるのだろうか。それともKSIが把握していなかったオートボットの増援か。

疑問は尽きないが、ガルヴァトロンにそれらの疑問を解き明かす余裕はなかった。

あの巨体と戦闘力は、新生ディセプティコン軍団を以てしても、まるで刃が立つものではない。

 

かつてのメガトロンは引き際を見誤ったが故に敗北した。同じ失敗を幾度も繰り返すべきではないだろう。

ほんの一瞬だけ我を忘れたものの、自身の敗北を悟ったガルヴァトロンの行動は素早かった。

ガルヴァトロンはネットワークとの接続を保ちつつ、他のディセプティコン達にも告げずにほんの僅かな手勢のみを連れて戦線を離脱する。

やむを得ない。新生ディセプティコンの兄弟達には、オートボットの猛撃から俺様を守る為に生きた盾となってもらおう。

 

メガトロンにとってそうだったように、ガルヴァトロンにとってもまた、家族などその程度の存在でしかなかった。それで痛む良心は勿論、魂さえも持ち合わせていない。

ガルヴァトロンが見限ったディセプティコンの中には、ガルヴァトロンに忠を尽くした弟、スティンガーも含まれていた。

 

 

「オプティマスが来たぞう!!」

頭がなくなったトゥーヘッドの死骸をおしのけながらハウンドが叫ぶ。オプティマスの駆るティラノサウルス型ロボットが吐く火炎攻撃であらゆる障害物を蹴散らしながらこちらへと突撃してくる。動揺した一瞬の隙を突き、僕を蹴り飛ばし振り払うバンブルビー。

ティラノサウルス型が引き起こす爆炎と突進で突き崩された車のバリケードが津波のように押し寄せ、その途上にいた僕達ディセプティコンを飲み込んだ。

 

「ビー、飛べェ!」

オプティマスの声で空を見上げると、双頭の翼竜型ロボットが自動車の激流の中へと急降下してくるところだった。

指示に従い、バンブルビーは車の津波を掻き分けて駆け上がり、青い翼竜型ロボットへと飛び乗ろうとする。

その足を、僕は掴んだ。

 

 

縦横無尽に空を舞い踊る翼竜型ロボットの背の上という不安定な足場で振り回されながら、僕とバンブルビーの戦いはなおも続いた。

アッパーカットでバンブルビーを突き落した僕だったが、援護するかのように翼竜型ロボットはバンブルビーをキャッチして自分の背の上へ。

戻ったバンブルビーに捕まって投げ飛ばされる僕も翼竜の尾を掴んで背中へと復帰する。

運動性能は互角。しかし翼竜型ロボットは、スパークを持たない僕の味方をしてくれるつもりはないらしい。

バンブルビーに組みついていた僕を、翼竜型ロボットは錐揉み旋回をしながら器用にビルの鉄骨へ打ち付けて、擦り落とした。

 

落ちながら銃撃を続ける僕に、翼竜型ロボットの巨体が覆い被さる。

僕を振り落としたまでは良かったが、そのせいで翼竜型ロボットは勢い余ってバランスを崩したらしく、

粉砕されたビルのガラス窓を撒き散らしながらバンブルビーと共に高層ビルを転げ落ちてきた。

僕とバンブルビー、そして翼竜型ロボット。

赤と黄色と青のカラフルなロボット三体が互いにもみくちゃになりながら、高層ビルから道路へと叩きつけられて転がってゆく。

 

勢いに乗ってバンブルビーが僕へと飛びつき、僕の首根っこへブラスターを突き立てる。

頭部が全身の駆動系から切り離され、一切抵抗できなくなった僕を捕まえると、バンブルビーは何の躊躇いもなく発砲した。

 

発砲の衝撃で吹っ飛ばされる僕の頭は、自身の体が彼方へ爆裂していくのを見ていた。

火花と爆炎の噴水に混ざって、四散してゆく僕の身体。

スパークを持たない僕ら人造トランスフォーマーは絶望も、恐怖さえも感じない。だから僕は冷静にその光景を見つめていた。

 

「“コピー製品は嫌いでね”」

バンブルビーは地面に転がっていた僕の頭を拾い上げ、掌で弄ぶと、人懐っこく吼える翼竜型ロボットの嘴へと放り込んだ。

噛み砕かれてゆく意識の中、僕は最愛の兄、ガルヴァトロンを探した。大破したセンサー類ではその姿を捉える事は出来ない。

恐竜型ロボットに壊された電子の糸を手繰り、辛うじて残っていたネットワークへと辿り着く。

次々と兄弟達の信号が消えてゆく中、ガルヴァトロンが何処かでまだ生きている事を知った。

 

よかった。ちゃんと戦線を離脱できていたんだね。僕は安堵した。これなら、この勝負はもらったようなものだ。

首だけになってもなお生き延びたメガトロン。その執念と野望を継承した生まれ変わりが、このディセプティコン軍団を率いているのだ。

たとえ今回は負けたとしても、最終的な勝敗はきっとガルヴァトロン、いやディセプティコンの勝利で終わる。

僕や今回の戦いで散った兄弟達はその礎となるのだろう。ただ、その先を見る事が出来ないのが、ちょっと残念だったかな。

 

さようなら、ぼくの兄さん。それが、ネットワーク上に僕が残した最後の通信になった。

 

アメリカと中国を股にかけて繰り広げられた、オプティマスとロックダウンによる壮絶な一騎討ちは、

オプティマスが自身の剣で胸を磔にされた事により、ロックダウンの勝利で終わるかに見えた。

深々と刺さった剣は、オプティマスの体を完全に封じ込めている。闘うどころか、立ち上がる事さえできない。

「人間を救うのと引き換えに、自分を助け損ねるとはな」

オプティマスにそう言い聞かせるロックダウン。オプティマスの敗因は、自身がロックダウンとの死闘の最中であるにも関わらず、

その片隅でアッティンジャーに追い詰められ窮地に陥ったケイドを助けようとした事だった。

人間に追い詰められていたはずなのに、この期に及んで人間を助けようとするなど愚かとしか言い様がない。救いようのない恥晒しめ。

一度目はワシントン、二度目はメキシコ、三度目はシカゴ。四度繰り返された激闘は、今度こそロックダウンの勝利で終わる。『創造主』からの依頼もこれにて任務完了だ。そのはずだった。

 

腕のコントローラで回収艇を呼ぼうとしたロックダウンの背に、一発の銃弾が撃ち込まれた。

ロックダウンが振り返れば、KSIの連中に追われ、先ほどオプティマスに救われたあの人間、

ケイド=イェーガーがダガーガンを構え、瓦礫の片隅から飛び出してきた。

 

あのムシケラめ、俺のコレクションを勝手に使ってやがる! 反撃するロックダウンのブラスター攻撃が、ケイドの隠れる瓦礫を吹き飛ばした。

これで死んだか? ロックダウンが思った途端、ケイドの姿が隙間から現れ、ダガーガンの銃撃でロックダウンの右手のブラスターを弾き飛ばす。

こいつ、なかなかやるじゃあないか。たかがムシケラ数匹に何を手古摺ってやがるとCIAの連中を内心見下していたロックダウンだったが、

どうやら少し人間に対する評価を改めるべきなのかもしれない。

 

そこへ黄色いカマロのヴィークルモードで飛び込んできたオートボットの斥候、バンブルビー。

ロボットモードへと変形したバンブルビーの飛び蹴りがロックダウンを突き倒し、続けざまに繰り出されたパンチとブラスターのコンボ攻撃で、ロックダウンは廃材の山へと叩き込まれた。

「おい、この野郎! かかってこい!」

ケイドが挑発する。さらにテッサとその恋人シェーンも割り込んできて、ロックダウンは、行動不能となったオプティマスから替わってバンブルビー、そしてイェーガー一家を相手する事になった。

「ケイド、逃げろ! これは私の戦いだ!」

剣を抜こうともがきながらオプティマスが叫ぶ。

「そうとも、これは“俺”の戦いだ! 皆殺しにしてやる!」

ロックダウンが吠える。

ロックダウンは背中に纏わりついてきたバンブルビーを容易く捕えると地面へと叩きつけた。

ディセプティコンのノロマどもを翻弄するバンブルビーのカポエイラキックも、百戦錬磨のロックダウンには通用しない。

全身を思い切り叩きつけられたバンブルビーは一撃でダウンし、戦闘不能になった。

「逃げろと命令したはずだ……!」

勇敢過ぎる部下を案ずるオプティマスの声を聞きながら、常に冷静沈着なはずのロックダウンの闘争心に火が点いた。

 

ああ、そうとも、逃げ出しておくべきだったぞ雑魚ども。

狙った獲物を逃した事がないこの俺、ロックダウン様と張り合おうなどという、その勇敢さは買ってやろう。だが命知らずだ。

所詮はムシケラ数匹とそこで伸びているオートボットの青臭いガキ、そして磔にされているオプティマス。相手の戦力を冷静に分析するまでもない。

数多くの戦場と惑星を駆け、依頼人へ確実な勝利を提供してきたロックダウンにとって、この程度は戦闘でもなんでもなかった。

任務の邪魔をするムシケラを潰すだけの、ただの作業だ。

 

ロックダウンは己の勝利を確信していた。まだ、この時までは。

 

バンブルビーとシェーン達の援護を受けながら、ロックダウンの攻撃に負けじとテッサ救出時に手に入れたダガーガンを乱射するケイド。

実地経験で多少使いこなせるようになったダガーガンと、テキサスで鍛えられた己の肉体だけが頼りだ。

だが、ディセプティコンに寝返ったKSIのガラクタ共とさんざっぱらドンパチやらかしたおかげで、オートボット騎士の秘宝とやらも残弾はあと僅か。自分の体さえもボロボロだ。

弾が尽き、体が動かなくなるその時までにどうにかケリをつけるしかない。

 

もし生き残れたら、言う事を聞かずにこんな危険なところにまでやって来たテッサを叱ってやらなければ。

そしてテッサの無茶を止められなかったあのアイリッシュパブ野郎、シェーンをブン殴ってやる。

そんな想いが頭をよぎる。そう、ケイド=イェーガーは家族の為、生き残らなければならないのだ。

 

シェーンの神憑り的な運転によるレッカー車のワイヤー攻撃が、ロックダウンの脚を引っかけ倒した。

さらにケイドが放ったまぐれのダガーガンが、起き上がろうとしたロックダウンの膝と脇腹を撃ち抜く。

体の痛みに這いつくばりながら、なおも目の前のケイドを叩き潰そうとロックダウンは左手の短刀を振り回す。

 

ロックダウンが繰り出す乱れ突きを、ケイドは紙一重で躱しなんとか凌いでいた。

学生時代にアメフト部の無茶なトレーニングで鍛えられた反射神経と身体能力、

そしてテキサス育ちのクソ根性とクソ度胸が今も健在だったのが幸いし、怒り狂ったロックダウンの容赦ない猛攻撃を暫くは耐え抜く事が出来ていた。

 

だが、そんな奮闘にもいつかは終わりが訪れる。

闇雲に撃ったダガーガンがロックダウンの右腕のブラスターを破壊したところで弾が出なくなった。ダガーガンの弾がついに尽きてしまったのだ。

これに乗じてロックダウンは短刀で絡め取り、ケイドの手から奪い取る。最早ケイドの身を護るものは何もない。

「これでお前もおしまいだ、くたばれ!」

ロックダウンがケイド目掛けて左手を振り上げた、まさにその時である。

 

ロックダウンの胸を、鋼の剣が刺し貫いた。

 

 

スパークを一撃で貫かれ、ロックダウンは血反吐と体液をぶちまけながら、全身の駆動系が一気にシャットダウンしてゆくのを感じた。

バカな、有り得ない、何故だ。こんなムシケラごときに俺が敗北するなんて。崩れ落ちてゆくロックダウン。

 

意識が速やかな死へ堕ちてゆく中で、その終焉までも優れた仕事人であったロックダウンはすぐに自身の敗因と状況を把握した。

ケイドの娘テッサとその恋人シェーンが、オプティマスを磔にしていた騎士の剣をレッカー車のフックで引き抜き、

そしてその剣を手に取ったオプティマスが今度はロックダウンを刺し殺したのだ。

握る剣に力を込めて一気に振り上げるオプティマス。

ロックダウンの金属の体が火花を噴きながらぶちぶちと千切れてゆき、痛みを感じる間もなく脳天を一刀両断、ロックダウンの瞳とスパークから光が途絶えた。

 

 

『DNA情報と生活史を共有しているだけの繋がりがそれほど重要か?』

『ああ、重要だ。場合によっては武器にもなる』

最後の最後になって、孤高の一匹狼であったロックダウンはサヴォイの言葉を理解した。

これが“家族”とやらの力か。これほど有利な武器になるなら、是非ともコレクションに加えておくべきだった、と希代の武器コレクターでもあったロックダウンは思った。

 

だが、何もかももう手遅れだ。ロックダウンは絶命した。

 

 

香港のディセプティコン達がオートボットリーダーの姿をようやく確認した時、オプティマスプライムはロックダウンと激闘を繰り広げている真っ最中だった。

「オプティマスはあそこだ!」

トゥーヘッドの一体が、離れ小島で暴れ回るオプティマスの姿を指差しながらディセプティコンの兄弟達に共有する。

傍若無人な恐竜型ロボットの攻撃で、香港市街地のあちこちへと散っていたディセプティコン達は、トゥーヘッドからの共有一つで、磁石で引き寄せられるかのように集結した。

 

急に姿の見えなくなったガルヴァトロンの事も気がかりではあったが、ディセプティコン達はガルヴァトロンを探すよりもオプティマスを優先した。

ガルヴァトロンが欲しがっている『シード』は、今オプティマスの懐にある(実際には違ったのだが、ディセプティコンの兄弟達はその事を知らない)。オプティマスを倒すと同時に、ガルヴァトロンの求めるものも手に入るという一石二鳥の寸法だった。

スティンガーをはじめ多くの兄弟が犠牲となった今回の戦いだったが、それでも総数50体の内の半数近くを失ったに過ぎない。ここでオプティマスを討ち取る事が出来れば、今度こそディセプティコンの勝利で終わる。

 

ディセプティコン達が、オプティマスの居場所へと続く鉄橋で控えていた他のオートボット達と恐竜型ロボット軍団を物量で押し切った頃には、オプティマスとロックダウンの対決は既に終わっていた。勝利者はオプティマスプライム。その足元には頭を切り裂かれたロックダウンの無惨な死体が転がっている。

 

倒す方策は見えている。ディセプティコン達には、オプティマスの足元にいるケイド=イェーガーとその家族達の姿が見えていた。もしディセプティコン達を迎え撃つなら、足元の人間達を庇いながらという圧倒的に不利な状態で闘わなければならない。ディセプティコン軍団、さらにロックダウンとの連戦で負ったダメージと疲労も決して軽くはない。

論理的に言って、今のオプティマスプライムに勝ち目などあるわけがない。強いて言えば、更なるオートボットの援軍があれば話は別だろうが、もしそんなものがあるならとっくのとうに出してきている頃だろう。オプティマスのところへ急ぎながらディセプティコン達はそう考えていた。

 

ディセプティコン達がオプティマスのところへと到達し、そして彼を取り囲むまで、そう時間はかからなかった。ジャンクヒープとトラックスが放った砲撃を、左腕の盾センチネルシールドで防ぐオプティマス。オプティマスが地に伏せる間に、一気に雪崩れ込むディセプティコンの大軍勢。

オプティマスが制圧されるのも時間の問題だった。あとは集団で袋叩きにして嬲り殺しにでもすればいい。

 

「急げ! ロックダウンのグレネードを使う!」

そう叫びながら、オプティマスは、頭の裂けたロックダウンの死体からグレネードを奪い取ると、叩きつけるように大地へとセットした。

まさか我々ディセプティコンと心中するつもりじゃないだろうな。オプティマスの不可解な行動に、ディセプティコン達は戸惑った。

 

その一瞬の逡巡が、勝敗を分ける事となった。

オプティマスが脚部の装甲をトランスフォームさせると、捲れ上がった脹脛から飛行用ロケットブースターが姿を現す。

オートボットのワンマンアーミー・ハウンドの意外な善戦や、何の脈絡もなく突如現れた恐竜型ロボットの援軍などと同様、ここでもまたディセプティコン達にとって大きな計算違いが発生していた。

KSIのデータベースによれば、かつてのオプティマスはメガトロンやスタースクリームなどの飛行型ディセプティコンとは異なり、外付けの飛行ユニット無しでは飛べなかったはずだ。エジプトでの戦いで使用した飛行能力もディセプティコンの老シーカー・ジェットファイアのボディをリサイクルする事で得たものであったし、シカゴの戦いでディセプティコンを一掃する際に使用したのも、牽引するトレーラーから変形する外付けユニット・ジェットストライカーの翼だった。かつてのオプティマスは、単体で飛行する事など出来なかった。

 

しかし今回の戦いでオプティマスが新たに手に入れた力を、ディセプティコン達は見落としていた。オプティマスプライムが“探査船テメノス”で騎士の剣を手に入れたのと同時に自身のアップグレードを果たした事を、ディセプティコン達は知らなかった。かつてのオプティマスが飛べなかったとしても、今のオプティマスは違うという事を、生まれたばかりのディセプティコン達は少しも気付かなかったのだ。

 

なおも縋りつこうと飛び掛かるディセプティコン達を尻目に、オプティマスは人間達を抱きかかえて脚部のブースターを点火、大空へと飛び立つ。

オプティマスのジェット噴射を見上げながら、ディセプティコン達は目前にしたはずの勝利がその手からすり抜けた事を理解した。

 

そしてグレネードが起爆。何もかもを焼き尽くす業火と爆風が、ディセプティコンの兄弟達を包み込み、消し去っていった。

 

盛大な爆発を背後に、人間を抱えながら何処かへと飛び去るオプティマスプライムの影。香港上空を浮遊していたロックダウンの宇宙船も、ようやく重い腰を上げて迎撃に向かった人間達のミサイル攻撃を受けて各部から火を噴いている。

 

そんな光景を、ガルヴァトロンは密かに見つめていた。

今回の戦闘で、新生したディセプティコン達は殲滅された。

生き残った弟たちの報告といくつかの事実からガルヴァトロンが見立てたところによれば、

ガルヴァトロン達人造トランスフォーマーを造ったKSIはオートボットへと寝返り、CIAの黒幕アッティンジャーは死亡、その配下である墓場の風は壊滅状態となった。

オプティマスを捕えようと暗躍していたロックダウンも無事では済んでいないだろう。

 

だがしかし、とガルヴァトロンは自身の完全敗北を否定する。

たしかに、トランスフォーミウムを生み出す『シード』はオプティマスの手に墜ちたかもしれない。しかし他方で、KSIが開発した人造トランスフォーマーの設計データと構築ノウハウは既にガルヴァトロンの手中にある。

宇宙を探せば、旧ディセプティコンの残党もまだ生き残っているはずだった。

そして何より、スパークを持たない人造トランスフォーマーの軍団にはエネルゴン補充やオールスパークの必要がない。

素材となるトランスフォーミウムと必要最低限のエネルギー源さえ確保できれば、旧ディセプティコンと同等、いや凌ぐまで軍勢を拡大出来るはずだ。

 

今の己を何者とすべきか、ガルヴァトロンは既に決めていた。

自身の新たな肉体をガルヴァトロンと名付け、インセクティコンの羽虫を使ってその名を人間達の計画に忍び込ませたのは亡き父メガトロンだ。

メガトロンの話では、ガルヴァトロンの名はかつて太古の昔のサイバトロン星、ノヴァプライムの時代に存在し、歴史の闇へと消えた同名のトランスフォーマーに因んで名付けたという。デッドユニバースと呼ばれる並行宇宙の狭間へと向かった後の消息は、今でも謎のままだ。

 

生まれ変わった自身をガルヴァトロンの再来と位置づけたかったのか、それとも便宜上で名付けた仮初の名前でしかなかったのか、名付けた当人が死んだ今となっては確かめる術もないし、ガルヴァトロンからすればその必要もない、至極どうでもいい事だった。

ガルヴァトロンにとって重要だったのは、ガルヴァトロンはメガトロンではない、ということだ。

 

ガルヴァトロンは敗北者メガトロンとは違う。過去の醜態とは決別し、未来の勝利者でなければならない。その意味でもガルヴァトロンは、メガトロンであってはならない。

 

「また会おう、プライム。俺は生まれ変わったのだ……」

 

俺は、ディセプティコン新破壊大帝ガルヴァトロン。全宇宙に散ったディセプティコンの兄弟達へこのメッセージを送る。

我々新生ディセプティコンはこの惑星でいつまでも待とう。ディセプティコンが力を蓄え全てを征服する、その日まで。

 

再起を誓うガルヴァトロンの脳裏に、その犠牲となった弟スティンガーの事が過る事は一瞬たりとてなかった。

 

 

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