ペプシンマンIN幻想郷Ⅱ
今日も幻想郷を走り続けるペプシマン。例えそこが深い森であっても、下水道や荒野を走り抜けてきた彼にとっては問題ない。
ペプシを求める人のため、今日も走り続けるペプシマン。そんな彼だが、突如、目の前が光なき暗闇に包まれた。
「なに!?」
慌てて立ち止まり、周りを見渡すペプシマン。だが、彼の視界に光はなく、ただただ闇だけが広がっている。
「お前……妖怪なのかー?」
戸惑うペプシマンの耳元に少女の声が聞こえてくる。慌てて周りを見渡すも、やはり闇しかない。
「妖怪ではない。私の名前はペプシマンだ。それより、君は誰だね? これは君の仕業なのかね」
姿なき声に問いかけるペプシマン。だが、彼に対して帰ってきた返答は声ではなく、右肩を走る痛みであった。
「アーーーーー!」
突然の激痛にペプシマンは慌てて暴れると、右肩の上から何かが離れ、それと同時に痛みもある程度引いた。
「むー、なんか変な味ー。もっと味見してみるのかー」
そんな呟きと共に、何かが動く気配をペプシマンは感じた。これはマズイ、と彼の本能が叫ぶ。
「じゃぁ、いただきまーす」
「Nooooooooooooooo!」
声を振り切らんとペプシマンは走り出す。常闇の中をいくどとなくこけて、何かに激突し、段差を転落しても彼は走り続ける。走って走って走り続け……やがて、彼は力尽き、地面に倒れこむ。そして、彼は既に暗闇の中に居ないことに気づいた。
「な……なんとか逃げきれたのか……幻想郷とはここまで恐ろしいところだったのか……」
自分の命が助かったという現実にペプシマンはホッと一息つく。そんな彼の視界に小さな沢が映った。
「喉も乾いたな……ここは文明が発達していないから大丈夫だと思うが」
そう言うと、彼は沢に行き、水を掬うと一気に飲み干す。ペプシコーラのヒーローである彼であるが、だからこそペプシコーラばかりを飲むことは体に悪いというのはわかっていた。
「おや、あれは?」
ふと、ペプシマンの視界に、木から吊るされている籠が映る。それは川の中にまで入っていて、中には何か入っているようだ。
興味本位で近づいてみると、そこには何本ものきゅうりが入っていた。
「こんな山奥にだれか住んでいるのか?」
こんな山奥に住んでいるとなればなにかと不便であろう。都会を生活の場としているペプシマンにはどうも信じにくかった。
「ちょっとそこの妖怪、私のきゅうりに触らないでよ」
首をかしげるペプシマンに突然罵声が浴びせられる。ペプシマンが振り向くと、そこには水色の服を着て、緑色の帽子を被り、背中にはリュックを背負っている青い髪の少女が立っていた。
「変態ではない、私はペプシマンと言う。このきゅうりは君のなのかね?」
「そうだよ。てか、ペプシマンってなんなのさ……。どう見ても妖怪じゃないって怖! あんたのっぺらぼう!?」
「だから、私は妖怪でものっぺらぼうでもない。私は……」
ペプシマンは自分の経歴、そして幻想郷に迷い込んできた後の事を少女に話す。
「ふーん……霊夢達にはもう会ってるのね」
「うむ、彼女たちには世話になった。ところで、君の名前を教えてもらえないか?」
「ん? 私の名前は河城にとり。河童よ」
河童と言うのが何かペプシマンにはわからなかったが、恐らくは妖怪なのだろう。と納得する。
「それではにとりさん。先ほど突然辺りが暗闇になったと思うと何者かに襲われたのだが……。何か心当たりはあるでしょうか?」
「ああ、それはルーミアよ。彼女妖怪とか食べたりするから襲われたんじゃない? と言うか、まさか退治したの?」
「……恥ずかしながら逃げるので精一杯だよ」
ペプシマンの言葉ににとりは呆れた表情を浮かべる。
「あんた、ルーミア一人どうにかできずにこの幻想郷を走り回るつもりなの? 言っておくけど、ルーミアよりも強くて恐ろしい妖怪なんていくらでもいるわよ」
「うむ……。だが、私にはペプシを届ける使命がある。この使命を放棄するわけには……」
「と言うかさ、気になっていたんだけど。外の世界でもあんた一人でペプシ配ってるの?」
にとりの質問にペプシマンは首を横に振る。
「いや、ペプシコーラは元々ペプシ社の販売物だ。私以外にも大勢の従業員が居るし、自販機も多く設置されている」
「ん? 自販機って? 外の世界の機械なのかい?」
自販機。と単語に興味を持ったにとりに(なんでそんなものを?)を思いながらも自動販売機の構造を説明するペプシマン。
「んー……。確か、家にあるよそれ」
「なに? 自販機がこの世界に?」
にとりの言葉に、ペプシマンは思わず聞き返す。
「うん、前に道端に立っていてね、外の世界の機械に興味はあったから持って帰ったのさ。ちょっと、見てみる?」
「勿論だ、それが自販機かどうか、是非確認しなければ。さぁ、にとりさん案内を!」
そう言って、にとりに案内をせがむペプシマン。
「そう急かさないでよ、こっちだから」
せがむペプシマンの形相に若干引きながらも、にとりは自分の工房にペプシマンを案内する。
川のすぐ近くにあるにとりの工房。その地下室に案内されたペプシマンは己の目を見開いていた。そこには確かに彼の世界の機械……自動販売機が置いてあったのだ。しかも、全品がペプシ仕様となっている。
「これは……確かに自販機だ! まさかこの世界にもあるとは……」
自販機を見て興奮を隠せないペプシマン。
「ああ、これが自販機なのは間違いないようだね……でも、これ動かないんだよね。どういう構造になってるのか知ってるかい?」
「ふむ、私も完全に知っているわけではないが……」
そう言って、ペプシマンは彼が知る限りの自動販売機の構造をにとりに説明する。
「ほ、ほう……なるほどねぇ……。よし、さっそく修理してみよう」
「で、できるのか!?」
はっきり言えば、ペプシマンの自動販売機に対する知識も素人よりも多少知っている、と言うレベルである。にも拘わらず、既に修理する気満々のにとりの様子にペプシマンは驚きを隠せない。
「当たりまえでしょ。さ、人手はあるに越したことないから、あんたも手伝ってよ」
そう言って、にとりは強引にペプシマンにも修理を手伝わせる。否と言う理由もなく、ペプシマンはにとりの修理を手伝うのだった。