2つほど街を超えた辺りでようやくオレたちは安堵する。ここまで来れば追手がくることもないだろうと。
「今日は久しぶりに宿に泊まろう」
ここに来るまでに見つけた鉱山が思ったより高値で売れたため、宿を取ることに。オレは構わないが、キャロルをずっと野宿させることにも抵抗があったためちょうどいい。
「わかった」
嬉しそうに鼻歌交じりに歩くキャロル。
「一部屋お願い」
予算の都合もあって、一部屋だけ借りることに。年頃の女の子と同室なことに躊躇しないわけではないが、そうも言っていられない。
「水浴びてくる」
野宿ばかりだったためか、すぐに部屋に備えてある浴室へ行くキャロルを見つめて、鞄から本を取り出す。少しでも錬金術を覚えたい。錬金術の腕をあげたい気持ちがあれ以来強くなっているのを自分でも感じている。あの奇跡のような薬を見てから。
「わたしも勉強するよ」
水浴びから戻ったキャロルがオレとは別のベッドに座り本を読み始める。キャロルも同じ気持ちなのだろう。オレたちがもっと錬金術師として実力があれば、イザークさんは助けられたかもしれないと。
その後も遅くまで勉強し、気付けば寝ていた。朝日の眩しさで目を覚ます。
「寝ていたのか」
キャロルはまだ眠っていて、スヤスヤと寝息が聞こえる。眠るキャロルにメモを残してオレは部屋を出る。まだ人がまばらな街を歩く。
情報の収集と必要品の補充を目的として。集まる情報は特にない。変わったことがないかとか、世界の情勢とかがメインだ。
「特に有益な情報はなかったな」
宿へと戻り、庭にある井戸で顔を洗っているキャロルと合流する。
「ヒカル。なにかわかった?」
「いや特には」
オレの答えにキャロルも溜め息をつく。これからの行き先をどうするか悩む。
「そんな暗い顔してどうしたんです?」
宿の従業員だろうか。メイド服のようなものを着て、カチューシャをした茶髪の少女がこちらを見ていた。
「旅の行き先に困っていてな」
「へぇ。な〜にを、目的に旅してるんですか?」
当然と言える質問が飛んでくる。その質問にどう答えるかキャロルと顔を見合わせる。
「仕方ない。一応聞いてみるか。ダウルダブラと言う竪琴を探している。なにか知らない?」
キャロルが従業員にそう答える。探している目的までは話すつもりはないようだ。
「探し物かどうかは、わかりませんけど〜。王都に貴重なお宝ばかり集める貴族がいるみたいですよ?」
ゆったりと話す従業員の言葉にオレたちは、顔を見合わせる。次の目的地がそこだと。
「相談なんですけど〜、わたしも連れて行ってくれません?」