朝食を終えたペプシマンは博麗神社を後にすると、にとりの工房へと行くことにした。彼女から借りた台車を返却するためである。
出発してから1時間、妖怪に襲われることもなくペプシマンは無事ににとりの工房に到着した。
「やぁペプシマン。無事に自販機は運べた?」
「うむ、なんとか運べたよ。取りあえずこれをお返しするよ」
そう言って、ペプシマンはにとりお手製の台車を背中から降す。
「ああ、ありがとね。所で、ペプシってあんたが呑ませてくれた一つしか味がないの? 流石に一つしかないと飽きられるかもしれなくてね」
にとりの言葉にペプシマンは顎に手をやった。
「うむ……一応ダイエットペプシやペプシツイストと言った物もある。後は……きゅうり味やしそ味などもあるが……あれは評判が悪かったからな……」
「きゅうり味!? ペプシマン、それは出せるの!?」
きゅうりと言う単語ににとりが目を輝かせて食いつく。
「う、うむ出す事はできるが……さっきも言ったが評判は良くないぞ」
「そんなの呑んでみないとわからないよ。さ、さっさと出して」
にとりの気迫に押され、ペプシマンはきゅうり味のペプシを取りだしにとりに渡す。それを受け取ったにとりはすぐさまペプシを呑み始めた。
「……」
二口、三口呑み、ペットボトルから口を離すにとり。そして。
「うん、悪くないよ。人間達の間だと評判悪いって言ってたけど、河童相手なら十分売れると思うよ」
「そ、そうか。それなら良かった」
にとりの言葉にペプシマンは安堵の息を漏らす。
「さて、それじゃぁまた色々と聞きたいからさ、ちょっと手伝ってよ」
「うむ、承知した」
こうして、ペプシマンはにとりと共にペプシコーラ普及のために色々と相談する事になった。
それから数時間、途中で食事休憩をはさみながらも、二人はあーだこーだと互いに案を出したり否定したりして話し合いを続けている。
なお、にとりの提供した食事は全てきゅうり料理であったのは言うまでも無い。
そんな中、突然ペプシマンが立ち上がり虚空を見つめ出す。
「ん? どうしたのさ」
「呼んでいる……にとりさん、誰かがペプシを求めているようだ。私はこれで失礼しなくてはいけない」
「あ、そうなの? それじゃぁ頑張ってね」
「うむ」
にとりの言葉に力強く頷くとペプシマンはにとりの工房を後にし、空を走って行った。
その日魔理沙はアリスの家に遊びに来ていた。そして、お菓子を食べながらの雑談に興じていた。そして、その会話の中で魔理沙がペプシマンの事を話しだしていた。
「なんか、話だけ聞くとどこの妖怪って感じなんだけど。それ、本当に妖怪じゃないの?」
「少なくとも本人は否定してるぜ。まぁ、無害だしペプシくれるし、悪い奴じゃないと思うのぜ」
「ふーん……」
ペプシマンの説明を聞いたアリスは首をかしげるが、魔理沙の説明に取りあえず納得した様子を見せる。
「でも、そのペプシコーラって飲みものは興味あるわね。そんなに美味しいの?」
「ああ、あのシュワーって感じがたまらないのぜ。ああ、ペプシマンがここに来てくれたら実際に飲ませられるんだが……」
そんな事を話していると、突然アリスの家の扉が大きな音と共に開かれた。二人が驚愕の表情でそちらを見てみると、そこには腰に左手を当て、右手を開いて突き出した格好で立っているのっぺらぼう……ペプシマンの姿があった。
「おや、ペプシを求めたのは魔理沙さんでしたか」
「あ、ああ。確かに欲しいと思ったけど……ペプシマン、本当にわかるんだな、驚いたんだぜ」
「うむ、それが私の能力だからな。ところで、こちらのお嬢さんを紹介してもらってもいいだろうか」
そう言ってアリスに視線を向けるペプシマンに、魔理沙はアリスの存在を思い出す。
「ああ、悪い悪い。ペプシマン、こいつはアリス=マーガトロイドって言って、この森に棲んでる魔法使いなんだぜ。アリス、こいつがペプシマン。見た目はあれだけど悪い奴じゃないんだぜ」
「初めましてアリスさん」
魔理沙に紹介され、ペプシマンが挨拶と共に右手を差し出す。
「あ、ど、どうも」
差し出された右手にアリスも右手を差し出し握手をする二人。
「では、お近づきの印としてこれを。魔理沙さんもどうぞ」
そう言うと、ペプシマンは二本のペプシコーラを取り出し、二人に渡す。
「お、悪いなペプシマン。……アーッ美味しいんだぜ」
「どれどれ……うーん、悪くないんだけどお菓子とかには合わないわね」
差し出されたペプシを飲んで魔理沙は喜びの表情を浮かべるが、アリスは少し微妙な表情を浮かべる。
「む……口に合わなかったか」
「あ、違うのよ。確かに美味しいし、炭酸の感覚も良いんだけど、ケーキには合わないな……って思って」
「あー、確かにケーキ食べる時には紅茶のほうがいいな」
ペプシマンの言葉にアリスは慌てて否定し、魔理沙も同意する。
「ふむ……確かに」
二人の言葉にペプシマンも頷く。
「あ、そうだ。ペプシをくれたお礼にここでケーキ食べていかない? 外の世界の話とかも聞いてみたいし」
「ああ、それは私も興味あるんだぜ。聞かせてくれよ」
「うむ、それではご馳走になろう」
こうして、三人は仲良く午後のお茶会を楽しむのであった。
午後のお茶会が終わったころ、既に日は暮れ始めていた。霊夢から日が落ちる前に戻ってきたほうが安全だと言われていたこともあり、アリスの家を後にし、ペプシマンは博麗神社に帰宅した。
「あら、お帰りペプシマン。ちゃんと日が落ちる前に帰ってきたのね」
帰ってきたペプシマンを見つけ、霊夢が迎え入れる。
「お風呂にする? それともごはん先に食べる?」
「ふむ、それでは先に晩御飯を頂きたい。何か手伝えることはあるだろうか?」
「それじゃ、蔵からお米一袋運んできて頂戴。それと、お風呂用の薪も持って行っといて」
「承知した」
霊夢の頼みを承諾したペプシマンは蔵でお米と薪を担ぐと、足早に台所と風呂場に持っていく。そのついでに自販機の充電も済ませると、霊夢が呼んだので、ペプシマンはそのまま居間に足を運んだ。
居間に到着したペプシマンを迎えたのは簡単な和食と霊夢であった。朝食と良い、毎日走り続けるペプシマンの体からしては少々質素な食事であったが、居候という立場を弁えて何も言わず、ペプシマンは両手を合わせてから食事を始めた。
「ところでさ、今日は何か進展あったの?」
「うむ、にとりさんの所では河童達にはきゅうり味のペプシが売れそうだという事を教えてもらった。後、アリス=マーガトロイドという方に出会ったが、霊夢さんはご存じだろうか?」
「ああ、アリスね。でも、彼女ってペプシなんて飲むのかしら?」
「確かに、あんまり気にいっている様子はなかったが……、それでもたまに買いに来てくれるだけでもありがたい」
「ま、収入がないもんねぇ、しっかり稼ぎなさいよ」
「う、うむ」
食事をしながら、今日の出来事を話し合うペプシマンと霊夢。やがて食事を終えると、明日も早いという事で、ペプシマンは客室に戻った。そこには既に霊夢によって布団が敷かれている。
「むぅ……細かい心配りのできる女性……アメリカではあまり居なかったが……。霊夢さんは良いお嫁さんになれるかもしれんな……相手が居るかはわからないが」
そう呟きながらペプシマンは布団に入る。まだ布団に慣れてはいない彼であったが、今日の疲れが彼を睡魔へと誘い、やがて寝息と、時折『シュワー!』や『アー!』という寝言が聞こえてきたのだった。