どういう訳かこのシーンを書くのが苦手です。
大分端折りましたし、次回からが本格的なクロスオーバーになりますのでもう少々お待ちを。。。
「あの~なんで学院に?」
気まずい車内での時間もようやく終わりを迎えようとしていた。
目的地らしきところに到着し、全員が降車してみればそこはリディアン音楽院の校舎であった。
校舎の上部に設置された時計を見やれば、時間はもう既に夜の9時を周ろうとしている。
「へ~、立派な学校だね。 もしかして立花ちゃんって実はお嬢様?」
「ふぇッ!? い、いいえ……。 しょ、庶民の家の出です……」
目的地に到着するまで続いた沈黙を最初に破った響の次に言葉を発したのは沈黙の原因の一人、急遽黒服たちがコンビニで買ってきたランニングシャツに、これまた黒服の予備のズボンを履き、裸足という奇妙な格好のソウキだった。
彼はあまりにも立派な、学校には見えないリディアンの校舎を令嬢たちが通うお嬢様学校と勘違いしたのだ。
そんな呑気な男に振り回される響。
過去に男性とそれほど距離の近い環境に無く、また、自身すらもあまり女らしいと思っていない彼女にとって、一時の勘違いとはいえお嬢様扱いしたソウキに思わず動揺してしまう。
しかも相手は父以外では初めての大人の異性の裸を見てしまった相手である。
ただでさえ色んな事が起こりすぎている上にこの連続する謎イベントに彼女はすっかり疲れ果てていた。
ただでさえ重い手首に架せられた手錠がより重く感じられたのであった……。
ビジネススーツに優男の顔を乗っけた男性と2人の戦姫、天羽奏と風鳴翼に先導され二人は教員たちが詰める中央棟なる建物の廊下を歩かされている。
何故このような場所に連れられているのか疑問に思っていると一基のエレベーターへと案内された。
「ぁ、はははは~」
乗り込むまでは普通のエレベーターだと思っていた二人。
エレベーターのドアとは思えるほど頑丈なつくりの扉が室内を閉めたと思えば床から手すりがせり上がってきたうえに超高速で下降し始めたのだ。
突然のことに思わず愛想笑いが漏れる響。
対してソウキは顔にこそ出さなかったが心は彼女と同感であり、薄目を開けガラス面越しに映る金髪の女を見ていた。
(……俺に興味があると言ってたけど、本当はこっちの方かな?)
彼女の目線はソウキの右越しにぶら下げられていた音角をしきりに見つめていた。
彼女は一体何者なのか、なぜ鬼の事を知っているのか興味の尽きない相手であることは間違いない。
すぐにでも聞き出したところではあったが、今はその時ではない。
そう改めて思い至ったソウキはバレないように彼女の顔を見やる。
何度見ても勿体ないなと思うほど、どうにも目を離すことが出来なかった。
「ようこそ! 人類守護の砦、特異災害対策機動部二課へッ!!」
そこは歓迎ムードと笑顔に溢れていた。
扉が開けばまず目に入るのは大柄と言われるソウキよりも2周大きい派手な赤一色のワイシャツの男と、その後ろに控える大人数の男女が満面の笑みで一行を向かい入れてくれたのだ。
そしていつ準備したのか、まるで元々別で予定されていた催事用ではないかと疑いたくなるような飾りつけ、食事、そして何故か開店やリニューアルオープンで見かけるような花輪の数々。
風鳴翼より事前にこれから向かう所は「微笑など必要のない場所」だと言われたためか、あまりの落差に響やソウキは勿論、身内であるはずの3人ですらも唖然としてしまっていた。
「さぁさ、笑って笑って! お近づきの印にツーショット写真を撮りましょッ!
あなたは背が高いから屈んで屈んで――」
「い、嫌ですよッ! 手錠をしたままの写真だなんて、きっと悲しい思い出として残っちゃいますッ!! そ、それにどうして初めて会う皆さんが私の名前を知っているんですか?」
「俺も同じ意見です‥‥てかあの…、あまり触らないで貰えませんか?」
「ええ? ちょっとぐらい良いじゃない? 瑞々しいお肌、若いっていいわね~」
固まっている二人の間に白衣の女性が入ってくる。
響の肩を抱き寄せ、スマートフォンの自撮りモードで写真を撮ろうとしたが彼女は飛び退き、ソウキはくすぐったそうに身を震わせていた。
「我々二課の前身は大戦時に設立された特務機関なのでね。 調査もお手の物なのさ」
「…‥あッーーッ!? 私のカバン!!」
手に持っていたステッキを花に変化させながら赤シャツの男が言う。
そしてその横にはいつの間にやらソウキの側から離れ、白衣の女性が学生鞄を持って見せていた。
「……だが、そんな俺達でも君の経歴を調べることは出来なかった」
一瞬、ほんの僅かな一瞬。 気づけたのは一握りの人間だけだろうか。
強烈な、今にも仕合いが始まってもおかしくない程の闘気をこの男は発したのだ。
勿論ソウキはその気当たりには気が付いていた。 しかし、彼は特に行動には移さなかった。
若いとはいえそれなりに体と心を鍛えた彼には同じく体を鍛え、細かな仕草からも気品さを感じられるこの筋骨隆々の男に悪い印象を抱けなかったからである。
「だからこそ、俺の仲間や響君を助けてくれた勇敢な戦士である君自身の口からぜひ君自身の事を教えて欲しい。 俺は風鳴弦十郎。 ここの責任者をしている」
そう言いながら男はゆっくりと近づき、責任者自らソウキの手錠を解錠したうえで握手を求めた。
「ソウキと申します。 本名は園田宗吾。 名古屋生まれの二十歳。 猛士と呼ばれるバケモノ退治の組織に所属する戦士、鬼です」
そう言い終わると双方は固い握手を交わしたのだった。