風の戦巫女を継ぐもの   作:レイラレイラ

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お気に入り(29~31)ありがとうございます。

感想が…………欲しいです!!

イリアちゃんの戦い方どうしようかと思ったところ、七つの大罪のゴウセルの能力を合わせたらといいと考えタグを追加しました。


戦巫女の楽しい授業

「システィーナ、昨日はごめんなさい」

 

 突如名を呼ばれ、教科書に落としていた目を上げると昨日感じさせた恐ろしさなど欠片もなく。

 

 昨日の今日で態度が一変したことにも驚かされたが、出会った当初のことを思い返せばありえないだろうと思っていたからだ。

 

 サラが他人に深々と頭を下げていたことに、システィーナは鳩が豆鉄砲を食ったような顔になる。

 

「トラウマみたいなのもあるんだけど、システィーナが昔の私に似てたから。私みたいに後悔してほしくなったの。あなたの理想を貶すつもりなんてなかった。…………本当にごめんなさい」

 

 クラスのルミアを除いた生徒全員が急転直下の出来事に呆気にとられるよりも先に、システィーナが口を開いた。

 

「反省しているのは分かったから、早く授業を始めてくれるかしら。ただでさえうちのクラスは授業が遅れているんだから」

 

「うん! わかった!」

 

 先程までの沈んだ表情はいずこへ、満面の笑みを浮かべたサラは黒板の前へ向かい振り返る。

 

 何処からか取り出された教科書を開くと、パラパラとめくり始める。

 

 数秒後、教科書を閉じたサラは口元を緩めニッと笑うと全員に掲げるように見せてくる。

 

 謎の行動に全員が疑問を覚えていると、サラは教科書を天井付近まで放り上げた。

 

 サラが指をパチンとならすと、教科書が大きく燃え上がり跡形も残ることはなかった。

 

 こうなることを予見していたイリアだけが腹を抱えて大笑いしているが、生徒たちはまったく状況が飲み込めずに驚愕しっぱなしだ。

 

「皆、ほんとにこんな教科書通りの『お勉強』が楽しいと思ってる? 私は思わない! これからもっとすごくて楽しい魔術を教えてあげる!」

 

 魔術式の書き取り? 

 

 それを覚えやすくする方法? 

 

 それこそアホらしい。

 

 自分だったら他では学べない本物の『魔術』を教えられる、そんな自信がサラからはひしひしと感じられた。

 

「それじゃあまずはおさらいからやろっか! ん~と…………うん、決めた! 【ショック・ボルト】の授業から始めよっか!」

 

「フン。何を今さら【ショック・ボルト】程度の魔術など」

 

「そんなものはとっくに極めています。そんな初等呪文が何になるというのです」

 

「ギイブル君とウェンディちゃんだっけ? そっかそっか、それはごめんね! じゃあこれから言う疑問には当然答えられるよね!」

 

 サラが再度指をパチンとならすと、チョークがひとりでに浮かび上がり【ショック・ボルト】の詠唱を書き込んでいく。

 

 そんな光景にも慣れてきたのか、目に見えて驚く生徒はいなかった。

 

「《雷精よ・紫電の衝撃以て・打ち倒せ》。これが【ショック・ボルト】の基本的な三節詠唱だよね。ここからが問題」

 

 指を回す動作をすると、チョークは《雷精よ・紫電の・衝撃以て・打ち倒せ》に変更していく。

 

「こんな風に呪文を四節にしてみたわけだけど、この通りに詠唱してみると何が起こるかわっかるかな~~! はい、ギイブル君! 解答をどうぞ!」

 

「その呪文はマトモに起動しませんよ。必ず何らかの形で失敗しますね」

 

「おしい! 失敗するのは間違ってないんだけど、私が言って欲しかったのはどんな形で起こるのかってことなんだよね」

 

「そんなもの! 結果はランダムに決まっていますわ!」

 

「あっはっはっは! こんな初歩的なことにも答えられないとか、可哀想! 自分の否を認めたくなくて適当なことしか言えないとか、馬鹿みたい! 皆、ばっかみたい!」

 

 いよいよ我慢の限界に達したのか、大声を上げて笑い出すイリアに生徒たちは睨むような視線を送る。

 

 狂気さえ、感じられる哄笑をあげつづけるイリアの全身に衝撃が走った。

 

 それもそうだろう、イリアの口がサラの口によって塞がれているのだから。

 

 黄色い声を上げる女子生徒と背徳感のあまり目を背ける男子生徒と反応は千差万別だったが、イリアの反応はといえば。

 

「ななな!! いきなり何をするんですか!? そりゃ、嬉しいは嬉しいですけど、人目と順序というも…………の…………が…………」

 

 羞恥に顔を真っ赤にしたイリアの言葉は少しずつ小さくなっていき、猫のように目を細めたサラは一言呟いた。

 

「お仕置き」

 

 幸福感と恐怖にごちゃまぜになったイリアは身悶えしながらも意識を手放した。

 

 イリアから身体を離したサラは朗らかな笑みを浮かべて、生徒たちに弁明していく。

 

「イリアちゃんがごめんね? この娘、ちょっといい娘すぎるから。自分を貶めてまで、私の顔をたたせようとすることが多いんだ。あまり気を悪くしないでね?」

 

『いや、気遣いのベクトルおかしいだろ』と初めてクラスの心が一致した瞬間だった。

 

「話を戻すね。さっきの質問の答えだけど…………右に曲がる、だよっ! 《雷精よ・紫電の・衝撃以て・打ち倒せ》」

 

 黒板に向かって行使された魔術は紫電となり、直撃する瞬間…………右に曲がった。

 

「そんなバカな!?」

 

「ありえませんわ! こんなこと!」

 

「ちなみに《雷・精よ・紫電の・衝撃以て・打ち倒せ》の五節にするとすごく射程が落ちてだいたい三分の一くらいになって、『衝撃』の部分を消しちゃうと何も感じない程度に威力が落ちる」

 

 順番に実践してみせるとサラの言った通りになり、どや顔になるサラを見て爪が食い込むほどに拳に力を込めている。

 

 よほど悔しかったのだろう。

 

「分かったかな? 極めたなんて認識は、人が優越感に浸るための幻なの。私だって全部の魔術の深奥まではどうやったって辿り着けないし、皆が神聖視してる固有魔術(オリジナル)だってそうなんだよ」

 

 真剣な顔つきで生徒たちを見渡していくサラ。

 

 そこにある感情に呆れはなく、親が子を諭すように穏やかなそれだけがあった。

 

「今のあなた達は魔術師になれてない。でも、私だったら魔術師してあげられる。これからみんなの常識がどんどん壊れていくと思うから、覚悟しておいてね」

 

 チャイムが鳴ると真剣な顔つきはなりを潜め、サラは幼さを残した朗らかな笑顔に戻る。

 

「お、授業も終わりだね。次の時間は錬金術の授業だから、みんな着替えといてね~~!!」

 

 サラはそれだけ言うと、イリアをお姫様のように抱き上げ教室を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「錬金術の授業は着替えないとなんだよね。正直に言うとめんどくさい」

 

「私はどちらでも構いませんよ? 万が一怪我をしたとしても、私がずっとずっと付き添ってあげます。あんなことやこんなことだって、いくらでも…………」

 

「さっきのこと、私まだ怒ってるんだからね! 自分に幻術かけてまであんなことして! 私のためにしてくれたのは嬉しいけど、イリアちゃんが嫌われたら、私は嫌…………なんだけどな」

 

 サラの涙目と上目遣いという【イクスティンクション・レイ】にも等しい最強の魔術をまともに受け、危うく昇天しかけたイリア。

 

「…………はっ! あ、はい。そうですね。以後気をつけましょう」

 

「本当だよね? 約束、だからね?」

 

「大丈夫ですよ。私が今までサラさんとの約束、破ったことあります?」

 

「…………」

 

「ちょ、なんでそこで黙るんですか。さては、私に何か言いたいことがあるんですね!? はっきり聞かせてもらおうじゃないですか!」

 

「べっつにぃー」

 

 いたずらっ子のような笑みを見せるサラと楽しげなイリア。

 

 談笑しながら目的の部屋へ向かうと、更衣室と書かれた板がぶら下がっている部屋の前に辿り着く。

 

「そういえば思わずついてきちゃってましたけど、更衣室の場所なんてよく分かりましたね。私は知ってましたが、サラさん屋上に閉じ籠ってたじゃないですか。私が先導するつもりでしたのに、拍子抜けです」

 

「私もろくに調べずに来ちゃったから困ってたんだけど、セリカが教えてくれたんだ~~」

 

「なるほどセリカ先輩が…………今なんて?」

 

「え? だから、セリカが教えてくれたって」

 

「!! その扉を開けてはいけません!!」

 

 イリアの静止も虚しく、サラは魔の扉を開けてしまうのだった。

 

 男子生徒の視線はサラの視線とばっちり絡み合い

 

「きゃ────────!! サラさんのエッチ────────────!!」

 

イリアの中のセリカへの殺意が極限まで高まった瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

後のSさんは小首を可愛らしく傾げ、こう言ったという。

 

「男子のみんなが私が入ったら顔を真っ赤にして大騒ぎしだしたんだけど、どうしてかなぁ?」

 

と。




次回は天の知恵研究会との戦闘にしたいです。

書けるといいなぁ。
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