バラは以外と身近なものですよ?
1バラ! やって来たのは…………?
ここは沢芽市、巨大な大樹を模したビルが見下ろす再開発都市
その街を白衣にキャリーバッグといった変わった服装の青年が歩いていた
彼の名を畑山 耕一という、ちなみに年齢不詳
「はーっ、ずいぶんと町の様子が変わったなー」
彼は元々沢芽市の住民だった
過去に一時期ユグドラシルコーポレーションに就職していたが訳あって退職、今は植物学者兼育種家だ
『ハロー! 沢芽シティ! さぁ、今週も波乱の連続だ! 』
「ん?」
近くにいた男女の持つタブレットから聞こえた声に耳を傾ける
『 噂の”バロン連合"は、まさかの裏切りで空中分解、新たに加わった”アーマードライダー"は”黒影"に”グリドン"と名乗ってバロンに宣戦布告! ところが、今度は”鎧武"と”龍玄"が敵だったはずの”バロン"に助太刀して…………大・乱・戦!! 敵味方入り乱れてのまさに沢芽シティは戦国時代だ!!!』
タブレットの画面には鎧を模した格好をした”アーマードライダー"と呼ばれる者たちが戦っている映像が流れている
「…………全く、本当に変わったよ。この街も」
その後もタブレットからは音声が流れているが聞き流して再び歩き始める
●∴○
「ふむ、ここか」
耕一が地図を片手に立ち寄ったのは洋菓子店『シャルモン』
沢芽市でも有名なお店で店長のパティシエはクープ・デ・モンドで優勝した経歴を持つルレ・デセールの会員だという
扉を開けるとカランカランという音と同時に甘い香りが耕一の鼻をくすぐる
近くの席に座って紅茶とパティシエのオススメとメニューに書かれたケーキを注文する
ある人のおばあちゃんが言っていた
「美味しい物を食べるのは楽しいが、一番楽しいのはそれを待っている間だ」と
少しすると注文していたケーキがテーブルに運ばれる
それほど大きくない円形のスポンジケーキに白いクリームが覆い、真ん中にイチゴとリンゴがバラのようにのっている
美しい見た目のケーキが耕一の目を楽しませる
フォークを使って一口、ふわふわのスポンジ生地にはさまれたサクランボのムースが舌を魅了する
ある人のおばあちゃんが言っていた
「食事は一期一会、毎回毎回を大事にしろ」と
いつの間にか皿の上からはケーキが消えていた
フォークを置いて紅茶を口に含む
ほう、と一息ついて近くにいた店員に声をかける
「このケーキをつくったパティシエに会わせてくれるかな?」
少々お待ちください、と店員が言って店の奥へと消える
程なくしてターバンを頭に巻き、付けまつ毛をつけた、屈強な体躯に強烈な個性を放つ男性が耕一の前に現れた
「ワテクシが当店のチーフパティシエ、
「とても美味しかったですよ、このバラのケーキは」
あら、と凰蓮が声をもらす
「イチゴ、リンゴ、サクランボ、どれもバラ科の果実だ。眼や舌だけでなく隠されたテーマから考える楽しみを与える。とても素晴らしいケーキでした」
ありがとうございます、と凰蓮が頭を下げて礼を言う
「ケーキのおかわりとしてこのウルシ科の果実を使ったケーキをお願いします」
「はい、ナッツとマンゴーのケーキですね。少々お待ちを」
●∴○
「レーッドホット! レーッドホット!」
「ん?」
店のゆったりとした空気をぶち壊す騒ぎ声が耕一の耳に届く
そこには赤い服で統一した青年たちが黒いベルトのバックルのようなものを手に手を叩いている
ある人のおばあちゃんが言っていた
「食事の時間には天使が降りてくる、そういう神聖な時間だ」と
他の客に迷惑だ、と注意しようと腰を浮かした時
凰蓮が彼らの元に行き
「pardon!」(訳:ちょっとあんた達!)
一喝、その後、鮮やかな手並みで彼らを店の外へと追いやる
彼が店の中に戻ってくると店内にいた客たちから拍手が起こった
実はサクラや梅もバラ科、マンゴーやカシューナッツはウルシ科の植物なんですよね
おまけ
シャルモンの厨房にて(会話のみ)
「店長、お客様がお呼びです」
「パティシエとお呼びなさい。で、どの方?」
「あちらの白衣を着たお客様です」
「あら、誰? あのイケメン」