番外編であるため、本編とは関係ないものとして気軽に緩ーく楽しんでいただけると幸いです。
最後の最後にやりたいこと詰め込みすぎて色々と事故起こしている自覚があります。
謝罪始めたら止まりそうにないので、何が言いたかったかを一つだけ……
ガンプラは!いいぞ!
クジョウ・キョウヤ。ガンプラ・バトル・ネクサスオンライン、通称GBNが大型アップデートを行いVer1.78となった今でもチャンピオンとして君臨し続けている彼には特殊な伝手があった。
「それで話とは何かな、ゲームマスター。リアルで連絡、いきなり呼び出しとはらしくないね」
「かつての君もそうだっただろう」
それもそうだ。キョウヤは苦笑しながらゲームマスター、SDガンダムフォースの『ガンダイバー』のアバターを使用している運営側の人間と接触していた。「大至急相談したいことがある、GBNに来てくれ」とガンダムトライエイジを楽しんでいた彼は呼び出しを受けた。高難易度のEXミッションレベル8に挑戦していたタイミングでの呼び出しにわずかに怒りを覚えたが、忘れる。
彼が呼び出すほどの事態というのはGBNによっぽどの危機が迫っているか異常事態が起きているということだから。GBNを、ガンプラバトルを愛する者として力にならなければならない。
「話というのは最近のGBNのサーバーに妙なアクセスが続いている件だ」
「BUILD DiVERSが接触した惑星エルドラもしくは似た存在からのアクセスという可能性は?」
「あり得るかも知れんが、エルドラの件に関しても調査中の部分が多すぎてわからないというのが本音だ。アクセスを試みている相手はGBNにログインしようとしているわけではなく、奇妙なデータを送りつけていて、それをわかりやすく物質化した状態がこれだ」
「ふむ……壊れているデータにしか見えないね」
ゲームマスターが具現化したそれは加工に失敗してぐちゃぐちゃになったプラスチックの塊に壊れたガンプラの破片を大量に差し込んだ何かのような物、としか言えなかった。
「データ自体が何度も圧縮や削減を繰り返された痕跡があり破損していた部分が多すぎて元データからの復元には失敗した。が、GBNのフォーマットに当てはめて推測を試みた結果──」
いびつな塊が光の砂へと変化してアイコンへと形を変える。パソコンなどで見られるフォルダ上のアイコンに変化したそれに記されていたのは『Mission』。
「このようになった。が、説明文は解読不能だ」
キョウヤはアイコンをタップしてミッション説明文と思われるテキストファイルを開く。
『ガンプラを示せ』
それ以外は文字化けして解読不能。ミッション内容も何一つわからないそれにキョウヤは、チャンピオンは好奇心を駆り立てられていた。
「今すぐにでも受けようとしているな。だがこのミッションを受けるためには準備が必要だ」
「だろうね。壊れたデータのミッションだ、そう簡単には始められないだろう」
その言葉に頷いたゲームマスターが指を振ると新たなテキストファイルが開かれる。
「このファイルは我々が解析したミッション受注条件がまとめられている。奇妙なことに特定のダイバーを含む4人が特定の日に特定の場所のサーバーからログインすることがミッション開始のキーとなっているようだ。特定のダイバーというのは……もうわかっているだろう?」
「僕だね。4人のダイバーというのは恐らくチーム戦だろう。メンバーは決めてもいいのか?」
「君の判断に任せる。そして、場所というのは──」
神奈川県横浜市中区山下町──のガンダムベース。
「っ! そこは……!」
「ああ、そうだ」
GUNDAM FACTORY YOKOHAMA。動くガンダムのお膝元を指名している。それを知ったチャンピオンは面白いことが起きると確信していた。
その翌日。GUNDAM FACTORY YOKOHAMA。
「チャンプからの連絡はまだないし、ガンダムを見に行こうか」
「うん、私もおっきなガンダム見てみたい!」
現実の世界と同じく動くガンダムが展示されているその場所に。
「……これが、RX-78 F00。ガンダムのパーツから組み上げたガンダム、か」
チャンピオン、クジョウ・キョウヤの招待状を受け取ったダイバーが集った。
「限定ガンプラ……! 欲しいけど買ったら帰れない、我慢我慢……」
これは、彼らがガンプラの可能性を示すべく戦った記録。『バトローグ』である。
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「RX-78-2 GUNDAM Ver.GUNDAM Cafe グラス付きドリンクを4つ頼む」
「かしこまりました。飲み物はどうします?」
「僕はジャブローコーヒーICEで。リク君はどうする?」
ガンダムベース付近で営業しているガンダムカフェ。そこのテーブルの一つにGBNファンがダイバーネームを知れば狂喜乱舞する面子が揃っていた。まずはキスギ・キョウヤ。ダイバーネーム、クジョウ・キョウヤ。彼が築いた伝説は多すぎるから割愛する。チャンプはさぁ……
「俺もそれでお願いします。サラは……」
「気にしないで、リク。私はみんなが食べたり飲んだりしてるのを見てるだけで楽しいから」
ミカミ・リク。ダイバーネーム、リク。電子生命体であるELダイバーを発見し、彼女を守るために様々な戦いを潜り抜けた伝説のフォース『BUILD DIVERS』のリーダーである。そして、彼が救ったELダイバー・サラも彼に付き添ってガンプラ『モビルドール・サラ』として出席していた。
「烏龍茶ICEで……皆、意外とGBNと変わらないんだな」
リアルで会った彼らに少し驚いているのはクガ・ヒロト。ダイバーネーム、ヒロト。地球から遠く離れた惑星エルドラの危機を救ったフォース『BUILD DiVERS』の一員である。人付き合いはかつてと比べると慣れてきた気がするが、こうして会ってみると緊張する。
「オレンジジュース! サラちゃんは仕方ないとして、先生が一番変わってないと思います」
それをほぐすかのように大きな声を出す少女、アオツキ・レイナ。ダイバーネーム、レイナ。エンジョイ系フォースとして有名な『V作戦実験小隊』を率いる彼女はこの中では知名度も実力も劣るも、クジョウ・キョウヤの招待状を受け取ったのは名だたるダイバーではなく彼女であった。
注文を聞き終えた店員がキッチンスペースへ戻っていくのを見届けたキョウヤは口を開く。
「皆、突然の呼びかけにもかかわらず応じてくれてありがとう。改めて礼を言わせてくれ」
「いえいえ! チャンプには何度もお世話になってますからこれくらいお安い御用ですよ!」
「俺もAVALONにいた頃やロータスチャレンジ、あのラストミッションでお世話になってますし」
「こうなると私の場違い感が凄い……私とチャンピオンの関係っておじいちゃんとの会合の調整したくらいだし……」
頼もしい答えを返した二人に対し、遠いところを見つめるレイナ。本来であれば彼女はここにはいないはずで、GBNでのんびり愛機のプラスガンダムと旅をしている予定だったのだ。
「あはは……実は彼女ではなく、その祖父に招待状を出したんだけどね」
「レイナの祖父。『アムロのガンダム使い』ハジメですか」
二年以上前の話になる。第七機甲師団のロンメルと戦ったダイバー、ハジメはアムロ・レイのガンダムの能力を再現する必殺技を得た。その存在はGBNでも知れ渡っていたが、本人はその必殺技は卑怯であると考えていたため本当に重要な時でしか使わない。有志連合の戦いやバグ、エルドラからの攻撃といった時にしか使っていないが本人の高い技量もあり有名人の一人なのだ。
「おじいちゃん今日は病院では入院する必要がある検査なんです。あ、容態は変わりないですよ? ただー、そのー……お見舞いにアンシェさんが行きました」
「……ああ、メイが言っていたのはそういうことか」
「なるほど、そういうことなら来れないよなぁ……」
ヒロトは数日前に『BUILD DiVERS』の仲間であるELダイバー・メイの話を思い出す。
「明日保護者と一緒に『アムロのガンダム』のリアルに会ってくる。土産はいるか」
ミーハーな節があるフォースリーダー、カザミは彼のサインを頼み、ガンプラ作りのセンスが高いメンバー、パルヴィーズは彼のガンダムの写真を頼んでいた。自分も興味本位から一枚頼んではいる。
納得しているヒロトとは別の意味で納得しているリク。彼のフォース『BUILD DIVERS』の一員であるコーイチはアンシェことシバ・ツカサの友人でありそのお見舞いに一緒に行くという話をしていた。ガンプラやニッパーといった機材を持って。お見舞い相手であるハジメはガンプラを作れないことに悩んでおり、コーイチとシバ・ツカサから教授を受けている、が。
「なんで毎回出っ張ってるとこ切断するんだ、アァ!? ここまで来ると一種の才能だぞ!」
「って具合にしょっちゅうキレてて。ハジメさんが天才的に不器用なのもあるんだけどね……ロードアストレイダブルリベイクのモードチェンジを考えてた頃よりも難しいかもしれない」
「……ビルダーとしての腕とパイロットとしての腕が比例していないのか。色々と調べてみても面白いかもしれない」
結果はお察しである。それに振り回されるコーイチの姿には合掌するしかない。
「なので私は代理で来たんです。ガンプラも皆さんと違ってSDガンダムの改造機だからあんまり期待しないで……」
「そんなことはないよ。パルみたいにSDガンダムは作りこめばすごい実力を発揮する。君がラストミッションの時に使っていたパーフェクトガンダムのアーマーも精度がだいぶ上がっていたと思う。先生として保証するよ」
「レイナさんの師匠であるアヤメさんも、レイナさんが新しいアーマーを作ったら自慢してましたね。毎回よく褒めてましたしもっと自信を持っていいと思います」
「二人の信頼がまぶしい! 助けてチャンピオン、サラちゃん!」
「いや、私も彼らに同意見なんだが。君がフォースを作っていなかったら勧誘を検討していたね」
「レイナのプラスガンダム、いつも喜んでるよ。私のダイバーは凄いんだぞー、って言ってる」
「味方がいない……!」
頭を抱えてテーブルに突っ伏した彼女の姿に一同は笑う。レイナも自分がこういうキャラであると理解していたから狙い通りではあるのだがなんだか悔しい。うぐぐ、とうなりながらジト目で顔を上げたレイナはふと疑問を口にする。
「そういえばチャンピオン、招待状にガンプラの準備をするようにってありましたから、ミッションをやるんだろうと思いますけど、なんでこの面子なんですか? AVALONはどうしたんです?」
「君の予想通り、ここにいるみんなでミッションをするのは正解だ。ただ、君たちと受けるミッションには4人までの制限があってね。AVALONで行くとなると僕とエミリアとカルナで一人足りない。もう一人を選ぶのには色々と困ったから、思い切って二つのビルドダイバーズのダイバーと『アムロのガンダム』を使えるハジメさんを頼ろうと考えていたんだ」
「なるほど、そういうことですか。どうせだったらここにAVALONの方やビルドダイバーズの皆さんが揃ってオフ会とか開けたらよかったんですけどね」
「あはは、気持ちはわかるけど今日は難しいかな。うちのビルドダイバーズは──」
リクは今日の仲間たちの予定を思い浮かべる。
まずはヒダカ・ユキオこと、ダイバーネーム、ユッキー。
「はあっ、はあっ……ま、待ってよモモちゃん! ペース速いよ!」
「ほらほら、速くしないと置いて行くよ! ガンプラ作るだけじゃなくて運動して体力もつけなくちゃ! 最近読んだガンプラ漫画でもそういうこと言ってたしね!」
「そ、それきっと昭和くらいの古いやつだよ……」
同じくメンバーのヤシロ・モモカこと、ダイバーネーム、モモに連れられてリアルで特訓中。ちなみにチャンピオンの呼び出しがなければリクも参加予定だったそうな。
コーイチは先程説明済み。その妹のナナセ・ナナミ、ダイバーネーム、ナミはというと。
「ふーっ、最近はガンプラの再販が多いなぁ。新しいのも古いのも入荷量が多いから大忙しだよ。でも、私のこの仕事が未来のビルダーたちを育てるかも知れないんだし、頑張らなくちゃ!」
ガンダムベースへの新商品入荷が多く手が空いていなかった。彼女を始めとして、現実世界でも我々ビルダーにガンプラを提供してくださっている各種模型店の皆さま、お疲れ様です。
最後にフジサワ・アヤこと、ダイバーネーム、アヤメ。
「ごめんなさい。明日はゲームセンターに新しいSDガンダムのフィギュアが入荷するのよ。「SDガンダム 煌極舞創 スペリオルドラゴン」っていうんだけど……えっ、スペリオルドラゴンを知らないの!? SDガンダムのレジェンドよ!?」
その後の30分続いたスペリオルドラゴン講義を含めてお察しである。ちなみにスペリオルドラゴンのプライズが出るのは事実である。2021年1月にリリース予定とのことでSDガンダムファンは必見。リリースされた時は是非各種店舗でゲットしてほしい。
「……うちか。うちのビルドダイバーズは──」
続いてヒロトが所属しているビルドダイバーズの本日の予定は。
まずはリーダーであるトリマチ・カザミこと、ダイバーネーム、カザミ。
「やすりがけは基本中の基本だぜ! 地味な作業に見えるだろ? 俺もそう思ってたし昔はしんどくて手を抜いてた。だけどきっちりやるだけでガンプラの耐久力は抜群に上がるんだ!」
「そうすればキャプテンカザミやこの俺、不死身のコーラサワーのように鉄壁の防御力へと近づける。最強までの道はコツコツと、ってことだな」
「では、彼らの教えを守ってレッツビルドチャレンジ! わからないことがあれば私キャプテンジオンやその同志に聞いてくれたまえ! ルールを守り、基本を磨いて楽しいGBN!」
Triple Cと呼ばれるCを冠するダイバーが開催した新人向けのガンプラ制作講習会inGBNにて講師活動中。初期の彼を知る者からは想像できない姿に驚くかもしれないが、これが成長したカザミ、もとい『キャプテンカザミ』の今の姿なのである。
続いてパトリック・アレクサンドル・レオナール・アルジェこと、ダイバーネーム、パルヴィーズ。
「パトリック、ここの部分に変形ギミックを入れてみようと思うんだが」
「僕もいいと思います。こういう構造ならリライジングガンダムの構造が使えるかな……試してみます」
「手伝うよ。君も大分頼もしくなったね」
シャフリヤールと呼ばれるGBN伝説のビルダーと共に今度開催されるガンプラコンテスト用の作品を制作中。ちょうど追い込みの時期なので参加できないということを謝罪と共に伝えられている。
ELダイバー・メイは先ほど言った通り。余談ながら他の非戦闘メンバーについても紹介しよう。ムカイ・ヒナタ、ダイバーネームヒナタ。
「ごめんヒロト! 最近ガンダムベースのお客さんが多いから、ガンダムカフェも大忙しで……今度は昔の知り合いとのおふらいんみーてぃんぐなんだよね。帰ってきたら色々聞かせてね!」
というわけだ。ビルドダイバーズの一員となった今でも彼女がヒロトの帰るべき場所にいることは変わりない。
続いてフレディ。ダイバーネームを持たない惑星エルドラの民でありながら、ビルドダイバーズの一員である彼は元々現実世界には来られない身である、が。
「フレディー! こっちの畑を収穫するから作業を手伝ってくれ!」
「わかりました! ビルドダイバーズの皆さんもこの野菜を美味しいって言ってましたし、今度来た時に備えて準備しておかなきゃ!」
荒廃していた惑星エルドラの復興作業に今日も勤しんでいる。時折ガンプラで彼らの作業を手伝うことがあるため、ヒロトはプラネッツシステムで農作業用の物を作るかどうか悩んでいたりするが、それは別の話である。
そんなわけで今日はビルドダイバーズはどちらも動けない、というわけである。
「なるほどなぁ……うちはエンジョイ系かつ人数も多いし、リアルも大分バラバラだから全員のオフ会無理なんですよね」
「AVALONも同じく。そういう意味ではビルドダイバーズの二人が羨ましいかな」
「「いやぁ……ん?」」
「二人ともそっくりだね」
偶然似たようなそぶりをしたリクとヒロト。二人のビルドダイバーズの姿にサラが笑みを浮かべていると、ちょうど店員がやってきた。
「お待たせしました、RX-78-2 GUNDAM Ver.GUNDAM Cafe グラス付きドリンクです。こちらはELダイバーの方に無料サービスしておりますので是非お持ち帰りください」
「わぁ……! リク、これすごい!」
店員からドリンクと共に差し出された小さなプラスチックの筒。それはELダイバーサイズに小さく作られたRX-78-2 GUNDAM Ver.GUNDAM Cafe グラスで、中には乳酸菌飲料をイメージした白いプラスチックも入っていた。サラが嬉しそうに受け取ったそれを見たリクは驚愕する。
「本当だ。しかもこのガンダムのデカール、シールじゃない……えっ、まさかはめ込み!?」
「そういえばGUNDAM FACTORY YOKOHAMAにはGBN用の最新鋭射出成型機があるって聞いたことがある。1/144サイズの歴代ガンダムパイロットのフィギュアも成型できるとか」
「い、1/144サイズのパイロット成型とか凄いよ……! しかも、このガンダムデカールのカラーリングを再現しながら多色のはめ込みを、しかもこのサイズで!?」
「パーツ成型だけでなく、ビルダーがパーツが干渉しないように丁寧にやすりが消した上でようやくできる技術だね。僕も一度ガンダムカフェに行ったときに手伝ったことがあるけれど本当に繊細な技術が必要だったよ。ビルダーの思いもこもった逸品だ、大切にするといい」
「はいっ! えーっと、こういう時って……あれやるんですよね」
グラスを持って高く掲げるサラ。意図を察した一同は合わせてグラスを掲げる。
「「「「「乾杯!」」」」」
一同は声を合わせてグラスを合わせる。穏やかな笑みを共に浮かべ、楽しい時間が過ぎて──
「って、ダメですよチャンプ! 流されてましたけどミッション! ミッションの話!」
「はっ! す、すまない。つい楽しくてうっかり……!」
「あ、あぶないところでしたね……あの、チャンピオンってもしかして天然?」
「否定はできない、気がする」
「……うん」
当初の目的を思い出したダイバーズはドリンクを飲みながらチャンピオンの話を聞く体勢に入る。キョウヤは自らのダイバーギアを取り出し、運営に見せてもらったファイルを表示する。
「『ガンプラを示せ』か。確かに気になるなこのミッション。ガンプラって一口に言っても色々グレードはあるけどどういうことなんだろう」
「受ける条件はチャンプが7月19日にここGUNDAM FACTORY YOKOHAMAのガンダムベースからログインすること、か。チャンプ限定ミッション……あり得そうな気がする」
「ログインした地域限定ミッションがあるっていう話は聞いたことがありますし、ここだとガンダムグローバルチャレンジと題して1/100RX-78 F00と対戦できるミッションがありますね」
「ガンプラが強い人を探してる、のかな? 可能性ってことは……もしかして、ELダイバー?」
ミッション説明文を見た彼らが様々な反応を返す。ふと、日付が気になって考えていたヒロトがはっと気づきレイナに問いかける。
「レイナ、俺の記憶が確かなら今日の日付ってベストメカコレクションの発売日だったはずだ」
「ベストメカコレクション……あっ! そうか、今日は世界初のガンプラ発売日! 先生冴えてる!」
ベストメカコレクション。1980年当時発売されていた様々なアニメや特撮のロボットやメカをプラモ化していたシリーズ。その第四弾としてガンダムが発売された日なのだ。
「いいところに気付いたね、ヒロト。ガンプラが始まった日に、動くガンダムの元で、GBNの実力者を指名したミッション。運営も関与していないこれには絶対に何かあるはずだ。このミッションの攻略にみんなの力を借りたい。頼む!」
頭を下げたチャンピオンに、皆頼もしい返事を返す。
「はい、任せてください! チャンピオンからの依頼と聞いてダブルオースカイメビウスも念入りに手入れしてきましたから!」
テーブルの上にダブルオーガンダムから誕生した、リクのダブルオースカイメビウスが立ち。
「私もバトルでは力になれないけれど、リクと一緒に行きます」
寄り添うように、モビルドール・サラが立ち。
「俺もやります。支援機運用も想定してヴィーナスアーマーもあります」
その隣に、ヒロトのアイデアから誕生したガンプラ、ヒロトのアースリィガンダムが立ち。
「私だってダイバーです! お役に立てるかわかりませんがパーフェクトアーマーでお供します!」
遠慮しがちだが、SDガンダムにカスタマイズを重ねた、レイナのプラスガンダムが立ち。
「ありがとう、皆……! 僕も全力で戦い抜くよ!」
最後に、AGE系ガンダムの集約機、キョウヤのガンダムTRYAGEマグナムが立つ。
「どのガンプラにもたくさんの思いが詰まってる……みんな、すごい!」
「あはは、ありがとうサラ。ところで、ミッションの名前って何ですか?」
「バグでわからなくて不明だ。だけど僕たちで名付けるのも悪くないかな。何かいいアイデアがあったら教えてほしい」
「……いまいちそう言うのは苦手だな」
一同は悩んでいる姿を見ながら、ふとレイナは閃く。
「じゃあ、────っていうのはどうでしょうか。このメンバーにはちょうどいいと思いません?」
「なるほど、いいアイデアだね。確かにここにいる人はみんな同じ────って言えるしね」
「確かにいいアイデアだとは思うけど、僕とレイナ君もいるんだがそれでいいのかい?」
「俺は構いません。今日一日限定結成の特別チーム、っていう感じでいいと思います」
「皆が────……素敵だね。私も混ぜてもらってもいい?」
「もちろんだよサラ君。それじゃあ皆──」
一同は納得すると、キョウヤが中心に手を伸ばした。そこにリクが、ヒロトが、レイナが手を乗せ、身長が届かないサラもリクが持ちあげて手を乗せる。
「フォースは違えど僕らは目的は同じ『ビルドダイバーズ・チャレンジ』に挑む者! 『ビルドダイバーズ』の名に懸けて絶対に攻略してみせる! 行くぞ!」
「「「「おお──っ!!」」」」
『BUILD DIVERS』ではなく、『BUILD DiVERS』でもない。彼らは『ビルドダイバーズ』としてミッションへ挑む決意を一つにした。
・
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・
GUNDAM FACTORY YOKOHAMAにもGBNのプレイスペースはある。ガンダムファンが集うこの場所では、どの時間もほぼ満員状態で空きがなかったがその問題を解決するために筐体を増台することが決定されていた。店員に案内されてビルドダイバーズはそこを訪れていた。
「ここは第二GBNルーム呼ばれることになる部屋でまだ準備中なんだ。まだ内装は色々と足りていないけれど、筐体はちゃんと動くことを確認済みだ。運営からの話は聞いてここを用意させてもらったよ、未知のミッションへの挑戦頑張って『ビルドダイバーズ』」
「ありがとうございます。皆、準備はいいかい?」
それぞれが筐体に座り、セットしたダイバーギアの上にガンプラを置く。
ID data confirm.
「準備オッケーです! サラも大丈夫?」
Please scan your GUNPULA.
「うん! モビルドールモードじゃなくてちゃんとダイバーモードでリクと一緒にログインできるように設定したよ」
Log in data confirm.
「二人とも仲睦まじいな……そういえば、レイナも彼氏がいるんだったか」
Are you ready?
「ここに来る前に振りました。しばらく顔見たくない」
「「「「えっ!?」」」」
Dive start now!
レイナの割ととんでもない発言に一同は驚きながらのGBNの世界へダイブしていく。
『……第七機甲師団の確かアズマ君と付き合っているんだったね。どうして別れたんだい?』
その過程でビルドダイバーズの皆はアバターとなってデータ上の回廊を落ちていく。
『サンダーボルト版のパーフェクトガンダムのアーマーを作ってきたので私がキレまして……ジオン系ガンダムを許容できない私のめんどくさいガンダム心が恨めしい、ううっ……』
回廊のエフェクトが普段と若干違うのは特殊なミッションを受けるためだろうか。
『……気持ちはわからなくもない。俺ももしアルス版のアースリィアーマーを渡されたらどんな反応するか正直分からない』
アバターはそれぞれのガンプラへと搭乗し、サラだけは設定どおりリクのダブルオースカイメビウスのコクピットに同乗する。
「だ、大丈夫ですよ。レイナさんよく喧嘩してますけどすぐ仲直りしてますし……」
『リク君には本当にいろんなところを見られているから恥ずかしいっ!』
が。
「……ううっ!」
そのサラの様子がおかしかった。突然姿がブレ始め、本人も苦しそうにしていた。
「サラ!? どうしたんだ、一体何が!?」
「わから、ない。体が、外れ……ああっ!」
コクピット内で崩れ落ちる彼女をリクは支える。虚空へと手を伸ばした彼女の手を取り声をかけ続ける。サラ、サラッ! リクの声に答えることはなく、彼女は光となってコクピットから消えて。
『えっ、モビルドールのサラちゃん!?』
『不味い、気を失っているのか! ヒロト!』
『はいっ、手伝います! 何がどうなっているんだ……!?』
突如スカイメビウスから離れるように、モビルドールサラが現れた。その目に光はなく、速度を落としてどこかへ落ちていきそうだった彼女の背をAGEマグナムが咄嗟に掴み、アースリィが反対側を支える。プラスガンダムも彼女が落ちないように前から支え、スカイメビウスは手を取った。
「サラ! 返事をしてくれ、サラ!」
『ううっ……リ、ク? あれ、どうして私ガンプラに……』
気だるげな彼女の声と共にモビルドールサラの目に光がともる。良かった、生きてた! 皆が安堵した時、回廊は終わりガンプラはフィールドへと放り出される。そこは市街地の上空だった。
「ここは、日本なのか? 、なっ、姿勢がっ!?」
同時に、皆のガンプラに異常が生じる。元々飛行アビリティが付属していないレイナのプラスガンダムは仕方ないが、飛行アビリティがついているはずのスカイメビウスやAGEマグナムが落下し始める。高度がそれなりにあるため、まともに落下すればひとたまりもない……!
「ダ、ダブルオースカイメビウスの出力が上がらない!!」
「くっ、ヴィーナスアーマーをすぐに向かわせる! 乗ってくれリク!」
「わかりました、ヒロトさんは!?」
「俺たちは俺たちで何とかする! 今はその手の中の大切な人を守るんだ!」
サラを抱えたスカイメビウスはアースリィの支援機であるヴィーナスアーマーに乗って落下速度を落とす。アースリィガンダムを始めとした他のガンプラも飛行することは出来ないが、スラスターは使える。各々が速度を落としながら市街地の中央広場らしき所へ着陸した。
「──っ、はあっ、はあっ……ごめんなさい、皆に迷惑を……」
「気にしないで、サラちゃん。この世界なんか変だよ。サラちゃんがスカイメビウスに同乗するのをシステムが拒んだみたいだけど……どうなってるの?」
「機体をチェックしたがガンプラに異常はない。飛行アビリティが無力化されたりと、システムに異常が起きているのは確実だ。ログアウトを始めとした外部への連絡手段も機能していない」
「GBNとは違う別のシステムが構築されている別のサーバーあるいはゲームにアクセスした? いや、似たようなシステムがあるのはGPDくらいだけどいくら何でもシステムが違いすぎる。あれは現実のガンプラを動かす仕組みになっていたはずだ」
「……うん、ビームサーベルとビームライフルは使える。一応戦えるみたいなんだけど、ダブルオースカイメビウスのGNドライブが安定してないみたいだ。これじゃトランザムは使えない」
「あ、そういえば私のアーマー運んでたGキャリアーは……うん、健在みたいだ。空中を偵察させてますね。でも換装しようとしたらエラーって表示されているんですが……」
「俺のヴィーナスアーマーも挙動が少しおかしいし、換装が使えないのかもしれない。しばらくコアチェンジと君のプラスチェンジは封印しておこう」
「アーマーなしの私のプラスガンダムって普通のSDガンダム並みの性能しかないんですけど」
「わ、私も月光蝶? が使えないみたいだからお揃いだよ、レイナ」
「あはは、ありがとうサラちゃん」
戸惑いながらも機体チェックを済ませた各機が周囲の状況を確認する。
「ふむ……市街地フィールドか。GBNでもかなりの数のフィールドがあるとはいえ僕もそれなりに見てきたんだけど、建物のデザインが少し古めだな。こんなタイプのフィールドは初めてだよ」
「ちょっと待ってくださいね、Gキャリアーに装備させてるアーマーのセンサーアイを使って解析を始めます。うーん、換装がダメなのにどうしてパーツそのものの機能は生きてるんだろう」
「ヴィートルーアーマーにも追加アンテナがある、こっちは反対方向へ向かわせる。解析データをリンクさせよう、やり方はわかる?」
「任せてください」
「サラ、その辺りのことを含めて何かわからないかな」
「……少し、わかるかもしれない」
サラはコクピット内で目を閉じて大きく深呼吸する。電子生命体である彼女にとって呼吸は見せかけでしかない。しかし、呼吸することは彼女にとっては周囲を感じることができる手段の一つでもある。取り込んだ空気、あるいはデータの冷たさに彼女は答えを出す。
「この世界はGBNと違ってすごく寒い。GBNは皆の好きって気持ちがあふれててどこに行ってもポカポカして暖かいのに、この世界は凄く寒い」
「サラ君がそう言うということはやはりここはGBNではないということか」
──その通りだ、ビルドダイバーズ
「「「「「!?」」」」」
何者かからの声に驚き、周囲を見回したりセンサーの感度等を確認するビルドダイバーズ。しかし声の主の反応は目視することも感じることもできなかった。
「君がここに来るように招待状を送った人物というわけかな?」
──ああ、そうだ。ようこそチャンピオンクジョウ・キョウヤ。私の望み通りのメンバーを連れてきていただき感謝しているよ
「望み通り……ということは俺やリクがここに来ることはあんたの希望だったのか」
「あなたからの招待状が壊れていたから、チャンピオンが選んだんだけど、結果的にはよかったということなのかな?」
──ふむ、壊れていたのか。それは詫びよう。何しろここは君たちの世界に近く、それでいて遠い世界なのだから。メッセージを届けるのが私には精一杯だったし、こうして君たちを連れてきた箱も完全には出来上がっていないからな。
「箱が出来上がっていない……世界が出来上がっていないのか! だから飛行アビリティやGNドライブが正常に動かない理由はそういうことか!」
「この世界凄く寂しくて、苦しそう。教えて、あなたはどうしてこんな世界を作ったの?」
──いい質問だ、ELダイバー・サラ。その理由は私はガンプラを知らないから、だ
──私は君に近しい電子的な存在であり、現実にはガンプラを作れる体がなくこうしてデータ上で何かを作ることしかできない。故に私はガンプラに込められるものを知らない
──チャンピオンが込めた情熱、リクが込めた好きという思い、ヒロトが込めた可能性
──私はそれを何一つ知らない。故に君にとってはこの世界は息苦しい物なのだろう
謎の声の主は感情がこもっていない声色ながらも、それを聞いたビルドダイバーズは言いえぬ悲しい感情を受け取ることができた。それを代表するかのようにチャンピオンが前に出る。
「君の思いはわかった。それ故に僕たちに『ガンプラを示してほしい』んだね?」
──そうだ
──換装ギミックを取り入れたAGE系ガンダムの集約系、ガンダムTRYAGEマグナム
──奇跡を起こす粒子を手にしたOO系ガンダムと高火力高機動を併せ持ったSEED系ガンダムから生まれたガンダムダブルオースカイメビウス
──ガンプラが持つ可能性を体現しているオリジナルガンダム、コアガンダム
──人々の好きという思いから生まれた全く別の切り口のガンプラ、モビルドール・サラ
──君たちのガンプラの力を、私は見てみたいのだ
「ちょっと、私は!?」
呼ばれなかったことにレイナが抗議すると、声に相変わらず感情はなかったが戸惑っているかのように答えた。
──君はわからない。私は君を呼んだ覚えはない
──君は一体どこから来たんだ? ビルドダイバーズではない? いや、こちらのミスだろうな
──だが、SDガンダムというもう一つのガンプラに拡張性を与えた、プラスガンダム
──その存在自体は私も気になっている。君の力も見てみたく思う
「な、なんか複雑……」
「気にするな、レイナ君。結果的とはいえ君は僕が巻き込んだのだから責は僕にある。それで、力を見せろとはどうすればいい?」
感情が表に出てへこんでいるプラスガンダムをキョウヤは撫でながら問いかける。
──今から私が作ったデータ上で制作したガンプラをこの世界に出現させる。君たちにはそれと戦ってほしい
──そのデータを解析することで私は君たちのガンプラを知ることができるのではないかと推測している。もっとも、現在GBNの再現率は低くいくつかの機能にリミッターがかかっているはずだ
──戦闘と同時進行で解析データからGBNの再現も急ぐ。厳しい戦いとなるだろうが頑張ってもらいたい
「わかった、協力しよう」
皆もそれでいいか──問いかけようとしたチャンピオンは、聞くまでもなく彼と同じ思いを抱いている皆の姿を通信越しに見た。
──では、始めよう。これより──ビルドダイバーズ・チャレンジを開始する
偶然、彼らが名付けたミッション名が同じだったことに一同がクスリと笑みを浮かべると同時に市街地に大量のガンプラが配備される。ヒロトのヴィートルーアーマーとレイナのGキャリアーはそれらの存在を確認し、操るダイバーへ驚愕の事実を伝える。
「なっ、敵ガンプラ50、いや、それ以上の数を確認! 旧キット、SD、HG、MG、PG……うそ、あれガンダマン!? SDガンダムの御先祖様のキットまでいる! 生で初めて見た……」
「エリア外にも大量のガンプラがいる! こちらが感知出来た数だけで俺たちが協力してもらった時のロータスチャレンジの二倍、600以上いるぞ!」
「ま、まさか……声の主さん、もしかしてこれまでに発売された全部のガンプラを作ったの!?」
──そうだが。そうまでしてもガンプラへの思いはわからなかった
「が、頑張ったんだね……?」
キットの幅広さに歓喜し、ミッションの難易度に驚愕し、衝撃の事実に気づき、彼あるいは彼女の熱意に苦笑しながら褒めたたえたりと。様々な反応を返すビルドダイバーズの中、チャンピオン、クジョウ・キョウヤは──燃えていた。
「素晴らしい! 全てのガンプラを作り上げるとは……! 僕もいつか作ってみたいんだけど、どうしても古いキットや限定品は入手しにくくてね、未だにコンプリート出来ないんだ」
「え、チャンプ?」
「だからゲームマスターに依頼してデータ上でのガンプラとして実装できないかという話をしていたんだが、金型が廃盤になっていたりと再現不可能なキットがあってね……」
「……キョウヤさん?」
「それが原因でGBN高難易度ミッション『ガンプラ・ヒストリー』はまだ未完成で完成の日の目を見ないまま没データの奥底に眠っているんだ。それを聞かされた時は悔しくて仕方なかった!」
「チャ、チャンピオン……」
「形はどうあれどこうしてガンプラの歴史へ挑む機会を与えてくれるとは! 感謝する!」
「……愛が、すごい」
──これが噂のチャンプはさぁ……か
少年のように目を輝かせて戦闘準備を整えた彼にはもはや呆れるしかない、けれど。挑むのは『ガンプラの歴史』。そう聞いてワクワクしないダイバーなどいない。いるわけがない。
「リク君、僕と一緒に前衛に来てくれ。急ぎ蹴散らして数を減らさなければ瓦解するだろう」
「──はいっ! 行きましょう、チャンピオン!」
「なら俺は後方で支援します。このメンバーかつアースリィでやるとなればそれがいいでしょうし。ヴィートルーへの換装ができるようになり次第少し前に出ます」
「わかった、背中は任せたよヒロト」
「任せてくれ、リク」
「私はサラちゃんを守りますね。アーマーなしだと何もできないけれど、皆が全力で戦えるように大切な人を守るくらいは、ね」
「ありがとうレイナ。皆、頑張って! 私には祈ることしかできないけれど応援してる!」
ガンダムダブルオースカイメビウスがガンダムTRYAGEマグナムと並び立ち、アースリィガンダムは一歩下がった位置、プラスガンダムがモビルドール・サラを守るように立ってビルドダイバーズの戦闘準備が整った。目の前には古くも洗練されたデザインの旧キットたちが待ち構えている。
「行くぞ、リク君、ヒロト! 後衛の二人もついてきてくれ!!」
「「「「了解!」」」」
TRYAGEマグナムがトライドッズライフルを、スカイメビウスがビームライフルを構えて発射しながら突っ込む。合わせてアースリィが小さく飛翔し、ライフルを構えて狙い撃つ。二人が敵ガンプラと距離を詰めたのを確認すると射撃を中断、シールドをビームライフルにセットする。
「ビームライフルをチャージして強力な一撃を放つ! 合図と同時に散開する準備を!」
「了解した! リク君、それまで引き付けるぞ!」
「はいっ!」
それを見逃さないと言わんばかりにビルの上からSDのガンプラが現れてバズーカを構える。
「やらせないっ! こっちの方が未来なんだよ!」
プラスガンダムのバルカンが火を噴き、SDガンプラを落とす。作りこみの精度は威力に反映されるというGBNの基本は再現できている模様だ。
「あぶないっ!」
サラはプラスガンダムから借りたシールドで奇襲を仕掛けてきたガンプラの攻撃を受け止める。そこへプラスガンダムがビームライフルを打ち込んで仕留める。
「ナイスコンビネーション! さすがリクくんを傍で見てるね、いい感じだよ!」
「うん! だけど油断しないで、もっと来る!」
「大丈夫、こっちが道を開く! 撃つぞ!!」
アースリィのチャージが終わる。そのタイミングでTRYAGEマグナムとスカイメビウスが大きく飛び上がり射線が開く。そこへ強力なビームが叩き込まれて道が開く。
「よし、進むぞ! まだまだガンプラは残っている、戦いはこれからだ!」
チャンピオンが率いるガンプラたちは突き進んでいく。この数では一か所にとどまって防衛し続けるのは難しい。少しでも動きながら相手を削っていくのがいいという判断である。
──なるほど
そのために息を合わせて連携していく姿に、『ガンプラ』を見た。
・
・
・
戦闘時間は間もなく一時間を超えようとしていた。
──換装システム、パッチ完了した
「やった! ノーマルのガンダムじゃもう限界だったんだよ。これでいける──」
「ありがとうサラ、手動リミテッドチェンジを手伝ってくれて。もう大丈夫──」
「プラス・チェンジ、ドッキング・ゴー!」
「コア・チェンジ、アーストゥヴィーナス!」
彼らの戦いから呼び出したモノは『ガンプラ』を知っていく。
──飛行アビリティ、アクティブ
「これで空の連中にも対処できる……! 俺は速く近づく敵をやります!」
「ならば、上を抑えているガンプラは僕が叩く! 頼んだぞリク君!」
ビルドダイバーズは『ガンプラ』を伝えようと、思いを込めて戦う。
──月光蝶、使用可能
「守ってもらった分、今度は私が守ります!」
「俺も支援に上がる! 前衛は少し引いてくれ、立て直す!」
そこには人もELダイバーも関係はない。同じガンプラを知る者として。
──特殊動力、調整完了
「GNドライブの出力が、戻った……! これならトランザムも!」
「残りこそ多いが、大分相手の出力も上がってきた。賭けになるが、畳みかける!」
「トランザム・インフィニティ!」「FXプロージョン!」
『ガンプラ』はこんなに楽しいものだということを、伝えたいから。
──ありがとう、ビルドダイバーズ。だが……。
その思いを伝えることにビルドダイバーズは確かに成功していた。けれど。
「ぐうっ! コア・チェンジ……ヴィーナストゥアース!」
ビルドダイバーズも傷つき疲弊していた。
「ぼ、ボルトアウトッ! ごめん、パーフェクトアーマー!」
作ったモノがガンプラを理解していなかったため強さ事態は大したことはなくても数が多すぎる。
「キャァァァッ!」
「サラッ! くっ、こっちも粒子残量が回復しきってない……!」
ガンプラの歴史はガンダムの歴史。それに挑むことは生半可なことではないのだから。
「トライエイジシステムや必殺技は使えないのか!? あまり頼りたくはないが状況をひっくり返すには!」
──すまない、システムが難解すぎる! だが──もういいんだぞ!?
──私はすでにビルドダイバーズの戦いを見てガンプラを学んだ! これ以上は君たちが限界だ! 私はこれ以上──
「俺たちが傷つく姿を見たくない、か?」
支援機にアーマーを渡していたとはいえ、ボロボロなアースリィからヒロトが答える。
「生憎だけどさ……諦めないのが、ビルドダイバーズなんだよね」
アーマーを失いただのSDガンダムとなったプラスガンダムからレイナが続く。
「私は、知ってるから。リクは、ビルドダイバーズは誰かのために戦える人たちだって」
「だから、何度だって立ち上がって見せる……!」
サラに支えられながら立ち上がったスカイメビウスの瞳がリクの思いに呼応して輝く。
「これはチャンピオンとして、ビルドダイバーズとしての戦いなんだ。負けるわけにはいかない……!」
チャンピオンのTRYAGEマグナムも、まだ倒れるわけにはいかないと残った敵を見据える。 ビーム兵器が強力なダブルオー系キット、防御力が高い鉄血系キット、そしてガンプラ最大クラスのグレード、パーフェクトグレード。たった五機で宇宙世紀やアナザーを駆け抜け、マスターグレードすらも多数屠ってきた彼らでも絶望的な相手。
多くのキットが優先すべき相手としてスカイメビウスに狙いを定めて一斉射撃する。
「不味い、リク!」
「Gキャリアー、間に合って!」
「リク君!! くっ、敵の数が多すぎる……!」
それをビルドダイバーズが助けに行こうとした。誰一人欠けてもこの状況を覆すことは出来ないと知っていたから。リクはそれに対して光の翼を展開して防御に入る。
ここまでの損傷が大きすぎる、持ちこたえられるか──!?
頑張って、リク、ダブルオースカイ!
──持ちこたえてくれ、ダブルオースカイメビウス!
ガンプラを差し向けたモノも、ガンプラを駆る者も窮地を感じていた。
そんな時。一機のガンプラが降り立ち、スカイメビウスを守るかのように立ちふさがった。
あれくらい受け止められるよな、──!
──、これくらい大丈夫! この──―ストライクは伊達じゃない!!
そのガンプラはいくつものビーム攻撃をシールドで受け止め、スカイメビウスとサラを守り抜き。
「──俺、夢を見てるのかな?」
奇跡的な光景にリクが見惚れていると、新たなガンプラが空を飛んでいるのを見た。
いくぞ、──―ガンダム! これならっ!!
スカイメビウスとは違う、別の形の光の翼を生やしたガンダムが翼を飛ばして空中を飛んでいたガンプラを打ち落としていく。
「──綺麗」
サラがそれを見届るのと同じタイミングで、パーフェクトグレードのガンプラに何者かが攻撃を加え始める。
へっ、何がパーフェクトグレードだ! こっちは──―ガンダムだぜ!!
ビーム、キャノン、機雷──様々な武装で攻撃をされたパーフェクトグレードが崩れ落ちた。
「──嘘、嘘、嘘!?」
巨大さゆえに苛烈だった攻撃が止み、レイナが驚いていると鉄血系ガンプラの中心部で爆熱が広がっていく。
行けるぞ、──―バーニング! 俺たちはまだ行ける……その向こう側までっ!!
鉄血機体を殴り壊していくそのガンプラに生き残った鉄血系ガンプラたちが群がっていく。
「──デタラメ、いや……強い!」
短期で抑えきっていたヒロトがその強さに驚愕していた時、同じくダブルオー系ガンプラの中で赤い斬撃が舞い、次々にガンプラが落ちていく。
燃え上れ──! トランザム!!
チャンピオンはそれを知っている。そのガンプラの輝きを知っている。
「驚いた。君が呼んだのかい?」
──いや、呼んでいない! なんだ、あのガンプラは!? なんだ、あのガンプラたちは!?
「なるほど、ビルドダイバーズは知っていたが彼らは知らないか」
「それは少しショックだな」
チャンピオンの元へ一機のガンプラがやってくる。ダブルオー系ガンプラを蹴散らした、ガンダムエクシアリペア2に強化を施し、『史上最強のガンプラ』を目指した傑作キット。
ガンダムアメイジングエクシア。
「私もメイジンとして尽力しているつもりだったが、知っていたのは私の世界と同じ出自の者とシロウだけだった。最も後者は初代の方を知っていたのだがね」
「いや、私は君のことをよく知っているよ──『メイジン・カワグチ』」
機体の通信をつないで現れたのは『ガンダムビルドファイターズバトローグ』の実質的主人公であり『ガンダムビルドファイターズ』のライバル役、「三代目メイジン・カワグチ」。なりきりプレイヤーではない、本物であるとキョウヤは肌で感じていた。
「私のことを知っているのか。となればアニメだったりするのか?」
「ああ。ということは彼らと出会って既に知っているのか?」
「イレイ・ハルやプラモ狂四郎の活躍を漫画に見ていれば察するさ。ここにいて戦っているのは皆いろんな世界から来たガンプラなんだろう? 君のAGE系ガンダムのカスタマイズ形式は初めて見た。いいガンプラだ、そちらの世界で名のある実力者であるとみた」
「クジョウ・キョウヤ。ガンプラはガンダムTRYAGEマグナム。こちらではチャンピオンと呼ばれるほどの実績を持っている。あなたには劣らないつもりだ、メイジン」
「なるほど、それは期待できそうだ。君の仲間たちの元へはすでに私がここで出会った仲間たちが向かっている。心配することはない」
二人の強者は互いにその姿を確認する。
「お前のガンプラもやるじゃねぇか、リク! こういう時じゃなかったら戦ってみたかったぜ!」
「単純なミキシングじゃない、ガンプラをどうしたいのか伝わってくるいいカスタマイズだよ!」
「それは君たちも一緒だよ、レイジ、セイ! 気を抜いたら置いて行かれそうだ……!」
スタービルドストライクと、ガンダムダブルオースカイメビウス。並ぶはずのない二機が共に舞い踊るかのように空を駆け、支配していく。
「ifsユニットを展開する、合わせられるかいサラちゃん!」
「はい、やってみます、ハル!」
それをビギニングガンダム30とモビルドール・サラが支援する。
「俺たちのプラモスピリッツ見せてやろうぜ、ちびっこガンダム!」
「ちびっこじゃない、SDですよプラモ狂四郎さん!!」
パーフェクトガンダムが組み付き、プラスガンダムが支援することでデカ物を落としていく。
「俺が支援する、遠慮せずに暴れてくれ、セカイ!」
「おうっ! お前がいると頼もしいぜヒロト!」
半壊しつつもヴィーナスアーマーとアースリィガンダムが連携し、トライバーニングガンダムの攻勢を加速させる。
戦況は間違いなく優勢に向かっていた。
「ダブルオー系ガンプラはもういないはずだ。他のガンプラも彼らに任せていいだろう」
「となれば──我々はあいつをやるべきだな」
最奥で待ち構えている巨大なガンプラ。ガンダム史上最大サイズのメガサイズをチャンピオンとメイジンは見据え、互いのガンプラが飛び立つ。
「一気に仕留めるぞ、チャンピオン!」
「望むところだ、メイジン!」
青と赤。二機の機体が描く光を止められるガンプラなど、ない。集うはずのないガンプラたちの戦いは、瞬く間に終わりを告げる。なぜなら、たった五機でも戦い抜いたビルドダイバーズと、駆け付けたガンプラ達──あえて呼ぶなら、ビルドファイターズの力は勝るとも劣らないのだから。
──これが、ガンプラ。これが、情熱。これが、好き。これが、可能性……!
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「……あれはなんだったんでしょうね、チャンピオン」
「私たちを呼んだ存在もわからないそうだ。推測では私たちの強い思いに呼応して異なる世界のビルダーが駆けつけたんじゃないかと思っている」
戦いが終わり、ミッションが終了したビルドダイバーズのチャンピオンとレイナは動くガンダムを眺めていた。リクは疲れた様子のサラをガンダムベースに設置されていたELダイバー用の設備でメンテナンス。ヒロトは皆のガンプラに異常がないか点検を買って出た。
「そういえば私たちを呼び出した存在ですけど、プラモ狂四郎さんが「ホビートピアのマザーコンピューターみたいなやつなんじゃないか」って言ってました。どこかの世界のガンプラを作るコンピューターが私たちを呼び出したんじゃないかって」
「なるほど、その心は?」
「あそこで戦ったどのガンプラもゲート跡がそもそも存在しなくて色も設定通りに塗られすぎているんです。そんなガンプラって機械的過ぎません? そりゃあ情熱も好きも可能性もありませんよ」
「人の想像力を加えてこそそれらは生まれる物だろうしね。ガンプラを使ってポーズを決めたり、仲間と見せ合ったり、改造して自分好みにする。それがガンプラなのだろう。私たちはそれをうまく伝えられたと信じているよ」
「同感です。ただもう二度とやりたくないですけど! 伝説的な人たちに会えたとは言えしんどすぎです。メリットと疲労が見合わない……」
「……実はバトルデータがそのまま残っていてね。運営に提出して『ガンプラ・ヒストリー』の実装をかけあうつもりだ」
「嫌です! 二度とやらない! ビルドダイバーズは今日で解散です解散!!」
「あははは。ちなみにGBNにまた危機が迫った場合なら例外かい?」
「……考えておきます。それじゃ、そろそろメンテナンスも終わっただろうし行きましょうか、チャンピオン」
にっこり笑ってガンダムベースに向かうレイナ。その姿を見てチャンピオンは声をかける。
「レイナ。一つ質問、いや、推測がある」
「なんでしょう?」
「君は──ビルドダイバーズに、存在していなかったんじゃないか?」
空気が凍ったのを感じる。レイナは首をかしげていた。
「僕らを呼んだ存在は「君を呼んだ覚えはない」と言い、「君は一体どこから来たんだ?」「ビルドダイバーズではない」と言っていた。今日のバトルで「プラモ狂四郎」や「模型戦士ガンプラビルダーズG」、「ガンダムビルドファイターズ」、「ガンダムビルドファイターズトライ」、「ガンダムビルドファイターズバトローグ」の人々に会ってその疑問に答えが出てきた」
僕らの世界、名付けるなら「ガンダムビルドダイバーズ」の本来の世界に君は存在していない。
「それ故に君を呼んだことが誤算だったんじゃないかと見ている。だとすれば、君は何者なんだろうか? ふと、それが気になった……あくまでも推測の話だけど」
「……あははっ、おかしなこと聞きますねチャンピオン」
「私が本来の世界に存在しなくても、少なくとも私が「ガンダムは伊達じゃない」と叫んだこの世界には存在している。それって、誰かが私にここにいてほしいと願ったからじゃないんですか?」
「大切なのは私がいるかどうかじゃない。私がどう生きるか、何を思うのか、何を伝えるのか。少なくとも私は、「初代ガンダムが大好きなレイナ」は今の生き方に満足してますよ」
「……そうか。変なことを言ってしまいすまなかった」
「ふふっ、じゃあお詫びの気持ちでちょっとお願いがあるんですが……」
レイナの提案。それはとあるガンプラを制作することで、その費用を出してほしいということ。キスギ・キョウヤはその提案にのっかり、ガンダムベースへ向かって目的のキットを探し始めた。
「MGパーフェクトガンダムを作る、ですか?」
ガンダムベースに備え付けられたガンプラ制作スペース。そこのテーブルにはマスターグレードのパーフェクトガンダムの箱が並べられ、ビルドダイバーズの五人が取り囲んでいた。
「今日のバトルの思い出にね。皆で作業を分担しながら作れば閉店までには間に合うと思うんだ」
「今の時間は……うん、門限には間に合うかな。俺ガンダムの手足やりますね。ダブルオースカイでその辺りを結構手を加えてたから慣れてますし」
「俺はそれならアーマーを担当するよ。コアガンダムはアーマーの専門家だから」
「ガンダムの胸と腰で。ディテール多いけどガンダムの魅力ってここだし、腕が鳴るよ」
「僕はバックパックと武装をやろう。ギミックこそ少ないけれどガンプラの見栄えを左右するところだからね」
作業を分担し、ランナーと説明書を広げて各々ニッパーなどの道具を握るが、そこに爆弾が投下される。
「ねえ、頭は誰が作るの?」
サラの純粋な疑問。それに答えたのは──
「「「「俺[私](僕)が」」」」
問い掛けた彼女を除くビルダー全員であった。
「四肢だけじゃ作るの物足りなくて。俺がやりたいです」
「悪いけど、ガンダムを作るのならあまり譲りたくない」
「胸と腰作るんだから私に任せてくださいよ。ちょうどいいし」
「本体にも多少は関わりたくてね。ダメかな?」
全員が全員火花を散らす。普段なら譲っているのだが、長いバトルのせいか皆どこかすさんでいた。ガンプラバトルをするには時間が足りないし、筐体も借りれない。ここは……
「じゃんけん……」
「「「「ポンッ!」」」」
全員まさかのグー。あいこで──
「勝っちゃった」
「えっ、サラちゃん参加してたの!?」
サラの手は平手。つまりパー。サラの勝利である。
「サラが頭部作るの? 大丈夫かな……」
「現実で作るのは初めてだけど、リクやアヤメ、皆がガンプラ作るのを見てきたし大丈夫」
「……細かいところは教えてやればいいんじゃないかな」
「そうだね。講師役には事欠かないメンバーだ。時間もないし始めよう」
人間四人、ELダイバー一人。同じ目的のために集い、共に戦ったビルドダイバーズの最後の仕事、「ガンプラ作り」を開始した。ガンプラバトルはガンプラ作りで始まるものだから、こういった終わり方もありなのかもしれない。
そんなわけで、GUNDAM FACTORY YOKOHAMAのガンダムベースにはビルドダイバーズの製作した「パーフェクトガンダム」が展示されている。私たちが生きている世界にはないが、もしかすると誰かが作って展示することがあるかもしれない。
「──結構いいな、このパーフェクトガンダム、だっけ」
「それで合ってるよ。ガンダムは同じに見えるけど、作る人の個性が出るんだ」
「これは5人で作ったから5人の個性が混じっているが、それがお互いの個性を伸ばしあっている。ガンプラは自由だが、作り方においてもそれは例外ではない」
「直前に皆でガンプラバトルで熱い時間を過ごしたっていうのもあるんだろうな。一緒に戦えば心を合わせられるっていうのは俺も知ってるし」
「ガンプラは作っても戦っても楽しい……前から知ってたことだけど、やはり奥が深い」
「その通り! それにしても、ガンダムの魅力は俺が作っていた頃から色褪せてないなぁ」
きっと、これを見たり作ったりした人がさらなる時代を作っていくんだろうぜ。
それはどんなガンプラでも同じことなのだ。
きっとあなたの目の前にある、もしくは店で偶然目にしたガンプラでも同じ。ガンプラを作ることは、未来への想像力を磨き上げること──っていうのは、言いすぎじゃないはず。