「久しぶりだな」
「……アア」
今、私とレ級はとある岬に建てられた建物の中にいる。この建物の名前は平和記念館。深海棲艦との講和を結んだことを記念して建てられた建物だ。
ペプシマンとの遭遇の後、私達はその場にいた深海棲艦達と話し合いを行った。そして、その事を鎮守府に報告したところ、国連において深海棲艦との講和を結ぶことが締結されたのだ。政治家たちがどのように考えたのかは私にはわからない。だが、結果として人間と深海棲艦は講和条約を結び、更に深海棲艦は国を樹立。人間達と国交を結ぶまでにこぎつけたのだ。
今目の前に居るレ級は、深海棲艦からの大使としてこの地に住んでいる。移動する際には監視役が付き添うようになってはいるが、それでも深海棲艦が国内を闊歩できるようになったと考えれば大きな歩み寄りと言えるだろう。
「……コイツハ今頃ドコニ居ルンダロウナ?」
「……さあな」
そして、今日は私とこいつとのプライベートな時間だ。なにせ5年前の今日、私達は彼に会ったのだから。その記念日ぐらいプライベートでも構わないだろう。
今、私達の前にある彫像。それは私達の証言や秋雲の絵を元にして作られた彼の彫像であった。ポーズはあの片手を突き出した姿であり、彫像の名前は平和の使者、ペプシマン。
「……本当ニ、人間ノ世界ニ居ナイノカ? 私達ノ方ニハ居ナカッタゾ」
「間違いない。ペプシコーラを販売する会社はあったがペプシマンという存在に対しては正式に否定しているし、国連が総力を挙げて捜索しても手掛かり一つ存在しなかった」
「……フン、薄気味悪イ奴ダ」
「そう言いながら、あの時渡されたペプシの缶を持ったままなんだろ。ヲ級から聞いているぞ」
「……オ前モダロ」
「ああ、勿論だ」
あの時私とこいつに渡されたペプシ缶。それは今でも互いに持っている。あの時互いに飲んでみたが、味は……ああ、美味しかった。戦いに傷つき、疲弊した私達にあの味はまさに甘露だった。無人島に設置されていたペプシもその場に居た艦娘、深海棲艦によって配布され、全て飲み干された。今もペプシコーラを購入はできるが……あの味に勝る物は味わったことがない。
「……彼が何者かなんてどうでもいい。私達は彼によって新しい形を築けた。それだけで十分だ」
「……フン」
鼻を鳴らしながらもレ級は頷く。ペプシマン、どこの誰とも知らぬ者よ。どうかまた会いに来てくれ。貴方をキッカケに平和になったこの世界を、どうか見てくれ。
その日、霊夢は自販機の充電器を回していた。
「まったくもう……どこいったのよあいつは」
ブツブツと文句を言いながらも充電器を回す霊夢。しかし、聞き慣れた音に手を止めて音がする方向を向く。
「やっと帰ってきたか」
霊夢の視線の先には舞い上がる砂埃。そして、それを発生させながら走っている人物……ペプシマンの姿があった。
「む、霊夢さん、ただいま戻りました」
「お帰りなさい。一日中どこほっつき歩いてたのよ。充電が切れたから回しといてあげたわよ」
「おお、それはかたじけない」
頭を下げて礼を述べるペプシマン。そんな彼の目の前に霊夢が一通の手紙を差し出した。
「あんた当てに招待状よ」
「招待状?」
ペプシマンが受け取った手紙。そこには綺麗なバラの印がされた封印がされており、差出人の部分には『紅魔館当主・レミリア・スカーレット』と記されていた。
……続く?