ユキとシスタ2人は無言のまま座る。しかしそれはすぐに壊れる。ユキの眠気が限界に来たのだ。
「あたしの負けだ。今回は諦めるけどまた……」
「おやすみ」
ユキを抱えて布団に寝かせる。そしてまた縁側に行くと起きている面子がいた。
「こういう静かならいいんでしょ」
「まぁな。けどもう寝ててもいいぞ」
「我らは我が君と飲みたいのだ」
「そーそシスタ様がいいんだったらだけどね」
「まぁいいけど」
シスタたちは各々酒を飲みながらたわいもない話をする。その中には明日から行うユキの訓練の事も話した。
なるべく軽くしてやって欲しいと。
「お任せください」
「努力はするぞ」
「気をつけるよ」
「まぁほどほどだからな」
テスタロッサたちは納得してくれた。そこからは眠くなったのでシスタは部屋に戻る。ウルティマもついてきてそこで言い合いになっていたがもう頭が回らないのでほっておくことにした。
「ん、重い、暑い」
頭が回らない。ウルティマだけならこうはならないはず。目を擦りながら起きると上にはカレラが乗っていて左にはテスタロッサ、右にはウルティマがいた。全員が薄い服だから肌が当たってる感じする。
「暑い。どーけ」
「キャッ!」
「うわ!」
「グフッ」
シスタが起き上がって手をいきなり動かしたために3人ともに当たった。3人とも起き上がってシスタの方を見る。
「あら、おはようございますシスタ様」
「あぁ、おはよう、じゃなくて何事!?」
「昨日ウルティマから話を聞いてこれが妥協点になったんだ」
「なるほどね。じゃねーよ。しんどいわ。休めるところまで気が休まらないわ!」
「それは我々に緊張したということですか?」
テスタロッサのその言葉に言葉が詰まるシスタ。いくら興味がないと言っても周りにいるのは以上なまでの美人。大人の美貌に妖艶さを持ち合わせたテスタロッサ。ロリキャラとも言い難いキャラをもっているウルティマ。いかにも高校生ぐらいでいそうなキャラなのにその容姿、雰囲気はそこら辺にいる大人を遥かに凌駕しているカレラ。この3人が寝ているとなれば話は別なのだ。
「とりあえず今日から始めるからな。服着替えて迷宮に集合な」
3人ともに伝えてユキが起きてきた。
「さて今日から死ぬ気で特訓してもらうからな」
「マジか」
「マジです」
ユキは呆れながらも嫌そうではない。昨日それなりにみんなことが少しわかったんだろう。
「さてと着替えたら昨日行ったところに」
「了解」
「僕はアゲーラと特訓でもするか」
シスタはアゲーラを探しに行く。少ししてすぐに見つかったので一緒に迷宮に行くと前に4人がいた。
「とりあえずある場所をラミリスに作ってもらったからそこに行こうか」
4人とも移動する。アゲーラも一緒に移動する。
「さてとお前たちはそっちで特訓しててくれ。後これと」
そういいながら四つの腕輪を渡す。それを見た3人は意味がわかったように手につける。しかしユキは意味がわからないようだ。
「まぁ腕につけとけよ。じゃないと死ぬから」
「え"っ!?それなら」
ユキはいそいそと腕につける。そして中に入ってまとめて転移する。
すると目の前に広がったのは大小様々な岩が転がって平地だ。
「なんだここ?」
「最終日は僕との対戦だろ」
「シスタ様は銃にとって有利な場所を用意してよろしかったのですか?」
「僕にとってはそっちの方がいいよ。特訓も兼ねてるし」
「今のこいつがシスタ様の特訓になるとは思えないのだが」
「は、はーん。なるほどね。そこまで鍛えられないのか。じゃあ僕が変わろうか?」
「!我が君が行うまでもなく我らで十分だ!」
カレラのその言葉に各々が賛同する。決して怒るわけではないがそれでもシスタの手を煩わせずとも自分たちがそれほど鍛えるということだ。
「さてアゲーラ僕たちは向こうでやろうか」
「御意」
さすが武人肌。挨拶までも武人っぽい。アゲーラと部屋の隅により2人は向かい合う。
「さてお互いの武器でやろうかといいたいところだけど流石に性能の差ですぐに壊れる。ということでこれを用意した。なかなか壊れないなら思いっきりやっていいぞ」
そういい空間から取り出した木刀をアゲーラに投げる。話した通りかなりの強度があり例えヴェルドラが殴っても一撃なら耐えられる。まぁ二発目には木っ端微塵になっているんだけど。
「それじゃあやろうか」
「では」
そういいシスタとアゲーラが木刀での勝負を始めた頃ユキたちはというと。
「さてまずはわたくしですわね。以前にもお話しした通りこの世界においては魔素と呼ばれるものがあると話しましたわね」
「あぁ」
「その量はいろいろな方法で増やすことができます。あなたの魔素量はここにいる3人よりも多いです。しかし使えなくてはただのゴミと同然」
「キツイな言い方」
「しごきますので」
「まぁそれがあたしにあることすらわからないんだけどな」
「わたくしはあなたに対してコントロールを1週間で叩き込みます。少々きついですが耐えてくださいね」
そこからテスタロッサは確かに鬼のようにしごき始める。
「まずはあなた自身が魔素を感知できなければいけません」
「どうやったらいいのか教えてくれ」
「では少し。今のわたくしを感じてください」
「??」
「少し放ちます。気をしっかり持ってください」
その言葉を言い終わると同時にテスタロッサは自身が抑えていた魔素を放つ。
「うっ」
「わかりますか?」
「これが魔素の解放。これを抑えているのが普段です。彼方が解き放ってるのはこれと同等です」
「なるほど体の内側に押さえ込むイメージか」
ユキは少しずつだが体の中に魔素を抑えていく。それを見たテスタロッサは満足していた。
「けほっ!」
「あらここまでのようですわね。これ以上は死にますわよ」
「もうちょっとだけ」
「やれやれ。少しだけですわよ。体が壊れますわ」
テスタロッサが諦めた瞬間にユキは魔素のコントロールを物にした。しかしそこで張り詰めていた糸が切れたのか前のめりに倒れる。地面に着く直前それをテスタロッサが受け止めたのだった。
「ここまでの人だとは驚きね」
カレラたちはすでにシスタとアゲーラの戦いを見に行っている。本音を言うとテスタロッサも気になってはいたがこっちも重要なのだ。
「それにしても1日で魔素を抑えることができるなんてね。3日はかかると思っていたのだけれど」
テスタロッサはユキを抱えながら回復薬を腕にかける。まだ慣れていないのもあって押さえ込んだ魔素に体がついてきていない。そして部分的に崩壊を繰り返して慣れていっている。
そして段々と崩壊が小さくなっているのだ。倒れてテスタロッサの腕の中にいる今も体が魔素に順応している。恐ろしいと言うほどの順応の高さだ。テスタロッサとの訓練は1時間にも満たないが内容自体は恐ろしく濃いものとなっていた。
「さてとそれじゃあやろうか」
「承知いたしました」
アゲーラとシスタはそれぞれを構える。シスタは一枚のコインを投げるとそれが地面に落ちたと同時に2人は動き出す。武器の性能は同じ。勝負を分けるのは単純な実力の差だ。
アゲーラは刀を振り下ろすとシスタはそれを受け止めるのではなく体を横に回転させながらそれを避けてそのままの勢いで刀を横に刀を振るう。しかしアゲーラはそれを読んでいたのか体を地面スレスレにまで倒してそのまま反転するように体を上げてシスタの顔の前に木刀を構える。
「マジか」
「御屋形様もなかなかです。自力でここまで剣を扱うとは」
「けどそれでも勝てなかったんだしな」
「もうすでに300年以上剣を使っておりますので。剣を持って数年でここまで来られるのは驚異かと」
アゲーラはそういい褒めてくれるがなかなか自身で納得できない。立ち上がりもう一度といい立ち上がって2人は斬り合う。
初めはカレラがアゲーラに斬りかかろうとしたが逆にシスタに斬られそうになった。
邪魔をするなと言わんばかりカレラに斬りかかったのだ。そこからカレラは一度も邪魔をすることはなく部屋の隅でシスタとアゲーラが斬り合うところを見ていた。2人は一度の瞬きすらしていない。息を呑む戦いとはこう言うことをいうのだと思う。
ほんの一つの動作。それが互いの駆け引きになっている。
シスタはそれでやっているがアゲーラは違う。ほんの一つの動作、呼吸それらを全て直感に委ねているのだ。だからシスタよりも攻撃が早く常にシスタは後手に回らざる得ない。
「今日はここまでだな」
「承知いたしました」
前もって見えるように置いていた時計がいい時間を示している。結局2人は何回もやりあったがシスタが勝てたのは一度もない。
「御屋形様、失礼を承知でお聞きします。なぜ一本しか使われないのですか?」
「まぁ失礼でもなんでもないけどアゲーラは一本しか使ってないのに僕だけ2本って言うのもなぁ」
「本当にそれだけが理由なら宜しいのですが」
その言葉にシスタの背中に冷たい汗が流れる。人間の体になってからヒヤヒヤさせられっぱなしだ。実のところ左手がほとんど動かない。刀を持って振るとかはできるのだが肘から下は感覚がない。ギィとの対戦の時に刀を作ってからはなかなか反応しない。人間の脳みそはどれだけ鍛えても0.1秒以上はなく伝達はできない。命のやり取りにおいてそれは致命的だ。
「ユキはどんな感じだ?」
「恐ろしいと思うほどの順応の速さですわ」
「そうか。なら休ませてやってくれ。家は僕のところでもテスタのところでも構わないから」
「承知しましたわ」
テスタロッサはユキを抱えながら迷宮から出ていく。シスタたちも少ししてから出ることにした。4人で歩いて途中で別れてバラバラに歩き出す。シスタは家に帰る。その他の奴らはそれぞれの職場に顔を出すと言った感じだ。
家に帰り中に入ると人の気配がする。1人はまだわかる。しかしもう1人いたのだ。刀に手をかけて中に入るとそこには
「おかえりなさいませシスタ様」
「シュナなんでここに?」
「テスタロッサ様から頼まれまして。シスタ様がお疲れで帰ってくるから食事を用意してあげてほしいとのことです」
「あー、そういうことか」
テスタロッサはユキの修行をしながら逐一視界で戦闘を見てたからな。状況を察したんだろう。それにこういう気遣いはあの3人の中ではずば抜けて高い。本当に秘書に欲しいくらいだ。これから行われる西側の代表にしてなければ間違いなく任命してたな。
「お待たせしました。ユキ様は起きたら食べれるようにしておきました」
「?シュナ食べていかないのか?」
「宜しいのですか?」
「構わないよ。ましてやシュナが作ったんだからそんな気遣いしなくても」
言ってて嫌になる。自分から言っててこんなことを言うんだからな。シスタは嫌気がさしていたがシュナは前に座り同じように飯を食べ始める。
そしてその日は終わった。そこからはあっという間で3週間が経つことになりいよいよシスタがユキのテストを行う日になったのだ。シスタはシスタでこの3週間でアゲーラに何百回と挑んだが結局勝てたとは一度だけだった。
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