風の戦巫女を継ぐもの   作:レイラレイラ

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お気に入り(33~50)ありがとうございます!

エクソダス様、宣伝ありがとうございます!

赤タグになったこともそうですが、エクソダス様にコラボに誘っていただけてとても嬉しいです! 

1巻の内容が終わってからコラボ小説を投稿したいと思いますので、心待ちにしていただけたら嬉しいです。


戦巫女の救済

 薄暗い路地裏を二つの影が駆け、残されるものは僅かな空気の流れのみ。

 

 そう…………その二つの影とは、サラとイリアの二人に他ならない。

 

「…………あのような壊され方、普通じゃ考えられません。あれは…………」

 

「…………分かってる。天の知慧研究会の仕業なのは明白だよ…………」

 

「…………」

 

 数分前まで二人は、壊滅状態と化した街で人々の治療と保護を行っていた。

 

 擦り傷や打撲などの軽傷で済んでいる人間から片腕を失っている人間まで幅広くおり、二人の活躍で幸い死者こそでなかったが、その光景はサラの心を大きく抉った。

 

「…………でもね」

 

「…………?」

 

 突如急ブレーキをかけ、止まったサラを訝しむイリア。

 

 振り向いたサラの顔は慈悲に溢れた聖女のように穏やかで、左目が淡く銀色に輝いていた。

 

「誰一人死者を出さずに済んだ。『救う』ことができた。それだけで私は、とっても幸せな気持ちになれるのですよ」

 

 イリアのような多数の人間が好感を覚えるような口調ではなく、人一倍丁寧で、達観している節さえある雰囲気のサラを…………実の姉のセラでさえ知らない『素』のサラをイリアは知っている。

 

 この時のサラがこれからどういう行動を取るのか、イリアは知っていたが敢えて問うた。

 

「では、サラさんはこれから何をするのか、教えてもらってもいいですか?」

 

「ふふっ。イリアも人が悪いですね。…………そんなこと、決まっているではありませんか」

 

「…………それは?」

 

「私の教え子達を『救う』。…………それがこれから私たちがするべきことであり、望みなのですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────同時刻。

 

「ちょっと、離しなさいよ!!」

 

「おーおー元気だねぇ。でもさ、君は人質に抜擢されちゃったわけ、だから離せませーん。…………それに、あんま騒がしくしてっと…………殺すぞ」

 

「ひっ!!」

 

 軽い口調の男の発する雰囲気に、システィーナは強引に口を閉ざすことになる。

 

 ルミアも目深にフードを被った男に連れ去られてしまい、親友を取り返えそうと立ち向かってみれば人質にされる。

 

 これ以上、システィーナにとって屈辱的なことはないだろう。

 

 しかし、人質として利用される程度ならばまだマシな方だろう。

 

 天の知慧研究会に連れ去られれば、非人道的な実験のモルモットとして扱われ、最終的には死は免れない。

 

「貴様、何をチンタラしている。サラ=シルヴァースよりも先に、私に殺されたいか?」

 

「ちっ…………分かったよ」

 

 冷酷な声音の男からは焦りが節々から感じられ、軽い口調の男は舌打ち混じりに了承した。

 

「あの男がもうじき儀式を終えるはず。急ぎましょう」

 

「ああ」

 

 三人の男が教室の扉に手を触れる直前、窓ガラスを突き破り生徒と同じ制服に身を包んだ希望の象徴とも言える存在が教室へと飛び込んでくる。

 

「「「!!」」」

 

「ちょっとサラさん!! 窓から突入って、型破りにも程がありません!?」

 

「いいではないですか。実はこの間見た演劇で、王子様がお姫様を助けるために窓から飛び込むシーンがあったので私もやりたいなと」

 

「オチャメですか!!」

 

「動くなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 軽い口調の男、ジン=ガニスの空気を震わせる叫びが一気に場の空気を重くする。

 

「サラ=シルヴァース!! 一歩でも動いてみろ。その瞬間、こいつの頭に風穴が空くことになるぞ!!」

 

 人質を取る。

 

 動けば殺す。

 

 実に単純ではあるものの、まともな人間相手であれば有効性の高いのは明白。

 

 それが『普通』の人間であれば、の話ではあるが。

 

「なるほど…………イリア、頼めますか?」

 

「男の生死については?」

 

「任せます」

 

「了解です」

 

 イリアはジンの前に立ち、ビッと指を向ける仕草を取る。

 

 しかし、それだけだ。

 

 指を向けた直後、すぐさま降ろしてしまう。

 

「ああ? 何がしてぇんだ、テメェは」

 

「いえいえ何も。ええっと、システィーナさんの頭に風穴を開けるでしたっけ…………いいですよ」

 

「は?」

 

「いいですよと言ったんです。…………正直に言うと、そこのお荷物は足手まといなんです。あなたを始末するのに、むしろさっさと消してくれた方が楽なので。さっさとやっちゃってください」

 

「…………ぎゃははははははははははは!! お前、ボロクソ言われてんじゃねぇかよ!! かわいそうになぁ、見捨てられちまったよ!!」

 

「そ、そんな…………」

 

「それじゃあ期待にお答えして、盛大に赤い花火でも打ち上げてやるとすっかぁ!!」

 

「待て、ジン!!」

 

「《ズドン》ッ!!」

 

 システィーナはいつまでたっても襲ってこない衝撃を訝しみ、恐る恐る目を開けると信じられない光景に目を見開いた。

 

 ジンという男が放った黒魔【ライトニング・ピアス】が貫いたのはシスティーナではなく、自身の頭の方だった。

 

 こめかみから血を流し息も絶えていることを確認すると、イリアは今だに呆然としているシスティーナを力の限り抱きしめた。

 

「システィーナさん、怖がらせてしまってごめんなさい。幻術を綺麗にはめるために、相手に悟らせない必要があったんです。あなたは凄い娘です…………よく、頑張りましたね」

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 今まで堪えていたものが決壊したのだろう。

 

 システィーナはわんわんと泣き、イリアは黙って彼女の頭を撫で続けた。

 

 レイクはジンの眉間に光の矢が刺さっていることに気づき、自身に向けて魔術を放った理由を理解する。

 

「貴様、ジンを操ったな」

 

「ええ。私の第二の固有魔術(オリジナル)【インベイション】の能力の一つ、傀儡縛り(ジャック)であなたのお仲間の右腕を自身の頭部に向けるように操りましたが…………それが何か?」

 

「キャレル」

 

「《穢れよ・爛れよ────────」

 

 キャレルと呼ばれた男が、隙を突く形で魔術の詠唱を発動しようとしていた。

 

 発動するまで、あと一秒あるかどうか。

 

「────────朽ち果て…………ゴハッ」

 

「何!?」

 

 レイクはキャレルの唐突な死に、驚愕を隠すことはできなかった。

 

 ただ殺されただけであれば、たいして驚きはしなかっただろう。

 

 問題はキャレルを殺したその方法だ。

 

 白銀の光を放つ刃が壁から現れ、キャレルの心臓を貫いていたのだ。

 

「ごめんなさいね。毒と酸の複合魔術なんて危険なものを使おうとしていたので、生徒たちのためにも固有魔術(オリジナル)【白銀の楽園】で強引にいかせてもらいました」

 

【白銀の楽園】の効果は白銀の刃を事前に設置し、任意のタイミングで発動。あるいはサラの知覚できる範囲においての刃の射出。今回の場合は後者だが、最も厄介なのが刃が黒魔改【イクスティンクション・レイ】であることだ。

 

 当然【イクスティンクション・レイ】は大量の魔力を消費するため、一日に撃てるのは十発がせいぜいだ

 

「あなたもさようなら。次こそは、良い選択を」

 

「…………ふん、化け物め…………」

 

 サラの腰に掛けられた真銀(ミスリル)の剣が鞘から抜かれ、瞬きする間もなくレイクの命を刈り取る。

 

 サラはシスティーナの方に歩み寄り、鞘に収めた真銀の剣を手渡す。

 

「こ、これって…………」

 

「預かっていてください。これ以上はあなたたちに危険は及ばないでしょうけど、お守り代わりに持っていてください」

 

「…………はい」

 

 システィーナは剣を大事そうに抱き、緊張の糸が切れたのだろう。

 

 意識を失い、イリアの手で床に横たわらせられるシスティーナ。

 

「イリア、生徒たちのことを任せても…………」

 

「言われなくても、ちゃんと守りますよ。私にとっても後輩みたいなものですし」

 

「ありがとうイリア。大好きです」

 

「「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」」」

 

 イリアの頬にサラの唇が触れた瞬間、女子生徒の黄色い悲鳴が響き渡る。

 

 男子生徒の反応は、良い笑顔で鼻血を吹き出して気絶するものと初恋の相手を取られたと恨みの視線を向けるものに別れていたがすっかり二人の世界に入ってしまったイリアに届くはずもなく。

 

「…………サラさんはずるいです」

 

「ふふっ、ごめんなさい。でも、私にヒューイの事を黙っていたのも酷いと思いますけど」

 

「なんだ、気づかれていたんですか。…………あなたに隠し事なんて、やっぱり無理ですかね」

 

 サラはイリアの耳元に口を寄せると、小声で指示を出した。

 

「生徒たちの今の『私』の記憶を弄って、天真爛漫な私にすり替えておいてください」

 

「…………理由は?」

 

「だって緊張させたまま授業なんて、やりにくいったらないでしょう?」

 

「あはは、サラさんらしいですね。…………いってらっしゃい、サラさん」

 

「いってきます、イリア」

 

「先生!!」

 

 教室を出る直前にカッシュに呼び止められ、振り向くサラ。

 

「絶対帰ってきてくれよ!! 怪我なんかしたら、もう弁当分けてやんねぇからな!!」

 

「そうだそうだ!!」

 

「そうですわ!! 腕利きのシェフに作らせた高級サンドイッチ、私が全て食べてしまいますわよ!!」

 

 カッシュにロッド、ウェンディなどの生徒たちが心から自分を好いていてくれる、この教室に戻ってくる理由などそれだけで充分だと緩みきったサラの顔が証明していた。

 

 目を閉じ、再度開いた時にはサラの瞳の色は戻っていたが、嘘偽りのない本音をぶちまけていた。

 

「当たり前じゃん!! 絶対に帰ってくるから、サンドイッチ用意して待っててよね!!」

 

 どんな魔術的な契約よりも重い約束を持ち、ルミアを救うべく転送塔へとサラは駆け出していった。




この話で1巻の所を終わりませんでした。

後1話で二巻に行けるのでご容赦を。

二巻の前に、コラボがありますのでお楽しみに!!
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