「アリアは旅に出てました」
一年ぶりにファンの前に立った彼女はそう話し始めた。
「黙って旅に出てごめん。アリアは突然、心が空っぽになった感じになって落ち着かなくなって旅に出ることがあります」
「この一年も、みんなと初めて会う前も、ずっとそうして旅をしてきました。そして、これからもそういうことがあるかもしれません」
「心が空っぽのエルフは、ずっと生きて、ずっと旅をして、数えきれないほどの出会いと別れをします。みんなとの出会いもそう。アリアはみんなに会えてうれしい。でもいつか必ずお別れの時が来ると思っています。エルフはそういうことを何とも思わないですが……アリアは、変なエルフなので、それが……悲しいと思います。その時が来なければいいと思っていたと、アリアはこの一年でようやく気付きました。だから、アリアはここに帰ってきました」
「でも、アリアはいつかまた旅に出ます。そもそも、エルフは旅に出ません。アリアは変なエルフだから、元々人間の世界で人とか楽しいことに会えたらいいなって旅に出ました。今もそういう気持ちはあるし、それとは別に、不安……みたいな気持ちで旅に出ます。アリアは自分が旅に出ることを止められないと思います」
「だから、アリアは決めました。今日をもう旅立ちにしようと。でも、この旅はいままでの旅と違います。新しい旅です」
「この旅は、アリアが何となくする旅ではなく、みんなと描き、演じる旅にします。みんなと出る旅です。だからすぐにみんなの前からいなくなるわけではありません。でも、いつかは離れ離れになることもあると思います。そのときのために、またいつか会うこと、この約束をしましょう」
「勝手に決めちゃってごめんね。でも、アリアはもう決めました。アリアは約束を守ります。遅くなることはあるかもしれないけど――きっと」
「その証に、この歌を歌います。聴いてください――『アリエッタ』」
「いい歌ですね」
ステージの袖、アリアを見守っていた私の隣にオズが来た。
彼女はとても嬉しそうに笑っていた。
「あの子は旅人。何もない時を、果てのない場所を、渡り歩き地平に約束を刻む者」
「私は見出す者。この足跡には新たな種を芽吹かせる。――これから、もっと面白くなりそうですね」
それだけ言って、彼女はさっさといなくなった。
そう、これは彼女の物語。いつか別の時、別の場所で語られることになるだろう。
アリアと私たちの旅はこのようにしてはじまった。
旅路の途中に何があり、果てに何が起こるか、それは旅が終わってからではないとわからない。だから、この話は未完だ。終わりを語ることができる日が来るかもわからない。
だが、私たちは約束をしたのだ。彼女が問えば、きっと私たちはこう答える。
「また会える」――生きている限りは。
私は私の旅の終わりをいつか彼女に語り、最後の約束をする。これはそのための手記だ。