やっぱりW主人公もいいかなと思い、たくさんタグを追加することにしました。
イリアちゃんが主人公の一人になっていることに戸惑う方もいらっしゃるかもしれませんが、どうか暖かい目で見守ってください。
感想をもらえると嬉しいです。
「…………まずいですね」
召喚【コール・ファミリア】の呪文でネズミの使い魔を召喚し、偵察に向かわせたが案の定だ。
イリアの予想通り、学年でも優秀さで有名な生徒たちを複数の競技で使い回すようだ。
まったくなにもできずにということはないだろうが、そもそもとして地力が違う。
「今からでも編成を変えて…………いやいや! 生徒たちのあんな嬉しそうな顔を見てそんなことできるわけ…………」
「大丈夫ですよ」
「サラさん…………」
傍らからの天使の囁きが福音のようにイリアの胸に染み渡ってくる。
「あの子たちなら心配はありません。皆ひたむきに努力し、高めあっている。そんな子たちが思考を放棄してただ優秀な子を使い回すだけの有象無象に負けるわけがありませんよ」
「はい…………そうですね」
『素』のサラの言葉はいつも自分を安心させてくれる、彼女にはいつも側で支えられてきた。
だから自分もサラを支えてきたし、これからも支えていくつもりだ。
「さっきから勝手なことばかり…………いい加減にしろよ、お前ら!」
こんこんと涌き出る温泉のような胸の暖かさに少々ぼーっとしていたようで、突然の大声にビクッと身体を震わせてしまう。
「! な、何ですか!?」
「…………行ってみましょう」
サラとイリアが生徒たちの方へ向かうと、場所を取りすぎているとかで揉めていたらしい。
一組が二組を見下した発言をしたこともお互いをヒートアップさせた要因のようだ。
「みんなひとまず落ち着こ? 私たちが場所を取りすぎているのは本当みたいだし、少し場所を開けるから。それでいい?」
「…………セラ先生がそう言うなら。場所さえ開けてくれれば…………」
どうやらセラの交渉で争いは鎮火していくようで二人はほっと胸を撫で下ろすが、せっかく上手くいきそうだったところを怒声を発しながらやってくる講師によって阻まれてしまう。
「何をちんたらしている、クライス! さっさと場所を取っておけと言ったはずだ!」
「うわっ…………」
予想通りの人物の登場に思わず素で嫌悪感を抱きかけたイリアだったが、軍属とはいえ今の自分は担当講師補佐という身分だ。
ハーレイに対して適当な理由をでっち上げて追いやることもできるが、サラはそれを嫌うだろうからその手段はとれない。
その後、ハーレイは成績下位の生徒たちを足手まといだとか、やる気がないなら中庭から出ていけなどと言い出してきた。
サラ同様に生徒を見てきたイリアは心底腹が立っていた。
封印刑覚悟で廃人にしてやろうかと本気で考えていると、突然サラがハーレイの前に姿を現したことに遅れて気づく。
「なんだ!? …………サラ=シルヴァース、貴様どこから現れた!?」
サラはハーレイの問いに答えることはなく、ニコニコと笑っているがイリアは知っていた。
本気の一歩手前までサラを怒らせているということを。
「…………そんなことはどうでもいいよ。それで? 私の生徒が何だって?」
「何度でも言ってやる!! 足手まといの成績下位者の生徒を使い、上位の生徒を遊ばせているようなクラスが場所を占有するなど迷惑だと…………何だと!?」
ハーレイがペラペラと喋っている間にサラの姿は何処にも無くなっており、周囲を見渡すがやはりいない。
「ふん、逃げたか。…………まあいい、お前たちもさっさと消え…………グハッ!!」
「!?」
生徒たちは突発性に起きた事象に目をひんむく勢いで驚愕を露にした。
何かに殴られたように顔が歪み、それをもう一度繰り返した後にハーレイの顎を下からの衝撃が襲い、背中から倒れてしまう。
すると、確かに消えたはずのサラが先程とまったく同じ場所に現れたではないか。
「貴様、何を……した……」
「…………答える義理はないよ。ただ、次に私の生徒を侮辱したらこんなものじゃ済まさないから。それから…………」
左手の手袋を外し、サラはハーレイに向けて放り投げた。
「今度の競技祭、絶対に負けない。あなたにそれを取る覚悟、ある?」
「くっ! 嘗めるな!」
ハーレイは手袋を雑に掴むと、サラを見下ろし高々と宣言する。
「いいだろう! 私のクラスが勝つのに給料3ヶ月分かけてやる!」
「ふーん。思ってたよりはチキンじゃないみたいだね」
「そこまでです、ハーレイ先生」
そんな中、サラとハーレイの間に割り込むものがいた。
システィーナである。
「貴様、システィーナ=フィーベル!? 名門フィーベル家の…………くっ!?」
「そもそもとして、練習場所に関する貴方の主張にはどこにも正当性がないうえに、サラに対する侮辱行為も不当です! これ以上続けるのでしたら、講師として人格的に問題がある人物がいることを学院上層部で問題にしますが、よろしいですか?」
「ぐぬぅ…………ッ! この、親の七光りがぁ…………!」
「何より、サラは逃げも隠れもしない。私たちは一週間後の魔術競技祭、正々堂々と戦い優勝します! そうよね、サラ?」
「…………うん、そのつもり!」
システィーナの言葉でサラの不機嫌な気持ちは一気に吹き飛び、元の笑顔に戻る。
「覚えていろよ、サラ=シルヴァース! 集団競技でお前のクラスを率先して潰してやる!」
それだけ言い残すと、ハーレイは生徒を伴い去っていく。
そして、内心でサラはニヤニヤと笑っていた。
(それを拝む前に、あなたはぼこぼこになってるよ)
『クラス担任対抗戦』が楽しみだと、サラは隠しきれない笑みを溢すのだった。
「サラが信じてくれてるもの。私たちは負けないわ!」
『我らがサラちゃん先生の為に!!』
「どんな風に負かしてあげようかなぁ。あれもいいし、あんなのも…………」
「やっぱり、噛み合ってない気がするなぁ…………」
ルミアはこの状況をただ苦笑いで見ている他なかった。
◆◆◆
魔術競技祭当日。
開会の宣言も終わり、飛行競技祭に入る直前に女王陛下から特別ゲストを呼んでいる旨を告げられ、会場の一同は困惑する。
しかし、二組の生徒たちはそれどころではなかった。
サラとイリアが会場から姿を消していたからだ。
サクヤなら事情を知っているかもとシスティーナは訪ねてみたが、サクヤは一向に口を開かない。
唯一発した言葉は、
「わたくしからは何も言えませんが、皆さんにとっていいものが見られるということだけは保証しますよ」
というものだった。
「?」
システィーナは訳がわからず、サクヤが言うのなら大丈夫だろうと中央のフィールドに目を戻す。
『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
『キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』
男女問わず耳にキンキンと響く歓声に咄嗟に耳を押さえるが、ゲストとやらの姿を目にすると同様にシスティーナも歓声をあげ始める。
「みーんなー!! こーんにちは~!! ユフィちゃん、みんなに会えてエンジェル嬉しいよぉ!!」
『ユフィちゃぁあああああん!!』
会場のボルテージは最高潮に高まっており、狂喜乱舞している様は事情を知っているもの次第で反応は千差万別だ。
例えばセリカの場合。
「だっはっはっは!! エンジェル嬉しいって、何だそりゃ!! 駄目だ、腹痛え────ッ!!」
腹を抱えながら大笑いし、椅子から転げ落ちる始末。
セラの場合。
「やっぱり可愛いなぁ!! 今度家でワンマンライブやらないか聞いてみよっと!!」
セラは射影機でひたすら写真を撮りまくり、自分が独占できないかと打診しようとしている。
サクヤの場合。
「まったく貴女は…………人の心を『救う』ためには歌も効果的だと言ってはいましたが…………まさか、ここまでとは…………」
とある人物から聞いた話では大分前から活動していたらしく、名前ぐらいはサクヤも知っていたほどだった。
…………ここまで語ればほとんどの者が気づいただろう。
ユフィ=エルトリート。
彗星のごとく現れた歌姫。
地上に舞い降りた天使とまで呼ばれるほどの美しくも愛らしい容姿、鈴の音を転がしたような可愛らしい声。
髪をピンクに染めていることと、雰囲気が明らかに違うことを除けば…………間違いなくサラそのものだった。
確かに心の救いになればと始めたことは間違いないが、もうひとつの意図がサラにはあることをここに記しておく。
食費が欲しい…………である。
幸せという狂喜に呑まれながらも、魔術競技祭はその幕開けたのだった。
はい、オリジナル競技がでましたね。
『クラス担任対抗戦』については次回辺りの詳しく書きますので、楽しみにしていてください!
サラの副業がアイドル。
原作とは大幅に違った展開に戸惑ったでしょうが、作者の暴走であるため後悔はしていません()