イリヤを救う為なんだ!   作:大いなる犠牲

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プロローグ~幸せ~

切っ掛けは些細な事。

第四次聖杯戦争へのマスター権を目的にアインツベルンに婿入りした衛宮切嗣はアインツベルン家第八代目当主ユーブスタクハイト・フォン・アインツベルンが手ずから造り出した完璧なホムンクルス『アイリスフィール』との間に子を儲けた。

 

人とホムンクルスの間に生まれた赤ん坊を人かホムンクルスか判別するには一議論起こるがそれを割愛し、誕生したイリヤスフィールは――ホムンクルスの鋳造において右に出るものは居ないと言わしめるアインツベルン家にして、最高傑作と言っても過言ではないほど才を秘めたる少女だった。

 

ユーブスタクハイト・フォン・アインツベルン……アハト翁は、もし此度の聖杯戦争でアインツベルンが敗退する可能性を理由に彼女を次の聖杯戦争のマスターとして“調整”を加える事を決断する。

 

 

ここまでは、Fate/stay night,Fate/zero,多少の差違あれどこれ等の並行世界と本筋は変わらない。

 

問題は一つ。

ホムンクルス鋳造において当代随一の技量を持つアハト翁が抱いた懸念である『人とホムンクルスとの間に生まれたモノを扱った事がない』それに尽きる。

イリヤスフィールはアハト翁が鋳造したアイリスフィールを越える最高傑作だ。これから先にどれほどホムンクルスを鋳造したとしても彼女以上のモノは造り出せないと彼は確信してしまった。

その為、失敗などは許されず……具体的に言えば万が一の為の素体を欲したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――で、わたひがうまれたってわけ」

 

新々と雪の降り積もる森の中、少女は不格好な切り株に腰かけて独白するようにそう呟く。記憶にあるのは数日前に持ち込まれた箱のような絵の映る機械。

雪のように白い髪に、三日月を描く黒い天然のメッシュを指で弄び、ニヤリと笑う。

 

―パパとおんなじだ―

 

「もうっウルったら、またサボってる!」

 

そこへ彼女よりも一回り大きく、だからと言って大人の膝ほどしかない白髪の少女が顔を赤らめて指を指した。

 

「もうっ、ウルは私の妹なのにどうして言うこと聞けないの!」

 

彼女はウルと呼ばれる黒メッシュの少女と非常に似た寄った容姿をしていた。

髪の色や体格など微細な違いはあるが、強い血の繋がりを感じさせられる。

 

「だって……歩くのきらいだもん」

 

億劫そうに言葉を返し、むきー、と白髪の少女は地団駄を踏む。

 

「そんなこと言うなら、もうウルと遊んであげないんだからね!」

 

「こらこら、姉妹仲良くだろ?」

 

そこへ無精髭を生やしたロングコートの男が現れると気だるけだった彼女は飛び起きて男に飛び付いた。

 

「パパ!」

 

天使のように少女ははにかむ。

 

「疲れたのかい?

なら僕の背中に乗るといい」

 

「うんっ!」

 

「こら、きりつぐはそうやってすぐにウルを甘やかすんだから!」

 

それは在りし日の幸せの記憶。

 

 

 

「――意外です。私のマスターは、もっと冷酷な人間だと思っていました」

 

「ふふっウルが産まれてからあの人ったら、より一層子煩悩になったのよね」

 

アイリスフィールは朗らかに笑い、その光景を愛おしく眺める。

本当はあの中に加わりたいと思っていながら、これ以上衛宮切嗣を苦しめない為にと一線を敷いて。

 

「――ただ、イリヤは大丈夫でしょうけど、あの子ったら私か切嗣が居ないとお昼寝も出来ないからそれが心配」

 

未だ親離れ出来ぬ幼い末っ子(ウル)を思い、胸に手を当て心を痛めた。

姉のイリヤが八歳なのに対して彼女はまだ二歳になったばかり。

そんな短い年月で彼女は私達によく懐いてくれた。特に切嗣を見かけると直ぐに飛び付いていく。姉であるイリヤにも心を許しているとはいえ、本能的に甘える対象として見ていないのだろう。イリヤを前にしたウルは喧しい愛犬が執拗に構ってくるような、怒りとは違う……とにかく、うんざりとした目をしている。

 

これから私達はこの屋敷を離れて遠い島国に飛び立つ。

切嗣は分からない、けれど私があの子達の元へ帰る事は不可能だ。もう一度言うが、あの子は切嗣に懐いている。私がいなくても……そう思うと少しだけ悲しいが、きっとその環境にもいつの間にか慣れてしまえるのだろう。

 

ただ、二人とも帰らなかった場合。彼女の心は―――。

 

「(ダメよ。こんな所で弱気になっては)」

 

アイリはそう自分を叱咤する。戦う前から最悪を想定するなんて誉められたことではない。

 

『『あ、クルミの芽だ』』

 

『ええー!きりつぐだけじゃなくてなんでウルまで私よりも先に見つけてるのー!?』

 

「本当に……こんな幸せな日々が続けばいいのに」

 

窓口にそっと手をおいてアイリは悲しそうに俯いた。

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