Betrayal Squadron   作:胡金音

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後書きがくっそ長いです。
(次回12月29日更新予定)
↑間に合いそうに無い件(12月25日)


十七話 邂逅“下”

 茂みを掻き分ける音はいよいよ傍までやって来て、音を起てていた影が木の向こうから姿を現した。妙高はその姿を認めると向けていた機銃を下ろした。

「羽黒!無事でしたか?」

声を掛けられた影が驚いて動くのが音と空気の動きで分かる。

「姉さん!?大丈夫だった?」

羽黒の声を聞いて無事を確認した妙高は緊張した面持ちを少し和らげた。

 

 

 妙高は別行動中に飛来した偵察機が55号大隊のものであった事と、そこから飛行場の襲撃が予想される事を羽黒に伝える

「それなら早く提督に連絡しないと」

「駄目です」

無線機に手を伸ばした羽黒を静止しながら妙高は言った。

「無線を使っては55号基地がこちらの陸戦隊の動きに気付いてしまいます。飛行場近くに住む一般住民を巻き込む事になりかねません。なんとかして武力衝突が起こる前にあちらの基地司令に会ってを止めていただかなくては・・・」

「それなら早く行きましょう!」

「待って・・・」

妙高は少し考えて羽黒に向き直る。

「羽黒。あなたは急いで提督の下に戻って陸戦隊の方々を飛行場に送ってもらう準備をしていただくよう伝えて下さい」

「姉さんはどうするの?」

「私は予定通り55号大隊の司令官に会いに行きます。・・・大丈夫、指揮官の殆どが不在のまま指揮を執っているのならそれが出来る場所は限られます。基地の構造も出撃前に確認済みですよ」

「・・・分かりました。では、気をつけて」

「ええ、羽黒もね」

そして2人はそれぞれの目的地は自分の役割を果たす為に向かった。

 

 

 「そう。分かったわ、引き続き警戒を続けて」

10日ほど前には本国から来た指揮官が集まっていた55号艦隊基地の指揮所、通称指揮室では今や実質的な離反軍の指揮官となった大端が加賀からの報告を受け終えて通話機を台座に戻した。数十人の指揮官や通信係を収容するこの指揮室だが大端以外に人の姿は無い。電灯が節電の為に一部しか点けていない所為で半分暗い指揮室に閑散とした印象を与えたいた。

「この月齢じゃ哨戒の効果も薄そうか・・・でも、一端は南海岸沖の艦隊が本隊と見て良さそうね」

大端は一人呟くと、卓上に広げた泊地の地図が丸まらない様に角にと置いた木箱の中から敵艦隊を示す船形の駒を手に取った。

 春島の南海岸線沿いに展開するのは鳳翔を旗艦とし周囲を古鷹ら重巡艦娘で固めた主力艦隊、それにに向かい合うように本部艦隊を並べる。地図上には他に艦隊ごと移動しながら哨戒を続ける加賀を始めとした空母部隊に、飛行場奪取に向かった陸戦部隊を示す駒が並んでいる。

 「それにしても・・・」

大端は先程の金沢との会話を思い出した。

「司令が処分に反対していた・・・?そもそも司令が撃たれてまで離反の汚名を着るような事を?」

自分なら気付きそうという金沢の言葉を信じてみたものの全く予想がつずに大端は頭を抱えた。それに“前の睦月達”、大端が初めて指揮を任された艦娘の処分に当時から司令であった金沢が関わっていた事には変わらない。大端の疑問は増えるばかりだった。

 そんな時、大端の背後でドアノブが回った。離反中の、それも本部の艦娘と一触即発の状況にある今、ノックもせずにここを訪れる人間は限られる。音に気付いた大端は思わず護身用に身につけたホルスターに手を添えながら半身を向け、思いもしなかった人物の姿に釘付けになった。

 

 

 「こんばんわ。離反を宣言された金沢基地司令を伺って参りました」

無断で入室した人物は大端に気付くとその双瞳を向けて用件を彼女に伝えた。

「金沢司令はいらっしゃいますか?」

大端が殆どの人手を飛行場の制圧に向けた為、殆ど無人になっていた55号基地への侵入を容易く果たした妙高は丁寧な言葉遣いで大端に尋ねる。

「・・・司令は仮眠中よ」

まさか負傷による発熱で寝込んでいるとは言えず、咄嗟に答えてから大端は口を噤んだ。

「同じ国に属する艦娘同士がにらみ合っている様な非常時に司令が仮眠中、ですか」

大端は表情を苦くして押し黙る。

「では今、そちらの艦隊を指揮しているのは貴女ですね?」

「・・・本部の艦娘であるあなたが何の用かしら?」

 質問を無視された事を気にした様子も無く妙高は大端の疑問に答えた。

「憲兵隊の方からの報告で離反の際に金沢司令が艦娘に撃たれた事は知っています。貴女方は一枚岩という訳では無いようですね。もし、貴女が今の状況を望まないのであれば本部には対話する用意があります」

「少なくとも私は大人しく従うつもりは無いわよ」

妙高の話には聞く耳を持たずに大端は答える。

「正直なところ、夜間に艦娘が艦載機を飛ばすのは盲点でした。しかし航空戦力で夜襲を掛ければ勝ち目があるとお考えですか?目的は存じませんが仮に今の状況を打破出来たとしても本国に貴女方の居場所は無くなります。それでは貴女の目的は果たせるのですか?今ならまだ引き返せます」

「そういう訳には・・・いかない」

大端は半ば自分に言い聞かせて言った。

「そんなに頑なに、お味方に銃口を向ける道を選ぶのは何故なのです?」

 少しの静寂の後に大端は口を開いた。

「・・・泊地長の秘書艦のあなたなら、全く心当たりが無いという事はないんじゃない?」

「・・・どう言う事でしょう?」

妙高は大端の話を全く理解できずに本心から尋ね返す。

「知らないのなら教えてあげる。泊地長はあなたの知らないところで私の艦娘を沈めたって事よ」

「それは、深海棲艦との戦闘で、という事ですか?」

「まさか。艦娘の解体の手間を省く為に水面下で戦闘に見せかけて処分したのよ」

 

 

 「そんな事・・・提督に限って、有り得ません!」

大端から事のあらましを聞いた妙高は始めて口調を強めた。

「別に無理に信じろとは言わないけれどね。でもこんな重大な事、泊地長が全く知らないって言うのはかなり無理があるんじゃないかしら?」

「それは・・・」

「あなたは艦娘になって長いわよね?今までに一度も、奇襲や事故で呆気なく艦隊が全滅した知らせを聞いた事は無かった?本国の基地ではちょっとした噂になっているみたいだけど?」

 「・・・・・・一度、提督に確認させていただけます」

妙高はかなり狼狽して呟くように言うと自身の無線機を手に取った。

「こっちの通話機、使っていいわよ。モールス信号越しだと話しにくいでしょう?」

大端は妙高が頷くのを見て席を譲り、本部の通信室経由で泊地長の富山と通話をする手筈を整えた。間も無く通信機にある本部と記されたランプが点灯する。大端が本部の通信室に富山と直接会話を繋ぐよう依頼して待つ事数秒、妙高の目の前にある通話機は富山の乗る砲艦の指揮所へと繋がった。

 

 

 「泊地長。別行動中の艦娘、妙高から通信が繋がっています。通信室までお越し下さい」

本部艦隊の海上指揮所となっている旧式砲艦の艦橋で状況を見守っていた富山は部下に呼ばれて砲艦の通信室に向かった。

「こちら富山だ。妙高、進歩はどうだ?」

機器が所狭しと並べられた艦内の狭い通信室に着いた富山は人払いをして通話機を手に取った。

『提督・・・』

「・・・どうした?何か不具合があったのか?」

富山は妙高の思い詰めた声を聞いて思わず声を潜めて尋ねた。

『いえ、55号基地への潜入、及び離反艦隊の指揮官との接触は成功しました』

 「そうか!では投降の目処がたったか!」

一先ずの安堵とその後に続く妙高の報告を予想して富山は明るい声で話した、が妙高の報告は彼の予想に反するものだった。

『今・・・私は55号基地の通信設備をお借りしています』

「ん?・・・ではこの会話は他の船舶からも傍受出来るという事か?」

55号艦隊の離反は公式に民間へ発表されていない。富山の表情に雲が差した。

『海底ケーブルと本部の通信室を介しているのでその心配はありません』

「では何があった?」

『提督、一つだけ確認したい事があります』

 「今、か?構わんが・・・」

疑問を浮かべながら富山は応じる。

『提督が、艦娘の処分を黙認されたというのは本当ですか?』

富山はすぐには答えなかった。そして数秒の沈黙の後。

「・・・処分?何か大きな失敗があった場合の降格の事か?」

『違います!通常行うべき解体の手順を踏まずに艦娘―――、』

 富山の直ぐ近くでかなり大きな爆発音がして振動が砲艦を襲った。旧式の砲艦が軋む金属音を発てて富山は近くの手摺に掴まった。数秒遅れてけたたましい警報音が砲艦中に鳴り響く。ブザーが鳴り、富山は衝撃で途絶えた通話機から耳を離した。

[緊急警報、緊急警報。春島方面より発射されたと思しき雷撃により被害発生。総員、第一種臨戦態勢へ移行せよ。繰り返す、春島方面―――]

一通り放送を聞いた富山が通話機に耳を戻すと回線は復活していた。

『提督!?今の音は何です!?』

「悪いが続きは後だ。お前も直ぐにこちらに戻れ」

『提督!一体何が・・・』

 富山は通話を終える操作をして通信室を後にし、廊下で待機していた通信士に部屋を出た事を伝えると詳しい状況を確認する為に艦橋へと急いだ。

 

 

 55号基地の指揮室で通話が途絶えた事を示す低い電子音を聞いて妙高は通話機に繋がるヘッドホンを机の置いた。

「どうだった?」

横で通話の様子を見守っていた大端が妙高に尋ねる。

「いえ、それが・・・良く聞こえませんでしたが爆発音がして、通話どころではなくなってしまったようです」

「爆発音?」

「・・・攻撃の指示をされたのですか?」

「うちの艦娘には本部が仕掛けて来ないのなら一切攻撃しないように伝えているわ」

「では、どなたかが独断で攻撃を始めた可能性はありませんか?」

「・・・あなたね。私達の目的は話したでしょう?どうして攻撃を仕掛けてこない本部艦隊を相手に・・・!」

妙高と話している最中、通信機の着信と書かれたランプが灯り、大端は直ぐに回線を繋げた。

 「こちら大端。どうぞ」

片耳にだけ手で押さえたヘッドホンを正しく付け直しながら大端は言った。

『鳳翔です。本部艦隊より砲撃を受けています、応戦続行の許可を!』

「本部からの砲撃?それは確か?」

大端が確認するのを聞いて、妙高は驚きつつも通信機の前の席を譲った。

『はい、既に被害が出ています』

「・・・了解、応戦を許可する。健闘を祈る」

それだけ伝えると大端は通話を終了した。

 「ああ・・・始まってしまったわね」

大端は諦観した様子で妙高に告げた。

 

 

>>>To be continue【18話 砲火】

 




 コンティニューのスペルミスにようやく気付きましたoz
あれだけ話題にしてたのに今まで全く気付かなかったという・・・いや、だって“コンテニュー”って“ニュー”って付いてるんだから“new”だと思うじゃないですか!?・・・思わないですか、そうですか。

 どうも、ご無沙汰しております。英語の成績が1だったB.S.の筆者、胡金音です。気付けばB.S.も17話です。話数なんて話の区切り方次第で変動するものなんですがね。
 さて、今回はお知らせしなければならない事があります。それはこの作品はあと数話を持ちまして終了とさせていただく事です。終了するに至った理由をここに書き残して置こうかと思います。

 まず、この作品は筆者にとって始めての2次創作作品という事もあって以前から話していた通り10話程で終える予定で、1話を投降する時点で全体のあらすじを決めてから書き始めた。しかし程なくしてその内容が10話分で収まる内容ではないという事に気付きました。初の作品でいきなり長編を書く予定が無かった筆者はその焦りから殆ど何の前置きもなしに艦娘を沈めてしまうという、2次創作にあるまじき失態を犯してしまいました。その後、艦娘が沈む際に改善を試みましたが結果としてキャラクターの扱いに大きな差が生まれてしまいました。今後執筆を続けるに当たり一部のキャラクターに益々不遇されている印象を与える事になり、延いては読者の方々に不快感を与え続けるのではないかと考えました。

 次にこちらも以前お話していましたが、この作品の書き終えた後に執筆する予定でいる作品の完成が当初の予定より大幅に遅れている、といった理由が挙げられます。取り繕っても仕方ないので簡潔に言ってしまうと、この作品は自身も楽しませていただいている艦隊これくしょんの設定を使って執筆の練習をしよう、というものでした。そんな作品が予想よりも多くの方に読んでいただき、一人で舞い上がった筆者はここまで作品を進める事が出来ました。
 それでもこの作品を終了するのは、実に身勝手な理由ではありますが次に予定している作品が出版社の賞に応募しようと考えているものだからです。今後この作品を書き続けていると筆者が社会人になり応募作品の制作に打ち込む事が出来る時間が短くなってしまうのではないかという考えがこの作品を終了する決定の一端を担う事になりました。筆者が一つの事に集中出来ない性分である為“小説執筆”においては出版社への応募作品に集中したいという我侭でもあります。

 最後にこの作品が1次2次を問わずに自分にとって実質的に初の執筆だった為に設定が荒く、当初のあらすじも後々読み返した際に分かりにくい書き方であった、上記にあるキャラクターの扱いに関して改善を試みた際に当初の設定を多数変更した、等の為に作品内で致命的な矛盾が発覚し、その綻びの修正に限界を感じ始めたという事が理由に挙げられます。

 以上の理由からこの度あと数話を持ちましてBetrayal Squadronを終了させていただく事と致します。今までのご愛読ありがとうございました。そして大きな区切りとなる終話までお付き合いしていただけると幸いです。あと少しの間とはなりますがBetrayal Squadronをよろしくお願い致します。

2015/09/29
胡金音
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