「ふざけるな。どうしてお前を連れて行く必要がある?」
イザークさんの件があってから、キャロルの口調はキツいものになっていた。強く見せたいからなのかもしれない。
「いえね。こう見えてわたし、この街から出たことがないんですよね。やっぱ興味あるじゃないですか?」
メイド服の少女はキャロルの言葉を聞いていないのか、そう答える。
「君はここの従業員だろう? 勝手に連れて行くなんて出来ないと思うんだが?」
連れて行くにしても行かないにしても、雇い主の許可がないとどうにもならないと思いそう言うと、少女は目を輝かせながら答える。
「それなら問題はないわねぇ。だってここの娘だし」
宿屋の娘なことに驚く。格好からはとてもそう思えなかったからだ。
「とりあえず、ここの主人から事情を聞いてみるか」
オレの呟きにキャロルも頷く。
「あっ、わたし。ガリィちゃんでーす。ガリィ・トゥーマン」
少女の自己紹介を聞いて、ガリィの相手をキャロルに任せオレは宿屋の主人と話すことにした。
「えっ? あの子がそんなことを?」
「ああ。なにか事情があるなら聞いてみようと思って」
オレが先程ガリィに言われたことを話すと主人はたいそう驚いていた。
「まさかそんなことを思っていたなんて。実はあの子は生まれつき難病を抱えていまして」
難病の言葉に驚く。とても元気そうでそうは見えなかった。
「その難病というのは? もちろん話してもらえるならで構いませんが」
「血が止まらないんです。一度怪我をするとまるで湯水のようにずっと。この街ではそのことを多くの人が知っていて、それで病院でもすぐに治療してもらえるので今のところ大事には至っていないんですが」
主人の言葉を聞いてオレは連れて行くことは出来ないと感じる。
「そうですか。そういう事情なら、彼女はこの街で生活するほうがいいと思います」
「いや、待ってください。あの子はきっと自由を知りたいのだと思います。ここでは常に誰かに心配から見られ、息苦しいのかもしれません。だから、王都まででもあの子の願いを叶えてあげられませんか?」
主人の言葉はよくわかる。心配されているからとはいえ、あの子からすれば監視されているように感じるのだろうことも。
「気持ちはわかります。でも、オレたちにはあの子の命を背負うことは出来ません。街から遠い場所で怪我をした場合、死ぬことだって考えられる。そんな責任は取れない」
オレの言葉に主人は項垂れる。
「そう、ですよね。わかってはいたんです。すみません」
心が少し痛むが、どう考えてもリスクが大きすぎると思う。