イザークさんが街に薬を届けて1週間後。オレの心配は想定される最悪の形で訪れた。
「出てこい!」
「いるのはわかっているんだ!」
数人。命を落とした者がいた。お年寄りや子供、違う病気を併用した者たちの中には、この薬で救うことが出来なかった者もいたようだ。
「お前がその怪しい力で殺したんだろう!」
「異端な存在め!」
街の人々がイザークさんの家へと押しかけて、罵声を浴びせている。
「神さまが起こしてくれた奇跡。それで街の人々は助かったって言うのに!」
「お前の変な力で殺された者もいるんだ!」
言いがかり。そう思うが、イザークさんはなにも言い返さない。
「どうして黙っているの?」
キャロルも不安そうな顔をしている。この連中に捕まったとき、なにをされるかわかったもんじゃないからだろう。もちろんオレもイザークさんを渡すつもりなどない。
「仕方のないことなんだよ。きっと話せばわかってくれるさ」
そうキャロルの頭を撫でながら言うが、そうならないことはオレにもキャロルにもわかっていた。連中は話を聞くつもりすらないことを。
「駄目ですよ。出て行けば、イザークさんはきっと帰って来れない。そんなのは駄目だ」
窓から覗けばどれほどの人数で押しかけてきたのか、家の周りは人で埋め尽くされていた。棒や鎌、鍬などの武器となりそうな物を手に。
「パパはあいつらを助けようとしたのに。どうして? どうしてこんな風に言われないといけないの?」
キャロルの目には涙が浮かんでいて、今にも泣き出しそうだ。
「キャロルの言う通りだ」
オレがそう呟くと同時に、ついに家の扉が破壊される。多くの人が家に雪崩れ込む。
「イザークを捕らえろ」
オレは咄嗟に、雪崩れ込む人とイザークさんたちの間に立つ。
「こいつも怪しい力を使うものか」
「構うか。一緒に捕らえろ!」
棒や鎌でオレを攻撃してくる街の人々。とりあえず棒を掴み、1人蹴り飛ばす。奪った棒を振り払い、相手をなぎ払う。
「今のうちにイザークさんはキャロルを連れて逃げてください!」
「出来るはずがないよ。君を置いていけるはずがない。ヒカルも大事な家族なんだから」
イザークさんから帰ってきた言葉に、驚いて動きを止めてしまう。そんな風に思われていたことが意外で、嬉しくて。
「邪魔だ!」
オレの動きが止まったのをチャンスと思ったのか、オレは後ろから思いっきり殴られる。床に倒され、数人がかりで取り押さえられた。
「僕はどうなってもいい。だから、息子と娘離してくれないか?」
キャロルもイザークさんも、数人がかりで捕らえられていた。