風の戦巫女を継ぐもの   作:レイラレイラ

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本当はコラボ先に出すつもりだったんですけど、少しでも話を進めておきたくて書きました。

エクソダス様、ごめんなさい!


第二巻 魔術競技祭編
戦巫女と魔術競技祭


 アルザーノ帝国魔術学院、学院長室にて。

 

「────と、いうわけで。給料の前借りか、お小遣いをくださいな!」

 

「う、うむ。よか────」

 

「《この・ど腐れ・シスコン野郎が》────ッ!」

 

 紅蓮の炎と衝撃が渦巻き、爆音が響き渡った。

 

 可愛らし笑顔と上目遣いに学院長が頷きかけたのをセリカの爆裂呪文が炸裂、部屋の内装はあらかた吹き飛んで見る影もなかった。

 

 なお、爆裂呪文を放たれたサラはきょとんとしている。

 

「えっと…………私、何か変なこと言っちゃった?」

 

「やかましいわ! お前の口からまともなことなんて聞いたことねえんだよ!」

 

「断固抗議します! サラさんは可愛い! 可愛いは正義! この世界の理に反抗するなど、万死に値します!」

 

「それこそ聞いたことねえから! なんだよその理!」

 

「サラ様は…………」

 

「《とりあえず・黙れ・変態ども》!!」

 

 再度爆裂呪文を放たれた学院長室はさらに破壊が進み、もはやまともな部屋の様相を保ててはいなかった。

 

「まあまあ、全員落ち着きなさい。多少遠回しな言い方じゃったが………………ようは、食費としてのお金が必要なのかな?」

 

「さすがリッ君!! セリカよりも話が分かるなぁ!!」

 

「ごめんなさい、うちの妹が。つい昨日もお小遣いあげたんですけど…………」

 

「な、なるほど。そういえば、先週給料日だったばかりじゃぞ? 君は一体、何にお金を使ったのかね?」

 

「それは…………」

 

「サラさんはたくさんのサンドイッチを買い漁り、それを毎日続けていました!」

 

「イリアちゃん!?」

 

「ああ、そうそう。昨日はミルクの買い占めをして一晩中飲み続けていましたね」

 

「サクヤまで!? 二人の裏切り者────ッ!!」

 

「あはは、まあしょうがないよ。サラちゃんの大食いには私もちょっと困ってたし、少しはいい薬なるんじゃないかな?」

 

「セラちゃんも味方してくれない! もうダメだよ! 絶望だよ! この世の終わりだよぉ!」

 

「いちいち大袈裟なやつだな…………」

 

「すまないのぅ、サラ君。学院の取り決めで給料の先払いはできんのだよ」

 

「嘘だ────────ッ!!」

 

「あっはははははははははは!! これでしばらくは《暴食》二つ名も返上だな!!」

 

「う、うぅ…………」

 

 悔しさと空腹がサラの瞳からきらきら光る雫をこぼれさせ、その可愛さに学院長は思わず財布の金を無条件に渡しそうになったがセリカに一睨みされ、なんとか踏みとどまる。

 

「しかしなぁ、サラ君をこのまま飢え死にさせるわけにも…………特別賞与であれば出せるかもしれんぞ?」

 

「特別賞与っていうと、来週の魔術競技祭で優勝したクラスの担当講師に出てるっていうあれだよね…………やったぁこれでサンドイッチ食べ放題生活だ────────ッ!!」

 

 サラが大興奮で部屋を出ていき、イリアとサクヤも続いて出ていった。

 

 学院長室に残ったのは、セリカとセラと学院長の三人だけだ。

 

「…………それで? 学院長。実際のところ、サラのクラスが優勝できると思うか?」

 

「…………正直、厳しいじゃろうな」

 

「しかし、サラちゃんのクラスにはシスティーナちゃんもいますし…………きっと大丈夫ですよ!」

 

「どうかな? 個人の成績ではトップクラスの成績優秀者であるシスティーナ君とはいえ…………あくまでも一人の力がずば抜けていればいいというわけではない。総合力で言えば、ハーレイ君の一組の優勝がかたいじゃろうな」

 

「そんな…………」

 

「セリカ君。このままでは君の愛弟子殿は餓死してしまうかもしれないわけだが…………」

 

「心配はいらんよ、学院長。あいつはこの程度の事態、屁でもないさ。それよりも、放置したほうが面白くなるぞ」

 

「…………ほう?」

 

「サクヤはどうだか知らんが、イリアがいるんだ。いざとなればあいつも動くだろうよ。…………それに、ここ最近の競技祭の例の風潮にはうんざりしていたところだ…………さて、あいつはどうするんだろうな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「話は聞いたよッ! ここは私にお任せ! このサラ=シルヴァース大先生がパパッと解決してあげるからね!」

 

 ドヤッと鼻息を荒くし、胸を反らして流し目で見得を切る。

 

 突然の意味不明な登場の仕方をしたサラに、クラス一同は、

 

( ( ( ( (何、この可愛い生き物) ) ) ) )

 

 

 である。

 

「ケンカは駄目だって、普段から言ってるよね? 私たちは『優勝』という目的に向かって突き進む仲間なんだから仲良くしよっ!!」

 

「「「「勿論です、サラ大先生様!!」」」」

 

「システィーナさん、リストをください。ルミアさんは名前を黒板に記入していってください。このクラスが優勝する作戦をサラさんと一緒に考えてきましたから、後は私たちに任せてください」

 

「イリアさん…………はい、お願いします」

 

「分かりました」

 

『素』のサラであればともかく、彼女の判断で例のサラの記憶はイリアによってシスティーナとルミア以外消去されている。

 

 そのため、サラにはクラス全体の指揮を高める役に回ってもらった。

 

 サクヤはとりあえず、サラのサポートに回した。

 

 イリアとしてはできるだけサラに近づいて欲しくなかったが、放置しておくほうが不安だ。

 

(決して嫉妬しているわけではないんですからね!! …………誰に言ってるんでしょうかね)

 

「私は学院に通っていなかったので聞いておきたいんですが、この競技祭の競技は毎回同じだったりするんですか?」

 

「いいえ。『決闘戦』とかのいくつかの例外を除いて同じというわけではありません。まったく知らない競技が出てくることもあれば、同じ競技でもルールが変わっているということもあるんです」

 

「ふむふむ。ようは生徒たちの応用力を試しているわけですか。…………うーん…………」

 

(…………なんというか、間が悪いなぁ…………)

 

 システィーナは少しだけ、心苦しく思った。

 

 サラとイリアの性格は短い時間ながらも理解していた。

 

 サクヤも授業の際は真摯に教えてくれるし、誰にでも分け隔てなく優しい。…………イリアを除いて、ではあるが。

 

 きっと、この三人は全力で勝ちに行く。

 

 それはこの学院では凡庸な成績の生徒は出さず、成績上位者だけを全種目で使い回すということだ。

 

 クラスの全員で種目に出ることができる、そう思っていたのに…………。

 

「よし、おおかた分かりました」

 

 イリアは顔を上げると、生徒たちも注目する。

 

「まずは一番点数の高い『決闘戦』からですかね。──これはシスティーナさん、ギイブルさん、あとは…………カッシュさんの三人にお願いします」

 

 イリアの采配にクラスの誰もが首を傾げた。

 

 カッシュ自身も戸惑いを隠せないらしく、おろおろとしている。

 

 しかし、イリアはクラス中の動揺など意に介さず、次々と決めていく。

 

「次は…………『暗号早解き』。これはウェンディさん一択です。『飛行競争』…………ロッドさんとカイさんが適任でしょう。『精神防御』…………ルミアさんで。えー、それから『探知&開錠競争』は── 『グランツィア』は──」

 

 次々と発表される参加メンバーに生徒たちは気づく、複数の競技に使い回されている生徒が一人としていないことに。

 

「最後の『変身』はリンさんに頼みます。それでは、皆さん何か質問などはありますか?」 

 

「納得いたしませんわっ!」

 

「どうして自分が決闘戦の選抜から漏れているのか、ですか?」

 

「な、何故私の質問が分かりましたの!?」

 

(いや、だってウェンディさん分かりやすいですし)

 

 などと言えるわけもなく。

 

「分かりますよ、当然の疑問ですからね。確かに呪文の数、魔術知識、魔力容量(キャパシティ)もスゴいですけど、少しばかりドジっぽいところがありますからねー。突発的な事態に弱く、呪文もよく噛むところがなければ私もあなたを選んでいましたよ」

 

「うぐっ!」

 

「ですので、使える呪文は少ないものの、運動能力と状況判断のいいカッシュさんの方が『決闘戦』に適していると判断しました。気を悪くしたなら謝ります。【リード・ランゲージ】はこのクラスで一番あなたが優秀なんです。故にウェンディさんに『暗号早解き』を任せたいんです。是非ともそこで点数を稼いでいただければ」

 

「ま、まあ…………そういうことでしたら…………言い方が癪に障りますが…………」

 

 イリアもサラ程ではないが、クラスの授業を幾つか受け持っている。

 

 充分に彼らのことは見てきたし、理解もしているつもりだ。

 

「これ以上質問が無いようでしたらこれで…………」

 

「やれやれ…………イリアさん、いい加減にしてくれませんかね?」

 

 ギイブルは立ち上がり、呆れたように言う。

 

「ギイブルさん。あなたの言いたいことも分かりますよ。何故毎年の恒例でもあり、他の全クラスでもやっている成績上位者だけで全種目を固めないのかでしょう?」

 

「ええ、そうですよ…………」

 

 この人間は心でも読めるのかと内心思いながら、苦々しく首肯するギイブル。

 

「くだらないです」

 

「なっ!?」

 

「くだらないと言ったんです。このクラスの全員で優勝すること、それがサラさんと私の望みです。成績上位者だけで固めて、捨てる競技には下位者を出して恥をかかせるだけ。…………本人の意思はともかく、ギイブルさんがしていることはそういうことですよ?」

 

「そうよ! イリアさんの言う通りだわ! 皆も見て! イリアさんの考えてくれた編成を! 皆の得意不得意を考えて活躍できるようにしてくれているのよ! 皆ならわかるはずよ!」

 

「確かにシスティーナの言うとおりだ…………」

 

「そうだ、俺たちだってやってやるぜ!」

 

「…………ふん。まあいいさ。それがクラスの総意だというなら、好きにすればいい」

 

「…………ありがとうございます、イリアさん。何とお礼を言えば…………」

 

「お礼なんていいですよ。私は来たばかりにした失礼の埋め合わせをしているだけですし…………それに、皆さんには自分の気持ちに正直であってほしい。それだけですよ」

 

「…………はい! 期待しててくださいね、イリアさん!」

 

 羨望の眼差しで見られ、恥ずかしさから目を逸らすとサラがイリアに向けて小さくサムズアップしていた。

 

 イリアもまたサムズアップで返すと、やれやれと胸を撫で下ろす。

 

(上手くいって良かったですけど、何だか嫌な予感がします。何事もなければいいのですが…………)

 

 

 

 

 

 





第二巻に入りましたね。

イリアちゃん頑張って(p^-^)p

イリアちゃんのポジションは実質W主人公みたいなものですし、タグ追加したほうがいいのですかね?
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