イリヤを救う為なんだ!   作:大いなる犠牲

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お兄ちゃん

冬木の街にもパラパラと雪の降り積もり始めた初冬の朝。

衛宮士郎は、何時もよりも少し気だるげな朝に欠伸を漏らしながら学生服に裾を通した。

 

(もうすっかり冬だな……帰ったら蔵から暖房器具(ヒーター)、取り出さないと)

 

11月ともなると流石に季節の変わり目も意識せざる終えなくなり、灯油がまだ残っていたかなど、ボンヤリと頭の中で考えながら通学路を歩く。

 

「ほら、此処から真っ直ぐ行くとね。屋敷に繋がるの」

 

「……ほふぁ、そうなんだ」

 

その道中で、二人組の女の子が公園の前にある街の見取り図を眺めて話し合っている。

 

「じゃ、パパは何処にいるの?」

 

「……キリツグは、どこだろう。私にも分からないわ」

 

「そっか……お姉ちゃんでも知らないのか」

 

 

 

「―――切嗣だって?」

 

小さい――妖精のように可愛らしい白人姉妹。

微笑ましい光景だと内心ほんわかした気持ちになりつつ、声を掛ける理由もないのでその横を静かに通り過ぎようとしたのだが、聞き付けてならない男の名に青年は振り返った。

 

「パパを知ってるの!!」

 

「パパ!!?」

 

切嗣――衛宮切嗣とは、

今から十年前にあった冬木の大火災で身寄りのなくなった俺を養子として引き取り数年前に病死した親父の名だ。

思わぬ人名につい声を上げたが、同名の他人であるという線は十分濃厚であり、「(しまった。)」そう思ったのも一足遅く、白人姉妹の黒いメッシュが特徴的な女の子は士郎の長ズボンを掴んで、嬉しそうに問うてきた。

 

「……いや、その。俺の親父が切嗣って名前でな同じ名前なものだから――」

 

「………………ッゥ!?

もしかして、パパの隠し子ですか!!」

 

違う……そう苦笑しながら答えようとして、ふと彼女の面影に亡き父(切嗣)を見た。そんな気がした。

親父は親戚なんていないと言っていたし結婚もしていなかった。度々ドイツへ立つ事はあったが……まさか、俺に隠して子供を作っていただなんて事はないだろう。第一、俺に内緒にする理由がないし、もしそうなら死ぬ前に何かしら娘の存在を仄めかす情報を残している筈。

 

他人の空似だ。そう自分に言い聞かせてもう一度少女を見る。

黒いメッシュに白髪。日本名の父親?

十歳辺りの小さな体で流暢に日本語を操る以上の点からハーフ系の日本人の可能性があり。

何処かハイライトのない瞳は……そうだ。この目は親父の目と似ている。何かに絶望して希望を見いだせない瞳だ。

 

「……その、多分違うと思うんだが、君のお父さんの名字はなんていうのかな?」

 

そんな筈はない。ありえない。

否定しておきながら、心臓の鼓動が激しくなる。

 

「うーんとね、パパは――

 

 

 

 

キリツグ・フォン・アインツベルンだよ」

 

黒メッシュの少女は――実際言うと覚えていなかった。けれど、家族なのだから自分と同じ筈だと自信ありげに語る。

 

「「ふぅ」」

 

すると、姉と青年の両方から安堵するかのような吐息が漏れた。

何か自分はおかしな事を言っただろうか?

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