吹き飛ばされたツキカゲをよく見ると濡れていて、ガリィが水を飛ばしたのだとわかる。
「ガリィ!」
「ほーんとーにわからないんですかー?」
オレが叫んだことでこちらに顔を向けるが、その顔は呆れたと言いたそうな表情をしている。
「まぁそんなことはどーでもいいんで、さっさと他の3人にも術式埋め込んでもらえます?」
オレが1番得意としている錬金術。それは他者に術式を埋め込み錬金術を扱えるようにすること。ガリィにも水の術式を埋め込んだのはオレだ。それを他の3人にもやれってことらしい。
「その間くらいは、ガリィちゃんがなんとかしてみますんで」
そう言ってツキカゲに向かうガリィ。確かに水の錬金術を使えるようにはなっているが、それだけで勝てると思える相手ではない。早くして、ガリィの助けに向かう必要がある。
「この際だ。暗記しているものから適当に埋め込むがいいな?」
オレの言葉に3人が頷いたので、レイアには土の。ファラには風の。ミカには火の。術式をそれぞれ埋め込んだ。
それだけでもちろん使いこなすことは不可能だ。ただ使えるだけ。それでもないよりはマシだろうと埋め込んだが、ツキカゲ相手にどこまでやれるか不安が付きまとう。
「無茶はするなよ?」
そう言ってガリィの援護に向かう。
【我を求めよ】
頭の中から声がした。足を止めて辺りを見渡すが、誰も見当たらない。
【奴に勝ちたいのなら、我を呼び覚ませ】
再び聞こえた声。ふと左手の痣が疼く。
「いったいなんなんだ」
激しい頭痛にも襲われ、その場で膝をつく。ツキカゲを初めて見たときと同じかそれ以上の痛みに立つことも難しい。
「この共鳴は、目覚めようとしているのか」
ツキカゲの呟きが耳に入る。それ以外の音がしないことを不思議に思い、視線を動かす。そこには横たわる4人がいた。
「ガリィ! ファラ! レイア! ミカ!」
「息ならまだあるさ。微かだがな」
オレの叫びにツキカゲが答える。まだ生きているのなら、と足に力を入れて立ち上がるが、倒れてしまう。このままじゃヤバいのはわかっている。
「声に頼るしかないのか」
それは選んではいけない選択の気がして、どこか決断出来ずにいる。
「呑気に考える時間があると思うなよ?」
答えを出せないオレにツキカゲの言葉が刺さる。頭ではわかっている。それしか方法がないことも。ただ左手から感じる雰囲気はとてもじゃないが、まともなモノとは思えない。
そんなオレに追い討ちをかけるように響く声。
【我を呼べ。我はバイデント】
次回、キャロル視点(予定)