男が現れたことでオレは激しい頭痛に襲われていた。その隙をついてか、ファラ、レイア、ガリィの3人は壁に叩きつけられている。
「いいぞ。トドメを刺すんだ!」
貴族の声にガリィたちが危ないと、動こうとするが体が言うことをきかない。
「ガリィちゃんたちもここまでね」
咄嗟に視線だけでもと動かすと、ミカがその爪を高く振りかざし、ガリィたちへとゆっくり降ろそうとしているところだった。
「本当にそれでいいのか?」
突如ミカへ話しかけるキャロル。
「そうやって、言いなりになったまま望まぬ殺傷を繰り返して」
「何を言うか? ミカが望んでないなどと戯事を」
キャロルの言葉を遮るように貴族が叫ぶ。
「望まぬのでないなら、どうして涙を流す? お前も目的を見失ったのなら、もう一度探せばいい。その手助けならわたしたちがしてやる! だから、自分に正直になってみろ!」
キャロルの言うように、爪を振りかざすミカの目には涙が溢れている。
「アタシ、もうこんなことしたくないんだゾ。でも、やらないとまた怒られるんだゾ」
戸惑いを隠せない様子で呟くミカ。ファラがそっとその手を握る。
「ならば一緒に行きましょう? もうこんなことは止めにして」
ファラの言葉にミカが頷く。これでこっちはどうにかなりそうだ。
「私たちの娘を誑かさないでもらいたいわね」
貴族の婦人だろう。新たに女性が家から出てくる。
「アタシ嫌なんだゾ。もうやりたくないんだゾ」
「そう。なら、この子ごとやってしまいなさい」
婦人は冷たくツキカゲにそう告げる。
「人数もいることだし、こいつでケリをつける」
そう言って手を横に伸ばすと、なにもない空間から三叉の矛が現れる。
「完全聖遺物。ポセイドンの槍、トライデント」
三叉の矛がツキカゲの体を覆うように広がり、ツキカゲの体は白銀の鎧のようなモノで覆われていた。フルフェイスのマスクからは緑に光る目以外は隠されている。
「トライデントのファーストローブ。こいつを出したからには終わらせる」
身構えるだけで伝わるプレッシャーにオレたちは、体がすくむ。
「これは……」
ツキカゲがトライデントを呼び出した辺りから、婦人の様子がおかしいことに気付く。頭を抱えて、どこか苦しんでいるようにも見えた。
「おい、なにをした?」
貴族がツキカゲに詰め寄るが、ツキカゲも意外だったのか、ただ婦人を見つめていた。
「なるほど。この時代に私の魂はここにいたか」
ミカと同じ赤髪だったモノは金色に輝き、雰囲気もどこか別人を思わせるほど鋭く、冷たくなっていた。