風の戦巫女を継ぐもの   作:レイラレイラ

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感想を頂けると励みになります(切実)。

嘘だッ!!の部分や猫のような~の部分は『ひぐらしのなく頃に』のレナを想像していただければ。

連日投稿頑張りました。


狂乱の戦巫女

「それじゃあ、次は錬金術実験の授業だから皆早めに着替え…………」

 

「セラ、少しいいか?」

 

 手元の懐中時計を見て着替えを済ませた方がいい、そう考え授業を気持ち早めに終わらせようとしたセラに割り込むようにセリカが教室へと入ってくる。

 

 いつもの飄々としたしたような態度は欠片も見せず、セリカの真剣味を帯びた声音にセラは一瞬気圧されてしまうが、すぐに気持ちを切り替え返答する。

 

「どうしたんですかセリカさん。急にいらっしゃるなんて…………」

 

「ああ、こいつらにも関わってくる重大な話があってな。…………『あいつ』もそろそろ頃合いだと思うんだが…………いいか?」

 

『あいつ』というのが誰のことか、セリカがわざわざ口に出さずともセラは分かっていた。

 

 セリカが何をするつもりなのか、『あいつ』がどういう反応するかを分かっていながらセラは黙って事の成り行きを見守ることに決めた。

 

「…………ッ!」

 

 首だけを僅かに縦に縦揺らし、小さく首肯する。

 

 壮絶な葛藤の末にセラが下した決断にセリカは「…………すまないな」とだけ返すと、教卓の前に立ち生徒たちに問うた。

 

「お前らに聞きたいことがあってな。なに、難しい質問をしようってわけじゃない。誰でも答えられる簡単なものだ」

 

 セリカはこれから『あいつ』をキレさせる返答をするであろう生徒たちを思い罪悪感を抱いたが、覚悟を決めると一拍置いてから質問を口にする。

 

「お前らにとって…………魔術とはなんだ?」

 

 生徒たちはセリカの唐突な質問を耳にした瞬間、困惑のあまり自分たちの耳を疑った。

 

 システィーナは立ち上がると、さも当たり前のことのようにはっきりとした物言いで答えた。

 

 魔術は世界の真理を追究する学問であり、人がより高次元の存在へと至る道を探す手段であると。

 

 世界の起源や構造、法則を解き明かし、自分と世界がなんのために存在するのかという永遠の疑問に答えを導きだす。

 

 いわば神に近づく行為であり、それゆえに魔術は偉大で崇高な物だと。

 

 システィーナの教科書のような演説が終わると同時に、扉が凄まじい爆音ともに砕け散った。

 

「なんだなんだ!?」

 

「いったい何事ですの!?」

 

 爆発によって生じた煙が晴れていくと、そこにいた人物の姿が露になっていく。

 

 教師として招かれながら、学院の講師職の証である梟の紋章が入ったローブではなく生徒用の制服に袖を通す少女、サラであった。

 

 しかし、教室のなかのセリカとセラを除いた全員が同じ疑問を覚えた。

 

 あの少女は誰だ、と。

 

 第一印象のセラによく似た笑顔を浮かべた少女の面影など何処にも見当たらず、猫のような鋭い目つきでセリカを睨む姿はいっそ別人だと言われた方がまだ納得できる。

 

 サラの怒りどころかむしろ空虚ささえ感じさせる瞳を見据え、セリカはただ沈黙した。

 

「…………」

 

 物音一つ立てることすら許されない、そんな法が働いていると言っても過言ではないその威圧感にシスティーナを含めた生徒全員が恐怖を抱いた。

 

 セリカから顔を背け、サラの射殺すような視線が捉えたのは…………システィーナだった。

 

「…………ひっ!」

 

「…………話、全部聞かせてもらったよ」

 

「…………え?」

 

「魔術が偉大で崇高ね。結論から言わせてもらうと…………くだらない」

 

 サラの声色からはただ単純な呆れだけがあった。

 

 否定はしない、ただその程度の認識かと呆れていることを訴えるかのように。

 

「神に近づいて何がしたいの? 真理を追究して何になるの? 永遠の疑問に答えを出す? じゃあ、それらに答えが出たらどうするのかな?」

 

「そ、それは…………」

 

「そもそも、魔術なんかでそんなものが導き出せる訳がない。余計に迷わせて苦しませるだけ。所詮は人殺しの道具でしかないんだから」

 

「…………ッ!!」

 

 気づけば恐怖など忘れ、システィーナは左手の手袋を外しサラに向かって投げつけていた。

 

 今のシスティーナを動かしているのは彼女の若さと未熟さもあるのだろうが、魔術の名門フィーベル家の令嬢としての誇りだけであった。

 

「…………そう。そういうことなら、いいよ。魔術がどれだけ残酷なのか、みっちりと叩き込んであげる。場所は中庭、時間は五分後。この(……)決闘においての魔術は【ショック・ボルト】だけ。他の手段は全面禁止。いいよね?」

 

「決闘のルールを決めるのは受理側に優先権があるわ。それでかまわない」

 

「私の要求は、ひとつだけ何でも言うことを聞くこと。あなたの要求は…………聞かなくても分かるから別にいいや」

 

 そう言い残し、サラの姿は教室の中から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これより、サラさんとシスティーナさんの決闘を始めます! 使用魔術は【ショック・ボルト】のみ! 立会人はサラさんの助手兼相棒のイリア=イルージュが勤めさせていただきます! 尚、私は決闘において中立の立場であることを誓います! 両者ともに準備はいいですね?」

 

「私は大丈夫」

 

「こっちも問題ありません」

 

 等間隔に植えられた針葉樹に囲まれ、敷き詰められた芝生が広がる学院中庭にて。

 

 イリアの位置を基準に、サラとシスティーナの二人は互いに十歩ほどの距離を開けて向かい合っていた。

 

「心情的にはシスティーナなんだけど…………相手はあの第六階梯(セーデ)の魔術師だからな…………いくらなんでも勝ち目なんてないんじゃないか?」

 

 クラスの生徒たちやセラとセリカ、そして講師と生徒が決闘を行うという噂を聞きつけ集まった野次馬達が二人を取り囲む様は、闘技場の様相を呈していた。

 

 システィーナは目前で鋭い目つきはそのままに無表情で構えるサラを睨み付け魔術を放つ。

 

「《雷精の紫電よ》───ッ!」

 

 刹那、シルヴァースの指先から放たれた輝く力線が真っ直ぐサラへ飛んでいき──空を切った。

 

「…………え?」

 

「どこ狙ってるの? 私はこっちだよ」

 

 振り返ると自分の胸元に指を向け、サラが微かに笑みを浮かべながら立っていた。

 

(なんで? いつの間に私の背後を取ったの? 【ショック・ボルト】以外の魔術を使えないこの決闘でどうやって…………まさか!?)

 

 数秒の間に常人を越えた速度で思考し、もしやとサラの足元を見てみると答えははっきりと存在していた。

 

「あなた、魔術で瞬間移動したわね!?」

 

「さすがに気づくよね。うん。そうだよ。これは白魔改【リミテッド・テレポテーション】って言ってね。範囲は限定されるけど転送法陣と同じことができる私の自信作。陣が移動先にも出ちゃうことが唯一の欠点かな」

 

「これは明らかなルール違反よ!! 魔術師同士で交わした約束を反故にするって言うの!? 貴女、それでも魔術師の端くれ!?」

 

「魔術師だからこそ、だよ」

 

 セリカは先程までサラがいたほうの陣に近づき手を向けると、納得したような表情になりながらシスティーナへとサラの行動を説明していく。

 

「こいつはな、教室にやって来る前に仕込みを済ませておいたのさ。お前の性格を理解した上でどうするのかを決めていたんだ。この魔術を使ったのは決闘が成立するよりも前、よってルールには反しない。そうだろ? イリア」

 

「はい! まさしくセリカ先輩の言う通りです! よってこの決闘、サラさんの勝利です!」

 

 セリカの答え合わせが済み、元気よくイリアはサラの勝利を告げた。

 

「そ、そんな…………」

 

 このような違反すれすれの手段を取った相手に負けた自分の情けなさにシスティーナは膝から崩れ落ちる。

 

 ぼろぼろと涙を流すシスティーナに、誰一人として何も言うことは出来なかった。

 

 あのセリカ=アルフォネアが不正はなかったと言った。

 

 それだけでサラの勝利は確定してしまったのだ。

 

「…………行こ、イリアちゃん」

 

「了解です! それでは皆さん、ごきげんよう!」

 

 サラはシスティーナには何も言わず、中庭から歩み去っていく。

 

 ビシッと敬礼しつつ、イリアもサラの後を追っていく。

 

 中庭に残されたのは、ただひたすらに思い空気とシスティーナのすすり泣く声だけであった。





原作と違い、教師側の勝利。

サラは魔術が嫌いなのではなく、システィーナのように理想だけを見続けていた過去の自分が嫌いなだけです。

やり過ぎな感じもしますが、サラを嫌わないであげてください。
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