最強の相棒として転生した件   作:麒麟@

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48話

 ユキとシスタの対戦の日。その日はシスタの直属の配下全員がシスタの家に集まっていた。

 

 

「今日ユキと対戦することはみんなも知ってると思う。それでユキと1対1をしても勝ち目がないからここから誰か1人選んでパートナーとして手伝ってもらえ」

「そんなこと言われてもあたしが知ってるのは3人だけだし」

 

 

 たしかにユキのいう通りテスタロッサたちのことは知っていてもその他の3人のことは全く知らない。

 

 

「それぞれにまぁ得意分野があるけどビアンカはほとんどテスタロッサとスタイルは変わらないと思う。フローラは魔法、回復が得意で残りの問題児は僕と変わらないぐらい剣が強いかな」

「ちょっと問題児はひどくない!?」

「事実だし」

 

 

 シスタがいうと誰も肯定はしなかったが否定もしない。問題児という点では全員の共通認識なのだから。

 

 

「それならマヤさん頼みます」

「りょーかい任せて」

 

 

 ユキが選んだのはマヤだった。この中の全員の共通認識の問題児を選ぶとは想定外だった。けれど相手になるなら一番めんどくさいかもしれない。剣の腕は僕と同等クラス。魔法もそれなりに使えるから先手を取れない。

 他のやつならまだ僕が何かしら先手を取れるがマヤなら話が違う。僕から却下も出せないし、仕方なく迷宮に向かっていった。

 

 

「それじゃあ始めるか。時間は10分。その間に僕に究極能力を使わせるか、僕に傷をつけるか。マヤももちろん究極能力は使用禁止ね。思考加速も今回はなし」

「えーそれじゃあ戦えないよ」

「当たり前だ!今回は僕と戦うことが目的じゃないんだから」

「わかったよ」

 

 

 そこから一枚コインを出してシスタはそれを上に投げる。下に落ちるまでに全員が理解したのだ。これが落ちたら始まるのだと。

 コインが甲高い音を立てて地面に落ちる、その瞬間に動くと思っていたユキだがマヤもシスタも動かない。ユキは疑問に思ったがこのまま膠着状態だと時間がなくなるので一発撃つことにした。

 撃った球と並行にマヤが進んでいく。短い距離だからスピードはほとんど変わらずシスタに剣を合わせる。

 しかしシスタはそんなマヤを見て心底嫌そうな顔をしたのだ。

 

 

(こいつついさっき言ったこと忘れてやがる)

 

 

 シスタが嫌がったのはマヤが殺る気満々なところだ。その一太刀目を受けとてるのではなく避けてユキが飛ばしてきた弾丸を切るシスタ。

 切った直後を狙ってきたかのように刀を振り下ろすマヤだがそれをシスタは弾き飛ばす。

 

 

「なぁ!?」

「こんなので驚いてたらキリがないよ。攻撃しないと」

 

 

 ユキはマヤの言葉にわかったというばかりに両手に銃を構え連発する。それに合わせて逃げる場所を塞いでいくマヤ。こればかりは無理だろうと見ていた5人だったがシスタは避ける気はなく目を閉じた。

 

 

「何してんの?死ぬよ」

 

 

 シスタは避けるそぶりなく弾丸を最小限の動きで交わすだけでなくその動きに連動するようにマヤに反撃を繰り出していく。

 

 

「はぁ!?なにそれ。というかシスタこんなことできたの」

 

 

 マヤのキレ気味の質問にも無言で回答する。それを見たマヤはバカにされていると思い剣にどんどん魔素を集めていく。頭にきたのだ。もうシスタが最初に行ったことなんて覚えていない。天真之王(メフィスト)を発動させたのだ。流石のシスタもこれは見て避けないと本当に死ぬと思ったのだろう。

 目を開けて迎え撃つ。ユキもどんどん打つ速度を上げていく。

 シスタはマヤを迎え撃ちつつユキの弾丸を防ぐが後手に回っているせいで段々と捌ききれなくなっている。

 

 

「鬱陶しいわ!」

 

 

 シスタが大声で叫ぶと全員が驚くことが起こった。シスタの口から炎が出たのだ。しかもとんでもなく広範囲に。

 

 

「あっつ。ってかなんだこれ」

「あつつつつ。なにそれ?」

「隙あり」

 

 

 ユキは全員が驚いていたところでシスタの前で銃を構える。

 

 

「あたしの勝ちだな」

「さぁてな。その銃撃っても当たらないよ」

「は?」

「撃ってみろよ」

 

 

 シスタがそういうとユキはトリガーに指をかける。しかしそこから全くと言っていいほど指が動かないのだ。

 シスタはユキの指を見ると微かにだが震えていた。

 

 

「ここまでだな」

「あたしは!」

「仮の合格だ。多分だけどユキは前の記憶ないだろ」

「あ、あぁ。思い出そうとしてもモヤがかかったみたいに出てこない」

「やっぱりな」

 

 

 2人が話しているがまだ決着がついてないことで納得してない奴が1人いた。

 

 

「まだ決着はついてないよ!」

「あぶな!」

 

 

 マヤが横なぎに振った刀はユキごと斬りかねない勢いだった。ユキを即座に持ち上げて交わしたが本当にギリギリの紙一重だったのだ。

 

 

「お前」

「まだだよ」

「はぁ、一回完膚なきまでに叩きのめすか」

 

 

 ユキを浮かせて刀を右手に持つ。そして停止世界を限定的に発動させる。しかしシスタが驚いたのは停止世界でもマヤが動けていることだ。現にテスタやビアンカたちは止まっている。

 

 

《ヴェルザードとの戦いにて覚醒したようです。しかしそのせいで力に飲まれつつもあります》

(なるほどね。だからさっき言ったことも)

《その説が一番高いかと》

(りょーかい。このまま停止世界を使うのはやばいな)

《はい。魔素の消費が激しいのでやめた方がいいです》

 

 

 ルウェルからの警告でシスタは停止世界を解く。しかし万能感知もない今マヤを殺さずに止めるのか。なかなかにハードだな。ユキの重力を解除して下に落とす。

 

 

「ユキ手伝え」

「けどあたしは……」

「人間を撃てねぇのはわかった。けど守りたいものを浮かべろ。ここにいる奴らを守りたい、その気持ちがあるならそれを抜け。何ならそこでずっと倒れてろ」

 

 

 ユキは立ち上がりシスタの隣に並ぶ。そして銃に手をかける。

 

 

「あたしはまだ撃てないかもしれない。けどこの世界でお前とあいつらと生きていきたいと思ってる」

 

 

 ユキはそう言いながら端にいるテスタロッサたちに目をやる。

 なるほど、散々やられたようだけどしっかりと絆はできてたわけか。

 

 

「なら前に出なくていい。最後の一撃をうて。それまではしっかり戦いを見て考えろ。自分が撃った弾丸がどうなるか。それを考えて予測しろ」

「わ、わかった」

 

 

 ユキの声は震えている。それもそうだ。さっきまで撃てなかったのに急にやれと言わんばかりに言ったからだ。

 しかしここで壁を超えない限り考えていることすら実行できないのだ。

 

 

「さてと付き合ってやるか。とことん来いよ。全てを投げ出して相手してやる」

「し、シスタ。あたしと、あたしを」

 

 

 ?最後なんて言ったこいつ。いやそれよりまずは相手をしないとな。真剣に相手にするのはあの時以来か。ただあの時とは2人とも違う成長を遂げている。一度目は僕の負け。二度目は勝ち。三度目はどうなることやら。

 2人とも話しながら高速で斬りあう。上から、下から、左から、右から多種多様なシスタの攻撃に対してマヤの攻撃は単調そのものだ。

 

 

「あれはあいつの攻撃じゃないな」

「ええ、何かに取り憑かれているようですわ」

「うん、そうだよね。少なくともシスタ様が何回もやってるフェイントに今までだったら反応してたもん」

 

 

 テスタロッサたちはそんなことを言いながら見ていた。3人とも手を出す気は一切ない。しかしそれとは別のことを警戒していたのもまた事実。それを止めるために常に臨戦態勢を取っていたのだ。

 

 

「はぁこいつ勇者の卵が孵化してから強くなりすぎだろ」

《レベルで言えば今テンペストで勝てる可能性があるのはマスター、リムル、後ビアンカとフローラです》

(僕とリムルはまぁ相手のことを解析できるけど後者の2人は?)

《正直にいうとあの2人の実力はまだ見ていないために図りかねます》

(なるほどね。まぁ仕方ないか。今からマヤを徹底的に倒すからそっちの方で計算よろしく)

《了解しましたマスター》

 

 

 シスタとマヤは剣で打ち合う。しかしシスタもさっきのようにフェイントを入れずに一撃、一撃に力を込める。フェイントに一度も乗ってこないからだ。しかし一向に決着がつく気配がない。

 シスタは一度距離を取り刀を鞘にしまう。そして刀を想像で作ろうとした瞬間にその手は止められた。

 

 

「シスタ様今なにをしようとされましたか?」

「いや、これしかないと思って」

「それは禁止のはずですが」

「え、いや、はい」

 

 

 テスタロッサに手を止められてお説教を食らってしまう。その威圧感に逆らえるわけもなくどちらが上の立場かわからない状態だった。その間ウルティマとカレラでマヤを抑えている。

 しかしそう長くは続きそうにない。この3人の中ではあの2人がマヤとの相性がいいだろうが何より技術の差が明らかだ。

 

 

「悪かったよテスタ」

「こちらこそ偉そうに申し訳ありませんでしたわ」

 

 

 テスタロッサは頭を下げる。あの時は頭の中でシスタを止めるということしかなかったために偉そうな言葉遣いになってしまったのだ。しかし現状そこまでなにも言えない。

 視線を動かしカレラたちの方を見ると魔素がどんどん削られていっている。

 

 

「カレラ、ウルティマ交代だ。あとはゆっくり見ててくれ」

「承知したぞ我が君」

「はーい」

 

 

 シスタは二本の剣だけでなく空間からありとあらゆる剣を出す。それを重力之王にて操作して手数を増やす。それに呼応するかのようにマヤの攻撃も増えていく。

 しかし攻撃の数が違う。捌くので精一杯という感じだ。

 

 

「ユキ!」

「わ、わかった」

 

 

 返事はするが銃弾は飛んでこない。そうなると段々とマヤが慣れてくる。変幻自在の刀でも本数は変わらないのだ。その分撃ち落とす刀と避ける刀の選別が出来始めている。

 

 

「テスタ、ウルティマ、カレラなんとかあいつに撃たせてやってくれ)

(かしこまりましたわ)

(なぜあいつにそこまでこだわるのだ我が君。我1人では無理でもここにいる全員でかかればあいつを倒すことぐらい余裕だろう)

(カレラ?シスタ様がそう言ってるのに)

(まぁまぁ、カレラの言い分はわかるよ。けどそれで見捨てる気にはなれないかな)

(なぜだ我が君?)

(うーんそれこそ説明が難しいんだけど僕の直属の配下つまりテスタロッサたちはいつか僕を助けてくれる気がするんだよ。その中にはユキも入ってる)

(〜〜〜!納得いかないが了解した。我が君のその直感を信じよう)

 

 

 魂の回廊で話していたためにマヤにはなにも聞こえない。そしてシスタはさっきよりも攻撃の速度を上げていたためにマヤもそれに手がかかるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、あなたをこの3週間徹底的に鍛えました」

「あぁ、けどあたしは」

「我が君に言われたのだぞ。死んでも応えろ」

「カレラそれではただの脅しよ」

「けど脅したぐらいのほうがいいと思うな」

「いいえ、あなたが撃てないことはわかりましたわ。けれどシスタ様をマヤを助けたいのならばその手に握っているものを使いなさい。あなたの一発が勇気がこの現状を変えるのです。まぁ無理なら構いませんが。あなたが無理ならわたくしたちがやるまでです」

 

 

 テスタロッサはそういい前を向く。次の瞬間からユキの方を向くことはなかった。




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