Betrayal Squadron   作:胡金音

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いつから本編に入っていると思っていた?と言わんばかりのオリキャラ紹介回。ここから読んでもたぶん大丈夫。

※注意!(始めにお読み下さい)
・この作品には原作のゲーム設定が崩壊しかねないオリジナル設定を含む事山の如しです。
・やっぱり、キャラクター崩壊も含みます。予めご了承下さい。
・後で「この作品を呼んだせいで【艦これ】が楽しめなくなった!」や「こんなの俺の嫁じゃねぇ!」等のクレームについて作者は責任を負いかねます。自己責任でお願いします。

・少しでも皆様の暇つぶしになれば作者は幸せです。

[追記]
ご質問頂いた点の改善の為、少し台詞を増やしました。2014/6/30



五話 古兵の疑心

 「よお、大将!・・・いや少将だったな。早かったじゃねぇか」

 夕方、本部の更衣室を借りて着替えた金沢は会社員の様なスーツ姿で夏島のある邸宅の前庭で壮年の男に出迎えられていた。小柄だがしっかりした体つきで白髪、青い目と日に焼けた肌が印象的なその男は島の住人と同じ様なラフなYシャツと短パン姿だった。西洋人らしい高い鼻、東洋人らしい顔の形がちぐはぐな印象を与える。

 「こんばんは、町長。今日もお世話になります」

「良いって事よ。お前さん達、日本軍がトラックに陣を構えてくれたお陰で俺みたいな混血が町長にまでなれたんだからな!それよりこんなに早く来たって事は、仕事は上手くいったのか?」

「はい、お陰さまで。2日掛りの交渉になるかと思っていたのですが思いの他早く受け取って頂けました」

「そうかそうか。よし、じゃあ今夜は飲むぞ。仕事の成功を祝って乾杯だ!」

 夕食にはまだ早い時間だが独身の男に飲酒を咎めるような人間は居ない。夏島日本人町の町長を勤めるフクイに招き入れられて、金沢は邸宅の玄関を潜った。

 

 

 太陽が邸宅の南国らしい白色の壁を紅く染めていた。小高い山の中腹に建てられた邸宅の中庭を囲む三方の渡り廊下に壁は無く海からの風が吹いてる。金沢は中庭に儲けられた東屋のテーブルに案内された。早速飲めと言わんばかりにフクイは給仕にビールとジョッキを用意させる。

 「どうした?遠慮するな」

「乾杯の前に用意して頂いた物を頂けますか?」

「食えない奴め」

「酒が入ってからでは忘れそうなので」

「お前は酒で酔うタチだったか?」

フクイは鼻を鳴らしつつも給仕に命じて“それ”を用意させた。

「では、頂きましょうか」

「ったく、乾杯!」

東屋にジョッキがぶつかる音が響いた。

 

 

 「で、そんなもの用意させてどうすんだ?」

フクイが休んでいるように命じたので給仕は居ない。周りに会話を聞く人間が隠れられるような場所もない。金沢は黙々と出された料理を口に運び続けていた。

「密漁の報告を怠る様な町長に、答える必要は無いってか」

そう言ってフクイはビールを一気に飲み干した。金沢が箸を置いて一息ついた。

「ああ、別にお教えしても構いませんよ。訓練に使う海域を決めるのに役立てるだけですから」

「すぐ分かるような嘘吐くんじゃねぇよ。それならわざわざ一般人に紛れてスーツなんざ着て取りに来なくても、堂々と軍から使いを遣せば良いだけの話だろ」

「まあ本当の理由は秘密です」

 「・・・ほんっとおめぇは分からねぇな。軍のエリートコースまっしぐらの人間が、上にこそこそと密漁船の漁場を調査するなんて。摘発すれば手柄になるだろうに」

「軍に密漁の報告をしない代償に密漁者から利益の一部を受け取っている人に言われることではありませんね」

「けっ、まったくだ。そもそもあの時、おめぇさんなんか酒場に来なけりゃこんな事には・・・おっといけねぇ、もうこんな時間か。今日泊まる事はメイドに伝えてあるからゆっくりしてってくれ」

会話の途中でフクイは腕時計を見て席を立った。

 「お出かけですか?」

「その酒場で女の子と待ち合わせだ」

「・・・そうやって女遊びに励んでいるから結婚出来なかったのでは?」

「うるせぇ。俺もおめぇぐらいの時は余裕ぶってたよ。そんな事言ってられるのも今のうちだ」

フクイは振り返り際に言い放ち、別れを告げて東屋を出て行った。

 

 

 金沢がフクイに出迎えられていた頃。基地の女子寮の一室では青葉がベッドの下段で意気揚々と私服に着替えていた。二段ベッドが2つ、左右の壁に並べられている一般的な寮の部屋、入り口の向かいの壁際に置かれた机に向っていた古鷹がベッドの角から顔を出した。

「青葉ぁ、やっぱり止めようよ。基地司令が居ないからって・・・それに私、そんな自信ないしさぁ・・・」

「大丈夫!古鷹ならやり通せます!」

 着替え終えた青葉はそう言いながら薄手の布団を丸めてタオルケットの下に潜らせた。そして形を整える。ベッドにタオルケットを被って眠っている人間一人分の膨らみが出来た。

「そう言う問題じゃ・・・」

「じゃっ、後はお願いします!」

一日の訓練後。どこにそんな体力があったのか、青葉は寮を後にして何処かに出かけていった。

「・・・」

寮の部屋には途方に暮れる古鷹と、夕食の時間になったら起こしてと言ったっきり眠っている加古が残された。

 

 

 2200。毎晩この時間には就寝前の点呼が行われる。古鷹は寮の自室でベッドの上段に座って本を読んでいた。が、先程から頁は一向に進んでいない。やがてしおりを挟むと本を持ったままベッドに倒れ込んだ。

(駄目だ。集中できない・・・)

 数時間前の演習後、シャワー室で汗を流していると青葉が古鷹に話しかけてきた。

「今日、町に行くので点呼の代返お願いします!」

青葉はたまに基地を抜け出して夏島の繁華街に出掛ける事があった。そしていつもその“誤魔化し”を同室の古鷹が担当していた。

(何度やっても嘘は慣れないなぁ・・・)

 沈んでいく加古を引っ張り上げながらの入浴、船を漕ぐ加古を突きながらの夕食、それと青葉の脱走の手伝いが重なった日には・・・古鷹の疲労はピークに達する。

(だめ・・・このまま寝そう・・・)

古鷹の疲れが心地よさに変わっていく。眠りに落ちていく古鷹をノックの音が現実に引き戻した。

 「全員居るぅ~?」

古鷹が返事をする前に戸が開かれて、一部の人間の間でお局様と呼ばれている大端中佐がショーヘアを揺らしながら現れた。基地で唯一の女性将校ということもあり女子寮での点呼はすべて彼女の仕事となっている。スカートタイプの軍服を好む彼女だが今日はパンツスタイルだった。

「・・・ふぁい」

普段なら返事の前に戸を開けた事について言及する古鷹だったが今日は欠伸をしながら返事をするだけだ。

「あれ?加古と青葉は?」

大端が埋まっているはずの加古のベッドが空である事と青葉の返事が無い事に気付いて古鷹に訊ねた。古鷹の眠気が一気に吹き飛ぶ。

 「っ・・・加古はさっきベッドと壁の隙間に落ちたけど起きませんでした。青葉はー・・・今日は三ツ屋提督の演習メニューが多くて疲れたって言って・・・寝ちゃいました」

古鷹は心の中で大端に謝りながら言われた通りに青葉の言葉をそのまま伝えた。

「そっか、でも頭からタオルケット被ってると暑くない?」

そう言いながら大端は青葉に掛けられた、正確には青葉が用意した“身代わり”に掛けられたタオルケットを正そうと手を延ばした。あわてて古鷹が引き止める。

「あっ、あの!訓練で疲れて、まぶしくて寝られなくてって言ってたんでそっとしておいたほうがっ・・・!」

「あー、今日は少将居ないから、三っちゃん張り切っちゃったかー」

「はは、三ツ屋提督は何と言うか・・・古風な方ですもんね」

なんとか大端を引き止める事に成功した古鷹だったが、微笑ましそうな表情を向ける大端から目を逸らして答えた。

 三っちゃんこと三ツ屋少佐は最近この基地に着任した提督で青葉の指揮官を務めており、海軍大学時代の大端の後輩である。基地司令の金沢が居ない日に加古がいつもより眠たがるのは、普段の金沢の訓練は艦娘に甘すぎると言って彼がいつもより厳しい訓練を課す事に起因する。

 「だよねー、頭固くて厳しいもんねー。昔、うちの爺様から聞いた曾爺様の話そのままだもん。三っちゃんが基地司令になった日にはブラ鎮確定ねー」

大端がブラック企業を捩った隠語で三ツ屋を揶揄した。

「さすがに曾お爺様は可哀想ですよ。三ツ屋提督ってまだ40代ですよね?」

古鷹が大端の冗談に顔を綻ばせながら訊ねた。大端が苦笑いを浮かべながら答える。

「・・・あー、三っちゃんまだ29よ」

「へ?」

「古鷹ちゃんも結構きつい事言うわねー。・・・あ、まだ点呼の途中だった。じゃ、全員居るということでっ、お休み!早く寝なさいよー」

大端は点呼を続ける為に部屋を出て行った。

「はぁ・・・私も寝よ」

古鷹はベッドの上段から身を乗り出して電灯の紐を引いた。明かりが豆電球だけになり薄暗くなる。

「・・・三ツ屋さん、まだ20代だったんだ」

そう独りごちた古鷹はまもなく眠りに落ちた。

 

 

 「鳳翔さーん。居ますかー」

点呼を取る大端にとっては最後の一人、いつも通り大端は返事を待たずに寮長室を兼ねる一人部屋の和室の戸を開けた。

「点呼ですか?お疲れ様です。私で最後ならお茶でも如何です?」

普段の着物と同じ模様の浴衣姿の鳳翔は落ち着き払って大端を迎えた。卓袱台にはすでに湯飲みが2つ用意されている。

「頂きますっ!」

大端は靴を脱いで用意された座布団の上に陣取った。

 「青葉さんは行きました?」

お茶を注ぎながら鳳翔が訊ねた。大端は何度か瞬きをしてから答えた。

「・・・行ったみたいですねぇ。古鷹ちゃんが頑張って嘘ついてて面白かったですよー。あ、冷たいお茶で、氷もお願いします」

「古鷹さんには後で何かお詫びを考えておかないといけませんね。はい、氷入りですね。うーん、古鷹さんが好きな物って何かしら・・・?」

「たぶん青葉ちゃんがおやつでも買ってきてくれますよ」

 氷入りのお茶はすぐに用意された。

「はい、どうぞ。粗茶ですが」

「さっすが鳳翔さん。用意が良い」

大端は礼を言って冷たいお茶が入った湯飲みを受け取った。

 

 

 「それにしても吃驚しましたよ」

一息ついて大端が話し出した。鳳翔も大端の向かいに湯飲みを置いて座った。

「青葉ちゃんが時々基地を抜け出して町に行ってるのは知ってましたけど、わざわざ私に許可を取りに来るなんて・・・。酒保に無い日本酒を買ってくるって事で取引しましたけど」

それを聞いて鳳翔は可笑しそうに笑った。

「そんな事お願いしたのですか?」

「だってー基地司令、提督陣には厳しいんですよー。頼んでも酒保のお酒増やしてくれないし、色仕掛けも効かないし・・・男好きな訳じゃないですよね?」

「金沢提督の下で働いて5年になりますけれど、そんな話は聞いたことありませんよ。変わった方なのは確かですけれどね」

 「まあ、それはそうと早く教えて下さいよー。青葉ちゃんが脱走した理由」

大端が鳳翔の顔を覗き込んで言った。

「何の事ですか?」

「食堂の製氷機まで取りに行かないといけない氷まで用意しておいてとぼけないで下さーい。それに青葉ちゃんが脱走した事知ってたんでしょう?」

「大端中尉が点呼後に喉を渇かせて来るのを見越して氷を取りに行ったら青葉さんと鉢合わせしただけですよ?」

「・・・」

「まだまだですね」

鳳翔が朗らかに笑う。

「・・・まだまだ若輩者ですから」

 「ふふっ・・・まだこちらには伝わっていませんが、内地の艦娘達の間でこんな噂が流れているのをご存知ですか?」

途中から鳳翔の目の色が変わった。

「ご存知の通り、艦娘は内部艤装と呼ばれる艤装の一部を体に埋め込むことで対応した艦種の武装を扱う事が出来ます。ですが兵装が進化するにつれて、いずれは内部艤装との互換性の許容を超えてしまいます。ここまではご存知ですよね?」

「・・・ええ。知ってるわ」

鳳翔の表情の変化に気圧されて大端は姿勢を正して答える。

 「では艦隊の標準装備が互換性を超えてしまった時、私達はどうなると思いますか?」

「それは解体されて一般人として余生を・・・。あれ・・・?」

大端は海大で聞いた話をそのまま答えようとして、途中で首を傾げた。

 「気付かれましたか?内部艤装を取り外すだけならば一応手段はあります。ですがそこで問題になるのが“不老化”です。35年前に発明され世界各国が多少手荒なことをしてでも競って研究している。時にはきな臭い話も耳にする。そんな技術を施された娘が、一般市民として生活出来ると思いますか?」

こんな質問答えは分かりきっている。

「・・・何が言いたいの?」

「軍部はこの技術の流出を防ぐ為に互換性の許容を超えた艦娘を内密に処分しようとしている。これがその噂です」

 「まっさかー・・・そんな噂を真に受けるなんて鳳翔さんらしくもない・・・」

鳳翔は気にせずに話し続ける。

「先日、青葉さんが身分を隠して町へ脱走しているうちに、本土の大本営に繋がる独自の情報網を持つ町の有力者と接触している事が分かりました。そこで彼女にお願いしてその情報網が使えるかどうかを探って貰うことにしたんです」

 いつも控えめな鳳翔の声からは想像も付かない内容の台詞に大端は閉口し切っていた。

「氷、解けちゃいましたか。淹れ直して来ますね」

鳳翔は大端の手元の湯飲みを見て言った。

 

 

 「・・・仮に噂が本当だとしても。不老化処理が艦娘に施されるようになったのは30年前、いくら兵装の進化が早いからと言ってこんなに早く互換性に限界が来る艦娘なんて居ないはずよ。それに内部艤装を新しく取り替えればいくらでも・・・」

「そうですね。不老化処理を施した艦娘には居ません」

鳳翔は大端の話を遮って答えた。

「だったら、どうしてそんな馬鹿げた噂を真に受けて・・・。上層部それも大本営を詮索するなんて反逆罪に問われるような事を・・・?」

鳳翔は目を伏せて答えた。

 「・・・今のは不老処理を施された艦娘の話です。不老化処理を施されていない娘達は・・・」

「ちょっと待って」

今まで話の聞き手に徹していた大端が口を挟んだ。

「・・・何を言ってるの?」

大端は得体の知れない物を見たような顔で訊ねた。

「艦娘は全員不老処理を受けているじゃない・・・」

「・・・は?」

大端のその言葉に鳳翔は目を見開いて大端を見つめた。

 

 

 「では・・・提督は4年前のあの娘達の事を・・・知っていた訳では・・・無かったんですね」

鳳翔は口元を覆ったまま呟いた。

「少なくとも、当時大尉であの子達直属の指揮官だった私にも知らされていなかったわ。・・・准将だった基地司令はどうだか知らないけれど。・・・つまり、すべての艦娘が不老化処理を受けているわけではない。莫大な費用がかかる不老化を施されずに互換性の限度が来てしまった艦娘は極秘で処分される・・・と。なるほど、そう考えたら噂も信憑性がますわね」

「・・・取り乱してしまってすみません。でも・・・これで私も大端提督を少し信用出来そうです」

鳳翔は少し微笑んだ後、直ぐに悲しそうな顔で口を開いた。

 「私は・・・あの子達は機密が露呈するのを恐れた軍部に処分されたと思っています。不老化処理を受けていない娘の場合は治癒力の向上もないので、内部艤装の更新手術に耐え切れません。内部艤装を取り出して解体するにしても同じです。それと・・・これもご存じないかと思うのですが・・・」

大端は話の続きを促した。

 「・・・互換性を超えなくとも、内部艤装を埋め込む処理が身体に負担を与えている為に娘達は短命に・・・余命は処理から5年程になります」

「・・・」

「・・・あの子達は、艦名を持ってから3年しか経っていません。せめて・・・残りの命だけでも全うさせてあげたいんです」

 「・・・全部本当の話なのね?」

鳳翔は大きく頷いた。そして続けた。

「大端中佐、どうか私に協力して頂けませんか?」

「・・・どうして私にその話を?」

「あなたが一番、娘達に信頼されているからですよ」

その後、大端の返事を聞いた鳳翔の顔はいつも周りに向けている穏やかな顔に戻っていた。

 

 

 月が綺麗な夜だった。真夜中を過ぎる頃、大端は普段はあまり吸わない煙草を咥えて渡り廊下の淵に座って遠く木々越しに見える水平線を眺めていた。脇には布製の手提げ鞄が1つ無造作に置かれている。大端は1時間前に聞いた話を振り返りながら点けた2本目の煙草を吸って・・・咳き込んだ。大端が2本目の煙草を吸い切るのを諦めて地面で火を消す。

 「げほっ・・・。とんでもない事知っちゃったなー。とんでもない事引き受けちゃったなー」

大端は月を見上げて呟いた。

「何を引き受けられたんですか?」

「うおっ!?・・・なんだ千歳か・・・」

 大端が振り返ると彼女の秘書艦である千歳が立っていた。秘書艦、とはいっても妹の千代田が姉にべったり引っ付いているので彼女達の執務室の様子を見たではどちらが秘書なのかよく分からないのが実状だが。

 「咳き込む音が聞こえたので誰かと思ったら・・・提督が煙草を吸われるなんて珍しいですね。お疲れですか?」

「いやー別に?・・・それより早く寝なさいよ。夜更かしはお肌の大敵よ?」

「遠征から帰ってから生活リズムが崩れちゃって・・・それにしたってこんな遅くに喫煙されている提督に言われる覚えはありません」

千歳は苦笑いを浮かべて言った。

 「はいはい。私もシャワー浴びたら寝るわ」

大端は立ち上がりながら手をひらひらと振って千歳を寮に帰した。

「分かりました。提督、おやすみなさい」

「はい、おやす・・・ねえ、千歳」

寮の戸に手を掛けた千歳を大端が呼び止めた。

「なんですか?」

「この前の遠征中、内地の・・・たしか宿毛湾の娘に会ってるよね?」

「・・・?会いましたけど。それが何か?」

「・・・いや。やっぱいい。お休み」

大端は寮に消えていく千歳を見送った後、着替えを入れた布鞄を方に引っ掛けてシャワー室に向った。

 

 

 「ふぁ?あ、青葉。・・・お帰りぃー」

翌日。朝の仕度を終えた古鷹に起こされたばかりの加古がベッドと壁の隙間から這い出てきて言った。

「青葉、無事帰還しました!これは口止めりょ・・・えと、お土産です!」

そう言って古鷹と加古に紙袋を差し出す。中身は出来立ての豆大福。朝市で買って帰ったのだろう。普通、基地内では間宮の来航時にしか食べられない。

 「はは・・・ありがとう」

苦笑いを浮かべて古鷹は大福を受け取った。

「ありがとー。また太っちゃうなー」

加古が受け取りながら言った。

「え、気にしてたの!?」

古鷹がぎょっとして、昨夜の夕食直後から爆睡していた加古に訊ねた。

「古鷹酷いよぉ」

加古が頬を膨らます。

 「加古が今起きたという事は朝食には間に合いましたねっ」

「脱走しても朝食に間に合わせる気はあったんだね」

苦労人古鷹がほんの少しだけ嫌味っぽく言った。

「青葉、心外だなー」

「まあまあ。古鷹も疲れが溜まってんだよ」

「そう思うならせめて1人で起きてくれないかなぁ・・・」

青葉を宥める加古に対して古鷹はぼそっと呟いた。

「あんた達ー。早くしないと朝、食べ損ねるわよー」

戸の向こうから大端の声がして3人は、特に起きたばかりの加古は慌てて身支度をして食堂に向った。

 

 

 その日の昼過ぎ。金沢が基地に戻る為にいつもの哨戒の零偵が止まった桟橋に向うと、飛行ツナギ姿の男が2人金沢を待って居た。

「ご苦労様です。今日はお客さんがいらっしゃるんですか?」

金沢がいつもの飛行士に訊ねた。

「少将もお客さんじゃないですか。少将の基地に新しく配属される整備兵ですよ。・・・こちらは55号大隊基地司令の金沢少将です」

「本日付で大隊に配属となりましたっ!北沢二等整備兵です、基地司令と同じ零偵に搭乗出来るとは光栄です」

飛行士に紹介され、まだかなり若い整備兵は敬礼した。

 「初めまして。ご紹介に与りました。金沢護人です。どうぞこれからよろしく、“沢”が付く者同士仲良くしましょう」

「はっ、よろしくお願いいたしますっ」

「では自己紹介も済んだところで出発しますね、座席はどうされます?」

「では僕は中央で。北沢さんは後ろの席でお願いします」

3人が機体に乗り込んで間もなく、三座の零偵は桟橋を離れて哨戒に出発して行った。

 

 

 離陸した零偵はトラック諸島の外礁沿いを時計周りに飛行していた。時計回りで哨戒すればすぐに春島に到着するが、哨戒は敵に勘付かれない様に時間も経路も毎回異なる。そしてそれらは重要機密なので遠回りする事については金沢も承諾済みである。

「良い天気です」

金沢が外洋を気にしながら言った。彼の足元から伸びる操縦桿は前席の飛行士のそれと連動して時折揺れている。

「天気は良いですが雲の位置が悪いですね。空中からだと直前まで敵機に気付けない事があります」

金沢の独り言を聞いた飛行士が前の操縦席から伝えた。

「なるほど。では僕も見張りに加わりましょう」

そういって金沢は鞄から折りたたみの双眼鏡を取り出した。

「助かります。北沢二等兵もなにか見つけたら遠慮なく言って下さい。変に遠慮して敵機の発見が遅れるよりは見間違いで心臓に悪い方が遥かにいいですから」

 「分かりました。・・・あの、トラック諸島周辺に岩が剥き出しの島なんてありましたっけ?」

「・・・岩の島、ですか?」

「さっき一瞬だけ雲間から見えた気がしたので今探しているのですが・・・」

北沢は双眼鏡越しに海上に目を凝らしたままそう言った。

「・・・少将、念のため本部に連絡をお願いします」

険しい表情で飛行士が言った。

「了解」

金沢は手元の通信機でモールス信号を打ち始めた。

「あの、何か問題が・・・?」

予想外に大事になった自分の発言に北沢は恐る恐る前の2人に訊ねた。飛行士が答える。

「・・・実は航空隊の初年兵が未確認の岩礁とよく見間違う物に棲艦の空・・・少し遅かった様です。少将、シートベルトの確認をお願いします!北沢二等兵も!少し手荒く飛ばしますよ」

飛行士が前方を睨んだまま、後部座席まで聞こえる様に言った。

「えっ?何があったんですか・・・?」

1人だけ後ろ向きの座席に座っている北沢が不安げな声を出す。

「棲艦機です。そんなに多くの数ではありませんがこの機体で戦うには不利ですね。・・・新兵はよく棲艦の空母と岩礁は見間違うらしいです」

飛行士を操縦に集中させる為に電文を撃ち終えた金沢が端的に、状況と飛行士が言いかけた話の続きを伝えた。

 銀色で尾の無いカブトガニが10数機、哨戒中の零偵の前方上空に現れていた。場所はトラック諸島北部、春島55号大隊基地まで直線距離でおよそ20kmの地点であった。

 

 

>>>To be contemew【六話 詳しくは後書きで!】




 「艦これ2次創作って銘打ってる訳だし、オリキャラの扱いは空気でいいよね」と思っていた頃が私にもありました。今思えばどうしてそう思ったのか。最初からサブメイン級?のオリキャラが5人以上居ることは決まっていたのに、どうして空気扱いで良いと思ったのか謎です。という訳で普通の小説の1話とか2話、初登場シーン並に紹介文まみれの5話でした。あんた今までも居ただろっ!と突っ込みながら楽しんで頂けたと思います。

 さて、今回はとくに表記していませんが新章突入の導入という事で短めです。いや前回が作者の作品の中では長めだっただけですが・・・。全体的には話がドロドロして来るところです。前話を書き終えた勢いで書いていたら4話投稿後一週間程で下書きが完成しました。今の内に書き溜めようと思います。書き貯めて置けば、『次回、○話、××××!』って安心して予告で来ますからね。余裕が出来れば隔週更新とかしたいなーと思っています。その時はまた後書きでお知らせします。

 そうそう、予告と言えば最近知ったんですが
>>>Contenew
とか毎回格好付けていましたよね。“続く”って正確には
>>>To be contemew
になるそうですね。Contenewだけだと“続け”とか“続き”になるんでしょうか?
誰か詳しい方教えてくださいm(-_-)m辞書で調べてもよう分からん´・ω・`英語の成績辛うじて“2”だったからしょうがないね。


では、次回。第6話 (未定!え・・・そりゃ書き溜めとか隔週更新とか言いましたよ。でもまだ書き溜まっていない訳でして・・・というか6話の“アレ”が地味に面倒で・・・でもだいぶ仕上がってるから次回以降は隔週更新にっ・・・)お楽しみにっ!|・`)ノシ
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