シンフォギア feat. 奏でる鬼   作:Mak

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最近にわかにシンフォギア熱が復活しつつあったりなかったり…
今回と次回の話でこの作品における鬼の優位性と危うさを描きたいと思ってます。


一夜明けて

一夜明け、時刻は6時半。

ソウキは特異災害対策機動部二課の基地内にあるトレーニングルームで汗を流していた。

 

昨晩は時間が時間だったため、突然の歓迎会の他には簡単なメディカルチェックだけでお開きとなったのだ。

最後に見た時計が指し示す時刻は12時前だったと記憶しているのでいつもの彼にとっては少々寝足りないが日頃の鍛錬と習慣故に4時前には目を覚ましていた。

 

とは言え昨晩は連続で襲い掛かってくる謎また謎のせいで多少疲れが抜けていないことは自覚出来た。

なにせ問題は何一つ好転していないのだ。

 

解っていることは二課の、少なくともトップである風鳴弦十郎は信用に値する男で間違いないということぐらい。

 

今更焦っても仕方がないと、とりあえず彼の言う通り今日の午後、正確には学生である立花響の学校が終わった後に二人を交えたミーティングにて説明会を開いてくれるということらしい。なので、それまでの時間は自由に過ごして良いと言われたのでこうやってかれこれ2時間程体を動かしていた。

 

そろそろ仕上げに入ろうかと言うタイミングで自分以外は誰も開くことの無かったトレーニングルームのドアが開く音に気が付く。誰が入室してきたのか鏡越しに確認するとマダラ模様になっている汚い金髪の女だった。

 

 

 

「よう、おはようさん。天羽…奏さんだっけ? 昨日は猫を被ったように静かだったな」

 

「うっさい。アタシはああいう賑やかなところが嫌いなんだよ」

 

 

 

室内に入って来たのは天羽奏であった。

昨晩は歓迎会会場の片隅で一人寂しく飲み物を煽っていた姿をソウキは覚えていた。

そしてチラチラと、青髪の女(ヤバいヤツ)が遠目に彼女を見ていたことも。

 

とりあえず、女性らしいお洒落な服装のまま入室してきた状況から見ても彼女がトレーニングに来た訳では無さそうだと察した彼は手に持っていたバーベルを元の場所に戻し始める。

 

 

 

「話があるんだろう? ちょっと待っていてくれ。シャワーを浴びて着替えてくる。話はどっか朝飯食べながらにしよう。…この基地の食堂って朝食はあるの?」

 

「いや、自販機で買うタイプの軽食しかなかったはず。……言っとくが奢らねーぞ」

 

「あ、無一文だと思ってバカにしてんな? ご心配無用。今の俺にはこれがある!」

 

 

 

奏がこいつ案外ウゼーなと感じて話しかけたのを後悔し始めた時、文字通り裸一貫だったはずの彼がなぜか真新しいトレーニングウェアを着ていることに気が付く。

すると彼は無骨デザインのスマホを取り出して見せた。

 

 

 

「じゃーん! や~今どきはすごいね! スマホ一つで決済できるなんてさ!」

 

「ガキか! スマホごとき何はしゃいでいるんだよ。…てかそれ、どこで手に入れたんだ?」

 

「風鳴さん…あー弦十郎さんの方にね、この前のお礼にと渡されたんだ。一応臨時のバイトって扱いらしいけど限度額無しって太っ腹すぎない?」

 

「…知るか! 終わったらロビーに集合だ」

 

「……なに怒っているんだ、あいつ?」

 

 

奏はそう怒鳴るとトレーニングルームを出てゆく。

怒鳴られたソウキは面喰いつつも不思議と彼女に対して怒りが湧かなかったことに不思議がるのであったが怒った奏は心穏やかではなかった。

 

(太っ腹なものか。こいつ、あのノイズどもをぶっ倒せる力がシンフォギア以外にあることの重大さを理解していない)

 

 

 

それから暫くして…

 

 

「それで? オマエは何者なんだ? それとあの力は一体何なんだ?」

 

「だから言ったろ? 鬼だって?」

 

「だから! その鬼が何なのか説明しろって言っているんだ!」

 

「そう声を荒げるなよ。平日の朝とはいえ他にも客がいるんだぜ?」

 

 

 

学園から少し外れたところの商店街に店舗を構えるファミレスチェーン、イルズベイルのボックス席で食後のコーヒーを飲みながらソウキが奏を諫める。

 

奏の方はというと、ここまでの道中や食事中の間に何度も同じ質問をソウキに問い詰めていた。

だがソウキにのらりくらりと躱され続けていたためいい加減堪忍袋の緒が切れそうになっていた。

 

 

 

「なぁ? どうせ今日の夕方には弦十郎さんや立花ちゃん達を交えて説明するんだから今じゃなくっても…」

 

 

 

いい加減うんざりしてきたソウキは今である必要は無いと言いかけたところでそう言い切るのを止めた。

それは奏の目が余りにも真剣で、痛々しく、危うげな感じであることを感じ取ったからだ。

 

彼女がなぜそれ程までに鬼のことを気にするのか……その理由は分からないが唯の好奇心ではないことだけはハッキリと感じ取れた。

 

口を一文字に結び睨みつける年下の女性の追及をここまで躱し続けた手腕は見事であったが、そろそろ潮時だなと観念したソウキは自身について言葉を選びながら説明を始めたのだった。

 

 

 

 

「鬼っていうのは……そうだな、簡単に説明すると特別な方法で妖怪みたいな姿に変身した姿…みたいな?」

 

「妖怪?」

 

「正確には違うんだけど、まあ一瞬だけ人間を超えた存在になるって認識でいいよ」

 

「…確認するけど人間なんだよな?」

 

「人間だよ。この通りご飯も食べるし、無茶をすればケガもする。普通の人間よりは頑丈だけどね。…ごめんちょっとトイレに」

 

 

 

そう言うとソウキは席を立ったのが、彼は大事なことを見逃してしまう。

 

 

 

「……そうか。だからこいつはノイズに触れても平気だったのか……」

 

 

 

一人席に残された天羽奏の表情は、怪しくもどこか希望を見出したかのようにほほ笑むのであった。

 

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