オレが次に気がついたときには、街の中心部で張り付けにされているイザークさんの姿が見えた。周りには薪や藁などが敷き詰められており、どうするつもりなのか、容易に想像出来る。
「キャロルは?」
オレはキャロルも張り付けられているのではと、辺りを見渡す。オレの両手は屈強な男2人が押さえつけており、動くことは出来ないので目だけを動かして。
「よかった」
キャロルもオレと同じく、両手を押さえつけているが。
予想通り。街の人は火を放ち、イザークさんを火刑に処したのだ。燃え上がる炎を前に歓喜する人々に狂気を感じる。
「パパ! パパー!!!」
泣き叫ぶキャロル。
「キャロル。生きて、世界を知るんだ。それがキャロルの……」
炎の中で語るイザークさん。続きの言葉は炎でかき消される。
「ヒカル……。キャロルを……」
再び聞こえたイザークさんの言葉で、我に返る。ここまでどこか他人事のように感じていたが。
「必ず」
小さく呟き、両手を押さえつけている男を蹴り飛ばす。上体が動かせないため、足払いのような形で転ばせる。
「キャロル!」
邪魔する者たちをなぎ払い、キャロルを抱き抱える。
「ヒカル! パパが! パパが!」
イザークさんへ手を伸ばすキャロルを抱えて走る。この場を離れるために。暴れるキャロルを落とさないようにしっかりと抱えて。
それでもキャロルを離さないために必死に。オレたちを取り押さえようとする街人たちを振り払い、なぎ倒し。
どれほど走っただろう。ようやくイザークさんの家へと戻ってきた。
「ヒカル……」
泣き続けるキャロルを他所に今は急ぐ。街の連中がここにやって来る前に荷物を纏める必要があった。イザークさんの錬金術は本物だ。だから、残さないといけない書物も沢山ある。それを必死に鞄に詰め込む。
「手伝うよ。パパの錬金術は残さないといけないのはわかるから」
まだ涙が止まる様子はないが、キャロルが手伝ってくれる。溢れる涙を何度も拭って。
鞄2つ分だろうか。基調な素材なんかは今回は諦めることにした。一刻も早く逃げる必要があったからだ。
「行こう」
イザークさんとの思い出の品もあっただろう。でもなにも言わずキャロルは歩きだす。
「ヒカル……。ヒカルはいなくならないで」
そっとキャロルの頭を撫でる。それだけで涙の笑顔を見せてくれるキャロル。
どんなことをしても、どんな手を使っても、キャロルを守るとそっと誓う。
「ああ。キャロルのことは絶対守るよ」
炎で赤く染まる空を背に2人で歩きだす。