万象黙示録を壊す歌   作:秋月玲

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第2話

なにも覚えていないと言うオレの話を真剣に聞いてくれた親子。イザーク・マールス・ディーンハイムとその娘キャロル。

 

 

「それは大変だったね。思い出すまでここで暮らすといいよ」

 

 

そう笑顔で言ってくれるイザークさん。

 

 

「でも、いいんですか? オレは自分でも何者かわかっていないのですよ?」

 

 

もし記憶を無くす前のオレがとんでもない存在だったら。そう思うとこの提案を簡単に了承するわけにはいかない。

 

 

「問題ないさ。君がどんな人だったとしてもそれは過去の話だ。今の君からはそんな雰囲気は感じられない」

 

 

それでも悩むオレを見つめてキャロルが口を開く。

 

 

「だったら、ここで料理を作ってよ。パパは料理が苦手なんだ。だから」

 

 

家政婦のようなものとして。キャロルはそう言いたいようだ。

 

 

「それはいいね。僕が街に行くときにも君がいてくれれば安心も出来るね」

 

 

そこまで言われて了承してしまう。

 

 

「わかりました。ただし、オレが記憶を戻したとき。危険な存在だった場合はすぐにここを去ります」

 

 

遅いかもしれないが、この親子を巻き込んでしまうようなことはしたくなかった。森での狼との戦闘で、普通の存在でないことは確かだったから。

 

 

その日はもう遅いこともあり、床につくことになった。今は使っていないという部屋を借りることとなる。

 

 

「なにもない部屋で申し訳ないが」

 

 

「いえ、ベッドがあるだけでありがたいです」

 

 

案内された部屋には客人用なのか、ベッドが置いてあるだけ。他にはなにもない部屋だった。

 

 

翌日から目を覚ますと朝食を用意し、掃除や洗濯をして過ごす。家事が終わればキャロルの遊び相手。と言ってもキャロルは基本本を読んでいることが多いので、なにかをするわけではないが。

 

 

「毎日なにを読んでいるんだ?」

 

 

「錬金術の本だよ。そうだ。一緒に勉強しようよ?」

 

 

錬金術がどんなものかわからないオレは、まずはそこからキャロルやたまにイザークさんから教わる。

 

 

「ヒカルは覚えが早いな。才能があるんだね」

 

 

名前も覚えていなかったオレは、2人からヒカルと名付けてもらった。ヒカル・マールス・ディーンハイム。誰かに聞かれたときはそう名乗るといいとまで言われた。

 

 

「ヒカル、ここどういうことかわかる?」

 

 

2週間ほどでたまにだが、キャロルに質問されたりもするようになっていた。もちろんオレがキャロルに聞くことのほうが遥かに多い。

 

 

「明日はちょっと素材を買いに街に行ってくるよ。留守番を頼むよ」

 

 

イザークさんはたまにこうして街に行くようだ。オレが来てからは初めてのことだったが。

 

 

「ええ。任せてください」

 

 

そう答えたが、何故か胸が騒めくのを感じていた。

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