ガンダムは伊達じゃない   作:あおい安室

1 / 9
初代ガンダムが好きなのにビルドダイバーズではなんか出番が少ない……
なら自分で初代ガンダムが主役の作品やるかってなった時にちょうどビルド杯なるものが開催されると聞いて乗っかりました。


めぐりあい

 GBN。それは諸君が遊んでいるオンラインゲーム『ガンプラ・バトル・ネクサスオンライン』の略称であることはご存じであろう。

 

 そんなGBNはサーバーやサービスのアップデートを重ねて今では全世界からのログインや広大なフィールドが登場しており、その全貌を把握することができないほどの規模。そんなGBNには様々な噂が流れていることは必然と言っていい。

 通常の三倍サイズの巨大ザク、ファンネルとゴッドフィンガーを使う魔改造ハロ、一斉に地球への落下コースを取っているコロニー群、サイコガンダムの頭がのっかったサイコロを使って進むすごろく等々。その中の噂の一つに『ア・バオア・クーの亡霊』と呼ばれるものがある。

 

 

 我々『ウィークリーGBN』取材班は『ア・バオア・クーの亡霊』について調査を行ったところ真相を解明する事に成功した。今回の『GBN調査報告所』はこの噂について特集しよう。

 

 ア・バオア・クーとは。『機動戦士ガンダム』に登場したジオン軍の最終防衛ラインの一つであり、最終話の舞台ともなった場所である。当然GBNでもこの要塞は再現されており観光や高難易度ミッションの舞台ともなっておりダイバーの諸君にとってはなじみ深いだろう。

 

 では『ア・バオア・クーの亡霊』とは何なのか? 

 

 目撃例が非常に多いため諸説あるが一番意見が多いのは『ガンダム』の亡霊を見たという意見である。機動戦士ガンダムでは第一話から活躍していた初代ガンダムこと『RX-78-2』が最終話の舞台となったア・バオア・クーで撃墜されている。その亡霊を見たというダイバーが多いのだ。

 

 

 しかしGBNはあくまでもゲーム上の世界。亡霊などという物が存在するのだろうか?

 

 運営に取材を申し込んだところ「一部のミッションで幽霊的な演出を取り入れているが、ア・バオア・クーにはそういったミッションはない」との回答が返ってきた。実際に調査を行った結果、4割ほどの目撃例が別のダイバーが操縦していた『ガンダム』を見間違えていたことが発覚した。

 我々取材班はここで仮説を立てた。「ガンダムの亡霊を見た」という意見は『ア・バオア・クーの亡霊』の噂が出てから注目されるようになった関係ない意見ではないか、という仮説である。

 

 情報量が増大するのも覚悟の上で調査範囲を『ア・バオア・クー』に関連する噂へと広げた。

 

 すると一つの噂が浮かび上がってきたのである。『星一号作戦のアムロのガンダムは二機いた』という噂である。ここで注意を入れておくが、これは史実ではなくGBN上の話である。

 

 

 噂の舞台となったのはGBNが開始されて間もない頃に開催された大規模イベント『星一号作戦』。

 

 『機動戦士ガンダム』の最終話をモチーフとしたイベントで、各ダイバーやフォースが地球連邦軍かジオン公国軍に別れて戦い、連邦軍はア・バオア・クー最深部の総司令部を制圧すれば勝利、ジオン側はタイムアップまで守り抜けば勝利という変則フラッグ戦と言っていいルールであった。

 

 このイベントにはNPDで『アムロ・レイ』のガンダムや『シャア・アズナブル』のジオングなど原作の有名パイロットも参加していたがここで奇妙な事態が発生している。

 ア・バオア・クーは4つのエリアに別れており、ガンダムは原作通りSフィールドに配置されていたのだが一部のダイバーがWフィールドという原作では描写されていないエリアで『アムロ・レイ』のガンダムを目撃したとの報告があるのだ。これが『二機目のガンダム』である。

 

 報告してくれたダイバーのうち三名がインタビューに応じてくれた。それらを紹介しよう。

 

 

 

1:ジオン軍側参加者

 

 ――お名前をお願いします。

 

「俺は!スペシャルで!2000回で!模擬戦なんだよぉっ!!どうも、コーラサワーのなりきりダイバーをしています■■■と申します」

 ※取材形式の都合取材したダイバー名は明かさないのがスタンスですが面白かったので許可を取り特別掲載

 

 ――コーラサワーのダイバー、多いですね。

 

「ですね。あの星一号作戦の時も俺を入れて4、5人はいましたね。ゲン担ぎにコーラサワーを飲んで出撃するダイバーも多かったかと。そのおかげか俺は撃墜されずに最後まで生き残れました」

 

 ――まさに不死身のコーラサワーですね。本題に入りましょう。あなたが見た二機目のガンダムについてお話を聞かせてください。

 

「わかりました。あのイベントでは原作を再現しようと初代ガンダムに乗ってるダイバーが結構な数いました。俺も3機くらい落とした記憶がありますがあのガンダムは落とせなかった。動きが尋常じゃなく速いんです。いや、速いって言っていいのか……?」

 

 ――攻撃を先読みされるとか?

 

「いや、それはなかったかと。撃った後に当たりかけるんですが……そう、かわすのがうまいんだ!ほんの少し機体をよじってどんな攻撃もひらりひらりとかわしちまう化け物みたいなガンダムですよ!そいつを見た誰かがこう言ったんです――『白い悪魔』がここにいるぞ!って」

 

 ――それが噂の二機目のガンダムですか。

 

「そういうことになりますね。目撃した当初は余りもの機動にフルバーニアンやF91を使っているのかと思いましたが、ビームサーベルでやられた奴が純正の初代ガンダムだったと証言してる。ここから『星一号作戦のアムロのガンダムは二機いた』という噂が出てきたんじゃないかと思いますね」

 

 

 

2:連邦軍側参加者

 

 ――当時は何をされていましたか?

 

「私はSフィールド、つまり原作のホワイトベース隊と一緒に攻め込むチームに所属していたの。だからもう一機のガンダムと呼ばれているWフィールドのガンダムについてはある程度しか聞いていないわ。それでもいいかしら?」

 

 ――構いません。今はどんなに些細な情報でも欲しいのです。

 

「オーケー、じゃあ話すわね。当時の連邦軍側の作戦は時間切れ寸前まで有力なダイバーを温存して……疲弊したジオン側を一気に貫く!っていう作戦だったのよ。だけどジオン側の防衛が激しくて温存策は序盤で中止。中盤辺りで全員投入されていたわ」

 

 ――かなりの激戦だったんですね。

 

「激戦だったというか、運営も手探りだったというか……NPDが大量投入されていたとはいえ一時間も戦っていたのよ、私たち。疲労は本当にすごかったし私が落とされた原因もそれだったわ」

 

 ――なんとまあ……お疲れ様です。

 

「本当にね……あっ、話がそれちゃったわね。そのガンダムだけど、Wフィールドの温存組にいたと思うのよ。純正の初代ガンダムのHGに乗ってるダイバーがいるのを見た記憶がある。どんな立ち回りしたかは知らないけれど生還したとは聞いているわ」

 

 ――ふむふむ。情報感謝します。

 

「あっ、待って。一つ気になることがあるのよ」

 

 ――はい。

 

「そのガンダムなんだけど……イベントの後消息不明なのよね」

 

 ――はっ?

 

 

 

3:有力フォースメンバー

 

 ガンダムが消息不明という情報が出てきて、亡霊説が本気であり得るのでは……? なんだか怖い状況になってきたが、取材を続けていたところとある有力フォースのメンバーが取材に応じるという連絡があった。彼のフォース名を明かさないことを約束に行ったインタビューを公開しよう。

 

 ――それではお話をお願いします。

 

「僕は当時連邦側で参加していたが生憎とSフィールドにいてね。Wフィールドのガンダムを見たことがないんだ……こうして取材に来てもらったというのに申し訳ないね」

 

 ――いえいえ、そんなことは!

 

「ははっ、緊張しなくてもいいよ。その代わりWフィールドのガンダムについてある程度調査したことがあるんだ。当時のデータが何かの参考になるんじゃないかと思って声をかけさせてもらった。君たちの役に立ってくれることを願うよ」

 

 ――感謝します。

 

「それじゃあ始めよう。Wフィールドのガンダムについてはダイバー名も把握しているが、彼は既にGBNから引退したダイバーだから下手に騒ぎにせず、秘密にしてもらいたい。構わないか?」

 

 ――構いません。しかし、引退していたのですね。

 

「ああ。星一号作戦で彼のガンダムがWフィールドの指揮官を務めていたあの『智将』ロンメルを終盤の五分間抑えきるほどの実力を発揮したのは知っているかな?」

 

 ――全くご存じないです。いきなりのビッグネームが出てきてちょっと困惑しています。

 

「あのイベントはGBN黎明期だったからな……やはり情報が足りないか。もしよければ星一号作戦に関して僕が知りうる全容も公開しようか?」

 

 ――お願いします。

 ※こちらは次週『大規模イベント『星一号作戦』を紐解く』で掲載予定。お楽しみに!

 

 

 【星一号作戦の作戦内容取材中……】

 

 

「こんなところか。それで大活躍を収めた彼だが■■■■に勧誘されて所属したんだ。おっと、これについては秘密にしてくれ。向こうのフォースにも迷惑が掛かってしまうからね」

 

 ――ですね、我々も同意見です。

 

「星一号作戦が終わった後は僕も忙しくてなかなか時間が取れなかったが、余裕ができた頃に彼のガンダムにバトルを申し込むつもりだった。活躍時間こそ短いもののそれだけの腕前を持つダイバー……GBNをプレイする者として戦いたいと思うのは当然の心理だからね」

 

 ――ですね(苦笑)

 

「だが、彼のフォースリーダーからそれを断られてしまった。当時の彼はスランプに陥っていてそれを抜け出そうともがきあがいていた時期だったと聞いている。僕もフォースリーダーも立ち直ることを望んでいたけれど――ダメだった。心が折れてしまった彼はそのままGBNを引退した」

 

 ――なんと……そんな悲劇があったとは……

 

「フォースも名前を残して迷惑をかけることを拒んで脱退した。彼が活躍した期間が短いこともあって彼を知っているダイバーはそう多くないだろうね……こうして彼は消息不明となったんだ」

 

 ――この記事を通して少しでも彼のことを知るダイバーが増えてくれるといいですね。

 

「そうだね。できることなら彼のガンダムをもう一度見てみたいよ。

 話を戻すと、『ア・バオア・クーの亡霊』は彼のガンダムの噂に尾ひれがついたものだと思う。とてつもない強さを発揮した初代ガンダム、そして瞬く間に彼が消えていったこと。彼の戦果もあって知る人ぞ知る伝説となったこともあってこうして『ア・バオア・クーの亡霊』と呼ばれるようになった……僕はそう推測している。参考になると幸いだ」

 

 ――貴重なご意見ありがとうございました。

 

「こちらこそ楽しい時間をありがとう。昔語りはあまりしない方だけどたまには悪くない。今日はHGのガンダムを作ってみようかな……」

 

 ――あの、一つ質問よろしいでしょうか?

 

「何かな?」

 

 ――先程の話には出なかったんですがあなたは星一号作戦で何をしていたんですか?Sフィールドにいたのは聞いてるんですが。

 

「終盤に味方が各フィールドでかく乱してくれた隙をついて最深部へ突入、ア・バオア・クーを制圧して連邦軍を勝利に導いたよ」

 

 ――声も姿も隠してますけどあなた絶対チャンピオンですよね?そういうことするというかできる人って我々はあなたしか知らないのですが……

 

「はははっ……ご想像にお任せするよ」

 

 

 こうして我々取材班の活動は幕を閉じた。この後も取材と調査を続けたが、上記の通り星一号作戦に参加したとあるダイバーのガンダムの噂に尾ひれがついたものであるという結論に至った。

 

 思わぬ人物の情報提供があったもののア・バオア・クーの亡霊に関する真相を明らかにできたのは、ダイバー諸君の協力だけでなく、星一号作戦において素晴らしいバトルを繰り広げたダイバーたちのおかげでもある。この場を借りてお礼を申し上げたい。

 

 次回は『ダイバーは見た!海中に沈む謎の巨大戦艦!』について『GBN調査報告所』は解説するつもりである。謎に関する情報、もしくは調査依頼はこちらのURLまで――

 

 

 

 

 

「くだらんな」

 

 待ち合わせ時間の間読んでいた雑誌を閉じるとラックに戻した。ふと気になってウィークリーGBNを手に取ってみたが今更こんな噂について調査しているとは。何をやっているんだか。

 

「ごめん父さん、待たせたね。ちょっとビルダー仲間と出会っちゃって色々と盛り上がっちゃった」

 

「遅いぞ。昔見た時もお前はガンプラ屋を見に行ってて遅れてたなぁ」

 

「うぐっ、痛いところを……」

 

 苦い顔をする青年。かつて子供だった息子はすっかり年を取って立派な大人へとなり、私は大人から老人へと衰えてしまっていた。そんな二人の目的はこのショッピングモールで上映される『機動戦士ガンダム3めぐりあい宇宙編』を見ることであった。公開当時も見に行ったが、今度は4DXだかなんやらの凄い映画館で再び上映されるということで、せっかくなので見に来たのであった。

 

「娘はどうしたんだ?」

 

「ああ、レイナは今日はGBNだって。友達と一緒に訓練するらしい。見たがってたけど今は一分一秒が惜しいんだとさ」

 

「そうか……GBN、か」

 

「……戻る気はないのかい?」

 

「もうあの世界には愛想は尽かした……いや、もうあきらめていると言っていいか。あの世界に戻るつもりはない。ガンプラを作ってくれたお前には悪いがな」

 

「その割には昔の自分の記事を見てニヤニヤしてたけどね」

 

「やかましい。さっさと行くぞ」

 

「あ、待ってくれよ父さん!」

 

 自分のことを褒めたたえるかのように記されていて嬉しくないわけがない。たとえそれが忘れたくなるようなつらい過去につながるものであったとしても。

 

 

 過去を振り払うかのように、私は――アオツキ・ハジメは映画館への歩みを進めた。

 

 

 これはこれから始まる物語の『プロローグ』である。初代ガンダムを愛する老人が同じく初代ガンダムを愛している息子と映画を見に行った、物語が動き始める直前のある日であった。

 

 

 この日の夕方、物語が動き出すきっかけが起きる。

 

「はい、アオツキです」

 

『アオツキ・ハジメさんですね?こちらは――病院です。落ち着いて聞いてください』

 

 

 あなたの息子が、事故で亡くなりました。

 

 

 つい先ほどまで話していたはずの息子が事故で亡くなった。信じられない思いを抱えながら老人は病院へと走る。これがきっかけで自ら去ることを選んだGBNの世界へ戻ることになるとは、予想すらしていなかった。

 

 

 

 

「う、そ、だよね」

 

 ハジメが受け取った物と同じ連絡を別の場所で――ガンダムベースで聞いていた一人の少女、レイナは目を見開いていた。尊敬する父親が、つまらない交通事故で亡くなった。

 

「そんな……そんな!」

 

「お、落ち着いてレイナちゃん!」

 

 友人が涙を流しうずくまるレイナを支える。悲しみで力が抜けた少女を友人は必死に支えながら、泣きながら少女が呟く言葉を聞いていた。

 

「私は……わた、しは、まだ……」

 

 

 

 お父さんに、ガンダムが伊達じゃないってこと、見せてないのに……

 

 

 

 

 人々がGBNという新たなる世界を得てから数年が過ぎていた。日本だけでなく世界中へと広がったGBNの世界で人々はガンプラを作り、育て、そして戦いを繰り広げていた。

 

 これはGBNの世界に『ビルドダイバーズ』が結成される少し前の物語。

 

 息子を亡くした一人の老人がGBNの世界へと舞い戻り、父親を亡くした一人の少女が強さを求めてもがき苦しむ。同じ男を失った二人にはある共通点があった。『ガンダムを愛している』こと。

 

 そんな二人が「ガンダムは伊達じゃない」と叫ぶ物語である。

 

 

 




 共にガンダムを愛した息子を失った老人はかつての思い出を回想するとともに、とある依頼を受けてGBNの世界へ舞い戻ることとなる。そして、父親を失った少女はGBNの世界でもがき苦しんでいた。
 そんな二人が、GBNの世界で出会うことで物語の幕が開く。

 『ガンダムは伊達じゃない』

 次回『ビギニング』

 君は、生き延びることができるか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。