2人はシスタを抱き抱えていたが空間にシスタを入れてそこで治療することにしたのだ。なにせ血まみれの人間を抱えていると目立つからだ。
「あら、貴方達この辺りじゃ見ない顔ね」
「ええ、それより聞きたいことがあるのだけれどテンペストって知ってるかしら?」
「あの国に何か用があるのかしら?」
話しかけたのはミュウランだった。それを2人は知らない。この人がテンペストに救われたということも。そしてなぜこの場にきたのかという理由も。
「なぜ貴方達はここにいるのかしら?返答次第では」
そういい杖に魔素を集めていくミュウラン。しかし2人は慌てない。もっともミュウランよりはるかに強い2人は慌てない。しかしフローラは空間からシスタを出すことにしたのだ。もしかしたらこの人が何か知っているかもしれないという思いを込めて。
「シスタ様!?」
「知ってるの!?っていうか様?この人何か偉い人なのかしら」
「偉い人も何も。いやそんなことよりはやくテンペストに」
「そのテンペストなのですが方向はどちらなのでしょうか?場所さえわかればすぐにいくことができますので」
ミュウランは首を傾げながらも方向を指さす。 そしてその瞬間に2人は宙を飛び一瞬でミュウランの視界から消え去ったのだ。
ミュウランは慌てはしたもののそれ以上は何も考えなかったのだ。というか考えると頭が痛くなるからだ。シスタもリムルもミュウランにとっては埒外の化け物なのだ。
ミュウランは考えるのをやめて頭を抱えながら王宮に戻って行ったのだった。
2人は空を飛びながら下を見ているが街も見えない。それどころか見えるのは遥か先にある森だけなのだ。いったいどこにそのテンペストがあるのかと思いながらもだんだんスピードを上げていく。
そして森の上を通り過ぎようとした途端に急に発展した街を見つけたのだ。
そこに降りて入ろうとするが結界が張ってありそれは入りにくいものだったのだ。
「ビアンカさん、どうしますか?」
「うん、壊そっか。いつもならゆっくり待ってられるんだけど今回はそうも言ってられないし。後あの人出しといて」
「わかりました」
そういい自身の鞭に魔素を込めていくビアンカ。その一撃はテスタロッサたち原初の悪魔が放つ核撃魔法よりも魔素が込められているのだ。
「ちょっと!ビアンカさんやりすぎは」
「わかってるわ。そーれ」
可愛く言ったがその一撃は結界だけではなくそのあたり一帯を吹き飛ばしたのだ。誰もいなかったのが幸いだがそれ衝撃はテンペスト全域に広がり幹部以上の者たちはすぐに転移や移動できたのだ。
「おい、貴様らこんなことをしてタダで済むと思ってるのか」
「あらあらベニマル様お下がりください。修行の成果を試すのにちょうど良い相手かと」
「ち!」
「なーんか勝手に話進んでるけどこの人知ってる?」
そういい背中で隠していたシスタを見せる。するとテンペストの連中は一気に顔色が変わりフローラからシスタを取り上げた。
しかしそれはフローラが許さない。取られた瞬間に取り返したのだ。
「我が君に何をした!?」
「ボクも久々にカチンときちゃったよ」
「待て待てお前らが暴れたらえらいことになるだろうが!」
「あらベニマル様はシスタ様のことなどどうでも良いと?」
「そんなことは言っていない。ただリムル様を待てと言っているんだ」
「そんなことよりここにこの人を治療できる人はいるのかしら?フローラが治療しているのだけれどあまりに傷が深すぎて」
そんなことをいうが悪魔やクマラにはその言葉が耳に入らない。なぜこいつがシスタを担いでいるのかそれが不可解で仕方なかったのだ。それぞれが自身の核撃魔法を放つ。
しかしそれはビアンカの
本来核撃魔法は火球の遥か上の魔法なのだ。たとえ自信が敬愛する主であるシスタであっても自分たちの核撃魔法を火球で防ぐなんてことはできるわけがないのだ。
そしてそれは一つの事実を指し示していた。自分たちの目の前にいる2人はここにいる誰よりも格上であるということ。そしてそれは3人だけではなくここに駆けつけたもの全てが理解していた。
2人が本気ならここにいるものたちはすぐに殺されると。
「なんの騒ぎだ!?なんで結界が壊れてる?」
「リムルさまこの者たちが」
「あ、あなたがここの一番偉い人なのかな?」
「まぁそうなるな」
「ならここで一番キレイな場所を用意してください。わたくしが治療いたしますわ。あとその白い髪の女性も来てくださいませ」
そういいリムルは誰も寄り付かない街から離れた湖畔を案内した。そこは幻想的な風景が広がり確かにキレイな場所だ。
フローラは当たりの草を集めて固め、即席のベットを作る。ここに来るまでにかなりの魔素使っていて回復に回せる魔素量が少ないのだ。常にシスタの周りを空気に触れないようにしていて大きい傷が塞がってからは仮死状態にしているのだ。
つまり常に二重にスキルを発動している。問題はその精度なのだ。
リムルですら仮死状態にしている氷の方しか気づいていなかったのだ。
「ビアンカさんそろそろですわ」
「ええ」
「あなたには私たちが倒れた場合少し魔素を分けてほしいのですわ」
「わかりましたわ。それでシスタさまが助かるなら」
シスタの体は段々と浮いていく。そしてフローラは氷と空気の膜を一気に解く。そして2人はシスタに向けて全ての魔素をシスタに向けて流し出した。
そしてシスタの体はそれを拒絶することなく受け始めたのだ。2人とも全ての魔素を流してもう一歩も動けないと言ったところでシスタの体には傷が一つも残っていなかった。
しかしシスタはそれでも目を覚さなかったのだ。テスタロッサはとりあえず2人に動けるだけの魔素を流しシスタを受け止める。
息もしているし血も止まっていたが二つの傷は消えていなかった。
目にある傷と腹に空いた傷だった。テスタロッサはシスタを抱き抱え3人で帰っていく。
シスタは何も言わない、それどころか目を覚まさないがテスタロッサにとってはさっきの姿を見ていたために今の体には十分安心している自分がいたのだった。
「シスタさま」
テスタロッサはつぶやくがシスタからの反応は何もない。今はただそれでも良かったのだ。ただほんの少し、ほんの少しだけでも反応が欲しいと思ったテスタロッサなのだった。そしてそれは叶うことになる。
シスタを抱き抱えながら握っていた手がほんの少しだけ反応するように握り返してきたのだ。
「シスタ……さま。いつまでもお待ちしております。必ずや帰ってきてくださいませ」
そうつぶやくテスタロッサの頬には本来流れるはずのない涙が落ちていくのだった。
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